すべての始まりは、うつむき姿勢(前屈みの姿勢)にあります
現代社会は、日常生活を送る上で、第3章で述べましたように私達の生活環境および生活習慣にはミトコンドリアの機能を悪化させる要因に満ち溢れています。ミトコンドリアの働きが悪くなれば、同時にセロトニン神経系の機能が低下してきます。この両者によって「姿勢の悪さ」を引き起こしやすい状況に置かれています。
私達は、日常生活を送る上で、前屈みの姿勢を強制される生活環境に置かれています。
特に、女性の場合は、炊事・洗濯・掃除を行う際に”前屈みの姿勢”を日常的にとっています。
さらに職場では、事務系の仕事が多いためパソコンの操作を終日行うことになります。仕事が終われば四六時中スマホ・携帯を覗き込む姿勢をとっています。現代社会はスマホ全盛の時代で、歩きスマホをされるご時世です。
こうした前傾姿勢は知らず知らずのうちに後頸部の筋肉に負担をかけることになります。
ここにさらに、イスに座るとつい脚を組んでしまう、ヒールの高いクツを長時間履いている、立っている時は大抵どちらかの足に体重を乗せている、横座りをする、立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い、いつもどちらかを下にして横向きに寝ている、または、うつ伏せになって寝ている、長時間座りっぱなしの仕事、イスやソファーに浅く座ってしまう、バックなどはいつも同じ方の肩にかける、重たい物を持つ仕事をしている、赤ちゃんをダッコしていることが多い、などの無意識に”おかしな体の使い方”をしていますと、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪みから脊椎(背骨)の歪みが生じてきます。仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びこれが頸椎にまで及んで、”脊柱の捻れ”を最終的に引き起こしてきます。
人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、背骨が一直線ですと、全体重が下方の背骨に掛かることにより、すぐに下部の背骨がダメになってしまいます。こうしたことにならないように脊柱はS状の湾曲を呈しています。S状の湾曲を示すことによって体重の掛かり方を分散させています。ということは頸椎は前に湾曲を示していることになります。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
これが、日常的に感じる極く軽度の頭痛です。
日常的に感じる極く軽度の頭痛は、姿勢の悪さに前屈みを強制される生活環境によって引き起こされ、「体の歪み(ストレートネック)」が形成される以前の段階において出現してきています。
このようにして、日常的に感じる極く軽度の頭痛が引き起こされてきます。
このような前屈みや俯き姿勢が長期間継続すれば、「体の歪み(ストレートネック)」を最終的に引き起こしてきます。このため、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。これが慢性頭痛、とくに片頭痛を引き起こす準備状態を形成します。
「体の歪み(ストレートネック)」が持続すれば、頸部の筋肉が絶えず刺激を受けることになり、この刺激は三叉神経核に絶えず送られることによって、さらに「脳過敏」を増強させます。
「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓ ↓
↓ 脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓ ↓
↓ 中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓ ↓
↓ 脳の過敏性、頭痛の慢性化
↓
自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頸性神経筋症候群
(慢性頭痛)
尾側亜核で三叉神経と頸神経が収束する
「体の歪み(ストレートネック)」のために、頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経と三叉神経は脳の中で、三叉・頸神経複合体を形成していて、繋がっていますので、大後頭神経の刺激は三叉神経核にも伝わります。
このため、「体の歪み(ストレートネック)」が改善されないまま、放置されることにより、後頸部筋肉群にかかった刺激は常時、三叉神経核に送られ続けられることになります。
