頭痛講座19
生活習慣病は、発症前の生活習慣の問題点が永年積み重なって発症してくるものです。
ですからこうした生活習慣の問題点を改善・是正することによって糖尿病、高血圧といった疾患そのものの発症を予防していくのが原則です。
こういったことから、片頭痛も糖尿病や高血圧症のような生活習慣病と同様に、片頭痛がどのような生活習慣の問題点から発症してくるのか、どのようにすれば、片頭痛そのものを発症させずに済むのかを知っておく必要があります。
このような知識を身につけることで、一端、片頭痛を発症した場合でも、これまでの自分の頭痛の経過を振り返って思い起こし、その経過と生活習慣の変化との関連を冷静に見つめ直すこと(内省すること)によって、生活習慣の問題点を炙り出し、これを是正・改善させることによって、片頭痛が改善されてくるということに他なりません。
このようなことは、片頭痛を発症させた時点で、できるだけ早期に着手することが極めて重要になります。それも、このようなことは当事者である、”あなた”でしか分からないことです。カリスマ医師と言えども、このようなことまでは教えてはくれません。
このように、生活習慣の問題点を是正・改善させるということは、こうした生活習慣そのものを改める必要があります。その効果がでるまでに一定の時間の猶予が必要です。
ですから、生活習慣そのものを改めるためには、当面起きている頭痛をたちまち抑制しておく必要があります。
片頭痛の場合、トリプタン製剤が導入される以前には、発作中の3日間は全く仕事にならず、寝込むことも多かったはずです。これが、寝込まずに済むようになり、私達は大変過ごしやすいようになりました。
しかし、このような生活もいつまでも持続してくれる保証はどこにもありません。
そうです、おくすりの宿命である、薬剤乱用頭痛を必ず、引き起こしてきます。
トリプタンによる薬剤乱用頭痛
こうしたトリプタンによる薬剤乱用頭痛は、1980年代はじめに、片頭痛の治療領域にトリプタン製剤が開発され、1990年に実際に販売されて間もなくの1990年代の半ばには、既に、頻回の服用によりトリプタンによる薬剤乱用頭痛に陥りやすく、その状態は頭痛の程度が一層強いこと、そして従来の予防薬では効果が得られないことがわかり大問題となっていました。
日本に導入された段階では欧米では、よく知られた事実で、日本の指導者が意識的に覆い隠していただけのことです。
片頭痛に対して、市販の鎮痛薬を服用する弊害
専門家は、こうした片頭痛に対して、市販の鎮痛薬を服用する弊害を次のように警告されます。
市販の頭痛薬や痛み止めの大部分は”みかけの痛み”のみを取り払い、水面下で起こっている脳の神経細胞の興奮症状を置き去りにしています。
当然、毎回の片頭痛発作のたびに起きている脳の血管周囲の炎症に関しても放置されたままになっています。
この興奮状態の放置により、片頭痛の回数や程度がだんだんとひどくなってきて、市販の頭痛薬の用法や用量の規定範囲を超えるようになってきたり、飲む回数が増えてきたりします。
トリプタン製剤は市販の鎮痛薬とは異なり、片頭痛発作の際に脳の血管周囲に張り巡らされた三叉神経から、炎症蛋白が放出されるのをブロックすると同時に、膨れあがった脳の血管を元の大きさに戻す作用を持ち合わせる、いわば根本から片頭痛を断ち切る薬です。
このような馬鹿げた論説を一部の研究者はネット上に流布させました。
このようなことから、片頭痛にはトリプタン製剤を服用するのが”適切”な治療とされます。
トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。ストレスなど何らかの理由でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。
そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
こうしたことから、トリプタン製剤を服用することが片頭痛の”適切な”治療とされています。
さらに、片頭痛発作時にトリプタン製剤を服用しさえしておれば、片頭痛が治ってしまうと宣伝されてきました。
さらに、片頭痛患者さんによくみられる、パニック障害やうつ状態、冷え性までが改善され、将来的には、脳梗塞が予防されるし、さらに頑固な耳鳴り・めまい・性格異常までが予防されるとまで述べる専門家も出てくるようになりました。
さらに、生理時にみられる頭痛は片頭痛であり、この段階からトリプタン製剤を服用しましょうとしきりに勧められてきました。
なぜ、トリプタンによる薬剤乱用頭痛が増加したのか
上記のように、トリプタン製剤さえ服用しておりさえすれば、片頭痛が治ってしまうかのような印象を植え付けてきました。
これまで「頭痛治療」では、痛みがあれば、まず市販の鎮痛薬を、これでダメなら病院での鎮痛薬NSAIDs、これで効かなければエルゴタミン製剤を、これでも効かなければトリプタン製剤が勧められてきました。
