分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、片頭痛の「発生機序」に関して、 片頭痛の原因となるのは「活性酸素」と「遊離脂肪酸」であり、それらが発生する要因としては、「ミトコンドリア活性の低さ」と「酸化ストレス・炎症体質」であると以下のように述べておられます。
片頭痛における痛みの発生機序
片頭痛では、「酸化ストレス・炎症体質」(次章で説明します)を基盤として、ちょっとしたことで(ストレスなど何らかの理由で)「活性酸素」や「遊離脂肪酸」が過剰に発生することによって、”血小板凝集反応”が引き起こされて、血小板から血管外へセロトニン(生理活性物質)が放出され、血管を収縮させます。その後、役割を果たしたセロトニンは減少しやがては枯渇し、今度は逆に血管は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きます。さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が放出され、血管を刺激して痛みが出てきます。この二つによって、片頭痛が起きてきます。
このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、最初の引き金となる「セロトニン」は”生理活性物質”としての作用です。
片頭痛発作時には、「脳内セロトニン」が不足した状態にあります。トリプタンという薬は、脳内セロトニンと同じように、血管には1Bという鍵穴があり、トリプタンはこの鍵穴に作用して、血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
さらに血管の周囲から「痛み物質」が、シャワーのように血管に降り注いで、血管の拡張と炎症が起こっており、シャワーには1Dという鍵穴があって、トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛み物質」の放出をとめます。ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
トリプタン製剤は、あくまでも片頭痛発作時に減少した「脳内セロトニン」を補填しているに過ぎないことを肝に銘ずるべきと考えております。これだけでは、不適切な治療としか言えません。もっとすべきことがあり、それは「生活習慣の改善」です。
具体的には、片頭痛治療の焦点は、「脳内セロトニン」をいかにして増やすか、さらに、「酸化ストレス・炎症体質」をどのようにして改善させるかに置かなくてはなりません。
片頭痛は暴れるホース!?
”片頭痛という症状”は次のプロセスを経て起きると考えられます。
①脳の血管内にセロトニンという物質が増え、脳血管が収縮する
↓
②脳に血液が充分に供給されなくなり、炎症性物質を生じるとともに、脳の表面に脱分極(神経細胞の電気的変化)が起きる
↓
③血管が拡張し、血液が勢いよく流れるときに痛みをともなう
これを分かりやすくいいますと、最初は脳の血管が収縮して血流が減り(片頭痛 前兆期)、しばらくするとその反作用として脳血管が拡張し、多くの血液が脳に流れるようになります。そのとき発生する炎症性生理活性物質により、心臓の鼓動に合わせて強い痛みを生じるのです。
例えるなら、水の流れているホースを踏みつけて流れを悪くしたあと、それをパツと放した状態です。ホースは暴れるようにして勢いよく水をほとばしらせます。このホースの暴れている状態が片頭痛だと考えられるのです。こうした状態が数時間から長い人で数日ほど続くわけです。
片頭痛の原因「活性酸素」の呼び水は”ストレス”
片頭痛は暴れるホースの水-この原因となるのが、脳血管内のセロトニン濃度の変化を引き起こしたり、脳表面の脱分極を引き起こしたりする「活性酸素」や「遊離脂肪酸」です。これらはなぜ発生するのでしょうか?
