第2回 第1章 慢性頭痛とは・・ | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 第2回目です。

 

 

第1章 慢性頭痛とは・・

 私達は、仕事が忙しかったり、ストレスが重なりますと日常的に「体調不良」を感じます。このような「体調不良」は、具体的には、疲れやすい、胃腸の調子がよくない、身体が冷える、身体がだるい、疲れがとれない、よくめまいを起こす、肩こりが酷い、食欲がない、よく眠れない、頭が重い・頭が痛い、足がつる、耳鳴りがする、夢をよくみる、喉のつかえ、むくみやすい、風邪をひきやすい、顔色が悪い、気分が落ち込む・優れない、活力がでない、元気がでない、何となく調子が悪い、寝起きが悪い、等々の訴えです。
 このように頭痛とは、「体調不良」のなかの訴えの一つに過ぎないものです。

  体調不良」とは、病気とは診断されませんが、健康でもない、謂わば、“半健康・半病気”の状態に身体はあるのです。半健康・半病気の状態を、東洋医学では病気になる一歩手前だとして、「未病(みびょう)」と言っています。
 絶対的な健康ではなく、私たちの身体のバランスがどこか歪んでいるのです。
 これは「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」を意味しています。

 このような”未病”とされる病態は、本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから「病気」へと進展するものと東洋医学では考えられています。
 このように考えれば、”未病”の段階にある、このような「体調不良」の訴えとは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があるということです。

 脳のなかに異常のない頭痛の代表格とされる緊張性頭痛、片頭痛は、頭部のCT・MRIなどの画像検査では何も異常が見当たらず、これはまさに、典型的な”未病”と考えるべき頭痛です。
 ということは、”脳のなかに異常のない”「慢性頭痛(一次性頭痛)」は、東洋医学でいう”未病”の段階にあり、すなわち健康と病気の中間に位置しており、この”未病”は本来、生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから「病気」としての「慢性緊張型頭痛」・「慢性片頭痛」へと進展するものです。
 ですから慢性頭痛とは”未病”の段階にあり、「健康的な生活」を送ることを阻害する生活習慣に根本的な原因があります。
 そして、「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」によって慢性頭痛という「症状」が出現し、さらに様々な生活習慣の問題点が加わることによって、難治性の頭痛という「病気」にまで進展していくことになります。

 それでは、「健康的な生活」を送るためには、どのようなものが関係しているのでしょうか。

「健康的な生活を送る」ためには

 「健康的な生活を送る」ためには、ミトコンドリア・腸内環境・生理活性物質が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。(腸内環境・生理活性物質も基本的にはミトコンドリアに関与したものです)。
 このなかでもミトコンドリアはその”要(かなめ)”となり、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きるために必要なエネルギーを作り出しています。
 エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”とも言えるものなのです。

 私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、ミトコンドリアでエネルギー産生が十分に行われないために、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
 「セロトニン神経系」の神経核は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。
 セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランスを保つ”などの重要な働きをし、「健康的な生活」を送るためには欠かせない働きをしています。

 「健康的な生活」とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。
 この「生体のリズム」は「ホメオスターシス(自然治癒力)」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御されています。

 「ホメオスターシス・恒常性(自然治癒力)」には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深く関わっており、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角」と呼ばれます。
  ホメオスターシスはストレスなどに大きく影響されます。例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下させてしまいます。
 この3つのバランスが崩れてホメオスターシス機能が保てない状態になると、”頭痛”を肇とするいろいろな”体の不調”が現れることになります。

 先述のように、私達の身体の細胞にはミトコンドリアという小器官があり、ミトコンドリアは糖と脂肪酸の代謝とアミノ酸の代謝などエネルギーを産生するのに必要不可欠な働きを担っていることから、「自然治癒力」を正常に保つにはミトコンドリアを働きを良好に維持することが必要です。

 私達の生活環境は活性酸素・有害物質に満ち溢れており、ここ50年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることから、同時に起きている「セロトニン神経系の機能低下」と相まって、以下のような理由から「姿勢の悪さ」を引き起こしやすい状況にあります。
 すなわち、ミトコンドリアは、全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ脊椎起立筋群に多く存在し、ミトコンドリアの働きが悪くなれば、当然のこととして「姿勢の悪さ」を引き起こしてきます。
 さらに、セロトニン神経系は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることによって、「脊椎起立筋群」に働きかけていることから、セロトニン神経系が低下してきますと、セロトニン神経系本来の働きである「正しい姿勢の保持」が困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「姿勢の悪さ」を引き起こします。
 このように、「脊椎起立筋群」に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関与、さらにセロトニン神経系は、”神経系の要因”として、関与し、姿勢を保持しています。