これがさらに、「脳の過敏性」、「頭痛の慢性化」へと繋がっていくことになります。さらに「体の歪み(ストレートネック)」は「閃輝暗点」を引き起こす要因にもなっています。後で述べます。
このようにして、片頭痛を発症させる要因にもなってきます。
このような後頸部筋肉群にかかる刺激(「体の歪み(ストレートネック)」)を取り除くことが、まず慢性頭痛を起こさないために重要になってきます。
体の歪み(ストレートネック)は、ミトコンドリア、セロトニン神経系、前屈みの姿勢の3つが関与していることを忘れてはなりません。
ここで注意すべきことは、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜・左右いずれかに傾いて(捻れて)いることです。傾いて(捻れて)おれば、バランスがとれず後頸部の筋肉の片側だけに張力が常に加わることになり、これが肩こりに繋がり、この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
片頭痛も緊張型頭痛も共通して「頸部筋肉群の首疲労」を基盤として発症してきます。これは、両方の頭痛に共通して「体の歪み(ストレートネック)」が認められるためです。「体の歪み(ストレートネック)」をなくせば、慢性頭痛は激減することになります。
ここに、片頭痛の遺伝素因を持ち、脳内セロトニンが低下することによって、痛みを感じやすくする状況に至れば、片頭痛を出現させることになります。
このように、「体の歪み(ストレートネック)」は緊張型頭痛も片頭痛も引き起こしてくることになり、緊張型頭痛も片頭痛も一連の連続したものと考えなくてはなりません。
これまでの当医院の調査では、体の歪み(ストレートネック)の確認率は、男性で52%、女性では68%と圧倒的に多く、緊張型頭痛では84%、片頭痛では95%に、群発頭痛では全例に、「体の歪み(ストレートネック)」が確認されています。
このように、緊張型頭痛でも片頭痛にも共通して「体の歪み(ストレートネック)」を認め、片頭痛では緊張型頭痛以上の頻度でみられるということは、緊張型頭痛と片頭痛は連続したものと考えるのが妥当のように思われます。
すなわち、緊張型頭痛に片頭痛が重なってきていると考えるべきです。
このために片頭痛での頻度が高いと考えるべきです。
緊張型頭痛、片頭痛は、一連の連続したもの
東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、以下のように指摘されます。
緊張型頭痛では、デスクワーク、特にパソコンを使って仕事をすることにより、俯き姿勢を長時間とると、首の後ろ側の頭半棘筋が緊張し、その筋肉を貫くように走っている「大後頭神経」が圧迫され頭痛が起こり、緊張型頭痛は明らかに”首疲労”からもたらされる病気で、”首疲労”を治療することによって、痛みがきれいに消えてしまいます。
ところが、明らかに片頭痛と考えられる予兆や前兆を持っていて、片頭痛に有効なトリプタン製剤を飲んだら、頭痛がぴたりと止まることから、典型的な片頭痛と他院で診断された患者さんに対して、”頸筋の異常を治療”したら、片頭痛が起きなくなるものが、片頭痛の一部に存在します。
こうなると、片頭痛と緊張型頭痛という分類自体が怪しくなってきます。
頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経は、頭痛をもたらす神経です。大後頭神経と三叉神経は脳のなかで繋がっていますので、大後頭神経の刺激は、三叉神経にも伝わります。
大後頭神経と三叉神経が同時に痛くなる現象は、よく知られています。
「体の歪み(ストレートネック)」が長期間、放置されて引き起こされる病態が東京脳神経センターの松井孝嘉先生の提唱される「頸性神経筋症候群」です。
”頭痛の専門家”で神経内科学の重鎮とされる岩田 誠 先生は、さらに以下のように指摘されます。
”頸性神経筋症候群”という病態が片頭痛患者に生じますと、片頭痛発作の頻度の増加や程度の悪化、トリプタン製剤の効果減弱に繋がると思っております。
従って、明らかに片頭痛患者であると思われる方で、”頸性神経筋症候群”がある場合には、片頭痛への治療と同時に”頸性神経筋症候群”に対する積極的な治療を行うようにしています。これにより発作頻度の減少、発作時の症状の軽減、トリプタン製剤の効果の改善が認められる患者が少なくありません。
この説明では、片頭痛に”頸性神経筋症候群”を合併した場合とされていますが、果たして、これをどのように考えるべきでしょうか?
