これまで述べてきましたことを総括しておきます。
これまで「慢性頭痛 発症の要因」http://taku1902.jp/sub647.pdf として以下を挙げました。
第1段階 「酸化ストレス・炎症体質」の形成
第2段階 姿勢の悪さ→「体の歪み(ストレートネック)」形成
第3段階 ホネオスターシス(自然治癒力)の乱れ
第4段階 脳過敏の要因 → 慢性化へ・・
そして、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な差異は、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”の有無でしかありません。
片頭痛とは、この発症過程の途中の第3段階から出現してくるものです。
すなわち、片頭痛とは、ミトコンドリアの機能が低下することによって、第1段階において、「酸化ストレス・炎症体質」が形成され、これを基盤として、第2段階において、「姿勢の悪さ」から「体の歪み(ストレートネック)」が形成され、ここに、第3段階の「ホネオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」が引き起こされることによって起きる頭痛です。
ここに第4段階の「脳過敏」を引き起こす要因が追加されて、片頭痛が増悪、慢性化していくことになります。
そして、最終段階は、病気としての「後天性ミトコンドリア病」です。
このように、慢性頭痛(片頭痛も含めて)とは、「後天性ミトコンドリア病」が引き起こされる途中の段階で出現してくる「症状」に過ぎないものです。
後天性ミトコンドリア病とは
現在では、人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われています。 ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に必然的に生み出されるのが活性酸素です。 ということは、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。
後天性ミトコンドリア病とは、いろいろな原因でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、活性酸素で身体が”酸化”していく全身病です。
ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、このため「酸化ストレス・炎症体質」を形成して、これを基盤として「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。
すなわち、第1段階の「酸化ストレス炎症体質」を基盤として、“内臓脂肪”の要因が加わると糖尿病に、生まれつき“ミトコンドリアの活性が低い”と片頭痛に、“脳内セロトニンが低下する”とうつ病やパニック障害に、“発がん物質を摂れば、ガンになり、βアミロイドが蓄積すれば、アルツハイマー病になってきます。
このように「酸化ストレス・炎症体質」は、片頭痛のみならず、私達の生活習慣病の基盤になってきます。
「酸化ストレス・炎症体質」とは、体の中から活性酸素がどんどん産生され、抗酸化作用が全く追いつかない状態で、いつも“腫れたり”、”痛みがでたり”、“熱がでたり”、”発赤がでたり”さらには、高血圧になったり、心臓や脳血管で血栓を起こしたり、コレステロール値が高くなったり、アレルギーになりやすかったり、風邪や癌などにかかりやすくなったり、頭痛が起こりやすくなったり、いろんな病気に罹りやすい体質のことです。
このように、ほとんどの現代病は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。
水や食生活、放射能汚染や環境汚染、有害物質の蔓延などや酸素不足などを原因として、後天的に発症するミトコンドリア病です。
「後天性ミトコンドリア病」とは、馴染みのない病名ですが、これは”ミトコンドリアの機能が低下する病気”です。
今までは、先天性の病気”遺伝的疾患”として考えられていましたが、現在は後天的な発症や、薬による副作用で発症することが証明されています。
以上のように、片頭痛は現代病のなかの一つであり、第1段階の「酸化ストレス炎症体質」を基盤として、生まれつき“ミトコンドリアの活性が低い”と片頭痛になります。
ということは、片頭痛を改善させるためには、この第1段階の「酸化ストレス炎症体質」を改善させることが必須となっています。
このためには、ミトコンドリアの機能を悪化させる要因をなくしてしまい、エネルギー産生系をミトコンドリア系を優位にし、解糖系を働かせないようにすることが重要になります。
