女性の閉経の前後5年間(約10年)のことを「更年期」といいます。更年期の女性の体は、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が急激に減ります。
このエストロゲンの急激な減少によって引き起こされる症状は「更年期障害」といわれ、「顔のほてり(ホットフラッシュ)」「動悸・息切れ」などの身体的な症状と、「疲れやすい・憂うつ」「もの忘れ・神経質」などの精神的な症状があらわれるようになります。
これらの症状は40歳から60歳頃にみられるものですが、近年では若年の傾向にあります。また、症状の種類や程度、時期がさまざまですので、自分が更年期障害であることに気づかない場合もあるようです。
女性に頭痛が多いのは、女性ホルモンのエストロゲンの影響があります。エストロゲンが急に変動することで、脳の血管や脳内物質に影響を及ぼして、頭痛が起こりやすくなります。
女性の一生は、女性ホルモンに支配されていると言いますが、“頭痛”も女性ホルモンにかなり支配されています。
初潮から、妊娠、出産、更年期、閉経と、女性ホルモンの変動がある時期に、片頭痛が増加・減少する傾向があるからです。
受験、就職、結婚、育児、仕事と家庭の両立、子供の独立、親の介護、夫の定年…、と女性のライフステージのポイントとなる時期が、女性ホルモンの変動する時期と重なることもあり、片頭痛が起こりやすく、女性を悩ませているのです
50代で更年期を迎え、頭痛がひどくなる人もいます。
更年期世代の女性に多いのは片頭痛と緊張型頭痛です。
女性ホルモンの低下と更年期障害の関係
女性ホルモンのエストロゲンは、子宮に作用して月経を起こす、脳の視床下部の体温調節中枢などに作用する、骨を作る働きを促進する、活性酸素を消去する、心臓や血管に作用する、皮膚に作用してシミのない弾力のある肌を作るなど、身体のさまざまな部位に作用しています。そのため、エストロゲンが減ることで生じる更年期障害は生理不順、ホットフラッシュ、関節痛、不眠・憂うつ、動悸、シミ・たるみと、さまざまなのです。
なぜ更年期の重い人と軽い人がいるのか
「顔のほてり」や「うつ状態」を引き起こす活性酸素
更年期障害の発症には、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少が深く関与しています。さらに、年齢的には子供の反抗期や受験、結婚といった家庭の問題や、仕事の対人関係などの心理的なストレスがかかる時期。このようなストレスと女性ホルモンの減少が重なることで更年期の症状があらわれやすくなり、「顔のほてり」や「うつ状態」などのさまざまな症状が出てくるのです。
ストレスは活性酸素を発生させる
心理的ストレスや肉体的ストレスを受けると、体内ではたくさんの活性酸素が発生してしまいます。実はこの過剰な活性酸素が更年期障害・片頭痛を引き起こす引き金となっています。しかも活性酸素の発生量の多い人ほど、更年期障害が重いといわれています。
女性ホルモンのエストロゲンは活性酸素を消す「女性の強い味方」
エストロゲンには、活性酸素を消す抗酸化作用があります。その抗酸化力は抗酸化ビタミンであるビタミンCやビタミンEなどよりもはるかに高く、活性酸素から女性の心と体を守る強い味方として働いているのです。
成熟期の健康な女性はエストロゲンが十分に分泌されており、脳の視床下部などにある活性酸素はエストロゲンによって消され、増えすぎることはあまりありません。
しかし、更年期の女性はエストロゲンの分泌量が急激に減少することによって活性酸素を消す力が弱まるため、体が活性酸素にさらされやすくなります。
活性酸素を消すと更年期障害は軽くなる
更年期障害の女性の脳内は過剰な活性酸素にさらされていて、症状が重い方は活性酸素を消す力が低下して、脳機能の低下や調節力の乱れが生じやすくなっています。この過剰な活性酸素が、うつ状態、もの忘れ、不安感、そしてホットフラッシュなどを引き起こす大きな要因といわれています。
