バンプがゼロ年代に共感されたワケ | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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バンプオブチキンを論評する際、社会を無視して「僕と君」の世界に入り込むセカイ系だとする論評は見たけど、一人一人の痛みと共にあろうとしたバンドだとする論評は今はあまり見ない。

今のバンプは知らないけれども、バンプがゼロ年代に多くの人から共感されたのは、セカイ系うんぬんというよりも、一人一人の痛みに寄り添おうとしたからなんですよ。

バンプには「ハンマーソングと痛みの塔」というタイトルの曲もあるくらいで。この曲の意味の中心軸は、痛みを積み重ねて高いところにいる人(誰も自分の痛みは分かるまいと、他者から手を差し伸べられても拒絶する人)に対し、そんな高いところにいないで降りておいでと語りかけるところにある。

どんどん強く もっと強く 唄声響く痛みの塔
そのてっぺんに しがみついて 震えてるのはどちら様
(中略)
下から順にダルマ落とし 誰かが歌うハンマーソング
皆アンタと話したいんだ 同じ高さまで降りてきて
(BUMP OF CHICKEN 「ハンマーソングと痛みの塔」 )

息は持つだろうか 深い心の底まで
君が沈めた君を 見つけるまで潜るつもりさ
苦しさと比例して 僕らは近付ける
再び呼吸をする時は 君と一緒に
(BUMP OF CHICKEN「メーデー」)

愛されたくて吠えて 愛されることに怯えて
逃げ込んだ檻 その隙間から引きずり出してやる
汚れたって受け止めろ 世界は自分のモンだ
構わないから その姿で 生きるべきなんだよ
(BUMP OF CHICKEN「ギルド」)


秋葉原通り魔事件の加藤智大はバンプを聴いていた。加藤の痛みにもバンプの歌は届いていた。

結局「ギルド」は加藤を助けらんなかったわけだよなー - Torch Songs

以下、上記のブログ記事より引用。

ファンからの「ライブ感動しました バンプが好きな人に悪い人いませんよね!」的な内容のレターに応じて、
「ライブに来てくれてありがとう.そしてごめんね 悪い人がいないなんて思いません。良い人しかいないなんて思いたくもありません

あなたがもし今後人を殺すだのだますだのして、自分で自分を悪い人だと思ってしまっても、ライブに来てほしいです.CDを聴いてもらいたいです.「今後」ではなく「現在」すでにそういう「悪い人」なお客さんもいるかもしれない.そんな人に「君は悪くない」なんて、何も知らない僕には言えない.

だけど.ありがとう.アンタの善悪なんてどうでもいい.ライブに来てくれて、CDを聴いてくれて.ありがとう.僕に必要なのは「良い人」じゃなくて「聴いてくれる人」です.

引用終わり。

僕はバンプの藤原さんのこの文章に深い感動を覚えた。願わくば、藤原さんの歌詞と言葉が加藤を救ってほしかった。