このように段階的に、”鎮痛薬”の服用が推奨されてきました。
そして、最後の”砦”とされるトリプタン製剤は片頭痛の”特効薬”とされてきました。
このように片頭痛治療の場面では、各種の諸々の薬剤によって、ただ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで「解決した」(一件落着)と単純に考えられてきました。
このように、鎮痛薬の使い方として、段階的な使い方をすべきであるにも関わらず、最近では市販の鎮痛薬の弊害(先述のように)を警告して、最初から、いきなりトリプタン製剤の服用が勧められてきました。
特に20歳前半の片頭痛患者さんでは、鎮痛薬のみで対処可能な場合が多いはずです。にもかかわらず、このような年代の方々にまで服用を勧めています。
このような時期から、このような対応をすれば、トリプタン製剤が効かなくなる時期も当然早まってくることを余儀なくさせられます。
さらに、頭痛が”完全に”消失することまで期待する人も多くみられます。
多くの片頭痛では、緊張型頭痛に重なった形にあるため、トリプタン製剤では、上層にある片頭痛は改善されても、下層にある緊張型頭痛の軽い頭痛までは完全に無くすことはできません。このため、ひたすら”完全に”痛みをとろうと考えることから、服用回数が増えてくることになります。このため薬剤乱用頭痛を作ることになります。
このため、就業などに支障がない程度まで改善されれば、それで、「よし」、とすべきでありながら、このような指導もなく、服用を勧めれば、必ずといってよい位に、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を作ってくることになります。このように完璧には頭痛を消失させる程の効果はないと心得なくてはなりません。
さらに、日本では、欧米に比べて、軽い片頭痛にまで、トリプタン製剤の投与を勧める基準が作成されています。本来なら、市販の鎮痛薬もしくは、病院での鎮痛薬で対処すべきであり、エルゴタミン製剤を考慮すべきでありながら、副作用だけを強調して、敬遠されてきました。このようにトリプタン製剤が優先されてきました。
そして、トリプタン製剤は、大半は有効時間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤ですので、市販の鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤”とされています。
逆に、エルゴタミン製剤は、トリプタン製剤よりは、ずっと有効時間が長い長所があることを忘れてはならない点です。
西洋医学では、現代医学はもとより、とくに現代頭痛学では、「未病」とか「自然治癒力」といった概念がまったく存在しないため、脳のなかに異常のない慢性頭痛が位置している”未病”の領域が「ブラックボックス」となっています。
こうしたことから、現代医学では慢性疾患のほとんどは原因不明とされています。
従来から、現実に片頭痛は、片頭痛という「病気(疾患単位)」なのか疑問に思われる存在で(換言すれば”幻”のようなもので)、このため、原因不明の不思議で・神秘的な遺伝的疾患とされてきました。
ということは、片頭痛は、あくまでも「国際頭痛分類 第3版β版」で厳格に”症状”だけで定義された、想像上の”頭痛”でしかなく、謂わば「砂上の楼閣」のような存在でしかありません。単刀直入に言えば、タイムスケールの上で、存在しないものです。
こうしたことから、「国際頭痛分類 第3版β版」で、個々の慢性頭痛を”症状”の上で、厳密に”定義”して区別・分類しているに過ぎないということです。
このように、片頭痛は”疾患単位”ではなく、あくまでも”とりきめ”・”症状”に過ぎないものです。西洋医学では、未病の領域がないため、このように取り決めをする必要があります。
このような”未病”の段階(自然治癒力の低下した状態)に、トリプタン製剤といった強力な鎮痛薬を発作時に毎回、服用し続けることは、”さらに”自然治癒力を低下させるだけのことであり、ひたすら慢性片頭痛への道を歩ませているということです。
このように、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を生む背景が多く存在しています。
頭痛治療は、”薬剤乱用頭痛との戦い”
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12703392380.html
頭痛が起きたら・・・
頭痛が起きてしまえば、当然のこととして、たちまちは鎮痛薬を飲みを緩和させる必要があります。しかし、毎回、このように痛みだけを緩和させて、治まればこれで全てが解決した、”一件落着した”と決して思わないことです。