こういったことから、片頭痛を改善させることは、現代病である生活習慣病(糖尿病・高脂血症・高血圧症)、脳卒中、うつ病、アルツハイマー病の基盤となる「酸化ストレス炎症体質」を改善させることを意味しており、これら現代病の芽を摘むことに繋がってくることになり、重要な意味合いを持っていることになります。
「症状」を「病気」と間違えた西洋医学
”脳のなかに異常のない”「慢性頭痛(一次性頭痛)」は、東洋医学でいう”未病”の段階にあり、すなわち健康と病気の中間に位置しており、この”未病”は本来、「健康的な生活」を送ることを阻害する生活習慣の問題点から引き起こされ、ここから「慢性緊張型頭痛」・「慢性片頭痛」へと進展し、さらに「病気」としての「後天性ミトコンドリア病」へと進むものです。
半健康・半病気の状態を、東洋医学では病気になる一歩手前だとして、「未病(みびょう)」と言っています。絶対的な健康ではなく、私たちの身体のバランスがどこか歪んでいるのです。これは「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」を意味しています。
「ホメオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」によって慢性頭痛という「症状」が出現し、さらに様々な生活習慣の問題点が加わることによって、難治性の頭痛にまで進展していくことになります。
このように慢性頭痛は、第3段階の「ホネオスターシスの乱れ(自然治癒力の低下)」が引き起こされることによって起きる頭痛です。
片頭痛とは、この途中の段階にある、いわば「症状」に過ぎないものです。
すなわち、「健康的な生活」が送れていないという警告信号である「症状」として、”片頭痛という形態”で、信号を発しています。
言い換えれば、「治癒反応」として、片頭痛発作を起こしているのです。
専門家達は、トリプタン製剤の服用を勧めます。
ところが、「治癒反応」である「頭痛(片頭痛)」をこうしたトリプタン製剤で「ホメオスターシス(自然治癒力)」を一方的に抑え込むことによって、「治癒反応」が停止・固定され、その結果 片頭痛は慢性化し、悪化してきます。
これが、片頭痛が慢性化する最大の原因になっています。
現実に、片頭痛全体の3割の方々は片頭痛を慢性化させ、苦渋を強いられています。
「片頭痛という症状」は「病気」である「後天性ミトコンドリア病」の治癒反応に過ぎません。
つまり、様々な「片頭痛という症状」は「病気」が治ろうとしている「現れ」なのです。
このため、鎮痛目的で片頭痛発作時にトリプタン製剤を服用することは「病気」が治ろうとする「ホメオスターシス(自然治癒力)」である「命の振り子」を逆向きに押し返すことになります。こういったことから”逆”症療法とも呼ばれます。
このように、急性期のトリプタン製剤や間歇期の予防薬といった薬物療法は対症療法に過ぎないもので、自然治癒力を奪うことにも繋がります。
このため、片頭痛を改善させるためには「自然治癒力」を高めないことには不可能です。
ただ単に、トリプタン製剤を服用していただけでは、改善は到底望めず、場合によっては慢性化させ悪化させる場合も当然のこととしてあり得るということです。
片頭痛は”病気”です???
トリプタン製剤が開発されて以来、トリプタン製剤によって、片頭痛という辛い頭痛が劇的に緩和されるようになったことから、いつの間にか、「病気」とされてしまいました。
本来なら、”未病”・「症状」に過ぎないものです。
(結局、トリプタン製剤によって、辛い片頭痛という頭痛を抑制しているだけのことです)
一般的には、西洋医学では、薬物療法で治療可能なものが、所謂「病気」として扱われており、そのほとんどは対症療法に過ぎないものです。
このように、西洋医学の薬の多くは対症療法であり、病気を根本的に治しません。また対症療法は、自然治癒力を奪うことにも繋がります。
現在の片頭痛治療方針では、発作急性期には各種のトリプタン製剤を使い分け、発作間歇期には各種の予防薬を”適切に”選択すべきとされ、これで片頭痛の治療体系は確立されたとされています。
このように「薬物療法」がすべてであり、片頭痛という辛い痛みだけを軽減・緩和させることに主眼が置かれ、このようにしておれば、いずれ3割前後の方々は治癒していくとされています。
しかし、治癒した3割の方々は、自然治癒力によって治癒したものです。
片頭痛はあくまでも、「国際頭痛分類 第3版β版」の診断基準で厳格に定義され、これに基づいて症状で診断されます。
ということはあくまでも「症状」に過ぎないものです。これを「病気」と思い違いをしていることになります。
