第6回 頭痛講座
生活リズムの重要性
生活リズムが乱れてしまうと私たちのカラダの体内リズムまで乱れてしまい、心身の健康にさまざまな影響を及ぼしてしまいます。
例えば昼夜が逆転するような生活リズムの乱れた生活をしている人は体内リズムも乱れている可能性があります。
生体リズムとは
動物、植物そして微生物など、すべての生物が持っている生命現象の周期的な変化を、「生物リズム」あるいは「生体リズム」といいます。
生物は、固体の生存、種の保存、繁栄にとって最適な、空間構造(形態と生活空間)と同時に、時間構造を選択しています。これが生体リズムの本質であり、一定の時間間隔で生命現象、行動が繰り返されます。
現在、人の体内では300以上のリズムが証明されています。身体の細胞自身にリズムが与えられ、それらの集合による組織としてのリズムが生まれます。これが、脳、心臓、肺などの各臓器にもリズムとして伝わります。こうして人は、持てる機能を最大限に発揮しながら、生活しているのです。
生体リズムを刻むための「体内に備わっている時計」、すなわち「生物時計」は、1972年にアメリカの科学者らによって発見されました。研究者らは、ラットの左右の視神経が交叉(差)する部位(視交叉上核suprachiasmatic nucleus:SCN)に、この生物時計があることを証明したのです。
その後、人でも同じ部位に、生物時計の中枢がある事が明らかにされ、その詳細な機能が解明されつつあります。
現在では、生物時計を制御しているのは「時計遺伝子」とよばれる遺伝子であり、これが時計たんぱくと呼ばれる物質の生合成を介して、体内リズムを調整している事が分かっています。
加齢による生体リズムの変化
しかし、加齢によって生体リズムが大きく変化することが分かってきました。最も大きく変化するのはサーカディアンリズムとされ、その振幅が低下してきます。つまり、1日のうちでの体調や身体機能の上下幅が小さくなるのです。元々のサーカディアンリズムの周期が、地球の自転の24時間に近いほど、寿命は長くなるとされています。
また、食事のリズムの変化も、加齢や老化の調節要因であると考えらえています。すなわち加齢によって食事のリズムが乱れると、加齢が加速するということです。
生体リズムの変化は加齢に伴って起こるものですが、一方で、生体リズムの変化がさらに加齢を加速する要因にもなっている、ということなのです。
年を取るに連れて、の生体リズムにはどのような変化があるのでしょうか。まずは、前述したように、サーカディアンリズムが変化します。その結果、朝早くに目が覚め、夕方になると眠くなるという人が増えることが特徴です。また、海外旅行などへ出かけた際に「時差ボケ」の程度が大きくなるのも、高齢者の生体リズムの大きな特徴となります。
生体リズムと病気の関連
"西洋医学の父"と称されるヒポクラテスは、今から約2400年前に「規則性は健康の兆候であり、不規則な身体機能や不規則な習慣は不健康状態をつのらせる」と述べ、健康の維持に生体リズムが重要であることを指摘していました。現在のような西洋医学が発展するずっと以前から、生体リズムと健康の関連性は重要視されていたのです。
体内時計と生体リズム
上記のように、体内時計や生体リズムという言葉が一般に使用されるようになってきました。
最近の研究から、体内時計は体中にあることが知られています。その中で全体の体内時計を司っているのが視床下部の視交叉上核にある体内時計です。
体内時計を元に、身体のなかではさまざまなリズム、つまり生体リズムが刻まれています。睡眠と覚醒のリズム、体温のリズム、行動のリズム、ホルモン分泌のリズムなどです。
睡眠と覚醒のリズムは、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌と深く関連しています。メラトニンとは、日中に光を浴びることで作られ、夜になって暗くなると分泌を始めます。朝強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、夜暗くなると再び自然にメラトニンが分泌されて眠気を促し睡眠と覚醒のリズムが作られます。
このように、生体リズムを保つには睡眠が極めて重要になっています。
体内時計とは、私達自身の体、臓器や器官がそれぞれ持っている時計で、地球の自転(24時間)とは1時間ずれ、体内時計は1日25時間と言われています。この時間を調整し、地球の自転とあわせてくれているのが朝日なのです。ですから、放っておくとリズムが崩れ、生活リズムが乱れていきます。そのリズムを元に戻してくれるのが朝日なのです。
