今回は、最も大切なミトコンドリアについてです。極めて重要な項目ですので、これが理解できなければ、片頭痛そのものの改善は期待できません。
こうしたことから、2回に分けて述べます。
第2章 ミトコンドリア
ミトコンドリアとは、私達のからだの組織・臓器を構成する個々の細胞のなかにある小器官で、私達が生きるためのエネルギーを作っており、生命活動に直結する役割を果たしています。
ミトコンドリアは、通常では長さが1~4ミクロン、大きさが0.5ミクロンで、バクテリアとほぼ同じ大きさです。
このように、ミトコンドリア自体の大きさは、バクテリアと同じ大きさですが、体全体からみれば、全体重の10 %を占めています。
ミトコンドリアが最も多く存在するのが「腸」です。つまり、腸内環境を整えておくと、「ミトコンドリア・エンジン」も効率よく働きます。
生物の細胞の中には、必ずミトコンドリアが共生しています。このミトコンドリアこそ、私達の祖先が取り込んだ好気性の生命体なのです。
ミトコンドリアは細胞内で細菌のように見え、実際、昔、真核細胞生物に入り込んだある種の細菌がその先祖であると考えられています。
このように、ミトコンドリアは細菌的な性質を有していることから、他の細菌類と同じように抗生物質により殺傷される可能性が高いのです。
細菌に近い生物であったミトコンドリアにも少なからずダメージを与えます。特に片頭痛の素因のある人は、ミトコンドリアの数がもともと少なく、またミトコンドリアの働きが悪いために、その影響を受けやすいのです。
ミトコンドリアは細胞核にあるDNAとは違う、独自のDNAを持っています。
片頭痛では、このミトコンドリアの働きの悪さ(活性低下)という”遺伝素因”が存在し、この”ミトコンドリアの働きの悪さ(活性低下)”が、ミトコンドリアDNAによって、母親から子供に受け継がれることになります。
このように、先祖代々、主として母系家族から継承されてきます。
母と娘の間で片頭痛が遺伝しやすいのは、このミトコンドリアDNAが関与しています。遺伝にDNAが関係することは誰もが知っていることですが、細胞内のDNAとは別に、先述のように、ミトコンドリアは独自のDNAを持っており、この”ミトコンドリアDNA”が片頭痛の遺伝に関係しています。
ヒトの精子には16個程度のミトコンドリアが存在します。一方の卵子は10万個と言われています。そして、精子に含まれるミトコンドリアは受精後にすべて死滅してしまいます。父性よりも母性のほうが強いということです。
ということは、ミトコンドリアのDNAに関していえば、卵子に含まれるものだけが子供へと受け継がれます。つまり100%の母性遺伝です。
男性のミトコンドリア活性がその子に引き継がれていくことはありません。
もし母親のミトコンドリアの代謝活性(元気さ)が低ければ、その影響を当然受けやすくなります。
ミトコンドリアの活性が低くなると、細胞が活動するために必要なエネルギー発生量も少なくなります。その結果、器官や組織を構成する個々の細胞のエネルギーの不足が直接的に器官の機能低下を引き起こすことになります。
すなわち、ミトコンドリアの機能が低下すれば、当然、同時にセロトニン神経系の機能は低下してきます。
それは、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってくることになります。
男性に比べて女性のほうが脳内セロトニンの合成量がもともと少なく、女性ホルモンであるエストロゲンが生理時に低下することによって、さらに「脳内セロトニン」が低下することによって、片頭痛の症状が発生しやすくなります。こうしたことから、母から娘へと片頭痛が遺伝しやすいのには、こういう理由があったのです。
そして、このように先祖代々引き継がれたミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを塩基置換と言います。
また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。
塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。
もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。
このように生活環境によってミトコンドリアDNAは変化してきます。
ミトコンドリアDNAの塩基置換は通常の核DNAと比べると、5 ~ 10 倍早いとされています。