日本にトリプタン製剤が導入された段階から、「片頭痛は”病気”です。”病気”ですから、医療機関を受診して、片頭痛を治療して、治しましょう」と言って片頭痛患者さんに医療機関への受診を勧め、生活の質QOLを高めて、健康寿命を長くさせましようと、しきりにマスコミを通じて、片頭痛患者さんを病院に誘導して、トリプタン製剤が処方されてきました。
さらに患者団体まで巻き込んで「なお、トリプタン製剤の恩恵に浴していない片頭痛患者さんが多くいる」と言って啓蒙活動を進めてきました。
このようにして、片頭痛の場合医療機関を受診して、トリプタン製剤を服用して、”治療”すべきとされますが、本来、このような薬剤を服用しなくても、我慢に我慢して3日間耐え抜けば、自然に治まってくることはどなたもご存じのはずです。
これはホメオスターシス(自然治癒力)のお陰で元の状態に戻るのです。
本来、片頭痛が原因不明とされていた時代に、片頭痛患者さんの”生活の質QOLを向上させる”ために、トリプタン製剤の服用が勧められていたに過ぎないものです。
それがいつしか、片頭痛発作時に毎回トリプタン製剤を服用しておれば、”片頭痛が治ってしまう”とか、片頭痛の”適切な治療”とはトリプタン製剤を服用すること、といった”ノーテンキ”なことを申される方々がいらっしゃることを忘れてはなりません。
片頭痛は”機能性頭痛”とされており、発作が治まれば元の健康状態に戻ってきます。このような観点からすれば、「自然治癒力(ホメオスターシス)」という観点から考えていかなくてはなりません。
病気である以上は、病理学的所見が必要です
ウイルヒョウ以来、近代の西洋医学では、病理解剖学的所見から、疾患の原因を探ることになっており、病理解剖学的所見が重要視されています。
ところが、片頭痛では、こうした手段が執れないことが問題です。
片頭痛持ちの人が片頭痛以外の病気で亡くなられた際の病理学的所見をもとに、それも偶発的な所見としか思えないものを基にして、これまで片頭痛が論じられてきました。
とくに、慢性片頭痛では、病理解剖学的に脳の器質的な変化が多数報告され、これらが片頭痛の慢性化に関連すると考えられ、慢性化の要因が論じられてきました。
さらに、片頭痛のときに起こる脳の変化(閃輝暗点)が、PET、MRI(BOLD 法)といった脳の新しい方法で、脳の病気が画像として確認されたことを問題にされます。
こうした所見は、片頭痛発作が治まれば消失するものです。
にも関わらず、これを針小棒大に考え、ここから一歩も抜け出せないのが専門家です。
こうした所見は病像、病態に過ぎないものであり、病因そのものではないということです。
しかし、片頭痛とは「症状」にすぎないものである以上は、病理学的所見が存在する訳はありません。このような単純なことです。
ということは、片頭痛は「病気」ではなく、あくまでも「症状」に過ぎないものです。
このような症状だけの病気は、西洋医学では機能性疾患と考えられています。
慢性頭痛の代表格とされる緊張型頭痛や片頭痛、さらにてんかんなどです。
風邪を引いた時を考えると、「病気」が風邪なら、発熱、咳、下痢などは「症状」つまり治癒反応です。
発熱は体温を上げてウイルスなど病原体を殺すためです。更に、免疫力を上げるためです。咳、鼻水、下痢は病原体の毒素を体外に排泄するためです。
これら「症状」の治癒反応のお陰で「病気」の風邪は、治っていくのです。
ところが、西洋医学はこの各々「症状」を「病気」と勘違いする重大ミスを犯しています。そして、発熱には「解熱剤」、咳には「鎮咳剤」、下痢には「下痢止め」の薬物を投与します。
片頭痛でも全く同様です。辛い頭痛にはトリプタン製剤、吐き気があれば制吐剤、発作回数が多ければ、予防薬を処方されます。
これらは、対症療法に過ぎないものです。ということは、これら薬剤は片頭痛を根本的に治すものではないということです。
片頭痛の延長線にある「後天性ミトコンドリア病」
この後天性ミトコンドリア病については、先程述べましたが、このなかには脳卒中があります。
これに関連して、片頭痛と脳梗塞の関係が注目されています。
このなかでも、最近では、脳梗塞とくに白質病変が注目されています。
第1部 脳梗塞
脳梗塞の原因は動脈硬化を基盤にして生じてきます。
血管の内側は血管内皮細胞という薄い1層の膜のような細胞で覆われています。この内皮細胞には2つの働きがあります。1つは「血液と血管壁が接触して血液が固まる」ことを防ぐバリアーとしての働き(抗血栓作用)です。もう一つは血管を拡張させる物質を産生して血液の流れを調節する働き(血流調節作用)です。
動脈硬化はまずこの血管内皮細胞が傷害されるところから始まります。傷ついた血管の内側には、傷を修復しようとしていろいろな細胞が集まります。