また、太陽の光は、視床下部の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニンやメラトニンというホルモンを作ってくれます。
この二つのホルモンは、ミトコンドリアの天敵「活性酸素」を除去する働きがあります。 メラトニンは睡眠ホルモンとして、セロトニンは心を鍛え、バランスを整えるホルモンとして有名ですが、この二つとも、ミトコンドリアにとって天敵の活性酸素を除去する働きがあります。
活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがあるので、ミトコンドリアだけでなく体にとっても天敵で、片頭痛の原因でもあるのです。
朝日を浴びることは、この活性酸素を減らすホルモンを出す効果もあるのです。
前回述べましたように、健康的な生活とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。
この生体のリズムは「ホメオスターシス」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御されています。
生体リズムは”不規則な生活”で乱れる
多くの人は朝起床し、夜就寝します。これには、人間は体温が低いと眠りやすく、高いと眠りにくい特性があり、日中は体温が高く、夜低くなるというリズムが影響しています。
このようなリズムは生体リズム(サーカディアンリズム、概日リズム)と呼ばれ、私たちの体にある体内時計により作られています。
夜勤や日勤の交代勤務や、午前3時、4時に就寝するような超夜型生活などで不規則な睡眠時間が続くと、生体リズムに乱れが生じ、眠りの質が悪化してしまい睡眠不足をまねくことになります。
また、睡眠を安定させるメラトニンというホルモンがありますが、生体リズムが正常であれば、暗くなって就寝時間の1~2時間前には周期的に分泌されますが、生体リズムが崩れていると、このホルモンの分泌も不安定になります。
生体リズムは生活環境により崩れやすく、その崩れは睡眠に大きな影響を与えます。
体内リズムが乱れる原因は何?
主に、不適切な光環境によって体内リズムは乱れてしまいます。
体内時計の“時刻合わせ”をする、最も影響力の大きな因子は光なので、夜遅くまで起きてずっと明るい環境に身をおいていたり、朝遅い時間まで寝て太陽の光を浴びる時間が遅れてしまったりすると時刻合わせが出来ずに体内リズムは乱れてしまうのです。
朝に太陽が出ても、光を通さない遮光カーテン1枚で部屋の中に“夜”を作り出すことが簡単に出来ます。
また、24時間動いている現代社会では夜間も昼のように明るい環境を作り出すことが可能です。このような環境で昼夜が逆転するような生活をしている人は、体内リズムが乱れている可能性があります。
朝食抜きでもリズムが乱れる
昼・夜といった外の環境と体内リズムを調整する作用をもつものは「同調因子」と呼ばれ、一番強い同調因子は光の刺激とされていますが、食事も同調因子の一つであると考えられています。
視床下部の視交叉上核にある体内時計は「主時計」とも呼ばれ、朝浴びる太陽の光によって調整され、そこから体全体のリズムを整えていきます。心臓や肝臓、腎臓など、あらゆる臓器にも固有の時計「末梢時計」が備わっており、これらを効率よくリセットするには食事、特に栄養バランスの整った朝食の刺激が良いといわれています。
朝日を浴び、朝食をとり、1日の活動をスタート……というリズムが体の調子を整えているからこそ、朝食抜きといった生活リズムの乱れが眠りの問題、ひいては心と身体の健康状態を左右することになります。
寝だめによる体内リズムの乱れ
ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)とは?
平日は仕事に追われ、休日になったらたまった疲れをとるために昏々と寝続ける。十分眠ったはずなのに月曜日がだるい、このようなことを経験したことはないでしょうか?実はこの寝だめというのも体内リズムの乱れを引き起こすことが分かってきました。平日の疲れを癒すためにある程度遅起きすることはOKですが、寝過ぎはNGです。ポイントとなるのは朝日を浴びるタイミングです。
ここでは寝だめによる体内リズムの乱れについて考えていきます。
ソーシャル・ジェットラグ
実は私たちの身近にも体内リズムの乱れを引き起こす場面があります。
平日の朝は目覚まし時計で決まった時刻に起きるけれど、休日は朝寝坊。十分に寝たはずなのに、月曜日がだるい、こんなことを感じたことはありませんか?