従って、過剰な活性酸素を消すことが更年期障害を軽くする重要なポイントなのです。
活性酸素を消す2つの方法
●1.亜鉛・セレンを摂取して酵素の数を増やすこと
SODやGH-Pxなどの酵素は多くの活性酸素を消すことができますが、必須微量ミネラルの亜鉛・セレンなどの摂取が不足すると酵素の数が減少します。現代人は必須ミネラルが摂取不足の傾向がありますので、亜鉛・セレンなどのミネラルをしっかり補給して酵素を増やし、過剰な活性酸素を消して更年期をさわやかに過ごすことが大切です。
●2.抗酸化物質を積極的に摂取すること
最強の抗酸化物質でもある女性ホルモンのエストロゲンのように、活性酸素を消す抗酸化物質を積極的に摂取することが大切です。ビタミンCやビタミンEなどにも活性酸素を消す力がありますが、細胞内には吸収されにくく、効果が出にくいようです。
近年カキ肉からビタミンCやビタミンEよりも活性酸素を消す能力が高く、しかも細胞内に吸収されやすい抗酸化物質「CG7」が発見され注目されています。吸収されやすい抗酸化物質を摂取し、活性酸素を効果的に消して、すがすがしい毎日を送りましょう。
顔のほてりやうつ状態を引き起こす活性酸素
体温調節を行う脳内の「視床下部」という部分が多くの活性酸素にさらされると、ホットフラッシュを引き起こすホルモンが分泌され、顔がほてる、汗をかくなどの不快な症状があらわれます。
脳は活性酸素にさらされると、傷ついたり、機能が低下する危険性があります。そこで、活性酸素から脳を守るエストロゲンの代わりに、活性酸素を消す「ノルエピネフリン」という物質が放出されるのですが、ノルエピネフリンはホルモン分泌を促す働きがあるため、活性酸素を消すとともに、ホットフラッシュを引き起こすホルモンの分泌を異常に増やしてしまうのです。
さらにストレスによって脳がより多くの活性酸素にさらされると、うつ状態を引き起こすコルチゾールというホルモンがたくさん分泌されます。そして血液中のコルチゾールが高濃度のままになると、脳の機能が低下し、うつ状態に陥ってしまうのです。
その他の、更年期障害の頭痛の原因
以上のように更年期障害の原因として、女性ホルモンのエストロゲンの低下による活性酸素の増加を挙げました。これ以外にも頭痛を引き起こす要因があります。
1.加齢とともにCoQ10の減少
健康維持には体内に十分なCoQ10があることが重要ですが、年齢を重ねるごとに、その量は減っていきます。酸化ストレスの増加などが原因で、体のCoQ10を作る能力が低下するためです。体の場所によってCoQ10の量が減少する比率は違いますが、特に皮膚では、70代では20代の約1/3まで減ってしまうという研究結果もあります。
加齢だけでなく、喫煙などの生活習慣、うつ病、心筋症、片頭痛などの病気も体内のCoQ10を減らす原因として注意が必要です。
CoQ10が減ることで、体内のエネルギー生産量が減り、細胞の活力がなくなります。
つまり、元気や健康を維持する力が失われ、老化が進んだり、病気になりやすくなるのです。
女性の場合は、更年期を迎えると心身ともに不調を感じることが増えてきますが、それは女性ホルモンのエストロゲンだけでなく、CoQ10も減少しているためと考えられます。
不定愁訴や更年期障害などで悩んでいる人も、CoQ10を摂取することで、症状を軽くすることができるでしょう。
また、CoQ10のもうひとつの働きに、抗酸化作用があります。活性酸素は毒物やウイルスなどを分解する酸素ですが、増えすぎると正常な細胞まで傷つけてしまうことがあります。抗酸化作用により増えすぎた活性酸素を無力化して取り除くことで、細胞が元気でいられます。
CoQ10と片頭痛
CoQ10の経口摂取により、片頭痛の発生頻度と発生期間の減少に効果がある、との報告があります。CoQ10摂取により片頭痛を予防する効果を示唆する学術文献もあります。
それでは、なぜCoQ10が片頭痛に効果があるのでしょうか?