逆に、”頸性神経筋症候群”の延長線上に片頭痛が存在するとは考えられないでしょうか。
このように、多くの片頭痛では、緊張型頭痛に重なった形にあるため、トリプタン製剤を服用して、上層にある片頭痛が改善されても、下層にある緊張型頭痛の軽い頭痛までは完全に無くすことはできません。
トリプタン製剤が片頭痛の特効薬とされているため、ひたすら”完璧に”痛みを消し去ること考えて、追加服用することから、服用回数が増えてくることになります。このため薬剤乱用頭痛を作りやすくなります。
このため、就業などに支障がない程度まで改善されれば、それで、「よし」、と考えるべきでありながら、このような考え方もなく、服用回数を増加させれば、必ずといってよい位に、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を作ってくることになります。
このようにトリプタン製剤には、完璧には頭痛を消失させる程の効果はないと心得なくてはなりません。
また、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の提唱される「3つの約束」を忠実に行って片頭痛が改善されても、下層に位置する「緊張型頭痛」は残存することが往々にしてあり得るということです。
これを図表で表せば、以下のようにイメージされます。
片頭痛の”緊張型頭痛”はsmall migraine
慢性片頭痛 ・・・・ 慢性緊張型頭痛
片頭痛 頻発反復性緊張型頭痛
big(true)migraine 稀発反復性緊張型頭痛
連続体 ↑↑
緊張型頭痛 ・・・・ 日常的に感じる極く軽度の頭痛
small migraine
ということは、片頭痛での緊張型頭痛はsmall migraine で、本格的な片頭痛はbig true migraine で、これが連続しているということです。
緊張型頭痛はこれとは別に、独立して、存在するということです。
この差異は、片頭痛素因の有無で決まります。
このように緊張型頭痛も片頭痛も連続した一連の頭痛であり、緊張型頭痛と片頭痛の基本的な相違点は、ミトコンドリアの活性低下という遺伝素因の有無でしかありません。
前兆の「閃輝暗点」との関連
小橋 雄太さんはブログ「イミグラン錠副作用なしで片頭痛を治しちゃえ」で自らの体験を述べておられ、10年以上、閃輝暗点を伴う片頭痛に悩まされ、「体の歪み」に片頭痛発作の引き金があることに気付いて、当初は整体師さんの指導を受け、この指導を毎日忠実に守り・実行することによって片頭痛・閃輝暗点を改善されました。
このようにカイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々は「体の歪み(ストレートネック)」に対して施術され、閃輝暗点を改善されておられます。
こうしたことから、カイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々からは、トリプタン製剤やミグシス・テラナスなどの薬物では治るはずはないと唾棄される現実があるようです。
私は「閃輝暗点」を伴う方々で、頸椎X線検査でストレートネックを呈する方々に対して、「体の歪み(ストレートネック)」を改善させることによって、閃輝暗点がどのようになるのかを検討してきました。
60歳以上の方で、若い頃、片頭痛の既往のない方で「閃輝暗点」を訴えて来院された方々を15例経験していますが、これらの方々全例に「体の歪み(ストレートネック)」を認め、同様に「体の歪み(ストレートネック)」の改善のみで、「閃輝暗点」は消失しています。
これとは別に、若い世代の「閃輝暗点」を伴う片頭痛の場合も、当然「体の歪み(ストレートネック)」を伴っておられる方々に「体の歪み(ストレートネック)」の是正させますと、前兆である「閃輝暗点」がまず消失してから片頭痛が改善されていくという経過をとっています。
このような成績をみますと、頭痛専門医は、閃輝暗点出現時の血流低下の状態をSPECTもしくはMRIで確認されますが、これは”閃輝暗点出現時”の”結末”を観察しているに過ぎないと考えるべきもので、あくまでもその引き金となるものは、頸部の異常な筋緊張”「体の歪み(ストレートネック)」”にあるものと考えるのが妥当のようです。
しかし、専門家は、このような「体の歪み(ストレートネック)」の存在意義そのものを否定されるため、このような考え方に至ることはありません。
自律神経機能との関連について・・とくに天気・低気圧との関連から