人は精神的なストレスを受けると、アドレナリンというホルモンを分泌し、血圧が上がり、心拍数が増えて血糖値が上がります。これは、緊張状態に備えるための体の変化です。
このとき、体内を循環している血液は、おもに心臓や肝臓、筋肉に集中し、脳への血流は低下(虚血)します。
脳細胞への血液が不足すると、細胞内にあるミトコンドリアで産生されるエネルギー発生物質(ATP)も減少します。脳は、体の各器官に指令を送るときに、カルシウムなどのイオンの濃度調整によって伝達物質を送り出して指令を伝えます。しかし、ATPが不足すると、脳細胞内のミネラルイオン濃度を調整するポンプが正しく機能しなくなり、いわゆる”機能停止状”になってしまいます。
その後、ストレスから解放されると再び脳血管への血液の供給がよくなり(再環流)、機能停止状態になっていたミトコンドリアは急速に機能を回復させます。このとき、過剰な活性酸素を発生させます。これは長いあいた正座をしたあとに立ち上がろうとして、足がしびれたり痛みを感じたりするのと似たような現象です。
ミトコンドリア活性が低い=酸化ストレス体質が片頭痛を招く
私たちの体は食事などで体内に取り込んだ脂肪や糖分といった燃料分を燃やしてエネルギー(ATP)を作り出すときに「酸素」を使います。車のエンジンが、ガソリンに酸素を加えて爆発させることによってエネルギーを得ているのと同じです。これと同じことが細胞内のミトコンドリアでも起きています。このときに発生するのが「活性酸素」なのです。
じつは、活性酸素にはウイルスなどの外敵を撃退してくれる働きもあるのですが、活性酸素が過剰に産生されると、体を傷つける悪い働きをしてしまいます。同様に、脳血管や脳細胞に作用して、片頭痛の発作や痛みを引き起こす生理活性物質を発生させる原因となります。このように、活性酸素が人体に有害な影響を及ぼす状態のことを「酸化ストレス」といいます。
こうした状態になっても、通常人体は活性酸素を打ち消すための抗酸化物質を適度に産生します。また、食事によって抗酸化物質を体内に取り込むことも可能です。
しかし、片頭痛持ちの人はもともとミトコンドリアの活性が低いため、健康な人ならばほとんど問題にならないような血流の変化や、ちょっとした血流の増加であっても、活性酸素が過剰に発生してしまうのです。
片頭痛の引き金となる活性酸素
健常人では問題となることのない血流の変化であっても、片頭痛持ちの人は元来ミトコンドリア機能の活性が低く、わずかな血流の増加であっても活性酸素を発生しやすい状態になっています。
同じようなことは、運動をすることや飲酒、入浴などによって急に血行が良くなる場合や、早朝の自律神経の切り換えにともなう血流の変化やホルモンの分泌量の変化にともなう僅かな血流の変化も片頭痛持ちの人では活性酸素の発生の要因となってしまいます。
低気圧や人ごみ(酸素濃度のわずかな低下)や季節の変化(寒暖にともなう血流の変化)もミトコンドリア機能の活性が低い片頭痛持ちの人ではミトコンドリアの代謝機能の低下と、それに引き続きおきる血流の回復により過剰の活性酸素が発生してしまうことになります。
また、小麦などに含まれるタンパク質の成分であるグルテンに過敏な人では免疫系のマクロファージ(白血球の一種)がグルテンを異物として排除するときにも多くの活性酸素を発生することになり、片頭痛の発作の原因となります。
風邪を引いた場合にも同様に風邪ウイルスに対する免疫系からの過剰な活性酸素が発生し片頭痛の引き金となることもあります。
なお、風邪ウイルスは直接的に筋肉細胞や血管細胞を攻撃し、片頭痛の発作や痛みを引き起こす生理活性物質をも発生させます。
このようにして、ストレスや運動、飲酒、入浴、風邪などの要因が活性酸素を発生させ片頭痛を引き起こしていくことになります。
しかし、このような片頭痛発症要因に曝(さら)される片頭痛持ちの人であっても、仮に「ミトコンドリアの活性の低さ」を改善し、「酸化ストレス・炎症体質」を改善すれば活性酸素も異常に発生することはなくなりますので、片頭痛の発症へとは進まないということになります。
いわゆる、片頭痛持ちの人は常に活性酸素が発生しやすく炎症を起こしやすい体質「酸化ストレス・炎症体質」であることと、細胞の活力を支配する「ミトコンドリアの活性の低さ」に問題があります。
活性酸素が発生しやすい「酸化ストレス・炎症体質」に加え「ミトコンドリアの活性の低さ」が重なれば非常にわずかな刺激であっても活性酸素が過剰に発生されてしまうのです。
片頭痛に女性間の家族性が高いのはこの「ミトコンドリアの活性の低さ」が母性遺伝することも一因であるといえます。
しかし、「酸化ストレス・炎症体質」や「ミトコンドリアの活性の低さ」については日々の食生活のあり方などにより誘発されるものですから、それらを改善することにより片頭痛は発症しなくなります。
また、「酸化ストレス・炎症体質」では体内で過酸化脂質が生成されやすく、過酸化脂質も活性酸素を過剰に発生させる原因物質となります。
ただし、過酸化物質については実際に体内で脂質が酸化され生成されること以上に加工食品などの過酸化脂質をすでに含む食品を摂ることの方が現実の問題としては大きいように思われます。
遊離脂肪酸はどのようにして生じる?