社会的制約(仕事、学校、家事など)がある平日の睡眠と、生物時計と一致した制約のない休日の睡眠との差によって引き起こされる、“平日と休日の就寝・起床リズムのズレ”を、学術的には「ソーシャル・ジェットラグ」と呼びます。2006年、ドイツの時間生物学者、Till Roenneberg教授が提唱した新しい概念です。
ソーシャル・ジェットラグはまさに、現代型の睡眠の問題を引き起こす典型的な要因といえるでしょう。朝寝坊した休日には、太陽の光の刺激を受けるタイミングが遅れてしまい、休日に東南アジアに旅行にいったように私たちの体内時計は勘違いしてしまいます。 このような“時差”によってメラトニンをはじめとした体内リズムも乱れ、日中眠くなったり、眠りたい時間に眠れなくなってしまうのです。
すぐに戻らないソーシャル・ジェットラグ
休日の2日間朝寝坊しただけで、体内時計が30~45分遅れてしまうことが、複数の試験で確認されています。
しかも、1度ずれてしまったリズムをもとに戻すのは容易なことではありません。週明けの前半まで眠気や日中の疲労感を引きずってしまうという報告もあります。
深夜のスマートフォンが体内時計を狂わせる!?
体内時計は、数億年前に地球上に誕生した生物が一番初めに獲得した「生きるために必要な体の仕組み」と考えられています。植物は太陽が昇る時間に合わせて効率よく光合成を行うため、小動物や昆虫は外敵の少ない夜間に行動して身を守るために太陽光を利用した体内時計をもっています。
人間もまた太陽の動きに伴って生体リズムを刻んでいますが、その周期は地球の自転より少し長いことが分かっています。なぜ時間がずれているのか、その理由はまだ解明されてはいませんが、長い歳月をかけて少しずつ遅くなっている地球の自転に適応し、生体リズムを保持するために体そのものが変化したのではないかと考えられています。
その結果、活動開始の時間帯に光を浴びると体内時計の針は前に進み、休息開始の時間帯に光を浴びると後退するという仕組みが出来上がりました。このため、朝起きてしっかり光を浴びると体内時計は24時間にリセットされます。
反対に、夜にスマートフォンやパソコンなどのブルーライトに代表される強い光を浴びると26時間周期にずれてしまうなど、生体リズムが乱れる要因となるのです。
生体リズムの乱れが不調を引き起こす
生体リズムが乱れると、なぜ体に不調が起こるのでしょうか。その大きな理由は、体内時計の持つ体への役割にあります。
体内時計には、脳にある「親時計」と全身の隅々の細胞にある「子時計」の2種類があります。親時計と子時計は自律神経やホルモンを介在して連動し、次のような作用をもたらしていると考えられています。
自律神経のバランスを調整する
ホルモンの分泌を調節する
免疫力を高める
それぞれの体内時計の細胞の中には「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子が複数存在し、互いに作用して正確にリズムを刻んでいます。
ところが不規則な生活が続いたりすると、時計遺伝子に異変が生じ、体内時計を狂わせてしまうことになります。食欲を抑えるホルモンや食欲を促すホルモンの濃度に異常が生じることから、メタボリックシンドロームや糖尿病といった生活習慣病、がん、アルツハイマー型認知症などの病気のリスクが高まっていくことになるのです。
また、血圧や血糖値にもサーカディアンリズムがあり、それぞれ昼間は高くなり、夜は低くなります。しかし体内時計が乱れると夜でも血圧が高くなったり、夜眠れないことでホルモンバランスが乱れて血糖値を上げてしまったりすることもあります。
さらに不眠は自律神経やホルモンに作用して食欲を増進させ、体重を増やす要因にもなるので注意が必要です。
睡眠の重要性
昔から、健康の条件として「快食、快眠、快便」という言葉があります。つまり、美味しく食べられて、ぐっすり眠れて、よい便が出ることが健康ということです。中でも、睡眠は健康の大きな指標で、一日の疲れを取り、次の日の必要なエネルギーを蓄積する重要な時間でもあり、一日の約1/3の時間を占めています。睡眠には個人差が大きく、ナポレオンが3時間しか眠らなかったという逸話が有名ですが、それほどではないにしても、短い睡眠時間でぐっすり眠る人と、8時間以上眠らないとだめな人といろいろあります。また、加齢とともに眠りが浅くなったり、朝早く目が覚めたりすることはよく知られています。
「忙しい」「時間がない」というとき、私たちはつい「睡眠」を後回しにしてしまいがちです。また、「寝る時間がむだに思えてもったいない」とばかりに、仕事や趣味に熱中している人も少なくありません。夜遅くまで残業をしたり、パソコンやスマホでゲームやインターネットなどに夢中になって、いざ布団に入っても脳が興奮状態で眠れないという人も増えています。