首にはたいへん多くの神経や血管が集中しています。首の筋肉や関節の異常などによって、これらの神経や血管が圧迫されると、自律神経の働きが乱れ、さまざまな不定愁訴が起きることが多いのです。その症状は、頭痛、吐き気、耳鳴り、めまい、イライラ、不眠など、実に様々です。ときには、こうした不調が自律神経失調症やうつ病など、こころの病気にまで発展することもあります。
ストレートネックが長期間、放置されて引き起こされる病態が「頚性神経筋症候群」です(東京脳神経センターの松井孝嘉先生による)。結果として、さまざまな自律神経失調症状が引き起こされ、片頭痛にストレートネックを伴う場合には、頭痛発作が「天気」によって左右されたり、光が異様に眩しく感じられたり、めまいが頭痛発作と関係なく出現したり、不眠、不安障害、パニック障害やうつ状態にまで発展することもあります。
(これらは片頭痛の共存症とされています)
こういったことから、慢性頭痛がこじれた状態になったり、ムチウチの場合にも同様ですが、頭痛をはじめとする色々な訴えが出てきます。その代表的なものは、「気象の変化、低気圧」によって頭痛が出現したり不定愁訴が増悪し、あたかも「天気予報士」のように天候を言い当てる方々もおられ、”気象病”の代表的疾患とされるほどです。
それでは、このような自律神経失調症状は、「体の歪み(ストレートネック)」とどのように関与しているのでしょうか? これに対して、2つの考え方があります。
(1)胸鎖乳突筋の関与
自律神経と脊柱は深い関係にあります。背骨の調節を行い機能を正常にすることによって、自律神経のバランスが整い、片頭痛の改善が期待できます。
特に首の上部(上部頚椎)が重要で、上部頚椎に問題が見られることが多いようです。
「体の歪み(ストレートネック)」が存在しますと、体中至る所に様々な緊張が不自然な歪みや血行不良を起こします。こうした機能低下の引き金となっている重要な筋肉があります。
それが胸鎖乳突筋と呼ばれる筋肉です。ちょうど頭の付け根(耳の後ろあたり)から、首筋(くびすじ)、鎖骨にかけて首の両側に付いています。
この筋肉の緊張は頭痛やめまい、耳鳴り、難聴などの引き金になる原因筋と考えられ、おおかた自律神経を司る筋肉とみるカイロプラクターもいるほどです。
緊張型頭痛・片頭痛に悩む方の多くは、この筋肉の影響によって、首の至るところに突っ張りやコリ・鈍痛を感じるのが特徴でもあります。(一度、首や肩を色々と押してみてください。痛みやコリを感じる部分があるはずです)
そういったことから、この胸鎖乳突筋の緊張を和らげることが、緊張型頭痛・片頭痛のひとつの改善ポイントになってきます。
以上のようにカイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々は考えて、「体の歪み(ストレートネック)」の施術をされて実績を挙げておられるようです。
(2)頸椎そのものが関係??
この考え方は「さかいクリニック」代表 の酒井慎太郎先生によるものです。
不定愁訴を伴う症状は「頭と首の境目」が治療のカギ
ここでポイントになるのは、首の後ろ側の上部の後頭骨と第1頸椎の間です。 この部分を緩めておくことが、首の健康をキープするうえで、大変重要になってきます。
後頭骨は、頭蓋骨の一番下の骨であり、第1頸椎は、7個ある頸椎の一番上の骨です。つまり、「頭」と「首」の境目にあたるところ、この部分を「関節包内矯正」を用いて広げたり、レーザーなどを当てて温めたりすると、非常に治療がうまくいくことが多いのです。首、肩のこりや痛みばかりではありません。この部分への治療が威力を発揮するのは、首や肩の不調に加えてさまざまな不定愁訴を訴えている場合です。首にトラブルが起こると、同時多発的に頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り、イライラといった症状が起こることが少なくありません。首を痛めた後、体のあちこちに不調が現れ、自律神経失調症のような症状(バレリュウ症候群)が出ることもあります。そういった数多くの不定愁訴が現れるタイプの不調にもこの部分を緩めることが大変有効です。
実は、なぜ、この「頭と首の境目」を緩めると、こうした好成績の治療ができるのか、そのメカニズムについては、よくわかっていません。ただ、この部分は脳と首の接点であり、大脳と体を繋ぐたくさんの神経や血管が集中しているところです。この重要な部分の隙間が狭くなると、自律神経系や血流などにさまざまな影響が出るのではないかと推測されています。神経や血管が圧迫されると、大脳から体の各器官への指令がうまく伝わらなくなってなってくる可能性があります。それで、肩や首の不調とともにさまざまな不定愁訴が現れてくるのではないかと思われます。