1.抗酸化作用・活性酸素除去
CoQ10は抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する効果があります。
活性酸素が身体に悪いのは、細胞を破壊・損傷し、DNAの改ざん、老化など様々な悪影響の原因となるためです。
(※活性酸素の働きは全てが悪い作用ばかりではありません。)
人間にはこの活性酸素を除去するシステムがもともと備わっており、 その一つがCoQ10です。
その他に、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、αリポ酸などが抗酸化作用のある物質ですが、これらがお互いに作用しあって活性酸素の除去を行います。
これらの中でCoQ10はその構造から電子を放棄し、ほぼ完全に脂質の生成を防止し、酸化を阻害します。
また、抗酸化に利用されたビタミンEを修復します。
大きくはこの2つの働きによってCoQ10が活性酸素の除去に効果があるとされています。
ある研究では、運動前にCoQ10を摂取したところ、 酸化ストレスマーカー(8-OHdG)の増加を抑える効果があったとしています。
2.エネルギーの産生
CoQ10は人間の活動の元となるエネルギーの産生を行うために必須です。
TCA回路(クエン酸回路)からエネルギー(ATP)を作り出す最後の栄養素がこのCoQ10です。
そのため、TCA回路が適正に機能していても、CoQ10がなければエネルギーが作られません。
しかし、CoQ10の体内での量は20代をピークにその量は減っていきます。とくに40歳を境目に急激に減少してきます。
食事から直接摂取する量そのものが減ること以外に、チロシン、フェニルアラニンなど複数の栄養素を摂取しないと体内で作られないため、バランスの良い食事をしていないと、体内で作られる量も減ってしまいます。
サプリメントとしてCoQ10を摂取したところ、疲労感と憂うつ感の低下、活動度の増加が認められたという報告や、 CoQ10を100mg、10日間摂取したところ、69%で疲労回復の効果を感じられたとする報告もあります。
2.抗酸化物質の減少
私達の体には活性酸素を取り除く手段として、「抗酸化物質」が備わっています。
このなかで、スーパー・オキサイド・ディスムターゼ SODの産出能力は25歳から下降しはじめ、40歳を過ぎて急速に低下することが分かってきました。コエンザイムQも同様に40歳を境に減少してきます。
3.「体の歪み(ストレートネック)」の存在
更年期を過ぎてきますと、若い頃のように血管の”しなやかさが失われ”反応性も乏しくなり、片頭痛本来の拍動性頭痛でなく、緊張型頭痛のような鈍い頭痛に変化してきます。
これは、「体の歪み(ストレートネック)」が若い頃から持続しているためです。
そして、頭痛に加えて、イライラ、不眠、めまいなどの不定愁訴が加わってきます。
これが、東京女子医科大学脳神経外科の清水俊彦先生が提唱される「脳過敏症候群」そのものであり、東京脳神経センターの松井孝嘉先生の提唱される「頸性神経筋症候群」に相当します。こうしたことから、うつ状態・めまい・冷え性等々のさまざまな”共存症”を合併することになります。
東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、「体の歪み(ストレートネック)」が、このように、長期間持続した病態として「頸性神経筋症候群」を提唱され、更年期障害との関連について以下のように述べています。
更年期障害
めまい、動悸、のぼせ、耳鳴り、眠れない、イライラする・・中高年の女性に多いとされるさまざまな身体の異常とそれに伴う情緒不安定は、「更年期障害」と言われています。 ホルモンバランスの崩れによって起こるとされ、女性ホルモンを補う治療方法が一般的に行われております。
また、本来閉経期前後の女性に多いはずの更年期障害が、若い年代に起こる若年性更年期障害、男性にも似たような症状が出る男性更年期障害があると言っているドクターもいます。
以上のように、40 歳代、50 歳代以降の女性に不定愁訴があると、ほとんどが更年期障害と診断されるようです。血液検査を行って、女性ホルモンの1つである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が著しく減少していることが確認された場合は、薬でエストロゲンを補うホルモン補充療法が有効とされています。この年代の女性で、エストロゲンが減少しているのは当たり前ともいえます。
ところがホルモン補充療法を行っても症状が改善されない人も少なくないのです。私の知人のベテランの産婦人科医師の経験では、更年期障害と診断された方でも、ホルモン補充療法で治せるのは4割程度だと言っています。残り6割の人の不調は別の原因で生じているそうです。つまり、首の筋肉の異常を疑ってみる必要があるのです。
もし、婦人科で更年期障害の治療を受けても症状がよくならないときは、首のこりがないかをチェックし、異常があれば首の治療を行うべきです。
首の筋肉の異常を治療すると、不定愁訴は霧散して、更年期障害といわれていた症状はホルモンの治療なしで完治します。