私達の体は約60兆個の細胞からなりますが、老化に伴いその数が減少します。
ミトコンドリアは大量の酸素を消費しており、その過程で多くの活性酸素を発生します。これにより細胞が酸化障害され、ミトコンドリアDNAに損傷が蓄積するとミトコンドリアの機能も障害されます。
異常なミトコンドリアが多い細胞では必要なエネルギーが産生できなくなり、細胞の自殺(アポトーシス)を起こしやすくなります。
特に、エネルギー代謝が盛んな骨格筋や神経細胞では、ミトコンドリアの劣化に伴うアポトーシスが原因で機能も低下します。
お年寄りの体が小さくなったり機能が低下するのは、このようなミトコンドリアの劣化やアポトーシスが原因の1つとなっています。
このように生後、ミトコンドリアの働きを悪化させる以下に述べるような要因が加わることによって、ミトコンドリアDNAは変化してくることになります。
「ミトコンドリアの機能を悪化させる要因」
1.生活習慣の問題
睡眠不足
運動不足
食べ過ぎ・過食
早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌
薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬
2.食事内容の問題
マグネシウム不足
必須脂肪酸の摂取のアンバランス
鉄不足
食生活の欧米化・・腸内環境の悪化
3.生活環境の問題
活性酸素 野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足
有害物質
4.年齢的な問題
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下
いろいろな原因でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、活性酸素で身体が”酸化”していく全身病が、「後天性ミトコンドリア病」です。
このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、片頭痛を発症させ、さらに「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。
卑近な例では、水や食生活、放射能汚染や環境汚染、有害物質の蔓延などや酸素不足などを原因として、後天的に発症するミトコンドリア病です。
このように、片頭痛は生活習慣病そのものであるということです。
ミトコンドリアは「生命エネルギーの製造工場」
ミトコンドリアは“細胞のエネルギー生産工場”とも言われ、グルコース(糖)・脂肪を原料として、“生体のエネルギー通貨”と呼ばれる「アデノシン三リン酸(ATP)」を合成しています。ATPは体内で日に延べ50~100 kgが作られていますが、そのうちの約95%はミトコンドリアによって作られています。また、ATPをつくる過程では水がつくり出されており、その水は「代謝水」と呼ばれ、身体の水分保持において重要な役割を果たします。
ミトコンドリアは「生命エネルギーの製造工場」とも呼ばれています。
エネルギーの産生システムは、「解糖系」と「ミトコンドリア系」という2つのプロセスに分けることができます。
解りやすく言いますと、人間には細胞内に、性質の異なる2つのエネルギー工場があるのです。
解糖系とミトコンドリア系のエネルギー産生は、専門的には、嫌気性(酸素を嫌う)と好気性(酸素を好む)と呼ばれています。
私達の体は、嫌気性(酸素が嫌い)代謝の生命体と、好気性(酸素が好き)代謝の生命体が融合して出来ていると言われています。
このように、エネルギー産生の仕組みには、解糖系とミトコンドリア系の2つのがあります。この、両者の調和がとれてこそ、健康が保てるのです。
例えば、瞬時にエネルギーが生み出せる解糖系=無酸素運動は、短距離走のように素早い動作を行うときに必要になります。実際に試してみるとわかりますが、人は全速力で走るとき、息を止めて無酸素状態になっています。
そうでなけれは全力疾走はできません。素早い動作というのは、すべてが嫌気性の無酸素運動なのです。もちろん、無酸素の世界は長続きできるものではありません。
全速力で走るとすぐに疲れ、動きが止まってしまいますが、それはブドウ糖が分解される過程で疲労物質である乳酸などが作られるからです。そのため持続力が必要になるときには、解糖系からミトコンドリア系のエネルギーに切り替わります。