精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離脂肪酸が生成されるようになります。
本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げたりする時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと考えられます。
通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足分を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用されます。
しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となります。ストレスから開放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を高めるだけの結果となってしまうのです。
その結果、血小板に直接作用して”血小板凝集反応”を促進することや脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
このため、ストレスを受けている時に発症するのではなくストレスから開放された時に片頭痛を発症しやすくなるのです。
また、植物油(リノール酸)の摂りすぎやトランス脂肪酸を摂ると、体内での脂質代謝が遅延することになりますので、血液中の遊離脂肪酸濃度をいつも高い状態にしてしまうことになります。
このように、血液中の遊離脂肪酸濃度が常に高い状態であれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても血小板の凝集や活性酸素の発生が起こり易くなると考えられます。
一方、糖飲料などを飲み過ぎにより急激に血糖値が上がり過ぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが過剰に分泌されることになります。
過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げ過ぎることになります。
血糖値が下がり過ぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとするからだの仕組みが働き、体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。
体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費が平衡を保っておれば問題を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまうと血液中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。
特に片頭痛持ちの人はミトコンドリアの活性が低く(冷え性や低体温症など)、ブドウ糖の生成とその消費のバランスは乱れやすい傾向にあります。
糖飲料の摂り過ぎ以外にも、過激な運動や絶食(長い間の空腹)なども糖への代謝とその消費のバランスを乱しますので血液中の遊離脂肪酸の濃度を高めることになります。
このようにして放出された遊離脂肪酸が血小板に直接作用して血小板の凝集を引き起こすことにより脳血管内のセロトニン濃度が上昇することで片頭痛を発症すると考えられます。
または、遊離脂肪酸が脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させ、その活性酸素が三叉神経や脳細胞を傷つけることにより片頭痛を発症させると考えることもできます。
脂質の摂り過ぎが活性酸素の発生原因に!
ところで、「酸化ストレス’炎症体質」の人は、体内で過酸化脂質が生成されやすく、これが活性酸素を過剰に発生させる原因物質となっています。
過酸化脂質というのは、コレステロールや中性脂肪が活性酸素によって酸化されてできたものです。これらは体内で作られるのですが、それ以上に、そもそも過酸化脂質を多く含む加工食品などを過剰に摂る食習慣のほうに問題があると考えられます。
ポテトチップスなどのスナック菓子、インスタントラーメン、ピーナッツ、マヨネーズ、マグロの缶詰(缶を開けたあと)、黒くなった古い油分には注意が必要です。また、新しいものでもチキンフライなどの揚げ物を電子レンジで加熱すると、とがった部分や角の部分が過酸化されることがあります。