私は、この「頭と首の境目」の部分が、首や肩の状態を左右する非常に大きなカギなのではないかと思っています。
このカギが閉まってしまっているか、開いているかは、首・肩の健康に大きな違いが出てきます。カギを開けてちょっと緩めてあげるだけで、それまで堰き止められていたいろいろな”流れ”が回復するような気がします。恐らく、ここを緩めることで、脳から体へ向かう血液の流れや、脳脊髄液の流れ、神経伝達の流れなどが一斉に回復するのではないでしょうか。
当医院には、首・肩こりや痛みはもちろんのこと、さまざまな不定愁訴に悩まされ続けた方がたくさん来院されています。そういう大多数の患者さんが、「頭と首の境目」にレーザーを当てたり、「関節包内矯正」を行ったりすることによって実際に治っているのです。
ですから、いろいろな不定愁訴を伴う首こりや肩こりも、決してあきらめることはありません。「頭と首の境目」のポイントに狙いを定め、脳と体の連絡をよくする治療を行えば、すっきり治すことが可能なのです。
東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、「体の歪み(ストレートネック)」が長期間持続した病態として「頸性神経筋症候群」を提唱され、以下のような17疾患を挙げておられます。
頭痛 (緊張型頭痛と一部の片頭痛)
めまい
ドライアイ
自律神経失調症
パニック障害
うつ状態
更年期障害
頸椎ねんざ
多汗症
機能性胃腸症―胃の不調
過敏性腸症候群-便秘や下痢またはその両方をくり返す
機能性食道嚥下障害-食べ物がのみ込みにくい
血圧不安定症
VDT症候群・・前屈みの作業
これらは、スマホ病とも称されるものです。
体の歪み(ストレートネック)を来す要因
1.パソコン作業による”前かがみ””うつむき”が元凶
さかいクリニック代表の酒井慎太郎先生 は以下のように述べておられます。
ストレートネックを生み出す最大の原因。
それは、前屈みや俯きの姿勢などを長時間続けるような生活習慣にあります。 原因の99 % は、ここから来ていると言っていいでしょう。
皆さんも、日頃、いかに前屈みや俯きの姿勢でいることが多いか、ご自分の生活を振り返ってみて下さい。
このため「体の歪み(ストレートネック)」にならないように注意が必要です。パソコンの画面に釘付けになっている時間がとても長くありませんか?パソコンを使っていなくても、デスクワークをしていたり、携帯電話・スマホやゲームの画面を見ていたり、座って本を読んでいたり、車を運転したり・・・。 1日のほとんどの時間を前屈みや俯きの姿勢で過ごしているという人も少なくないのではないでしょうか。そういう毎日の生活習慣が、「体の歪み(ストレートネック)」をつくる”大もと”になっているのです。
とくに、パソコン作業を長時間続けていると、座りっぱなしのまま、知らず知らずのうちに前屈みや俯きになってしまいます。なかでもノートパソコンを使っていると、画面の位置が低く、目線が下向きになってしまうため、前屈みや俯きになりがちです。ひどい人になると、猫背になって、顔とあごを前に突き出すような姿勢で作業をしていたりします。
このように前屈みや俯きの姿勢を長時間続けると、首や肩の筋肉が緊張しっぱなしになって、こりが進んでしまいます。そして、こうした「筋肉が緊張しっぱなしになる状態」が日々積み重なると、ガチガチに緊張した筋肉に常に頸椎が引っ張られる形となって、本来のカーブが少しずつ消失していってしまうのです。
なお、こういった「体の歪み(ストレートネック)」の症状は、基本的には長い月日をかけてジワジワ進むものです。
しかし、なかには急速に進むこともあります。
たとえば、四六時中、前屈みになって根をつめるパソコン作業を行うような日々を続けたとしたら、ほんの2,3週間ほどでカーブが消失してしまうことも少なくありません。
また、ときには車の追突事故などでムチウチになり、「体の歪み(ストレートネック)」が一気に加速することもあります。
とにかく、頸椎とは、非常にナイーブにできているところなのです。
前に述べたように、人の頭は6キロほどあり、それが俯き姿勢をとったときには、首にかかる荷重は3倍にも膨れあがるのです。
ですから、俯きっぱなしで首に疲労を貯め込んだり、首に大きな衝撃を加えたりしてはいけません。
いい加減に現代人は首を酷使する毎日から脱却しなくてはなりません。
そして「首をいたわる生活習慣」を身につけるべきなのではないでしょうか。
2.頭を打ったり首を痛めたりした経験はありませんか?