マラソン選手のように長時間にわたって運動が持続できる人は、ミトコンドリア系をうまく活用しているのです。
解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー産生のバランスがとれた生き方を心がける必要があります。
細胞内のエネルギーシステムは、年齢により変化します
このように、解糖系とミトコンドリア系のエネルギーを必要に応じて使い分けていますが、年齢によっても変化します。
・20歳位までは、解糖系が優位
・20~50歳代:解糖系とミトコンドリア系の比率が1対1
(年代により、多少の比率は変わります)
・40~50歳代:解糖系からミトコンドリ系への移行が強くなります。
・60歳代以降:ミトコンドリア系が主体
年齢とともに、無理が利かなくなったと感じるのは、ミトコンドリア系への移行が進んでいるからとも言えます。ですから、年齢=体のエネルギーシステムにあった生活の仕方(無理をしないなど)も必要になってきます。
子供時代は解糖系が優位ですが、大人になると、1対1になり、60代以降、解糖系が縮小し、最期を迎えます。
このように、エネルギー産生のしくみには、解糖系とミトコンドリア系の2つのがあります。この両者の調和がとれてこそ、健康が保てるのです。
解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー産生のバランスがとれた生き方を心がける必要があります。
解糖系が働きやすい環境は、低体温、低酸素、高血糖の3条件です。
主として解糖系でエネルギーを得ている「低体温」「低酸素」「高血糖」の状態が、エネルギーの低下した状態なのです。
解糖系でATPを作るには、大量の糖質が必要になり、大量の乳酸を排出して身体を酸性に傾けます。ということは、糖質を過剰に摂取すれば、エネルギー産生系は解糖系に傾くことを意味しています。
糖質の過剰摂取は糖尿病だけではなく、人類の万病のもとです。
解糖系のエネルギー産生が高まると、炭水化物(ブドウ糖)からエネルギーを作り、その際に副産物として乳酸が産生されます。ミトコンドリア系が十分に働いている場合は、副産物の乳酸も栄養としてエネルギー産生に使われます。しかし、ミトコンドリア系のエネルギー産生能力が低下しておれば、乳酸がエネルギー産生のためにミトコンドリアで利用されないため、細胞内で乳酸が余った状態になります。
酸性である乳酸が細胞内で余っていくと、慢性的な乳酸アシドーシス(pHが本来の状態よりも酸性側に傾く)状態になります。乳酸アシドーシスは、乳酸の過剰産生、代謝低下により起こります。このようにして、乳酸アシドーシスの状態になると、ミトコンドリア系はますます働きが悪くなります。
ミトコンドリアの機能が低下するのは、「低体温」「低酸素」「血液の酸性側への傾き」(健康な状態では弱アルカリ性のpH7.35〜7.45ですが、7.35未満になる)の状態です。
このような状況になると、ミトコンドリアの機能低下によって十分なエネルギー(ATP)が得られないため、解糖系のエネルギー産生が盛んになります。
このようにして、ミトコンドリア系は働かなくなります。
ミトコンドリア機能が悪くなれば、解糖系が作ったピルビン酸・乳酸を代謝(還元)できませんので、必ず乳酸が溜まることになります。
「後天性ミトコンドリア病」(ミトコンドリア系の働きが悪くなれば)になれば、乳酸アシドーシスになるのは、そのためです。
片頭痛でも、エネルギー産生は解糖系に傾くことになります。
単純に言えば、解糖系が優位になる環境で片頭痛発作が誘発されることになります。
小児、子供の片頭痛では
子供時代は解糖系が優位ですが、とくに、10 歳以下では、「解糖系の優位」が顕著になっています。
子供は解糖系ですので、瞬発力できびきび遊びますが、乳酸が貯まり易くすぐ疲れます。エネルギー効率が悪いので、10時や3時のおやつも含めて沢山食べる必要があります。
成長とはまさに全身で活発に細胞分裂が起こっていることです。こういう子供特有の性質は大体18 歳から20 歳で終わり、成長が止まります。
子供の片頭痛の特徴として、特に10歳以下の子供に、急に頭痛が起こることがあります。具体的には、つい先程まで元気に遊んでいたと思ったら、急に顔面蒼白となって元気がなくなり、しばらくすると何事もなかったかのように再び遊び出したりします。このようなことから、朝ごはんを食べないことが、片頭痛の発作に引き金になってきます。