 こういったことから、ミトコンドリアの機能が悪化している現代社会では、「姿勢の悪さ」が起きやすい生活環境に置かれています。
 このような「姿勢の悪さ」は、「健康的な生活を送る」上に、さまざまな悪影響を及ぼします。当然、頭痛を起こす原因にもなります。

 ここに、さらに「運動不足」、「栄養のアンバランス」は「健康的な生活」を送ることを阻害する要因になってきます。

 そして、ミトコンドリアの機能を悪化させる要因としては、以下があります。

 生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、具体的には、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食、生活習慣の問題点、具体的には、睡眠不足や運動不足や不規則な生活・インシュリン過剰分泌を来すような早食い・ドカ喰い等の食事摂取方法の問題等々が加わって、ミトコンドリアの機能は低下してきます。

  このため、「健康的な生活を送る」ためには、このような「ミトコンドリアの機能を悪化させる要因」を取り除いておく必要があります。
 このような「ミトコンドリアの機能を低下させる要因」を取り除かなければ、最終的に、「酸化ストレス・炎症体質」を形成させてきます。

病気の90%は活性酸素が関与

 活性酸素に関しては今から50年以上前に米国の生化学者フリードビッヒ博士によって解明され、その後世界各国で研究が行われてきました。
 その結果、人が罹るあらゆる病気に活性酸素が関与していることが明らかになりました。今や病気の90%は活性酸素が原因だということが判明したのです。それでは残りの10%は何かといいますと、風邪やエイズ、また最近増えてきている結核などの菌が体内に入っておこる病気、すなわち感染症です。
 このように、現在では人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、活性酸素が原因と考えられています。
 活性酸素とは、ミトコンドリアがエネルギー産生を行う際に、必然的に生み出されてくるものです。

 ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
 
 そして、先述のようなミトコンドリアの機能を悪化させる要因によって、ミトコンドリアDNAは傷つけられてくることになります。
 このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。
  
 慢性頭痛、とくに片頭痛は、「後天性ミトコンドリア病」が形成されるまでの途中の過程で、出現してくる「症状」と考えられます。

 このように、慢性頭痛発症には、ミトコンドリアが関与しています。


慢性頭痛の発症過程

 「慢性頭痛」は、以下のような段階を踏んで発症してきます。
  

第1段階 ミトコンドリアの機能低下→「酸化ストレス・炎症体質」の形成
  
 「ミトコンドリアの機能を悪化させる要因」には、先述のように、以下の要因があります。
 
   1.生活習慣の問題
 
       睡眠不足
       運動不足
        食べ過ぎ・過食
       早食い・ドカ喰い・・インスリン過分泌
       薬剤による影響・・とくに市販の鎮痛薬
 
  2.食事内容の問題
 
      マグネシウム不足
       必須脂肪酸の摂取のアンバランス 
       鉄不足
       食生活の欧米化・・腸内環境の悪化
 
    3.生活環境の問題
 
      活性酸素    野菜不足・・抗酸化食品の摂取不足
       有害物質
    
   4.年齢的な問題

     女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下



 このように私達の生活環境および生活習慣のなかには、ミトコンドリアの機能を悪くさせる要因に満ち溢れています。
 このため、ミトコンドリアの機能は低下してきます。
 これらの要因が、「酸化ストレス・炎症体質」を形成させ、慢性頭痛発症の基盤を作ってきます。

第2段階 姿勢の悪さ

 私達の生活環境および生活習慣のなかには、ミトコンドリアの機能を悪くさせる要因に満ち溢れており、このため、ミトコンドリアの機能は低下してきます。ミトコンドリアの機能が低下すれば、当然、セロトニン神経系の機能が低下することにより、この両者によって、「姿勢の悪さ」が引き起こされやすい状況に置かれていることは、先程述べたばかりです。
 私達の生活習慣は「前屈みの姿勢」を強制させる環境に置かれています。
 このため、この3者によって「姿勢の悪さ」が引き起こされてきます。
 この姿勢の悪さが、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛を引き起こす1つの原因になっています。

  
第3段階 ホネオスターシス(自然治癒力)の乱れ
  

  自律神経系・・セロトニン神経系
  内分泌系・・生理活性物質・・オメガ3とオメガ6のバランス
  免疫系・・腸内環境


 この第3段階のホネオスターシス(自然治癒力)を構成する3つの柱として、自律神経系、内分泌系、免疫系があります。
  自律神経系には、セロトニン神経系が、内分泌系として、生理活性物質が、免疫系には、腸内環境が関与しています。