これは東京脳神経センターの松井孝嘉先生の見解です。
ストレートネック、すなわち、首疲労を起こすもう一つの原因があります。
それは、過去に「ムチウチなどの外傷」を負った経験があり、首の筋肉組織を痛めたことによってさまざまな不調が起こる場合です。
皆さんも、子供の頃から現在に至るまでの自分の過去を振り返ってみれば、頭を強く打ったり首を痛めたりした経験は何度かあるのではないでしょうか。
一番多いのは、車の追突事故をはじめとした交通事故で首を痛める場合です。
そのほかにも、子供の頃、鉄棒やジャングルジムなどから落ちたりしたことがあったかも知れませんし、自転車やオートバイで転んで頭部を打ったことがあったかもしれません。また、学生時代、ラグビーやサッカー、格闘技などの激しいスポーツをしていて、頭や首を痛める場合も多いのではないでしょうか。
実は、そういうふうに強い衝撃を受けた際に生じた「首の筋肉の損傷」は時間が経ってもなかなか治らないことが多いのです。なかには、子供の頃に首を痛めて以来、何十年も不調を引きずっているような場合もありますし、何年も前に首を痛めた影響が今頃になって出てくるような場合もあります。首の筋肉は常に働いて頭を支えていかなくてはなりませんから、他の筋肉と違って損傷が治りにくく、小さなトラブルが尾を引きやすいのです。また、頭部外傷でも首の筋肉を痛めて、ムチウチと同じ症状が現れることがあります。
頭部に外傷を受けて脳神経外科を受診しますと、頭の検査だけをして「異常ありません」と帰される場合がほとんどです。けれど、外傷を受けたあとしばらくして、ムチウチと同じ症状が出て困っている人は非常にたくさんいます。
ちなみに、このような患者さんの首のレントゲン撮影をしてみますと、たいていの場合、7個並んだ頸椎が真っ直ぐになってしまっています。本来は下のほうへ向かうにつれ、頸椎がゆるやかにカーブしているはずなのですが、そのカーブが失われてしまっているのです。これは「体の歪み(ストレートネック)」といって、首の筋肉が本来の働きを果たせなくなることで起こる現象です。首の筋肉が硬くなり、伸びなくなっているために、そのしわ寄せが頸椎に及び、並びがだんだんまっすぐになっていってしまうのです。
これは、首疲労から不定愁訴を起こしている患者さんには、ほとんどの場合、この「体の歪み(ストレートネック)」が見られます。
過去に頭や首を痛めた経験のある人、また、整形外科などで、「体の歪み(ストレートネック)」を指摘されている人は、首の筋肉のどこかに通常の働きができなくなっている部分がある可能性が大きいのです。その分、首疲労に陥る危険が高いことになりますので注意が必要です。
ムチウチに対する治療で、事故後、よく患部をカラーで固めたり、牽引治療を行ったりする人もいますが、私はこうした治療は逆効果だと考えております。カラーで固めるのは首の筋肉のこりを固まらせて治癒を遅らせますし、牽引で無理に首を引っ張ると、傷ついた患部組織にさらに新しい外傷を加えることになり、いつまでも症状を長引かせる原因になります。
これまで、このような治療が行われてきたため、ムチウチの方々を長年苦しませる結果となっていました。
これまで、片頭痛の慢性化のリスク要因には医療介入できない因子として、女性、社会的経済的階層(低い教育歴と低収入)、婚姻状態(未婚)、頸部または頭部外傷の既往などが挙げられておりました。
ということは、頸部または頭部外傷の既往に関しては、片頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」の関与が全く念頭になかった結果と考えられます。
また、相撲解説者の舞の海秀平さんは「片頭痛もち」で有名ですが、舞の海さんは、現役時代の「ぶつかり稽古」で首の筋肉に損傷を受けていたのでしょうか、引退して3~4年後に片頭痛を発症されたようです。舞の海秀平さんは、都内の超有名な専門医によって「元来の片頭痛と頸椎の椎間板ヘルニアが引き起こす頭痛が複合したもの」と診断されたようです。
ここでも、首の筋肉疲労という視点が全くないための診断と思われます。
ここで忘れてはならないことは、ムチウチを契機もしくは受傷後しばらく経過した後に、片頭痛が出現したり、これまでの片頭痛が一段と増悪することが日常茶飯事に経験されるということです。このことは重要なことです。
3.その他の”ストレートネック”の原因
これまで、ストレートネックを引き起こす原因として、
パソコン作業などによる”前かがみ””うつむき”姿勢
ムチウチなどの外傷
の2つを挙げましたが、これ以外にも原因があります。
(1)歯の噛み合わせの悪さ
歯の噛み合わせ・・体の歪み(ストレートネック)との関連から
脳神経外科の学会では「頭痛が起きる原因は、首の骨(頸椎)の歪みである」という報告がされています。
そして、この頸椎の歪みが起きる原因の1つとして考えられるのが、歯の噛み合わせです。
歯科領域では、「歯の噛み合わせを変えることによって、頸椎の歪みが改善される」という報告がされているのです。
このことから、
歯の噛み合わせが悪い
↓
首の骨が歪む
↓
頭痛が起きる
ということが考えられており、逆に言えば歯の噛み合わせを改善することによって、歪みを治し、頭痛を改善することができると言えます。
長年頭痛薬を飲み続けて治らなかった頭痛を、噛み合わせを改善することで改善することができたというケースが多数報告されています。
歯の噛み合わせが悪いと、どうして頸椎が歪むのでしょうか?