場合によっては血の固まり(血栓)もできるでしょう。血管壁に付着した悪玉コレステロールはマクロファージという細胞に食べられますが、泡沫細胞として血管壁に残り、動脈硬化の基盤が出来上がります。
ここで必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスが重要になってきます。
生体膜は、リン脂質やコレステロールといった脂肪酸やタンパク質などで作られていますが、この脂肪酸は活性酸素で酸化されやすい性質を持っています。
生体膜を作っている脂肪酸が活性酸素などで酸化される、つまり過酸化脂質となり劣化します。
この過酸化脂質とは、血液中にあるLDL(悪玉コレステロール)のことです。コレステロールは、リポ蛋白と言われる特別な膜に覆われていますが、この膜も生体膜と同じ性質を持っています。脂肪を過剰摂取するなどにより、血中でLDLの増加が続くと、LDLは活性酸素に出くわすチャンスも多くなり、SODなどの抗酸化酵素や膜にあるビタミンEなどでは間に合わなくなり、酸化LDLつまり過酸化脂質となるのです。
酸化LDL(悪玉コレステロールの酸化物)が引き起こすマクロファージの食べカス(アテローム)が、泡沫細胞として血管壁に貼り付くコブとなり次第に血管を狭めていきます。アテローム性動脈硬化の始まりです。
このように、血管に過酸化脂質が貯まると、血行障害や動脈硬化を招きやすくなります。そして、最終的に血管を閉塞させ脳梗塞を起こしてきます。
活性酸素は、動脈硬化を促進させます。
活性酸素とは、活性化された酸素のことで、酸化力の強い酸素です。つねにある程度の量の活性酸素が体内に存在して、ウイルスなどの侵入物を退治するという重要な働きをしています。
ただ、活性酸素も量が多過ぎてしまうと、細胞を酸化させて傷つけ、血管の老化を早くしたり、血液の中の余分なコレステロールを酸化させたりすることで、動脈硬化の発生する危険を高くしてしまいます。
ですから、活性酸素を体内に増やし過ぎないようにすることは、動脈硬化の予防に繋がります。
活性酸素が増えてしまう原因は、喫煙(たばこ)、ストレス、アルコール(飲酒)、大気汚染(排気ガス)、強い紫外線、激しい運動、残留農薬、病原菌、などです。
また、呼吸によって体内に入る酸素の約2%が、エネルギー発生の時に活性化して活性酸素になると言われています。
活性酸素は片頭痛を引き起こす引き金になるものです。
人が老いることを老化していくと一般的には捉えられていますが、年を一年一年積み重ねることが果たして老いるということでしょうか?
そうではなくて実は血管が老化することなのです。
この血管が老化していくことに活性酸素が深く関わっているのです。
活性酸素によって血管が酸化され硬くなり、脆くなる。しかも、活性酸素によって酸化されたコレステロールや中性脂肪が貯まって血管を狭くしてしまうのです。
そこを血栓(血の塊)が詰まれば一巻の終わりです。心臓の動脈が詰まれば狭心症や心筋梗塞を引き起こします。また、脳で動脈が詰まれば脳梗塞であり、血管が破れれば脳出血です。
このような血管が老化するという現象は中高年に多く見受けられましたが、昨今は、若い世代でも活性酸素を体の中にたくさん作るような生活が習慣化されて、早くから血管が老化しているのです。
従って、20 代 30 代で既に 40 代 50 代の血管になっている若者が、非常に増加しているのです。まさに老化がこの世代から始まっているのです。
このことから現在、日本は長寿社会かもしれませんが、これから先 10 年もすれば日本の平均寿命は70 代に下がっているかもしれないと予測されるのです。
人は空気を吸って、体内に酸素を取り入れています。その酸素を使って食物を体内で代謝させることによってエネルギーを作り出しているのです。
その役割を果たしているのが細胞内のミトコンドリアです。
ミトコンドリアが酸素を使ってエネルギーを作り出すときに、酸素の一部が活性酸素になります。
私達の体は 60 兆個の細胞から成り立っています。ですから、この一つ一つの細胞が酸素を使って栄養を代謝するたびに活性酸素を発生させているということになります。ということは、人間は生きている限り、活性酸素から逃れることはできないということです。
このように片頭痛とは活性酸素との関連から考えるべきものです。
●内皮細胞の“バリア機能”と”活性化機能”
血管病変のメカニズムを知ると、血圧や血糖値、LDL コレステロール値が高い人は、「このままでは危ないかも・・・」と、不安な気分になってしまうかもしれません。
しかし、血管は、若返りが可能な器官です。疲れて老化しかけた血管も、セルフケアで強く蘇(よみが)えさせることができ、それによって怖い血管病変も防げるのです。