精神的なストレスを受けてアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を高めるために体脂肪が分解されます。このとき、体脂肪から遊離脂肪酸が生成され、血液中に溶け出して全身に送られます。
通常、体脂肪は空腹時のエネルギー不足を補うために分解されます。ところが、精神的なストレスからアドレナリンが分泌されて遊離脂肪酸が生成されると、エネルギーとして消費されることがほとんどありませんので、その後ストレスから解放されると、血中の遊離脂肪酸濃度だけが高くなった状態になってしまうのです。この遊離脂肪酸は、血小板の凝集を促進したり脳血管壁を傷つけたりしますから、これが活性酸素を発生させる原因となってしまいます。
遊離脂肪酸には細胞毒性(細胞を傷つける性質)が強いという特徴があります。通常は血液中のアルブミン(Lカルニチン)というタンパク質成分と結合して毒性が弱められた状態で存在しているのですが、遊離脂肪酸が毒性を発揮して細胞を傷つけるということは、アルブミンとの結合可能な限界量(間値)を超えてしまっているということです。
このような状態を招く原因は、間違った日々の食習慣なのです。特に、植物油(リノール酸)やトランス脂肪酸を多く摂り過ぎると、体内での脂質代謝が充分に行われず、血液中の遊離脂肪酸濃度が高い状態になることが分かっています。
このような状態になれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても、片頭痛の引き金となる脳血管内の血小板凝集が起きてしまいます。
以上のように後藤日出夫先生は述べておられます。
こうしたことを踏まえて、先生の提唱される「3つの約束」のなかで「日常の食生活での注意点」として、以下のように述べています。
悪い植物油(市販のサラダ油など)や加工油(マーガリン)をとらない。とるのはシソ油(エゴマ油)とエクストラバージンオリーブ油だけにする
低血糖にも注意が必要
ところで、皆さんは甘い清涼飲料水やお菓子をよく召し上がりますか? これらに含まれる糖質は、私たちの体が短時間に分解・処理可能なレベルを超える量が含まれているものが数多く見受けられます。
体内でどのような変化が起きるかを見てみると、清涼飲料水やお菓子を過剰に摂取すると急激に血糖が上がり、その上昇を抑制するために、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンには血中のブドウ糖濃度を調整してくれる働きがあることはご存知のとおりです。清涼飲料水などの消化吸収のよい糖質を短時間でとると、体はたくさんの糖質が摂取されたと認識してインスリンを過剰に分泌します。その結果、血糖値が必要以上に下がり過ぎるという現象が起きます。これが低血糖です。
急激な血糖値の低下も、体がストレスを感じている状態です。そうなると、今度はそれを適正なレベルにまで戻そうと体が働き、アドレナリンなどのホルモンが分泌されます。すると、体脂肪が分解されて遊離脂肪酸が血液中に放出されて濃度が高まり、これが活性酸素を発生させて片頭痛の原因となるわけです。
スポーツドリンクや清涼飲料水などを大量に飲み続けることにより引き起こされる「ペットボトル症候群」という現代病もこのようにして発症します。体がだるい、のどか渇く、トイレに行く回数が増えるなどの急性糖尿病的な症状や、ひどい場合には血液が酸性になり昏睡状態に陥ることもあります。
清涼飲料水やお菓子のとり過ぎ以外にも、過激な運動や無理な絶食なども血液中の遊離脂肪酸の濃度を高めることにつながります。ご注意ください。
精製・加工処理された植物油をとらない
片頭痛にはいろいろな症状の違いがあり、発症の原因もさまざまです。でも、どのようなタイプの片頭痛の人にも共通した発症要因が「酸化ストレス・炎症体質」です。
ここでは、どうすれば改善できるのかを解説することにしましょう。その筆頭に挙げたいのが食習慣の見直し、その中でも特に「食用油に気をつけること」です。
皆さんの中には、「植物油は健康によい」と思っている方も多いのではないでしょうか? もしあなたが「植物油は健康によい」と信じているのであれば、「植物油のとり過ぎが、じつは健康を害する最大の原因である」と認識を変えてほしいのです。
