新説”片頭痛の発生メカニズム” | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 コロナ騒動のため自粛生活を強いられ、さぞストレスフルに陥っておられることとお察し申し上げます。私は、持病のためコロナ感染でもしようものなら、恐らく急死することは免れないようで、日々、戦々恐々として毎日を過ごしております。
 このような状況に置かれていることから、いつこの世ともオサラバするかも、と懸念して、これまで外来患者さんの指導用に作成していた説明書を再点検し、おかしな部分は訂正するように努めて参りました。
 こういった作業を進めているなかで、先日、ネット上で、新たな”片頭痛の発生メカニズム”に関する論説に偶然、遭遇しました。それは、以下のようなものです。


 ”片頭痛が発生するメカニズムはまだ十分に解明されていませんが、現在の所、三叉神経―血管説が有力です。片頭痛は何らかの原因で脳の血管が拡張し、その拍動にともない血管周囲を取り巻く知覚神経である三叉神経が刺激されて、頭がズキンズキンと割れるように痛むことが分かっています”。
 このような片頭痛は天候や睡眠の変化、体内ホルモンの変動、ストレスからの解放など心身のリズムが崩れたときに、起きやすくなりますが、この働きに重要な役割を果たしているのがセロトニンという物質です。実際、片頭痛の早期、予兆の時期には、尿中のセロトニン代謝産物は急速に増加し、片頭痛が始まると、逆に低下します。


 脳内のセロトニンは大脳深部の中脳で産生され、近接した視床下部により、セロトニンの分泌が調節されています。視床下部はまたセロトニンばかりでなく、自律神経や睡眠と覚醒、情緒、女性ホルモンなどのホルモン調節に深く関与し、また満腹・空腹の中枢でもあります。人の感ずるほとんどすべての感覚は大脳深部の脳の視床に向かい、その情報は直下の視床下部に送られます。


 片頭痛を持つ人は、環境のちょっとした変化や心身のリズムの変化、ホルモン異常などに対して視床下部が敏感に反応する体質が遺伝的に受け継がれているといわれています。 この興奮した視床下部からの刺激を受けて中脳からセロトニンが大量に放出され、やがて脳内のセロトニンが枯渇してしまいます。また視床下部のストレス中枢は興奮すると、脳幹にあるセロトニン神経を直接抑制し脳のセロトニン分泌を落としてしまいます。ストレス状態はセロトニン欠乏脳を生みます。


 このようなセロトニンは知覚神経である三叉神経をコントロールし、また三叉神経終末にはCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が存在していることは古くから知られていました。このCGRPは血管の受容体を介して血管を拡張させるとともに炎症を起こすことが知られています。


 セロトニンの減少により、三叉神経はセロトニンのコントロールから解き放たれ勝手に興奮し始めます。興奮した三叉神経は脳血管に向けてCGRPを放出し、脳血管を拡張させるとともに脳血管周囲に炎症を起こします。


 その結果、脳血管は過剰に拡張し、拡張した隙間から炎症物質が漏出し、血管周囲に起こった炎症をさらにひどくするとともに、血管周囲を取り巻いている三叉神経を刺激して、痛みが増強して脈打つ頭痛が起こるというのです。すなわち体のリズムや環境の変化→セロトニンの消費と枯渇→三叉神経が興奮→CGRP放出→血管拡張、炎症→片頭痛発生という構図になります。


 セロトニンはいろいろな臓器に作用し、それぞれの臓器がそれぞれの反応し、セロトニンが作用するセンサーにも、さまざまなタイプがあり、片頭痛を起こす血管だけに作用するセロトニンがあるのではないかと思われていました。その結果、脳の血管だけに作用し、セロトニンに構造が類似しているトリプタンが発見され、現在、片頭痛の治療に広く使用されています。さらに三叉神経から放出されたCGRPをブロックするという抗CGRP抗体が現在、開発されています。


 脳内セロトニンは心と体のリズム、精神の安定や睡眠に深く関わっている神経伝達物質です。セロトニンは、腸に約90%、血液中に約5%、脳に約5%あるといわれています。気分の安定や睡眠に影響を与えるのは主に脳に存在するセロトニンで、それ以外の場所に存在するセロトニンと役割が異なります。