その生まれ変わりの鍵を握るのが”内皮細胞”です。血管壁の最も内部に位置する内皮細胞は、一層の細胞だけが並ぶ薄い層ですが、血管内腔との境にあるので、血管内を流れる血液に常に接しています。その為、血液と血管壁の仲介者の様な役割を持ち、血管を守り、強くするよう働いているのです。
内皮細胞の主な役割は、“バリア機能”と”活性化機能”の二つに分かれます。バリア機能は「防壁機能」とも呼べるもので、血液中に存在する成分が血管壁内に侵入するのを防いでいます。血液の循環を川の流れに例えると、内皮細胞は川の水が溢れないように保ち、よどみない流れを促す堤防の様なものです。
一方、活性化機能は、内皮細胞自身が作る物質に関係しています。内皮細胞は防壁となって血管壁を守るだけでなく、血管を健康に保つ為の物質を自らが産み出し、活用しているのです。その主な物質が”NO(一酸化窒素)”です。
人の体内で産み出される"NO”はとても良い働きをします。これは血管壁に良い刺激を与え、血管壁を広げる働きをします。
すると血圧が下がり、血管の負担が減ってきます。また、NO が血液中に放出されると血液が固まりにくくなり、脳梗塞や心筋梗塞の引き金になる血栓ができにくくなります。その為、内皮細胞が生き生きしていると、血管自体も若さと強さを保てます。逆に、内皮細胞が疲れていると、本来の役割を果たせなくなり、血管の老化が早まって、40 代、50 代でも血管病変に襲われます。
つまり、内皮細胞をどうケアするかが、血管ケアの最大のカギとなるのです。
では、内皮細胞の働きによって血管はどう強くなり、血管病変を防げばよいのでしょうか?
●強いバリア機能が回復すると、プラークを形成する
LDL コレステロール等の悪者が血管内壁に入り込みにくくなります。このような状態が整うと、動脈硬化の初期段階くらいまでであれば、プラークが”退縮”して小さくなり、元の生き生きと弾力に富む血管が蘇えってくるのです。
更に、動脈硬化がある程度進んでいる段階でも、内皮細胞が再び強いバリア機能を持ち始めると、血管内面の傷が“修復”されて、血管が強く蘇えってきます。すると、プラークが退縮しないとしても、その表面を内皮細胞の強いバリアが覆っている為、プラークが壊れにくくなり、脳卒中や心筋梗塞の危険がかなり軽減するのです。また、内皮細胞が若返ると、NO の放出量が増え、血管が拡張して血圧が下がり、血栓もできにくくなり、血管の健康度がますます高まるのです。太い動脈の内皮細胞のケアは、細い動脈の若返りにも有効です。
細い動脈は、太い動脈から枝分かれして臓器の中になどを通っていますが、直径が0.5mm 以下と細い為、血管内部にプラークができるのではなく、血管壁自体が厚く硬くなって老化が進行します。
太い動脈の内皮細胞をケアすると、その効果が細い動脈にも及び、老化がかなり進行している段階でなければ、血管壁が元の厚さに戻って柔軟になり、血管自体が若さを取り戻してくるのです。
片頭痛の発作頻度が多かったり、発作の程度も激しい人程、脳梗塞になる方々が多いということが納得されるはずです。
ところが、専門家は以下のように考えています。
片頭痛の発作を起こすたび、脳血管の内皮細胞に損傷を起こし、繰り返す頭痛で血管ダメージが蓄積し、脳梗塞を引き起こすのです。
発症倍率は、単純な片頭痛がある方で2 倍、キラキラした光が見える片頭痛の方で6 倍、片頭痛がありタバコを吸うと10 倍、片頭痛があり低用量ピルを飲むと2 倍、片頭痛がありタバコを吸い、低用量ピルを飲むとなんと34 倍です。
このため、日本頭痛学会では前兆のある片頭痛を持っている患者に対してピルを服用させるのは禁忌、前兆がない場合でもピルの服用は慎重にすべきと定めています。
しかし、このために、脳梗塞予防のためにトリプタン製剤を服用しましょう、というのでは、まさに”的外れ”としか言えないことが納得できるはずです。
第2部 生活習慣病との関連では・・
1.糖質の過剰摂取
糖質の過剰摂取は、過食だけでなく、ドカ喰い・早食いによる一過性の高血糖は、以下のような問題を引き起こしてきます。
急激に血糖値が上がりすぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが過剰に分泌されることになります。過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げ過ぎることになります。血糖値が下がり過ぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとする体の仕組みが働き、体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。