本来、睡眠は脳を休めてストレスを緩和する最大の癒やし。体の疲れは横になればある程度とれますが、脳が休むためには睡眠が必要です。よくいろいろなストレス解消法が紹介されていますが、ストレス解消のいちばんの基本は睡眠です。良質の睡眠をしっかりとっていれば、少々のストレスがあっても、心も体も健康が保てます。それほど睡眠は大切なのです。日常の中でもっと睡眠の大切さを見直したいものです。
スペイン、イタリア、南フランスなどでは「シエスタ」という昼寝の習慣があることが知られています。家に帰って昼食をとったあとに2~3時間、たっぷり昼寝をしてから夜遅くまで活動します。
最近は日本でも昼寝の効用が見直され、町なかに「昼寝サロン」ができたり、小学校では給食後15分間の仮眠をとって、午後の授業の集中力をアップさせようというところも登場しているようです。
しかし、働きすぎといわれる日本人にとって、仕事中の昼寝というとまだまだ「さぼり」「怠け」といったイメージが強く、だれもが肯定的にとらえるようになるには時間がかかるのかもしれません。いずれにしても、もっと睡眠の大切さを知り、眠りに対してこだわりをもって生活したいものです。
睡眠は脳の疲労を回復する栄養剤
太古から人類は、日の出とともに狩猟や農耕に精を出し、日が沈むとともに体を休め眠りにつく一日を過ごしていました。睡眠とは、重力に逆らい二本足で昼間活動していた人類が、疲れを取るために横になって眠る時間です。重力の影響は大きいので、横になって体を休め、その影響を解除しないと骨髄の造血機能が働きません。骨休めという言葉の意味でもあります。
眠っている間は副交感神経が優位になり、成長ホルモンが最も多く分泌され、細胞の成長や修復を行ったり、脂肪を分解させたり、病気をもたらすウィルスなどの体内への侵入防ぐ免疫力も高めたりします。
また、睡眠は体ばかりでなく、何よりも脳の疲労を回復させてくれます、長い時間運動を続けていると、筋肉に疲労物質が貯まって、充分な力が発揮できなくなるように、脳でも同様のことが起こります。脳は働く時間と量に比例して、睡眠促進物質プロスタグランディンやサイトカイン、神経ペプチドなどが貯まってきてしまいます。
睡眠促進物質が増えすぎると脳が壊れてしまうので、睡眠促進物質の生産を止め、これを分解するために、脳の働きを止めて眠る必要があるのです。そのため大脳が疲れてくると自然に眠くなり、眠ることによって脳の疲労を回復して定期的なメンテナンスを行っています。
嫌なこと、辛いことを眠って忘れると言うように睡眠中には心の修復、記憶(情報)の整理までもが行われています。
記憶が整理され、定着するのは、深い睡眠中です。このため、睡眠時間を削ってまで、勉強をすることは極めて効率が悪く、学習機能は向上することはありません。寝る子の方が成績のよいことは、海外の最新の睡眠研究で明らかにされています。
睡眠中に分泌されるホルモンの役割
夜、眠りについてから朝起きて活動を始めるまでに、体の中ではさまざまなホルモンが分泌され、大切な働きをしています。
ノンレム睡眠中には、新陳代謝を活発にする成長ホルモンや免疫細胞同士の情報伝達の役割をするサイトカインなどが活発に分泌され、病原菌に対する抵抗力が強化されたりします。成長ホルモンは22時頃から活発になり2~3時頃にピークを迎えます。「寝る子は育つというように」、睡眠の深い子供程たくさん分泌され、子供の成長に重要なホルモンですが、大人にとっても体の修復に欠かせません。タンパク質や骨などを合成する働きの促進、疲労回復、リンパ球の働きを活発にさせて傷の修復、お酒を飲んで代謝に使われた肝臓細胞の再生など、細胞を活性化させ、体全体のダメージを回復するホルモンです。
女性にとってもこの4時間は、お肌のゴールデンタイムといわれ、肌の生まれ変わりが最も活発になり、熟睡によって皮膚の新陳代謝が促進され、肌が瑞々しく、艶々していきます。
このように、成長ホルモンは、傷ついた細胞を修復したり、新陳代謝を促し老化防止するなどミトコンドリアを守ってくれます。
レム睡眠中には、生命維持に不可欠なホルモン、コルチゾールが分泌され、睡眠中のエネルギー供給のために脂肪を燃やしたり、肝臓にあるグリコーゲンをブドウ糖に分解して血糖値を高めてすぐに活動できるようにします。
不規則な就寝時間や浅い睡眠は、ホルモンの分泌時間や量を乱し働きを低下させた体温調節ができなくなります。ホルモンや免疫から考えると、遅くても午前0時には入眠するのが望ましいでしょう。
それでは、なぜ十分な睡眠が必要なのでしょうか?