最初に述べましたように、”日常的に感じる極く軽度の頭痛”が最初に起きた時点から、頭痛が起きた原因が存在します。
これに対して根本的な・抜本的な対処をしておきませんと、その後の生活習慣の問題点が次々に追加されることによって、頭痛そのものが複雑なものになってき、一筋縄ではいかなくなってきます。このことは、これまで述べました。
このような生活習慣の問題点を是正しながら”適宜”服用するのが原則です。
これを是正しながら、日常生活を送ることになりますが、まだ頭痛が再発するようであれば、なお是正しきれていない生活習慣の問題点が残っていることを意味しています。
こうしたことから、さらに残された生活習慣の問題点を是正していく必要があります。
そして、どの鎮痛薬であれ、服用する際の原則は、痛みが出現すれば直ちに服用することです。我慢して、服用が遅れれば、その効果が得られなくなってしまいます。服用する以上は、頭痛の起こり始めの早期に服用しなくてはなりません。
そして、このような鎮痛薬の服用は”月10回以内”になるように努力・工夫しなくてはなりません。これ以上を何ヶ月も継続されますと、薬剤乱用頭痛を併発してくることになり、いくら服用されても鎮痛薬の効果が得られなくなり、極めて厄介な状況を作ってくることになりかねません。
これまで述べたような対処を徹底されれば、まず、鎮痛薬は必要はなくなるはずです。
このような日常的に感じる極く軽度の頭痛の段階であれば、その要因はそれ程複雑なものではないはずです。このように初期の段階で、慢性頭痛の”芽”を摘み取ってしまうことが極めて重要になってきます。
慢性頭痛治療で、このことが最も大切で・重要なことです。
このように、生活習慣の問題点を是正させることとの謂わば”競争”のようなものです。
頭痛治療は、こうした”薬剤乱用頭痛との戦い”ともいえるものです。
そうしませんと、市販の鎮痛薬→病院の鎮痛薬→エルゴタミン製剤→トリプタン製剤へと次第に強い鎮痛薬に変更せざるを得なくなり、最後のトリプタン製剤にまで行き着くことになり、最後のトリプタン製剤によって薬剤乱用頭痛に陥れば、もう服用する鎮痛薬はないことになり、一生、頭痛地獄の辛酸を舐めることになってしまいます。
このようになるまでの間に、生活習慣の問題点を是正しなくてはなりません。このような競争をしなくてはならないということです。これが、お薬を服用する際の原則です。
このことは、”予防薬”を服用する際にも当てはまり、まったく同じ考え方で服用する必要があります。
最近、市販の鎮痛薬も各種のものが新たに工夫が施されたものが多数開発されてきましたが、こうした新薬ほど、これまでになかったものであることから、私達の体にとっては、これらの薬剤は、つい最近まで人類の体内に入ることはなかった物質(異物)なので、体は”異物・毒”と理解してしまうのです。
そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程でも、活性酸素が発生してしまいます。
このようにして、ミトコンドリアを弱らせる結果となり、頭痛を増強させてくることになります。結果的に、薬剤乱用頭痛を併発させることになります。
トリプタン製剤
トリプタン製剤は、片頭痛を持つ”多くの”(すべてではありません)患者さんに対して、非常に効果があります。
トリプタン製剤を治療で使う場合、口から飲む経口薬(頓服)、シュッと鼻から吸収する鼻吸入タイプ、皮下注射という3つの方法があります。注射が最も効き目が早く、打って 10 分もすると頭痛が治まってきます。次に早いのが鼻吸入タイプで 15分ほど、頓服の場合は1時間ほどで効き目が現れます。
注射器タイプのトリプタンをいつも持っていて、痛くなったら自分で注射する患者さんもおられます。
片頭痛ではほとんどの場合、痛くなったときにすぐに飲むことができるよう、経口タイプの頓服を処方します。激しい頭痛で吐き気があり、口から飲むことが難しい場合などは、鼻吸入タイプのものを使うこともあります。
頓服は水で飲みますが、水がなくても口にいれると溶けるタイプのものもあります。
トリプタンという薬は現在、4つの製薬メーカーから5種類発売されており、レルパックス、アマージ、イミグラン、マクサルト、ゾーミッグが現在日本では使えます。
この5種類のトリプタンは、どれも片頭痛に効果がありますが、飲んで素早く効果の出るもの、効きめが長く持続するものなど、それぞれ少しずつ異なります。
そして、個々の患者さんとの相性や好みがあります。このなかで1種類だけ服用されて効かない場合、トリプタン製剤は効かないと即断せずに、別の種類を試してみて、自分に最もよく効くトリプタン製剤を見つけておくことは大切なことです。そうされませんと、いつ激しい頭痛に襲われるのかという不安をもつことになり、生きた心地がしません。
