PELICAN FANCLUB『Boys just want to be culture』感想 | とかげ日記

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【日記+音楽レビューブログ】音楽と静寂、日常と非日常、ロックとロール。王道とオルタナティブを結ぶ線を模索する音楽紀行。
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●新時代の「クール」と「アーバン」

今回の記事では要注目男性スリーピースバンドの新作をレビューします。2018年4月のギタリスト・クルマダヤスフミの脱退を経て、スリーピースになってから初めてのアルバムであり、メジャーデビューアルバムでもある。2018年11月発売。

フツウのギターロックって、シーンで飽和しているじゃないですか。いわゆる邦楽ロックっぽい邦楽ロック。僕の耳はフツーのギターロックでは満足できない耳になってしまった。だから、海外シーンと共鳴した彼らのロックサウンドは新鮮に聴こえてとても良いです。コクトー・ツインズやThe Pains of Being Pure at Heartなどドリームポップ系のバンドから影響を受けたギターサウンドが心地よい。

「並列にみんなつないで/ノイズは止まらない」(#2「ハイネ」)や「心をハッキングしてくれ/そして愛を愛をデリートして」(#3「ハッキング・ハックイーン」)など感覚的な言葉が多く使われ、それはドリームポップ/シューゲイザー由来の音楽性と相性が良い。理性では捉えられない自分の感性を刺激され、音楽と共に拡張していくような感覚になる。

また、疾走していく即効性が高い曲が収録され、なるほど、これは人気が出る訳だと思わされる。ただし、売れ線に近づけても、魂までは譲り渡していない感じがして、僕の理想とする音楽に近くて嬉しくなる。実験だけではポップじゃないし、売れ線の要素だけでは予定調和の枠をはみ出ることはない。本作は程よく予定調和を崩しながら、自分たちの伝えたい感覚をポップに届けることに成功している。適度に売れ線に寄せてきていることからは、これから日本を代表するロックバンドになろうとする気概も感じ取れる。

本作には、ギターボーカルのエンドウアンリの楽曲が6曲、ベースのカミヤマリョウタツの楽曲が2曲収録されている。浮遊感を持って駆け抜けるエンドウアンリの楽曲が僕は好みだが、エンドウとは作風が違い、より実存的なカミヤマリョウタツの楽曲はアルバムの良いアクセントになっている。

「アルミホイルを巻いて」のギターの質感は、アルミホイルから受ける印象に近い感じがする。僕は、表現したいことに合わせて表情を豊かに変える本作のギターの虜です。ドラムやベースが目立つ箇所もあり、それぞれ気持ちいい。ペリカンファンクラブはプレイヤビリティの塊のようなバンドだ。

4人バンドだとシーンで埋もれてしまったかもしれないが、男性スリーピースだと埋もれずに済むという意見をある人が言っていて、僕もなるほどと感心した。そして、本作はスリーピースのメリットや美点が最大限に活かされている。

1曲目の「Telepath Telepath」と最後の曲「ノン・メリー」が特に好きです。疾走していくこの感性は、新時代の「クール」と「アーバン」を体現する。本作の音楽愛が多くの人に届くことを願っている。







Score 7.8/10.0