体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費のバランスがとれていれば問題を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまうと血液中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。
緩やかな血糖値の上がり方なら良いのですが、急上昇と急降下を繰り返すような食事をしていると太りやすいのです。上がりすぎた血糖値を下げるためにインスリンが頑張って中性脂肪をたくさん作ってしまうということなのです・・・
また、急上昇急降下の食べ方はすぐにお腹が空くので、食べる量が多くなってしまいますし、いつも大量のインスリンを出していると膵臓が疲れてしまい糖尿病になりやすくなってしまいます。
インスリンの過剰分泌を起こすと、必要以上に細胞内にリンが取り込まれて血液中のリン濃度が低下し、低リン血症を起こします。低リン血症になるとマグネシウムは腎臓から尿とともに多く排泄されます。このように、インスリンの過剰分泌もマグネシウム不足を起こす原因となります。
東京慈恵会医科大学教授の横田邦信先生は、マグネシウムの不足は、2型糖尿病やメタボリックシンドロームなど生活習慣病の発症と密接な関係があると述べています。
マグネシウムは、体中のインスリンの作用を応援する役割を持っています。
つまりインスリンの感受性を正常に保つように働きます。
人が食物を摂取すると腸からエネルギー源であるブドウ糖が吸収され、ブドウ糖は血液中に入ります。インスリンが細胞に働きかけてブドウ糖が細胞に取り込まれると、血液中のブドウ糖濃度が低くなります。
マグネシウムは、細胞がブドウ糖を取り込む際の酵素チロシンキナーゼの働きをよくします。インスリンが細胞に働きかけ、ブドウ糖が細胞に入りやすくなります。その結果、血糖値が下がります。
このために、日常的にマグネシウムの摂取量が不足すると脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの分泌量が低下します。後で詳しく述べます。
アディポネクチンの不足は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満)を招きます。
また、インスリンの機能が低下し、糖質と脂質の代謝が悪くなるため血糖値が上昇し、「高血糖」を引き起こすことになります。
また、細胞は常にカリウムやカルシウム、ナトリウムを出し入れしていますが、マグネシウムは、出し入れするポンプの働きを滑らかにする作用があります。このポンプが活発になるとエネルギーが消費されるので、ブドウ糖の消費にも繋がります。
マグネシウムは細胞レベルの運動を活発にしてくれるのです。
マグネシウムは血管の働きにも作用しています。
マグネシウムが不足すると血管が収縮してしまい(「低体温」、「低酸素」を招来します)、血圧が上がるのです。マグネシウム不足は交感神経の緊張状態を作るので、神経という面からも高血圧に繋がってしまいます。
このように生活習慣病とマグネシウムは密接な関係があり、片頭痛でも前回述べましたようにマグネシウムは密接な関係があります。
消費されなかった余分な糖は、コラーゲンなどのタンパク質と結びつきAGE(終末糖化産物)という物質に変質してしまいます。このAGEの有害な毒物の蓄積が、ミトコンドリアの機能を悪くする原因になっています。
2.過剰な脂肪の摂取
体についた脂肪は、そのままでは燃えません。まず、燃えやすい遊離脂肪酸に変化し、血液の中に流れ出します。そして、各細胞内のミトコンドリアへと流れていきます。ミトコンドリアは、エネルギーを生み出す場所です。遊離脂肪酸を燃料としてエネルギーを生み出すのです。こうして、脂肪は燃焼します。
遊離脂肪酸は”L-カルニチン”CoQ10が不足していては、脂肪はうまく燃焼されません。この2つが不足すれば、脂質は燃焼されないことになります。
使い切れなかった脂質は他のエネルギー源同様、中性脂肪に変えられ、体脂肪として蓄えられます。そのため脂質を摂りすぎると肥満や脂肪肝の原因となり、さらに血液中の中性脂肪やコレステロールが増える脂質異常症や、メタボリックシンドローム、動脈硬化、心筋梗塞や脳梗塞などの原因にもなります。
脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種、アディポネクチンには、ミトコンドリアの数を増やす効果があると言われています。これも肥満になれば分泌量が減り、減量すると増えます。
