![](https://stat.ameba.jp/user_images/20180825/11/yoyo0616/87/d6/j/o1280072014254006036.jpg?caw=800)
●表現者の願いと哀愁が込められた名曲3曲
笹口騒音&ニューオリンピックスの笹口騒音&が外れ、バンド『NEW OLYMPIX』としての初音源がこのEP。
ギターに適当にエフェクトかけてゴマかすというのはロックバンドによくあることだが、NEW OLYMPIXではそれをしない。二本のギター、ドラム、ベースの乾いた音が余計な装飾なしに響いている。そして、余計な装飾がないからこそ、NEW OLYMPIXのメンバーの人間性がダイレクトに伝わってくるのだ。
NEW OLYMPIXの人間性ーー。テクニック的な面では器用なのだけど、それ以外の面では不器用で愛すべきキャラクターだと、これらの曲を聴いていれば伝わってくる。売れたいのに売れ線の音楽に走ることをしない彼らはとても不器用でしょう? そんな彼らがサビで「愛しておくれ」と連呼する愛すべき曲が表題曲なのだ。
また、"酔い"がない。自然体でたたずむ音は風通しがすこぶる良く、簡単に音楽に依存して酔うことを拒絶する。自立した"個"であるリスナーが、自立した"個"が合わさってできた彼らの音楽に耳を傾けた時にこの音楽は成立する。
YAOAY(笹口騒音から改芸名)のファルセットを心行くまで堪能できる#2「虫」。#1「愛しておくれ」に引き続いて「(お前は)なんの意味もない」という言葉が出てくる。その後にある結びの「頭の中の虫が起きる前 はやくこの歌を完成させなくちゃ」のラインからは、自分が生きることは意味がないかもしれないけど、歌を残したり、愛されたりすることができるのだというNEW OLYMPIXの強い意思を感じ取ることができる。
そして、#3「力がほしい」ではRadioheadの歌詞や曲名を散りばめて力がほしいと歌うのだ。
ここでいう「力」とは、売上や影響力のことではないだろうか? YAOAYは本気でRadioheadのようになることを夢見ている。歌を残したり、愛されるだけでは飽き足らない。そう感じ取った上で「力がほしい」を聴くと、NEW OLYMPIXの売れたい気持ちと、それでも残した歌は忘れられ、ラブのないホテルのように愛も忘れられるのだろうという相反した気持ちに引き裂かれる表現者の心境が、曲が醸し出す哀愁から読み取れて胸を打たれずにはいられないのだ。
笹口さんの音楽のことは、僕が生きている間、愛し続けます。笹口さん達が力を得られるように、僕は願い続けます。だから、これからも純粋な表現欲をアーティスティックに刻印するその音楽を作り続けてくださいね。笹口さんの音楽は僕の希望なのです。
ネオシティポップなこの3曲にはもっと広まってほしい。#3「力がほしい」で歌われているように、愛はおしゃれじゃないのと同じく、ロックはオシャレじゃない。ロックとは、オシャレから離れた、もっと人間の根源に迫る何かだ。僕が考えるロックの理想形がこの3曲では高らかに鳴らされている。