10歳以下の片頭痛の子供では、生まれつきミトコンドリアの働きの悪さを母親から受け継いでいるため元々、子供では、エネルギー産生系は解糖系が主体になっていることから、つい先程まで元気に遊んでいても、すぐにエネルギー切れになります。運動中に、容易に、活性酸素が生み出されることによって、片頭痛発作を誘発してきます。
ここに、朝ご飯を抜けば、エネルギー源となるブドウ糖が足りなくなり、体操の授業後には、まさにガス欠になってしまい、発作を誘発させてきます。
一眠りした後に頭痛が軽快することはよく経験されます。これは、寝ている間に、活性酸素等で傷ついたミトコンドリアが修復されることによって、頭痛が軽快したものと思われます。
思春期の 20 歳位までは、
この時期で大切なことは、エネルギー産生系は、解糖系が優位になっています。ということは、ミトコンドリア系は優位にはなっていません。
ですから、この時期にミトコンドリアの働きを悪化させる要因が加わることによって、益々、ミトコンドリアを弱らせることになります。
そうなれば、セロトニン神経系の機能まで低下することになります。
この時期はミトコンドリア系は優位になっていませんので、セロトニン神経系も脆弱な状態にあり、ストレスの影響をダイレクトに受けることになります。
ですから劣位にあるミトコンドリアを保護するためにも、規則正しい生活が求められ、睡眠時間を減らさないことです。これが原則です。
このように、この思春期の片頭痛を改善させるためには規則正しい生活をし、睡眠を十分にとることが如何に大切かが理解されたと思います。
そして、脳内セロトニンを如何にして増やしていくか、ということです。
20 ~ 50 歳代の片頭痛では
20 ~ 50 歳代では、解糖系とミトコンドリア系の比率が1対1(年代により、多少の比率は変わります)であることから、解糖系が同比率で働いていますが、解糖系が働きやすい環境である「低体温、低酸素、高血糖」の状況になることによって、この年代では片頭痛発作を繰り返すことになります。
40 歳を超えた方々の片頭痛
40 ~ 50 歳代では、解糖系からミトコンドリ系への移行が強くなります。
この時期では、女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が減ってきて、やがて分泌されなくなります。こうした体の変化がホットフラッシュ(のぼせ)・ほてり・発汗・イライラ、うつ症状といった更年期の症状(更年期障害)を引き起こしていると考えられています。
女性ホルモン自身が活性酸素を減らすわけではありませんが、女性ホルモンは、活性酸素を減らす酵素を増やす働きがあります。
さらに、エストロジェンにはもうひとつの働き・役割として、ミトコンドリアを増やす機構があります。
エストロジェンはミトコンドリアに直接働きかけてミトコンドリアを増やしてくれます。
こういったことから、この時期は、エストロゲンの分泌低下に伴って、ミトコンドリアの働きを悪くする活性酸素の増加してきます。エネルギー産生系も解糖系とミトコンドリア系のバランスがとりにくい時期に相当します。
皆さんのなかで、40 歳を超えてから片頭痛が一段と増悪してきて、お困りの方々も多いのではないでしょうか?
60 歳以降では・・
60 歳以降では、解糖系がほとんど機能しなくなるため、本来であれば(トリプタン製剤が片頭痛治療の世界に導入される以前の時代では)、片頭痛は自然に消滅していました。
ところが、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤が導入されて、これを発作の都度頻繁に服用することによって、ミトコンドリアの機能を悪化させることによって、なお解糖系のエネルギー・システムが残存することによって、片頭痛が継続してきます。なかには 70 歳過ぎても発作に苦しめられる場合もあります。
このようにトリプタン製剤が導入されて以降様相が変化してきています。
日常的にストレスが持続すれば・・
ストレスは慢性頭痛を悪化させることが経験的に知られています。その理由は・・
日常的にストレスの多い忙しい生き方が続いていると、自律神経のなかの交感神経が優位に働くことにより血管は収縮し血流障害(低酸素)と低体温、を招きます。
ストレスが持続すれば、マグネシウムを枯渇させてくることになり、マグネシウムは、体中のインスリンの作用を応援する役割を持っていることから不足すれば、高血糖を来すことになります。