 セロトニン神経系はミトコンドリアと連動し、自律神経を調節しています。
 生理活性物質のエイコサノイド は、必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6で作られ、必須脂肪酸は生体膜(細胞膜)を構成しており、ミトコンドリアの機能を左右します。
 腸内には、ミトコンドリアが最も多く存在し、腸内環境の悪化はダイレクトにミトコンドリアの働きを悪化させることになります。

 このように、これら3つは、すべてミトコンドリアが密接に関与しており、「自然治癒力」を高めるためには、ミトコンドリアの働きを良好に保つことが必須になっています。
    
  この第2段階と第3段階で、これらが単独で、もしくは重なり合って、日常的に感じる極く軽度の頭痛が発症します。
 
第4段階 「脳過敏」を形成する要因
  
      1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足
    2.脳内セロトニンの低下
    3.体の歪み(ストレートネック)の形成と長期間の持続
  

 これらが慢性頭痛に片頭痛に特徴とされる症状を付加させることになります。すなわち、日常的に感じる極く軽度の頭痛が次第に増強することになり、片頭痛らしい頭痛へと変貌していくことになります。

 このように、慢性頭痛を発症させる要因は共通しているということです。
 
 そして、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な差異は、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”の有無でしかありません。
 
 片頭痛の患者さんでは、緊張型頭痛の場合と異なって、遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しますので、ミトコンドリアの働きを悪くし、セロトニン神経を弱らせる要因の影響を、とくに受けやすいことになります。
 このため、片頭痛では、緊張型頭痛に比べて、比較にならない程、頭痛の程度が極端に酷くなってきます。
 ところが緊張型頭痛の場合でも、片頭痛のように遺伝素因としてミトコンドリアの活性低下が存在しなくても、生活習慣の問題によってミトコンドリアの働きが極端に悪くなり、さらに「脳内セロトニンが枯渇」してくれば、片頭痛と同様の難治性の頭痛(慢性緊張型頭痛)を引き起こしてくることになります。

  以上のようにして、慢性頭痛は発症してきます。
 
女性の場合は、生理があります。

 生理周期によって、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、その分泌量は大きく変わります。
 特にエストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、それに伴って神経伝達物質であるセロトニンも急激に減ります。
 つまり排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するためにセロトニンも減少→頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすくなります。
 このように、生理周期に関連して、脳内セロトニンが低下してきます。

 さらに、女性は健常男性より 約52%「脳内セロトニン」を産生する能力が低く、またセロトニンの前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では「脳内セロトニン」合成が男性の4倍減少すると言われています。
  このため、女性では、潜在的に「脳内セロトニンの低下」した状況に置かれています。


 このように、女性では、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量・・脳内セロトニンが重要な鍵を握っています。

   女性の慢性頭痛は女性ホルモンに大きく支配・左右されています。

 女性ホルモン自身が活性酸素を減らすわけではありませんが、女性ホルモンは、活性酸素を減らす酵素を増やす働きがあります。
 しかも、その増やし方は巧みで、活性酸素が少なくなると活性酸素を減らす酵素を増やす働きも失われるのです。つまり、完全に活性酸素をなくしてしまうことはないのです。活性酸素には、いろいろな役割があって活性酸素を完全になくしてしまえばよいというものではないのです。うまく制御しながら活性酸素を減らすエストロジェンの働きは巧みで、そのために女性は長生きできるのです。
 さらに、エストロジェンにはもうひとつの働き・役割として、ミトコンドリアを増やす機構があります。
 エストロジェンはミトコンドリアに直接働きかけてミトコンドリアを増やしてくれます。

 このようなことから、排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するために、活性酸素が増加することによって、この過剰に増加した活性酸素が引き金になって、片頭痛発作を引き起こすとも考えられます。
 また、更年期になって、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下することによって、このことが問題の中心になってくることになります。

 
このように、慢性頭痛発症の要因として、以下の3つの大きな柱があります。

    1.ミトコンドリアの関与
    2.セロトニン神経系・・脳内セロトニンの低下
  3.「姿勢の悪さ」→「体の歪み(ストレートネック)」 


 これら3つの要因は、ミトコンドリアが中心的な役割を果たしています。

 このため、慢性頭痛を理解するためには、ミトコンドリアに関する知識は必須のものとなっています。