もちろん、植物油の中にも「よい植物油」と「悪い植物油」があるので一概にはいえないのですが、悪い油のとり過ぎが、片頭痛発症の引き金となる「活性酸素」と「遊離脂肪酸」を発生させることにつがなっていることは確かです。よいものと悪いものを見極める目を持つことが大切です。
私かお勧めする植物油は、昔ながらの製法「低温圧搾」で造られたシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油などのオメガー3系脂肪酸を多く含む植物油と、エクストラバージンオリーブ油、低温圧搾で作られたゴマ油やナタネ油などの植物油です。これら以外の市販されているサラダ油など多くの植物油は、いずれも「悪い油」といってもよく、多くとってはいけないものばかりです。また、マーガリンやショートニングなどの脂もダメです。
こうした「悪い油」を原材料とするマヨネーズやドレッシング、植物性ヨーグルト、ケーキ、ビスケット、クッキー、チョコレート……なども、できるだけ避けたい食品といえます。加工食品の成分表を見ればわかるのですが、植物油が加えられていない加工食品はまれにしかありません。これらの植物油のほとんどは悪い油です。注意してください。
危険な「トランス脂肪酸」について
悪い植物油というのは、工業的に精製・加工されたもので、その製造過程で副産物として生成されるトランス脂肪酸という非常に危険な有害物質を含んでいます。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らす働きがあることがわかっていて、動脈硬化や心臓病につながるなど、健康被害の原因となります。海外では、加工食品にトランス脂肪酸がどれくらい含まれているかを表示する義務や含有量の制限がある国もあるほどです。
このトランス脂肪酸をとることと、植物油の主成分であるリノール酸のとり過ぎが、片頭痛やさまざまな生活習慣病を発症させる原因となる「酸化ストレス・炎症体質」の最大の誘発因子となっています。ですから、悪い植物油を料理などに極力使用しないこと、こうした植物油を使って作られた加工食品を極力とらないことが大切です。
ところで、今でもマーガリンが「健康によい」と信じている人は結構多いようです。
もし、料理にマーガリンを使う必要があるのであれば、ただちにバターに切り替えてください。バターのとり過ぎも体にはよくないのですが、それでもマーガリンよりは健康上の問題は少ないといえます。
マーガリンやショートニングを使用している市販のケーキやクッキー、お菓子類なども極力とらないようにすることが、「酸化ストレス・炎症体質」に至らないためには大事です。
市販の揚げ物を食べてはダメ’・
市販の揚げ物にも、油の”持ち”をよくするために、トランス脂肪酸を多く含む硬化油という植物油が使用されています。硬化油を使用した鶏の唐揚げやポテトフライなどの揚げ物類も極力とらないようにしたほうがよいでしょう。揚げ物を食べたい場合は家庭で作るようにしてください。その際には、圧搾製法で造られたナタネ油やゴマ油、またはオリーブ油を使うようにしましょう。
また、悪い植物油はドレッシングやマヨネーズをはじめ、多くの加工食品に使用されています。ですから、加工食品を手にとったら、必ず成分表を見るようにしたいものです。「植物油使用」と書かれているものは、いずれも悪い植物油が使われていると思ってください。マヨネーズやドレッシングは、エクストラバージンオイルやシソ油を使った自家製のものにすると、健康にもいいし、美味しく安心していただくことができます。
日常の調理には加熱用としてエクストラバージンオリーブ油を使い、ドレッシングやマヨネーズなどの非加熱用途には、シソ油(エゴマ油)またはエクストラバージンオリ-ブ油を用いるとよいでしょう。
また、穀類、種実類(ナッツ)、豆類、芋類など、天然の植物に含まれる油分にはリノール酸が多く含まれていますが、これらはよい油分であり、有害なトランス脂肪酸は含まれていません。
なお、リノール酸は必須脂肪酸です。摂取不足が気になるところですが、通常の食事(穀類や豆類を含む)をしているかぎり、あえて植物油や植物油を含む加工食品をとらなくても摂取不足を起こすことはありません。
また、穀類や豆類を中心とした通常の食事では、リノール酸のとり過ぎを起こすこともありません。知らず知らずのうちに加工食品から摂取されるトランス脂肪酸やリノール酸のとり過ぎ、ドレッシングやマヨネーズ、唐揚げなどからの直接的な植物油のとり過ぎが問題です。
脂肪酸の種類