このため、解糖系が働きやすい環境である、「低体温」、「低酸素」、「高血糖」の3条件が引き起こされてくることから、ミトコンドリア・エンジンが働くなり、慢性頭痛を起こしやすくしてきます。
「酸素不足・・低酸素」と片頭痛の関係
片頭痛を治療するため、心臓に開いた小さな穴を閉じる手術が行われていますが、これは卵円孔と呼ばれる2ミリ程度の心臓の小さな穴を、金属製の2枚の栓で挟み込み、塞ぐ手術のことです51)。
卵円孔開存とは、端的に表現すれば「静脈血が動脈内に混ざってしまう」ことにあります。卵円孔と呼ばれるわずか2ミリ程度の心臓の小さな穴ですが、これが1回の心拍に伴うことになり、極めて取るに足らない程度の酸素不足にしかならないはずのものですが、これが常時継続することになり、トータルで考えれば、卵円孔開存の有無によって、酸素不足の状況は計り知れないものとなるはずです。
このように卵円孔開存を有することによって、潜在的に「酸素不足」の状況に置かれているものと考えなくてはなりません。このため、片頭痛が出現しやすくなります。
また、猫背や前屈みの姿勢ですと、胸郭を大きく開いての深呼吸ができなくなります。こういった些細なことも「酸素不足」の要因になってきます。
このため、片頭痛治療上、「体の歪み(ストレートネック)」の改善は必須になっています。
ミトコンドリアが不調になると・・・
ミトコンドリアの機能が低下すると、ATPが不足するほか、ATPがうまくつくられないことにより活性酸素が増加し、その結果、身体にはさまざまな不調が現れます。
めまい、動悸・息切れ、疲れ、肌荒れ、貧血、無気力、うつ状態等々・・・
身体を元気に健康に保つためには、ミトコンドリアを元気にすることが大切なのです。
ミトコンドリアの数が少なく弱ってくると、細胞が適正に活動するために必要なエネルギー量が不足し、細胞や組織はその役割を充分に果たせなくなります。私達が元気でいられるのは、ミトコンドリアが充分エネルギーを供給してくれるからです。そのため、ミトコンドリアの数が少なく活力が無ければ、その私達の活力もなくなってしまうということです。
片頭痛もミトコンドリアが弱ることで起きる病気ですので、ミトコンドリアをいかに元気にすることができるかが片頭痛を改善させる最大の“鍵“となります。
ミトコンドリア系の働きを本来の姿に戻すには、
このように、エネルギー産生の仕組みには、解糖系とミトコンドリア系の2つのがあります。この、両者の調和がとれてこそ、健康が保てるのです。
解糖系とミトコンドリア系の2つのエネルギー産生のバランスがとれた生き方を心がける必要があります。
主として解糖系でエネルギーを得ている「低体温」「低酸素」「高血糖」の状態が、エネルギーの低下した状態なのです。
この「低体温」「低酸素」「高血糖」を改善することなしには、治療効果が上がりにくいし、治療効果も長続きしにくいのです。
治療効果を上げ、治療効果を長続きさせていくには、体温を上げ、酸素を多く取り込み、血糖を下げる必要があります。このような状態になると、解糖系と比べて効率の良いミトコンドリア系のエネルギー産生が上がって、エネルギーが高まっていきます。
このエネルギーが高まった状態(病気になる以前の状態)になると、治療効果は上がりますし、治療効果が長続きするようになります。また、治療をしなくても、体が勝手に治していくという本来の状態に戻っていくわけです。
ホメオスターシス(自然治癒力)が働く状態です。
ビタミンとミネラルが不足しない状況にする
ミトコンドリア系の働きを本来の姿に戻すには、「低体温」「低酸素」を改善するとともに、ビタミンとミネラルが不足しない状況にすることが大切です。
ミトコンドリア系では、ATPを作るために、クエン酸回路を働かせます。 この際に、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、 葉酸、ビオチン、ビタミンCといったビタミンが必要になります。
ビタミンB2はミトコンドリアの電子のやりとり(電子伝達によりエネルギーを産生する)を円滑にします。
腸内細菌は、ビタミンB1、B2、B6、そして、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ナイアシンというビタミンB群、さらにビタミンKを合成する能力を持っています。このため、腸内環境を整えることが極めて重要になっています。
脳に存在し、精神を安定させる神経伝達物質、セロトニンの95%が腸で作られることが指摘されています。
