最近では、このような略号ばかりで何のことやらさっぱり解りません。
今回のCGRPとは、前回の「片頭痛における”痛み”の発生機序」のなかで出てきました。
片頭痛における”痛み”の発生機序
「片頭痛体質(酸化ストレス・炎症体質)」を基盤として、ちょっとしたことで(ストレスなど何らかの理由で)「活性酸素」や「遊離脂肪酸」が過剰に発生することによって、血小板凝集が起きて、血小板から血管外へセロトニンが放出され、血管を収縮させます。
その後、役割を果たしたセロトニンは減少しやがては枯渇し、今度は逆に血管は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きます。さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が放出され、血管を刺激して痛みが出てきます。この二つによって、片頭痛が起きてきます。
CGRPとは、calcitonin gene-related peptide、略:CGRP 日本語に訳せば、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことを意味しています。
片頭痛では三叉神経末端が刺激されてそこからカルシトニン遺伝子関連ペプチドが分泌され、血管拡張を誘発して片頭痛が起こるとされています。
このようにカルシトニン遺伝子関連ペプチドは強力な血管拡張作用を有することから頭痛を誘発してきます。
このため片頭痛急性期治療にカルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体の拮抗薬が有効ではないかとする研究が進んでいます。
カルシトニン遺伝子関連ペプチドは受容体を介して細胞内cAMPを上昇させ、血管拡張、心拍数減少および心筋収縮力増大を起こしたりします。
炎症にも関連し、軸索反射により放出されると紅斑(フレア)が出ます。鍼灸ではこの作用を利用し、体質改善を促進したりしています。
片頭痛とカルシトニン遺伝子関連ペプチド
ストレスや体調不良など、何らかの刺激が原因で頭蓋血管周囲の誘因による刺激で三叉神経からサブスタンスPやカルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide:CGRP)などの神経伝達物質が過剰に分泌されます。このCGRPは血管に働きかけ血管を拡張させることによって血管の透過性が亢進し、血管の周囲に炎症が起こります。これが三叉神経を経て脳に痛みとして伝達され、片頭痛がおこる、という仮説です。
その病態には、セロトニン、ノルアドレナリン、一酸化窒素等、様々な生体内物質が関与する可能性が考えられています。中でも、セロトニンについては、片頭痛発作中のセロトニンの減少、発作後の尿中セロトニン代謝物の増加、セロトニンを減少させるレセルピンの投与による片頭痛様発作の誘発等が報告され、片頭痛発作に深く関わっていることが確認されています。
セロトニンによる片頭痛発作誘発の機序については、血小板等からセロトニンが過剰に放出されて脳血管が収縮し、放出されたセロトニンがMAO-Aによって代謝されて枯渇すると、今度は血管の拡張が起こり、頭痛が発現するとの説がよく知られています(血管説)。
また、最近では、先程の、三叉神経終末からCGRP、サブスタンスP等の神経ペプチドが遊離され、これらによって血管壁の透過性亢進、肥満細胞の脱顆粒等が起こり、局所の血管周囲の炎症から頭痛に至るとの説も有力となっています(三叉神経血管説)。
セロトニンは血管に作用するだけではなく、三叉神経からのカルシトニン遺伝子関連ペプチドの遊離を引き起こすことも報告されており、これに対しては、5-HT1B、5-HT1Dとともに、5-HTF受容体が関与する可能性が指摘されています。スマトリプタンは、5-HT1B、5-HT1Dとともに、5-HTF受容体に対してもほぼ同等の親和性を示すことが試験管内の実験により報告されており、新たな作用点として注目されています。
片頭痛は脈打つような激しい頭痛が何時間も続いて繰り返すことが特徴ですが、その主な原因は、脳神経の三叉神経から過剰に放出される「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」というペプチドであることがわかってきました。ペプチドとは、アミノ酸が2個以上つながったもので、神経伝達、抗菌、ホルモン作用などさまざまな生理活性作用をもっています。CGRPは32個のアミノ酸が連なっています。