 セロトニンは、体内にアミノ酸の一種であるトリプトファンという栄養素を取り入れることで合成される物質です。トリプトファンが腸から取り込まれたあと、血液の中を循環し、腸や脳などトリプトファン水酸化酵素という酵素をもった細胞によってセロトニンが合成されます。
 トリプトファンが含まれる食べ物:トリプトファンは、和食であれば、豆腐や納豆、味噌、醤油などの大豆製品、洋食であれば、チーズやヨーグルトなどの乳製品に多く含まれています。特に、バナナにはトリプトファンが多く含まれ、さらにセロトニンを生成するのに必要な炭水化物やビタミンB6もバランスよく含まれています。ただし、そのほかにもあらゆる食材に含まれており、偏食しなければ摂取できるので、それほど意識をする必要はありません。腸のセロトニンは主に、消化管の働きに作用し、腸の内容物を肛門まで運ぶ蠕動運動を促します。血液中でのセロトニンは出血時に血小板からセロトニンが放出され、血管平滑筋を収縮させて止血する作用があります。


 発生学的に最も古い脳幹(中脳から延髄まで)の中央、左右の脳が正中で縫い合わされる部位に縫線核があります。その縫線核群の細胞の多くのものがセロトニンを含んでいます。


 特に脳幹上部の中脳の背側に分布する縫線核からのセロトニン繊維は視床下部、大脳辺縁系、大脳皮質などに投射し、セロトニンを放出して、各種の生理機能に影響を与えています。たとえば、感情や記憶を司る大脳辺縁系にセロトニンが伝達されると、不安や恐怖感が抑えられ、精神が落ち着いたり、痛みが和らいだりします。このような縫線核の周囲には、歩行、咀嚼、呼吸などのリズム運動を形成する中枢が局在しています。

 

 さらに、別の頭痛専門医の方は、以下のようにも申されます。


 日本では頭痛の患者さんをよく「頭痛持ち」と呼び、神経質だとか意志が弱いとか怠けているとか性格の問題のように考える傾向があります。しかし、頭痛は国際基準で367種類に分類されていることから分かるように、紛れもなく病気です。だから世界の多くの研究者が原因やメカニズムを研究し、治療法も進歩してきたのです。


 片頭痛は遺伝に関係しているということです。脳卒中の家系とか糖尿病の家系があるように、片頭痛の場合も、環境変化や心身のリズムの変化、ホルモン異常などに対して脳が敏感に反応する体質の家系なのです。遺伝子にそうした誘発因子が加わって発症する多因子遺伝です。もちろん遺伝子を持っていても発症しない人もいます。


 発症のメカニズムは、最近の脳の画像診断技術の進歩によってずいぶん分かってきました。

 

 誘発因子の情報はまず脳の視床という部分に伝えられます。するとそのすぐ下にある視床下部が反応し、セロトニンという脳内物質の量を減少させます。
 セロトニンは身体のリズムを正常にコントロールする機能を持っています。これが減ると、脳神経の1つである三叉神経がコントロールから外れて興奮し、CGRPという血管拡張物質を放出します。これによって血管が拡張すると、炎症を起こす物質が周辺の組織に染み出し、痛みを引き起こします。これが片頭痛のメカニズムです。


 1週間がんばって働いた人が、週末に寝すぎや二度寝などでリラックスしすぎると片頭痛が起きることがよくあります。これは脳がセロトニンを出す必要がなくなったと判断し、量を減らしたために起きるのです。ですから週末は単にリラックスするだけでなく、リフレッシュするような活動をするほうが片頭痛の予防には効果的です。

 このほかに、首の神経から視床下部に向けて電気信号を送り、副交感神経を刺激して身体の働きを正常に戻す治療法の研究も行われています。


 結局のところ、言いたいことは、以下のようなことのようです。


 何らかの理由で脳の視床下部が刺激されることで、顔の感覚を脳に伝える三叉神経に炎症が起こったり、脳の血管が急激に拡張したりすることで、独特の脈打つような痛みが生じるという説がありますが、はっきりとした原因は解明されていません。