たとえばビタミンにもいろいろな種類があるように、脂質(油脂)にもいくつかの種類があります。これらは、分子構造上・脂肪酸として次のように分類できます。
I.飽和脂肪酸……酸素などと反応しやすい「二重結合」を持たないもの
(ヤシ油や牛乳・バターに多く含まれる)
Ⅱ.一価不飽和脂肪酸……「二重結合」がひとつだけあるもの
(オリーブ油の主成分であり、ナタネ油や牛脂に多く含まれるオレイン酸など)
Ⅲ.多価不飽和脂肪酸……複数の「二重結合」を持つもの
(シソ油に多く含まれるα-リノレン酸や植物油に含まれるリノール酸、青魚に含まれるEPA・DHAなど)
飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸は、おもに体を構成する細胞膜に使用されたり、中性脂肪として体に必要なエネルギーとなったりするものです。ただし、体をコントロールしている生理活性物質(私たちの生理活動に影響を与えるホルモン様物質)の合成に使用されることはありません。
一方の多価不飽和脂肪酸には、細胞膜の構成やエネルギーの供給源となるほかに、「酸化ストレス・炎症体質」を決定する生理活性物質の原料になるという重要な役割があります。
最近注目されているのが、多価不飽和脂肪酸の中の「オメガー3系脂肪酸」です。シソ油(エゴマ油)、亜麻仁油の主成分であるαーリノレン酸をはじめ、青魚に含まれるEPA(エンコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などが代表です。サプリメントとしても発売されていますから、皆さんもご存知のことでしょう。
多価不飽和脂肪酸には、このほかにもリノール酸やアラキドン酸などのオメガー6系脂肪酸のグループがあります。体内でEPAやDHAはα-リノレン酸からも合成され、アラキドン酸はリノール酸からも合成されます。このように、同じグループ内の脂肪酸は体内で必要に応じて作りかえられるのですが、オメガー6系からオメガー3系などグループを超えての合成は決して起こりません。
大切なのは「オメガー3系脂肪酸」
一般にオメガー6系脂肪酸をとり過ぎると「酸化ストレス・炎症体質」を形成し、逆にオメガー3系脂肪酸は「酸化ストレス・炎症体質」の形成を抑制する働きがあります。
今日の食生活では、オメガー6系脂肪酸はとり過ぎとなり、逆にオメガー3系脂肪酸は不足しがちです。これは近年急激に摂取量が増えた植物油に、リノール酸などのオメガー6系脂肪酸が多く含まれること、さらに私たちが主食とする米をはじめ、小麦やトウモロコシ、そばなどの穀類の油分にもオメガー6系脂肪酸が多く含まれるからです(オメガー3系脂肪酸の15~30倍)。
当然、片頭痛にならないためには、オメガー3系脂肪酸を含む食べ物を積極的にとるようお勧めするわけですが、なかでもEPAやDHAを多く含む青魚が有望です。
ただし、ここで注意しておきたいことがひとつ。青魚のうち、ブリやマクロなどの大型魚には、メチル水銀やダイオキシン類といった環境汚染有害物質を多量に含むものが多いということです。小さければ小さいほど、こうした有害物質をわずかしか含みませんから、目安としては「手先から肘までより小さな魚」であるイワシやアジ、サバなどの小型の青魚がお勧めです。
また、オメガー6系脂肪酸とオメガー3系脂肪酸の摂取比率は、体質改善当初は[1:1]、改善後は[2:1]が望ましく、私はシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油を日常の食生活に取り入れることを勧めています。
ところで、もしあなたが花粉症やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患で悩んでいるのであれば、これまで述べてきた植物油にかかわる注意事項を忠実に守るだけで、その悩みは解消に向かうことでしょう。
片頭痛の場合には、残念ながらこれだけでは充分な改善効果を実感することはできないのですが、まずはこの植物油の問題をクリアすることが、片頭痛体質にならないための第一歩です。ぜひお試しください。
この部分は、著作権は分子化学療法研究所の後藤日出夫先生にありますので、取り扱いに注意して下さい。
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頭痛が気になったら・・
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