活性酸素等で傷ついた組織(ミトコンドリア)の修復は寝ている間に行われるため、修復には睡眠が不可欠です。もし傷が大きければそれだけ長い睡眠が必要になります。
そうなのです、必要とされる睡眠時間は状況によって大きく変わるのです。例えば1 日中テレビを見たり本を読んで過ごした日は6 時間の睡眠でいいかもしれませんが、殴り合いのケンカで死にそうになった日は15 時間でも足りないかもしれません。
起きている間の活動で細胞が傷つき、寝ている間にそれを修復します。しかし前述したように完全には修復できないため徐々に傷が蓄積し、それが致命的な状態にまで達したときお迎えが来るわけです。つまり起きている間にできる傷が大きいほど睡眠時間は長くなって寿命は縮むのです。
それではミトコンドリアに傷をつける原因は何でしょうか。それは生活習慣に問題があったり過大なストレスに晒されていることが考えられます。睡眠時間が長いと感じる人は生活習慣に問題がないか、ストレスを貯めていないか、よく考えてみてください。それらを改善することで睡眠時間は縮むかもしれません。
スポーツをやっている人も多くの酸素を消費するため睡眠時間が長い傾向にあります。
スポーツマンに早死にする人が多いのもこれと関係があるようです。
このように、生活習慣に問題があるとか、ストレスを貯めているために、結果的に、睡眠時間が長くなって、早死にするということのようです。
それでは、片頭痛の場合は・・寝過ぎはなぜ悪い???
片頭痛の場合、特に子供の場合、片頭痛の発作を起こした際に、一眠りした後に頭痛が軽快することはよく経験されます。これは、寝ている間に、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアが修復されることによって、頭痛が軽快したものと思われます。
大人の場合、生活習慣に問題があるとか、ストレスを貯めているために活性酸素等で傷ついたミトコンドリアを修復させるために、自然と睡眠時間が長くなりますが、過大なストレスに晒されている状態が持続していれば、傷ついたミトコンドリアは、長時間睡眠をとったにも関わらず、完全には修復されないため、頭痛が起きやすい条件が残ることになり、朝食を抜いて寝ていれば、低血糖・脱水などの要因が加わり起床後に頭痛に見舞われることになります。
こうしたことから、寝過ぎによる片頭痛発作をなくすためには、日頃から「生活習慣の問題点を是正」し、「ストレスを貯めないための対策」が必要となってきます。
このため寝不足は”論外”ということになります。
以上、睡眠は、片頭痛治療上、極めて大切であるかが理解して頂けたかと思います。
しかし、問題は職業柄夜勤だけの場合です。ガードマン、夜警などの方々は、このような考え方では睡眠がとれません。このため、このような方々の慢性頭痛のコントロールには難渋していることは事実です。こうしたことは、睡眠が十分に確保できないとどのようになるかを証明していると言えます。
経験的に、睡眠時間の問題が解決しなければ、いかなる手段を用いようとも、慢性頭痛を改善させることは不可能といえる程、重要な位置を占めております。
慢性頭痛に「不眠」があれば、その不眠の原因・背景を探ることを出発点にすることが大切になってきます。ここから、慢性頭痛の発症要因を探る手がかりになることもあります。
このように睡眠は、ミトコンドリアを元気にさせるために絶対的に必要なものです。
こうしたことから、十分な睡眠は慢性頭痛を改善・コントロールしていくためには必須の生活習慣であることを忘れてはなりません。
眠れない・起きられないも体内リズムの乱れが影響?
睡眠は、就寝時に向けて分泌されるメラトニンと起床時に向けて分泌されるセロトニン、オレキシンというホルモンでリズムを形成しており、メラトニンは、眠気を誘う「睡眠ホルモン」と言われています。このメラトニンのリズムを刻む起点となるのが、朝の体内時計のリセット。太陽の光を浴び、体内時計がリセットされてから15~16時間後にメラトニンが分泌され眠気が生じるように体はできています。
朝にうまくリセットが行われないと、夜間のメラトニンの分泌が遅れたり、分泌が不十分になったりするのです。
逆に夜間に強い光を浴びると、体は「朝が来た」と勘違いしていまい、メラトニンの分泌のリズムに乱れが生じます。
このように、昼夜の明暗の刺激が正しいサイクルで行われず体内時計がズレが生じると、メラトニンの分泌リズムも乱れ、眠れない、起きるのがつらい、といった問題が発生します。
良い睡眠は体内リズムから
良い睡眠とは時間の長さだけでなく、熟睡の度合い、つまり質も重要です。
そのためには、睡眠と起床リズムを整え体内時計を毎日リセットする環境作りを心がけましょう。
なぜ睡眠が大切なの?