それと、同時に行うべき、「生活習慣の改善」に落ち着いて取り組めないことになります。
トリプタン製剤は、これは明らかに片頭痛である、という頭痛が起きたときに飲みます。
風邪をひいたときの頭痛に飲んでも効果はありません。必ず、片頭痛のときに服用します。またトリプタンも有効率 100%ではありませんので、体調などさまざまな状況によって、効かないときもあります。一度飲んで、2時間経ってもまだ痛みがあるか、酷くなっている場合には、もう一度飲むことができます。1日に飲んでも良いと言われている個数はトリプタンの種類によって異なり、2つまでのものと4つまでのものがあります。
ただし、頭痛が起きるかもしれない、と思って予防がてら毎日1錠ずつ何日か続けて飲む、というのは避けなければいけません。他の薬と同様、薬物乱用頭痛を起こすことになります。1カ月に6回以上激しい頭痛が起きてトリプタン製剤を飲むようであれば、主治医と相談して次に述べる”予防薬”を飲むべきでしょう。予防薬と併用することで頭痛の頻度が減り、トリプタン製剤の効き目も良くなります。しかし、片頭痛そのものが治ることはありません。
またトリプタン製剤にも副作用があります。服用してしばらくすると、胸の辺りが少しキュッと締め付けられるようになることがあります。これはトリプタン製剤の副作用で、患者さんの心電図などをすべて確認しても異常がないことがわかっており、全く安全なので心配ありません。5分か 10 分すると症状は消えます。
もう一つ注意が必要なのは、先述のように、トリプタン製剤服用のタイミングです。
服用のタイミングを間違えると、本来なら効く頭痛にも効かず、長い時間苦しむことになりかねません。
トリプタン製剤は、明らかに片頭痛だと思われる頭痛が始まったらすぐに服用するのが最も効果的です。日本人の場合、痛みにできるだけ耐えることを美徳とする傾向があり、痛みが始まってもなかなか鎮痛剤を飲まない患者さんも多いのですが、頭痛が酷くなってからでは、さすがのトリプタン製剤も効果が出ない場合があります。
トリプタン製剤は、「明らかな片頭痛の痛みが始まったら即座に」という最も効果的な正しい服用のタイミングを理解して戴き、患者さんは、我慢せずに、痛みが始まったらすぐに飲むこと。これが、患者さんの苦しみを減らし、決して安くないトリプタンという薬を有効に活用するためには、大切なことなのです。1錠、1,000円もする高価なおくすりですから・・・。
トリプタン製剤の作用機序
片頭痛はミトコンドリアの機能が低下するために起きる頭痛です。
ミトコンドリアの機能が低下すれば、同時にセロトニン神経系の機能は低下し、生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることによって発作が起きます。
片頭痛はミトコンドリアの機能が低下するために、片頭痛発症の根幹には「酸化ストレス・炎症体質」というものが形成され、このために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出されることによって、片頭痛発作に繋がっていきます。
このように片頭痛の発作には、血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から放出される”生理活性物質”であるセロトニンが鍵を握っています。すなわち、片頭痛にはこのセロトニンという物質が大きく関わっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。”ストレスなど何らかの理由”でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。このように作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
改めて、「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」
苦しい頭痛という痛みだけをトリプタン製剤で取り除いても、ミトコンドリアの働きの悪さは厳然として存在しており、その根底にある病態(「酸化ストレス・炎症体質」)は次第に増悪してくることになります。このことはこれまで述べたことです。
このため、自然と服用回数が増えてくることは避けることができません。このため、必然的に服用回数が増加して最終的には「トリプタン製剤による”薬剤乱用頭痛”」に至ります。このように片頭痛は悪化してきます。
現在のトリプタン製剤ですが、片頭痛の場合、効くひとには麻薬なみの絶大な効果を発揮するため、つい飲み過ぎに繋がってきます。トリプタン製剤は、大半は有効時間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤で、市販の鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤”とされていますので注意が必要です。