頸椎の歪みと歯の噛み合わせの関係
頸椎の歪みと歯の噛み合わせの関係について説明します。
実は、歯の噛み合わせが悪い人は、頭が前傾して猫背になっていることが多いです。
なぜなら、私達の身体は6kg近くある人の頭の重さを、頸椎と歯の噛み合わせによって支えています。
噛み合わせに問題があると、重たい頭を支えることができず、頭が前に倒れてしまうのです。
大事な頭を支えるためにも、歯の噛み合わせはとても大切なのです。
また、歯のかみ合わせの悪さが、咀嚼する度に三叉神経核に異常な刺激を送り続け、これが「脳の興奮性」を高め、これが片頭痛の原因となるとも考えられています。
(2)足病変との関連
カサハラフットケア整体院の笠原厳先生は、「外反母趾、指上げ足(浮足)、扁平足など足裏の異常があると、足裏が不安定になり、重心が踵の方へ移動して歩き方も悪くなってしまい、そして、悪い歩き方は時間経過に伴い、首に過剰な衝撃波やねじれ波という有害なストレスを歪みの多い首へ繰り返し伝えてしまうため、何倍もの負担を加え続け、次第に変形(歪みや微細な疲労骨折)を起こして頭痛を発症させてしまう。」と述べておられ、「体の歪み(ストレートネック)」の原因の一つとされています。
ですから足裏のバランスを整えて、重力の上に効率よく立ち、そして正しい歩行をすることが重要だと述べています。
4.体の歪み(ストレートネック)の基本的な原因・考え方は・・
(1)セロトニン神経系の機能低下
セロトニン神経は、筋肉へ働きかける役割を担っています。
セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることで、影響を与えています。セロトニン神経が働きかけるのは、抗重力筋です。抗重力筋とは、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のことです。まぶたが開き、首が立ち、背筋が伸び、歩いたりできるのは、この抗重力筋のお陰です。
セロトニン神経が活性化していると、真っ直ぐな姿勢や生き生きした表情になることができます。反対にセロトニン神経の働きが弱まると、背中が丸まったり顔の表情がどんよりしてしまいます。
このため、セロトニン神経の機能が低下してきますと、セロトニン本来の働きである「正しい姿勢の保持」が、困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こします。
(2)ミトコンドリアの関与
脊柱の両側には直立姿勢に重要な脊椎起立筋が姿勢をガードしています。
背骨を支える「脊柱起立筋」という筋肉は、体の中で最も長い骨を支えるため、赤筋が最も多く存在している筋肉です。持久力のある筋肉は、まさにミトコンドリア系の赤い筋肉です。このように全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ「抗重力筋群」に、ミトコンドリア量が多い事が分かっています。
こういったことから、ミトコンドリアの働きが悪くなれば当然のこととして「体の歪み(ストレートネック)」引き起こされることは明らかです。
片頭痛の場合、「ミトコンドリアの働きの悪さ」に「セロトニン神経系の機能の低下」が加わることによって、姿勢保持が困難となり、容易に「体の歪み(ストレートネック)」を形成してくることになります。
すなわち、ミトコンドリアの働きの悪さとセロトニン神経の機能の低下が存在すれば、
1.前屈みの姿勢や俯きの姿勢などを長時間続けるような生活習慣
2.「ムチウチなどの外傷」により、首の筋肉組織を痛めたりする
ことによって、容易に、体の歪み(ストレートネック)が作られてくることになります。
そして、現代社会は、スマホ全盛の時代で、俯き姿勢は日常茶飯事です。
こういったことから、現代では、「姿勢の悪さ」・「体の歪み(ストレートネック)」が日常茶飯事にみられるようになってきました。
「体の歪み(ストレートネック)」の重要性
いずれにしても、現在、「体の歪み(ストレートネック)」の意義自体を考えることなく、片頭痛発作がなぜ天気・低気圧に左右されたり、めまい・腰痛が慢性頭痛によく合併し、閃輝暗点との関与が示唆されながら、「体の歪み(ストレートネック)」を否定されるが故に、いつまでも片頭痛が”不思議な、神秘的な頭痛”とされている理由にもなっています。