現代社会ではとにかく睡眠不足になりがちです。
よく眠ることは、疲労を回復するうえで不可欠です。睡眠を十分にとらないでいると、脳の機能が低下してストレスに弱くなり、また集中力がなくなって日常生活にも支障が生じてしまいます。
そもそも睡眠は1日フル回転で働いてくれた脳を、ゆっくり休ませるために必要な行為です。
したがって、睡眠時間を極端に少なくすると脳の働きが乱れてしまい、自律神経やホルモンのバランスも乱れ、心身に不調をきたします。もともとストレスと戦うためのホルモン(副腎皮質ホルモン)は、朝に最も多く分泌され、昼間から夜にかけて次第に少なくなり、深夜には最低になります。
このような生体リズムを考えると、夜遅くまで起きていることは、自らストレスに弱い体を作っているようなものです。
質のいい睡眠とは?
睡眠の質は、時間よりも深さで決まるといわれます。睡眠の深さは普通4段階に分けられます。
このうち段階1はレム睡眠、2、3、4はノンレム睡眠と分類され、1回の眠りの中でその深さは周期的に変化します。
私たちは約90分周期でこのレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返し、1つの睡眠を作り上げています。
眠りの総量は、この眠りの深さと時間によって決まるといわれ、多少睡眠時間が短くても、眠りが深ければ「たっぷり眠った」ことになるのです。
一度の睡眠中に深い眠りが規則的に訪れるのが質の良い眠りです。
大切なのは生体リズム
睡眠と覚醒は、体の中にある生体リズムによってコントロールされています。生体リズムの異常は不眠の原因になり、レム睡眠とノンレム睡眠の周期にも生体リズムが関与していることが分かってきています。
つまり、睡眠の質を左右するのは、生体リズムなのです。
★生体リズムを整える5つのポイント
1.休日は寝すぎない
平日には起床・就寝時間を守ることができても、休日はつい寝すぎてしまうことがあります。
休日に生活リズムの乱れがあると、休日明けの出勤日にすっきり目覚めることができず、疲れを招くこともあります。休日も平日と同じ起床・就寝時間を守りましょう。
寝不足になっても、起床時間だけは、一定にすることが大切です。
2.満腹の状態で寝ない
朝食や昼食は毎日だいたい同じ時間にとっていても、夕食は残業などで時間がまちまちになってしまうことがあります。
しかし、深夜に急いで夕食を食べ、満腹のまま寝てしまうと、質のよい睡眠を得られなくなってしまいます。
3.寝る前のカフェイン、アルコールは控える
カフェインは覚せい作用が強いため、よく眠れない人は夜遅くの飲用は控えたほうが良いでしょう。また、アルコールを「寝酒」として利用している方もいますが、アルコールを飲むと寝つきはよくなりますが、その一方で眠りを浅くしてしまい、翌日疲れやすくなります。
4.太陽の光を浴びる
電気を消して部屋を真っ暗にすると眠気が訪れるのは、睡眠ホルモンともいわれる「メラトニン」が分泌されるためです。
このホルモンの分泌は光と関係しているため、暗くなると分泌が高まりますが、逆に明るくなると分泌が抑えられます。
朝すっきり目覚めるためには、まずカーテンを開け、太陽の光を全身に浴びて眠気を解消することが大切です。
5.朝食を取る
朝食は体にエネルギーを与え、活動モードに切り替えるために必要なものです。
特に、朝はすぐにエネルギーに変換されるパンやご飯などの炭水化物と、糖分をたっぷり含む果物をエネルギー補給のために取りましょう。
最後に
頭痛診療をこれまで行ってきて、一番経験されたことは、高校受験や大学受験を目指して、それまで十分に取っていた睡眠時間を削ってまで、受験勉強に当て、これを契機として片頭痛を発症されるひとが、如何に多く診られたことです。
そして、未だに忘れられないことは、このような中高生に対して、睡眠を十分にとる方が、記憶も良くなるから、と指導した際に、「そんなことを言うから、先生は、こんな片田舎で医者をしているんだ、反省するのは先生の方だ・・」と聞き入れて貰えなかったことです。
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頭痛が気になったら・・
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