アディポネクチンには脂肪を燃焼させる働きがあります。
体を動かしてエネルギーが必要になると、脂肪を分解する酵素「リパーゼ」が活性化されて、体内の脂肪をエネルギーとして消費します。また、筋肉にある酵素「AMPキナーゼ」も活性化されて、糖や脂肪をエネルギーとして活用しようとします。つまり、運動することで酵素が活躍して、脂肪が蓄積されるのを防いでくれるのです。
これに対してアディポネクチンには、運動を行わなくてもAMPキナーゼを活性化する働きがあります。運動をすればもちろん、しなくても糖や脂肪の消費をサポートしてくれるのです。アディポネクチンが分泌されていれば、脂肪を燃焼しやすく、太りにくいカラダになることが可能というわけです。
脂肪、なかでも内臓脂肪が多くなればなるほど、アディポネクチンの分泌量が減ってしまうことが分かっています。
アディポネクチンが分泌されるためには、脂肪を貯め込むことを防がなくてはいけないのです。
アディポネクチンが注目される理由は、脂肪燃焼の働きだけではありません。
今、最も注目されている点は、動脈硬化を予防し、改善する働きです。
血管は加齢によって弾力が失われるだけでなく、糖や脂質などを摂取することで常に損傷していきます。そうすると血管壁にコレステロールがプラークとして付着しやすくなり、血管を詰まりやすくしてしまいます。動脈硬化は高血圧や心筋梗塞、脳卒中を引き起こす大きな原因となってしまうのです。
アディポネクチンには血管内の傷を修復するだけでなく、血管を拡張する働きがあります。そのためアディポネクチンがちゃんと分泌されていれば、動脈硬化を予防することが可能となり、高血圧や心筋梗塞、脳卒中のリスクを低減できることになります。
アディポネクチンにはインスリンの効果を高める働きもあります。膵臓から分泌されるインスリンは、私たちの体の中で唯一、血糖値を下げてくれる働きを持っています。
しかしアディポネクチンの値が低いとインスリンの働きが悪くなってしまい、血糖値が上昇してしまう危険性があります。つまりアディポネクチンには、2型糖尿病の予防に対しても大きな期待がかけられているのです。
また、脂肪を燃焼する働きがあるアディポネクチンの分泌が十分でなければ、脂質の代謝が悪くなってしまいます。このため太りやすくなるだけでなく、中性脂肪の数値が悪くなったり、善玉と言われるHDLコレステロールの数値が低くなったりします。すると、脂質異常症にも繋がってしまいます。
高血圧や糖尿病、脂質異常症といった病気は「生活習慣病」と呼ばれる病気です。アディポネクチンが正常に分泌されていれば、これらの生活習慣病を防いでくれる可能性があります。
3.AMP活性化プロテインキナーゼAMPK
ミトコンドリアがエネルギー・ATPを産生する際に以下のような制御機構があります。
色々な活動にエネルギーを使うと、ATPが減少し、AMPが増えてきます。 ATPの減少を感知して、活性化され、ATPのレベルを回復させるように代謝を調節しているのが、AMP活性化プロテインキナーゼ“AMPK”なのです。つまり、AMP活性化プロテインキナーゼAMPKは、細胞内のエネルギーセンサーで、一番重要なマスタースイッチとしての役割を果たしています。
AMPKが活性化しないと、蓄えていたエネルギーを有効に使えなくなってしまいますので、脂質や糖などのバランスが崩れ、様々な病気になってしまう危険があります。
脂質が増えれば、血中のコレステロールやグリセリドの濃度が上がり、血管に悪影響を与え、動脈硬化に繋がるかもしれません。皮下脂肪も増えてお腹周りが増えたり、体重が増えたりするかもしれません。
血中の糖分が増えれば、血糖値が上昇し、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなり、さらには糖尿病に繋がるかもしれません。異常やダメージを受けたタンパク質が増えてくれば、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経退縮性疾患になるかもしれません。
AMPKが活性化しない原因は過食と運動不足です。
そして、この過食と運動不足がミトコンドリアの機能を悪化させる根源になっています。
さらに、動脈硬化を助長させる糖尿病、高脂血症を発症させるものは、過食と運動不足に関連して形成される「酸化ストレス・炎症体質」であることは、これまで述べてきたことです。
第3部 老化との関連から
人間の細胞の寿命は、遺伝子「テロメア」によって決められています。この「テロメア」は、別名〝寿命の回数券〟ともいわれています。