 脳の視床下部は自律神経、睡眠、食欲、女性ホルモンの分泌などをつかさどっていることから、寝不足、寝すぎ、空腹、疲労、ストレス、ストレスからの解放、大きな音、強い光、強いにおい、人混み、気圧・温度・湿度の変化、飲酒や喫煙、女性なら出産、更年期、月経や排卵といった、ふとした日常生活の行動や環境の変化、女性ホルモンの変動などが、片頭痛を誘発するといわれています。ほかにも、電車などの移動中に見る窓越しの風景や、車やバスなどのエンジンの振動も脳の刺激につながるといいます。また、血管を拡張・収縮させるポリフェノールなどが含まれるオリーブオイル、チーズ、赤ワインなどの摂り過ぎも、片頭痛の引き金になることがあります


 片頭痛は頭部の血管がストレス調節物質であるセロトニンに反応しやすいという体質のために起こる病気といえます。
 既にひどく痛くなったものを薬なしで治すことは難しいでしょう。
 ただ痛くなりそうなとき,薬を飲まないでもある程度の対処ができます。


 基本的に片頭痛は視床下部に何らかのストレスが加わると起こります。視床下部は体内の環境を常に一定に保つサーモスタットのようなものですから,外の気温が変化して体温に影響をあたえそうだ,とか,月経前などでホルモンバランスが大きく変化した,あるいは,精神的ストレスで常に緊張を強いられている,などの状態はすべて視床下部へのストレスになります。このストレスを緩和するためにセロトニンが使用されますが,セロトニンが使われて足りなくなると,血管が拡張して周囲の神経に触れ,ズキンズキンという片頭痛が起きるのです。

 

 以上のように、脳の視床下部が、片頭痛を起こす原因とされています。

 

 


 なぜ、視床下部が、今回、クローズアップされたのでしょうか。


 皆さん、ご存じでしょうか。以前にも記事にしたことがありますが・・・

 

 片頭痛のときに起こる脳の変化(閃輝暗点)が、PET、MRI(BOLD法)といった脳の新しい方法で、脳の病気が画像として確認され、片頭痛発作中にはかなり激しい脳の変化が起こるが、発作が治まると脳も完全に正常な状態に戻ることもわかり、すなわち、片頭痛は発作性に頭痛が起こるたびに脳に病気が起こが、頭痛のないときには脳は全く正常で、本人もケロッとしているとされています。
  群発頭痛の場合は、目覚まし時計のように決まった時間に起こりやすく、また群発頭痛発作には日内リズムに関係するメラトニンという脳内物質が変化することがわかっています。生体の日内変動をコントロールしているのは脳にある視床下部です。
  その視床下部が群発頭痛の発作時に異常に活性化する事がPET、MRIなどの新しい測定法で発見されました。視床下部は三叉神経や自律神経を支配しているため、三叉神経により内頸動脈が拡張と炎症を起こして激しい痛みを生じたり、さらに、この血管を取り巻いている自律神経が刺激され、頭痛と同側に流涙、結膜充血、鼻閉、鼻汁、ひたいの発汗、まぶたの下垂などの自律神経症状が起こります。最近は、群発頭痛の病名として「三叉神経・自律神経性頭痛」とも呼ばれるようになりました。


 脳の中に異常のない慢性頭痛は「頭痛持ちの頭痛」とされますが、このような事実をもとにして、「頭痛そのものが脳の病気」とされています。すなわち、本来なら、脳の中に異常のない慢性頭痛と定義されているにもかかわらず、「頭痛そのものが脳の病気」といった「脳の病気」であるといった訳の分からない講釈・トンチンカンなことを申されるに至っています。


 恐らくは、こうしたことに対する対案として述べられているようです。


 皆さんは、今回の”新説”での間違いは幾つあるかお分かりでしょうか?


 今回の記事では、この間違い探しはしないことにします。
 その理由は、名誉毀損罪で訴えられることは火を見るより明らかなためです。
 それにしても、権力を握った方々は何をしてもよいとでも思っておられるのでしょうか。
 どこかの一国の総理大臣を想起せざるを得ません。


 ただ、一言だけ言わせて戴くならば・・


 これまで、片頭痛の発生機序に関連して、「血小板凝集反応」を研究され、これを基にした治療法を行って来られた先生方にどのような説明をされるのでしょうか?
 私は、こちらの方に興味があります。

 

 

 

 

 今回の新説に対しては、私自身はこれまで以下のように述べて参りました。


     迷走し続ける片頭痛医療
      
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12576453528.html