片頭痛の主な原因は、先に述べたようにCGRPの過剰放出ですが、トリプタンにはこれを抑制する作用があり、服用すると約30分で効果が現れます。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)について
37個のアミノ酸からなるペプチドで、血管の拡張に関係し、血管の平滑筋細胞に作用して、血圧を下げる作用があることが知られています。また、三叉神経節や脳血管周囲に広範に分布しており、脳の血管を拡張することから、片頭痛の原因の1つと考えられています。片頭痛時に血液中にCGRP値が高くなり、治療で正常化することが確かめられています。
CGRPという名前は20数年前、CGRPを産生する肺がん(ホルモン産生腫瘍の1つ)があることから知られました。同じ塩基配列から2つの異なる遺伝子が生じることがあります。選択的スプライシングalternative splicingという遺伝子を構成するエクソンがスプライシングの違いから異なる組み合わせを生じ、2つのメッセンジャーRNAが出来るという現象です。カルシトニンは甲状腺から分泌されるペプチドで、骨からカルシウムの濃度調整を行っています。CGRPはカルシトニンと選択的スプライシングの結果、生じる遺伝子です。しかし、CGRPの作用はカルシトニン同様骨の吸収に関連しているという理解でした。
CGRPが最近注目されたのは、降圧作用、頭痛の原因だけではなく、抗酸化作用を持つことからです。すなわち、CGRPには酸化ストレスを抑える作用があると考えられています。イソフラボンやカプサイシンなどがCGRPの産生を刺激し、分泌を促進するのが、抗酸化に働くのではないかとの報告があります。
CGRPを標的にした新しい片頭痛治療薬
2001年に片頭痛の治療薬にトリプタンが出てから、つらい痛みのコントロールが可能となり、患者さんにとって大きな福音になりました。
トリプタンは①セロトニン受容体を介して拡張した血管を収縮させる、②炎症を引き起こし、血管拡張作用もあるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経伝達物質の働きを抑えることで頭痛を直します。
しかし、トリプタンは副作用としてのどや胸の圧迫感、締め付け感、息苦しさなどがでることがあります。また血管収縮作用があるために、心筋梗塞、脳梗塞などの既往のある患者さんは服用を控えなければならず、万能とは言えません。
神経伝達物質のCGRPは頭部の痛みを伝える三叉神経に豊富にあり、何らかの原因で三叉神経が刺激されると神経末端から放出されて片頭痛発作を引き起こす、最も大きな薬理作用があるペプチドと報告されています。近年このCGRPの働きそのものを阻止する薬の開発が進められてきました。
ウイルスなどの異物が体内に侵入すると免疫の働きでそれを排除するためのたんぱく質が体内で生成されます。これが抗体です。新薬はCGRPにだけ作用する抗体や、CGRPが作用する受容体をブロックする抗体を最新技術で作成し、これを投与することにより、片頭痛発作を抑えるというものです。
治験(製造販売のため承認を得るための臨床試験)では充分良好な結果が得られているようですので、安全性などが確認されれば近い将来には使用できるようになるでしょう。トリプタンが副作用などで使えない、または効果が不十分な患者さんにも期待できそうです。
これまで、当ブログでもかなり前から、このCGRPに関連した新薬についての記事を掲載してきました。その詳細は以下の記事をご覧下さい。
関連記事
現在、開発中の新薬・・・CGRP
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11946296982.html
二次性頭痛(その他) 13 カルシトニン遺伝子関連ペプチド
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11982128399.html
CGRP関連抗体による片頭痛の新規治療 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/60/10/60_cn-001469/_html/-char/ja
新薬相次ぐ片頭痛、米国の市場は向こう10年で年平均10%以上拡大
https://dresources.jp/archives/8036
ここでコマーシャルです。
頭痛が気になったら・・
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12638708200.html