4.薬剤乱用頭痛の影響
片頭痛や緊張型頭痛の人が、手軽に入手できる市販の鎮痛剤を頻繁に飲み続けることで、脳が痛みを感じやすくなり、かえって頭痛をひどくしてしまい、連日のように頭痛が続くようになるのが、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)です。
たとえば、関節リウマチや腰痛の人が毎日、鎮痛薬を飲んでも薬剤使用過多による頭痛にはならないことから、慢性頭痛の人が鎮痛薬を飲みすぎた場合、こうした市販の鎮痛薬すべては、人体にとっては害(有害なもの)になるのです。これらを解毒する際に、活性酸素が発生し、このためにミトコンドリアの働きを悪くさせることによって、頭痛を増強させます。すなわち、市販の鎮痛薬が原因となって「後天性ミトコンドリア病」を作ってくることになります。
また、これら薬剤はいずれも”化学的ストレス”となって、脳内セロトニンを低下させ、”痛みの閾値”を下げるため痛みを感じやすくさせるために、さらに、頭痛を引き起こしてくることになります。
最も注意しなくてはならないことは、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬とされることから、このように更年期によって増加した片頭痛に対して、トリプタン製剤を服用すれば、そのまま頻回に服用することになり、あっという間にトリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を作ってしまうことになり注意が必要です。このようになれば、更年期以上の苦しみを味会うことになります。
5.ストレスの影響
このシリーズでも述べましたが、ストレスが慢性頭痛を悪化させる最大の要因になっていることを忘れてはなりません。
なかでも、ストレスにより「脳内セロトニンが低下」することによって、うつ状態を引き起こしてくることもあります。
抗酸化物質を積極的に摂取することが重要です
以上、現在、専門家には、慢性頭痛とくに片頭痛とミトコンドリア、「体の歪み(ストレートネック)」の関与は全く否定されるために、更年期障害による頭痛に対しても、ただ単に、トリプタン製剤の投与に終始することになります。
ですから、抗酸化物質の重要性などは、考えもつかないことになっています。
こうした抗酸化物質を積極的に摂取することが、大切になってきます。
大豆イソブラボンが勧められています。
高麗人参はペプチド、アミノ酸類、ビタミン、ミネラルなどたくさんの健康に必要な成分を含んでいますが、この中で特に注目されるのはジンセノサイドという高麗人参特有のサポニンを含んでいるところです。
サポニンは脳の副腎皮質ホルモンの分泌を促す働きをします。
副交感神経が優位になると精神がリラックスしてきます。更年期の時期は自律神経の乱れから交感神経が昂りイライラやストレスの増加、不眠などになりがちです。
このような症状も副交感神経を優位にすることで自然と抑えてくれるのです。
更年期特有の精神的なイライラ・モヤモヤ・落ち込み・鬱状態などをやわらげ、不眠などの緩和も期待できるのがサポニンなのです。
他にも「ローヤルゼリー」はエストロゲンと同様の作用を持つと言われています。
ローヤルゼリーは女王蜂だけが食べられる蜜のことで、普通のはちみつに比べると高い栄養価が特徴です。
女王蜂だけが食べることを許されているわけですから、女性にとって良い成分がたくさん含まれているというわけです。
強い抗酸化作用を持つ成分として有名なものに「ポリフェノール」があります。
ポリフェノールには様々な種類がありますが、どれも強い抗酸化作用を持っており、植物の寿命の長さを支えているのはポリフェノールだとも言われています。
ポリフェノールは健康に良いとされ、ワインやチョコレートなど、ポリフェノールを含む食品は注目を集めていましたが、更年期障害に対してもそれは例外ではありません。
ポリフェノールの抗酸化作用によるアンチエイジング効果で、更年期障害が緩和できるとされています。
更年期障害は「のぼせ」や「ほてり」から来るだるさに加えて、「頭痛」や「眩暈」の症状が起こる方も多く、身体の元気が無くなっているような感覚を覚えます。
そんな中でも仕事や家事に追われ、ストレスが溜まっていく一方です。
そんなときに必要なのは「マカ」や「ギャバ」など、ストレス緩和や活力増強に良いとされる成分です。
ビタミンB9(葉酸)やビタミンB12などの血行促進を支えるビタミンや、カルシウムなどといった基本的な栄養素も、更年期になると摂取量が減ってしまうので積極的に摂っておきたい成分です。セサミンなどもおすすめです。ゴマのことです。
基本的にはどれも食品から摂ることが可能な成分ではありますが、毎日十分な量を食事で摂るのは難しいという場合は、サプリメントなどをうまく利用するのがおすすめです。
自分の食生活や症状を照らし合わせた上で、自分の合う成分の配合されたサプリメントを利用するとよいでしょう。
そして、姿勢を正しくするよう日頃から配慮し、背骨伸ばしのストレッチを習慣化させることが、最低でも必要になってきます。このような些細なことが馬鹿にならないのです。専門家はまったく無視され、必要なし、とされますが・・・