慢性頭痛の場合、「体の歪み(ストレートネック)」の意義は極めて重要です。
まさに慢性頭痛の基本骨格・屋台骨になる程重要なものです。
このため、「体の歪み(ストレートネック)」の改善は慢性頭痛とくに片頭痛治療上、極めて重要になっています。
いつまでも片頭痛が改善されない方々が見受けられます。このような場合は、「体の歪み(ストレートネック)」がいつまでも、残存しているためです。
こうしたことから、必ず、医療機関を受診され、頸椎X線検査を受けて、6方向の撮影をして戴き、「体の歪み(ストレートネック)」の程度を確認の上、自分で是正可能なものなのか、あるいはカイロプラクターもしくは整体師に委ねて、矯正して戴く必要があるのかどうかの診断を下してもらう必要があります。
ただ、問題は、現在の医学界全体において、頸椎X線検査上みられる「体の歪み(ストレートネック)」の診断基準がありません。
そして、医療機関では、「頭痛と関連のあるストレートネック」に対する治療手技がまったくありません。
こうしたことから、慢性頭痛の方々に塗炭の苦しみをもたらしています。
このため、慢性頭痛の方々の多くが、医療機関を敬遠され、カイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々の施術を求めて、受診される理由にもなっています。
私達は、日頃から前屈みの姿勢を強いられる生活環境に置かれていることを念頭に置いて、これが「悪い姿勢」を引き起こしていることを自覚した上で、作業中は30分に1回は、首の負担をとる意味で、「首反らし運動」を行う工夫をし、さらに就寝前には必ず、「背骨伸ばしのストレッチ」を欠かさずに行うことによって「体の歪み(ストレートネック)」を作らないことが原則で、「体の歪み」を引き起こすような”おかしな”体の使い方をしていないかどうかを丹念にチェックしておくことが大切になってきます。
女性は男性に比べて筋肉の量が少ないので、筋力も強くありません。しかし、頭部は約6キログラムもあり、男女ともほとんど同じ重量です。
そこで、女性は首の筋肉を強くするエクササイズ・「首」の555体操を実行すれば、頸筋症候群になりにくい体を作ることができます。筋肉をつけるといっても、ボデイビルダーのような太い首になる必要はないのです。
今より少し首を強くするよう毎日少しずつ鍛えていきましょう。首の筋肉に異常のある方はしないで下さい。
これは首を曲げるときに、頭が動く反対方向に少しずつ力を加える方法です。 1回のエクササイズにかかる時間は長くて10分程度です。できれば1日に2回行うと効果的です。リラクゼーシヨンの運動も、この筋肉を鍛える運動も、継続することがとても大事なポイントになります。
動作の最中は息を止めないで下さい。ゆっくりと呼吸をしながら行います。
首を鍛えるエクササイズは、あくまでも予防のために行うものです。
はじめは倒すときに負荷を全くかけないで、倒した頭を元に戻すときは、むしろ、手でアシストするようにして下さい。
すでに症状が出ている人は、首の筋肉に異常がある可能性が高いので、首に負担をかけるこのエクササイズは行ってはいけません。
いずれにしても、「体の歪み(ストレートネック)」を一端形成させてしまいますと、簡単には改善・是正できません。とくに女性で30歳を超えるまで放置されれば、改善させるには並大抵な努力が必要とされることから、作らないことが原則です。
この「体の歪み(ストレートネック)」は、慢性頭痛の基本骨格ともなるもので、これを放置することにより、慢性頭痛の「脳過敏・慢性化」の根源ともなってきますので、注意が必要です。
そして、この「体の歪み(ストレートネック)」は、子供の慢性頭痛においても既にみられることを忘れてはならない点です。とくに子供の場合、「体の歪み(ストレートネック)」の改善だけで大半の方が改善されてしまいます。
このことはカイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々によって実証済みです。