さらに、多くの片頭痛では、緊張型頭痛に重なった形にあるため、トリプタン製剤では、上層にある片頭痛は改善されても、下層にある緊張型頭痛の軽い頭痛までは完全に無くすことはできません。このため、ひたすら”完全に”痛みをとろうと考えることから、服用回数が増えてくることになります。このため薬剤乱用頭痛を作ることになります。
片頭痛の予防薬について
例えば1カ月に3回も4回も頭痛が起き、トリプタンを飲まなければならないというような頭痛頻度が高い患者さんには、トリプタンへの依存を防ぐためにも患者さんに適した予防薬を処方し、頭痛が起きるのを防いだり頻度を少なくする必要があります。
予防薬を飲んでおくと、たとえ頭痛が起きても軽くてすみ、またトリプタンの効果も上がるというメリットがあります。予防薬を飲むこと、そして頭痛が起きてしまったときにはトリプタンを飲むことで、実際かなりの頭痛を解消することができます。
予防薬にはいくつかの種類がありますが、患者さんの症状や効き方の違いに応じて最も適したものを処方します。
トリプタンは新しい薬ですが、予防薬として使用されているのは昔からある薬です。ただ、片頭痛の予防薬として効果があるということが見直されたのは比較的最近のことです。
予防薬の有効率
これらの予防薬の薬剤が、すべての患者さんに効くというわけではありません。予防治療の有効率は決して高いものではありません。
ほとんどの薬剤が、有効率は30~40%、すなわち10人中3~4人しか効きません。
しかし、個人差が激しいので、薬によって有効率は異なります。効かなかった場合には、他の薬に変えてまた、2~3カ月様子をみる、という気長な対応が必要です。
また、効果を確認できるまでの期間も短くないのです。
予防治療に使われるどの薬剤も、効果を発揮するまでには4週間くらいはかかります。
はじめの2週間くらいはまったく効かないのが普通です。3~4週めになっていくらか頭痛の回数が減っていると感じたら、効果があったと考えてよいでしょう。なかには、2カ月めになってやっと効果がはっきりしてくることもあります。
こういった理由から、多くの患者さんは、予防薬の効果が現れるまでの期間が長く、極めて緩やかな効き方しかしません。
確かに、数年間にわたって、1種類ずつ処方されておられる場合もあるようですが、このような方式は、あくまでも偉い先生方がされた場合のことで、じっと我慢して服用されておられる方々は少ないのではないでしょうか?
大半の方々は途中で治療を諦め、ひいては頭痛患者さんが医療機関を敬遠される元凶になっているものと思われます。
このような効き目しかないため、鹿児島の田村正年先生は予防薬の多剤併用療法を提唱され、最初から3,4種類の予防薬を同時に併用すべきとされます。
私は、予防薬がこのような効果しか得られない理由として、片頭痛の発症要因として何が考えられるのかを、まず想定すべきであり、この要因を中心として是正すべきと思っております。こういったことから、治療当初から「生活習慣の是正」が必要と考えています。
これまで、予防薬の効果が思わしくなかった理由として、治療当初からの「生活習慣の是正」が徹底して行われてこなかったことにあると思っております。
治療当初から「生活習慣の是正」が行われる限り、もっと予防薬の有効性を引き出すことが可能と考えております。
「片頭痛の発症要因として何が考えられるのかを、まず想定すべきであり、この要因を中心として是正すべきです。
以上のように、まず、頭痛という痛みにまず向き合う必要があります。痛みを抑制できなければ、生活習慣の問題点の改善・是正など論外ということです。
ただ、どの薬剤も、ずっと同じ様に効果が持続することはありません。いずれ効かなくなります。トリプタン製剤にしても全く同様です。却って効いている期間は短いのではないでしょうか。マゴマゴしておれば、すぐに効かなくなってしまいます。この短期間の間に、治してしまわなければ、安楽な老後の生活は保障されません。
このようにしてみれば、このような忽ちの鎮痛すらできない医師が、頭痛診療を行うべきではありません。以前、2年前頃ですか、Seed さんは、この第一歩となる鎮痛すらできない医師に係っておられたようですが、私には信じられない思いがしていました。
逆に、鎮痛だけで安閑としていてもダメということです。いずれツケがきます。
頭痛を治すために、鎮痛と生活習慣の問題点の改善の両方、同時に必要であるということです。せっかく、片頭痛にトリプタンという強力な鎮痛薬が提供されているのですから、これを有効に使わせてもらわなくてはなりません。
ここでコマーシャルです
頭痛が気になったら・・
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