なぜ腸内環境を大事にしたいかといいますと、腸内の常在細菌もトリプトファンからナイアシン(ビタミンB3)を作ってくれるからです。常在細菌がナイアシンをたくさん作ってくれれば、その分を体内で作る必要がなくなって、脳内セロトニン用の材料となるトリプトファンを余分に確保できるのです。
腸内環境が悪いとセロトニンもスムーズに分泌されないことが判明しています。便秘や暴飲暴食による腸の疲労状態を改善することが、幸せかどうかを感じることに大きく関係しています。
電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須です。貧血や鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCAサイクルや電子伝達系での反応が進みにくいため、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにくくなります。
このように、鉄分の不足は、ミトコンドリアのエネルギー代謝がスムーズに行かなくなります。その結果、機能低下を招くことになります。そして、片頭痛を引き起こしやすくなってきます。
エネルギー効率を上げる方法
主として解糖系でエネルギーを得ている「低体温」「低酸素」「高血糖」の状態が、エネルギーの低下した状態なのです。この「低体温」「低酸素」「高血糖」を改善することが大切になってきます。
体温を上げるには、体を冷やさないことです。冷蔵庫から出してすぐの食べ物や飲み物を避ける、体を冷やす服装をしないことです。また、湯たんぽやカイロや入浴で体を温める、適度な運動を心がけるといったことを行ってください。
酸素を十分に取り入れるには、深呼吸です。深呼吸は酸素を十分に取り入れるだけでなく、横隔膜を大きく動かすので、静脈血やリンパ液の流れをよくします。また、姿勢に注意してください。猫背や前屈みの姿勢ですと、胸郭を大きく開いての深呼吸ができなくなります。「体の歪み(ストレートネック)」は是正・改善に努めなくてはなりません。
さらに、食事に気をつけてください。エネルギー源になるのは、糖質(炭水化物)と脂肪です。解糖系でもミトコンドリア系でも、糖質が胃や腸で分解されたブドウ糖をエネルギー源としています。消費エネルギーのうち、およそ60%は糖質が望ましいといわれています。現代の食生活は、主食である「糖質(炭水化物)」が少ない状態になっています。
睡眠も、エネルギーと大きな関わりがあります。脳の重さはおよそ体重の2%ほどですが、消費するエネルギーは、目覚めているときで、体全体の 20 %ほどだと言われています。起きている間は、エネルギーを作り出して心身を活動させているわけですが、睡眠中はその作用を抑えてエネルギー源を保存しています。深いノンレム睡眠では、エネルギーの消費量は、目覚めているときの40 %程度に下がっています。
したがって、睡眠時間が短いと、エネルギーを消費しやすくなります。
また、前向きな「プラス思考」も、行動を促し、結果として体温を上げていきます。うつ状態で低体温の方でも、プラス思考ができるようになって、行動を起こすことができたら、体温が上がってうつの状態から抜け出すことができます。
もっとも、「低体温」「低酸素」「高血糖」はバラバラで現れているわけではありません。体温が上がってくれば、低酸素の状態から抜け出し、血糖値も下がります。酸素を取り入れる呼吸をすることで、体温も上がり、血糖値も下がります。
ミトコンドリアが喜ぶ生活
ミトコンドリアが作るエネルギーで人間の生命は維持されています。
ミトコンドリアを喜ばせる6条件
ミトコンドリアが喜ぶ状態は、以下になります。
酸素が多いこと
体温が高いこと
腹八分目
軽い運動
日光を浴びること
野菜に含まれる微量放射線(カリウム40)があること
反対に、ミトコンドリアが嫌う状態は、以下になります。
酸素不足
低体温
満腹
運動不足
日光を浴びない
野菜不足
つまり、深呼吸によって酸素を取り入れ、体温を高く保ち、腹八分目にし、軽い運動を行い、日光を浴び、カリウム40が多く含まれるキャベツなどの野菜をたっぷりとることです。
ミトコンドリア系が十分に働いていない病気の代表がガン、糖尿病、片頭痛です。これらの病気を改善、あるいは予防するためには、「自分が喜ぶ生活習慣ではなく、ミトコンドリアが喜ぶ生活習慣」を意識して下さい。
ミトコンドリアが喜ぶ生活は、病気の改善や予防だけでなく、若さを保ち長生きする秘訣でもあります。