そもそも私たちの体は、約60 兆個もの細胞からできています。それぞれの細胞は核を持ち、核の中には46 本の染色体が入っています。テロメアはこの染色体の先端に存在するフタのようなものです。これは、螺旋状になっている大切な遺伝子情報を保護する役目があります。このおかげで、DNA が末端から壊れていったり、DNA 同士がくっついたりしないようになっています。つまり、正常に細胞分裂をするためにはテロメアは必要不可欠な存在なのです。
このテロメアは生まれた時は、約1 万塩基あるのですが、これが5000 塩基になると人間は死んでしまうことがわかっています。つまり、寿命が尽きるわけです。
普通の生活をしていると、毎年、約50塩基ずつテロメアは減っていきますが、大きな病気をしなければ、誰でも本当は125 歳までは生きることができるのです。これが、「寿命の回数券」といわれる理由です。
想像してください、回数券は使い方が荒ければ荒いほど、すぐなくなりますが、必要に応じて、大事に使っていけば減り方は少ないわけです。
テロメアも同じです。好き勝手に、体に無理させて生きていけば、どんどんテロメアは短くなります。しかし、テロメアを意識して一日一日、大事に生活すれば、テロメアが短くなるペースを遅らせられます。
つまり、いかにテロメアを減らさないかが長寿のコツなのです。
こうやって考えると、人間の寿命は125 歳まで延ばせることがわかっています。もちろん、介護されて長生きするのではありません。健康でいきいきと125年の人生をまっとうするための方法があるというわけです。
2009 年、3 人のテロメア研究者がノーベル医学生理学賞を受賞していますが、一般にはあまり知られていないのが現実です。「テロメア」を理解していれば、健やかに長生きできるコツがわかるのに、実にもったいない話です。
参考までに、ミトコンドリアと、染色体の末端にある保護キャップのテロメアとの間に機能的な結びつきがあることが最近明らかになり、この両方が老化現象にかかわっているのではないかと考えられるようになりました。
ヒトは約60兆個の細胞からなりますが、老化に伴いその数が減少します。
ミトコンドリアは大量の酸素を消費しており、その過程で多くの活性酸素を発生します。これにより細胞が酸化障害され、mtDNAに損傷が蓄積するとミトコンドリアの機能も障害されます。
異常なミトコンドリアが多い細胞では必要なエネルギーが産生できなくなり、アポトーシスを起こしやすくなります。特に、エネルギー代謝が盛んな骨格筋や神経細胞では、ミトコンドリアの劣化に伴うアポトーシスが原因で機能も低下します。
アポトーシスとは細胞の自殺のことを意味します。
お年寄りの体が小さくなったり機能が低下するのは、このようなミトコンドリアの劣化やアポトーシスが原因の1つとなっています。
このように、主にテロメアを減らしているのは「活性酸素」です。活性酸素を発生させないためには腸内環境を整え、免疫力を上げることが何よりも大事です。
そのためには、「50 歳からの食べ方で、生き方を変える」ということです。
なぜならば、人間の体は50歳ぐらいを境に大きく生理機能が変わるということが、明らかになっているからです。今までと同じ食習慣や、食べ方の質が悪いだけで、腸内環境が悪くなり、免疫力が下がっていきます。逆に食事を正せば、腸内環境が整い、免疫力も上がるわけです。
ミトコンドリアが最も多いのは腸管です。このため、理想的な腸内環境にもっていくことが老化の予防になってきます。
腸内環境は、自然治癒力を構成する一角となっており、片頭痛発症の鍵となる重要なものであることは、これまでも述べてきたことです。
理想の腸内フローラをはぐくむ生活習慣
http://taku1902.jp/sub630.pdf
アルツハイマー病との関連はペイジ数の関係から省略します。
いずれにしても、片頭痛治療の延長線上にこのような現代病は位置しています。
このように、現代病の病因はすべて一連のものであり、片頭痛はまさしく”未病”の段階にあるということが理解されたことと思います。
片頭痛は原因不明の”不思議で・神秘的な”遺伝的疾患”ではありません。
片頭痛の原因は、私達が何気なく日常生活を送る際の極めて些細なことにあります。
すなわち、私達が「健康的な生活」を送ることを阻害する生活環境および生活習慣にあります。
ですから、片頭痛を改善させることは、健康と美容が約束され、さらに現代病である生活習慣病や認知症、ガンが予防できることに繋がってきます。
このことが最も大切なことです。
片頭痛はまさしく病気としての「現代病」の入り口、すなわち”未病”の段階にある「症状」に過ぎないものです。
片頭痛発作が出現し、さらにこれが繰り返されるということは、こうした現代病に至るという「危険信号・症状」と考えるべきものです。