ずっと真夜中でいいのに。『今は今で誓いは笑みで』感想&レビュー | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。



●聞こえだけの良い音楽

素姓やメンバー構成を明らかにしていないユニット「ずっと真夜中でいいのに。」(愛称は"ずとまよ")のアルバム。素姓を明らかにしていないところは、さよならポニーテールや初期のTWIMYと同様に、プロモーションがネットでできる今のネット時代だからこそできる戦略だ。

楽器隊のサウンドがいちいちかっこいい。ピアノの響きは、エレガントな響きを楽曲に加える。楽曲を裏で支えて彩るギター。グリスを多用し、野性味さえ感じさせる音程が動くベース。ベースラインも面白い。

メロディーはキャッチー、リズムも即効性がある全体的にハイテンポな構成。疾走する#1「勘冴えて悔しいわ」、四つ打ちを取り入れた#2「正義」と#4「マイノリティ脈絡」、スネアの強打が気持ち良い#3「またね幻」、盆踊りのリズムの#5「彷徨い酔い温度」、冒頭にポエトリーリーディングがある#6「眩しいDNAだけ」。リズムがワンパターンにならないように工夫を凝らしている。

高速で細かい譜割りが進行していくところは、ボカロ以降という感じがする。打ち込みのドラムも含め、全体のサウンドがどこか人工的に聴こえるところもボカロ的だ。下手でも良いから、生々しい耳触りの音にリアルを感じる自分にとって、そこはマイナスポイントだった。

また、歌詞がつまらないのもネック。パスピエや"神様、僕は気づいてしまった"と同様にボキャブラリーと言葉の組み合わせ方だけ豊かで、その実何を言っているのか意味不明な歌詞だ。耳触りの良さだけ良くても、何を伝えたいのか伝わってこない。こういう歌詞が流行るのは、悪い意味の厨二病的でいやはや何とも。

サウンドはJ-POP、邦楽ロック、ボカロの延長線上にあって隙がなくこなれているが、人工的に聴こえ、歌詞に人間味を感じない。殺菌された世の中だからこそ流行る音楽という印象を受ける。僕の好きな音楽は、自分の中や他人の中にある汚いものや醜いものをためらわずにリスナーにぶつけて訴えてくる音楽だ。彼女たちの音楽は、自分の理想の音楽からは遠すぎる。

Score 6.2/10.0