詐欺まがいの誇大広告 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 我が国に2000年に片頭痛治療の世界にトリプタン製剤が導入されて以来、一部の専門家達による、トリプタン製剤に関する誇大広告は目に余るものでした。
 その数々をご紹介することにします。
 

 最初に、トリプタン製剤が導入された際には、「トリプタン製剤が片頭痛の特効薬」とまず新聞・マスコミで宣伝されていたことは皆さんもご存じだろうと思います。
 

 一部の専門家は、片頭痛に対して、市販の鎮痛薬を服用する弊害を次のように説明されてきました。


 市販の頭痛薬や痛み止めの大部分は”みかけの痛み”のみを取り払い、水面下で起こっている脳の神経細胞の興奮症状を置き去りにしています。
 当然、毎回の片頭痛発作のたびに起きている脳の血管周囲の炎症に関しても放置されたままになっています。
 この興奮状態の放置により、片頭痛の回数や程度がだんだんとひどくなってきて、市販の頭痛薬の用法や用量の規定範囲を超えるようになってきたり、飲む回数が増えてきたりします。


 すなわち、「この薬剤は市販の鎮痛薬とは異なり、片頭痛発作の際に脳の血管周囲に張り巡らされた三叉神経から、炎症蛋白が放出されるのをブロックすると同時に、膨れあがった脳の血管を元の大きさに戻す作用を持ち合わせる、いわば根本から片頭痛を断ち切る薬です」

 

 トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。ストレスなど何らかの理由でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
 血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
 さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
 この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
 このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
 このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。

 

 片頭痛の体質を有する患者は、小児期より脳の過敏性が高いことが論じられています。特に片頭痛発作時は、視覚野である後頭葉内側に始まった興奮波が大脳の前頭葉に向かい波及していくが、後頭葉での興奮症状は閃輝暗点と呼ばれる視覚前兆として出現します。毎回出現するこのような興奮症状を的確に抑制し、片頭痛発作を鎮静化するのがトリプタン製剤の概略的な作用です。
 片頭痛は一言でいうと、頭痛の際に脳が異常な興奮症状をきたす頭痛であり、その興奮症状のために、痛み以外に光や音、さらにはにおいなどの外界の刺激に敏感に反応する頭痛とされます。市販の鎮痛薬は、この片頭痛の際の頭の痛みは取り去っても、水面下の脳の興奮状態は放置されたままとなっていると言われます。ですから、市販の鎮痛薬で痛みのみをごまかし続けると、水面下の脳の興奮状態が徐々に蓄積されて行き、ついには、はちきれんばかりの興奮状態が持続するようになると言われます。このような状態に陥ってしまうと、つねに光を敏感に感じ取り、太陽の光のみならず、室内の蛍光灯でも眩しがるようになります。診察室でも何となくまぶしそうに目を細めてしかめ面をされ、これを「脳過敏」と表現されます。
  小児の場合、こうした「脳過敏」をあらかじめ抑制させる必要があり、このために抗てんかん薬のデパケンを服用すべきとされています。


 さらに、女性の生理時の頭痛は片頭痛そのものであり、このような早い段階、すなわち市販の鎮痛薬で対処できる片頭痛に対してまでもが、トリプタン製剤を服用すべきとされます。
 そして、生理時の頭痛がさらに増強した段階に至れば、作用時間の長いトリプタン製剤を服用すべきであるとされます。
 このように、小児期、さらに若い女性の片頭痛の段階から、片頭痛発作時に毎回、トリプタン製剤を服用すべきとされます。このように対処しておれば、パニック障害やうつ状態、冷え性までが改善できるとされ、さらに、将来的には脳梗塞や脳過敏症候群までもが予防できるとされます。
 このように、トリプタン製剤が、あたかも万能薬のごとく宣伝され、このようなことから、片頭痛にはトリプタン製剤を服用するのが”適切”な治療とされてきました。
 
 専門家達は「片頭痛は”病気”です。”病気”ですから、医療機関を受診して、片頭痛を治療して、治しましょう」と言って片頭痛患者さんに医療機関への受診を勧め、生活の質QOLを高めて、健康寿命を長くさせましようと、しきりにマスコミを通じて、片頭痛患者さんを病院に誘導して、トリプタン製剤が処方されてきました。 
 さらに患者団体まで巻き込んで「なお、トリプタン製剤の恩恵に浴していない片頭痛患者さんが多くいる」と言って啓蒙活動を進めてきました。

 このように、専門家および患者団体が一丸となって、トリプタン製剤の宣伝活動を行ってきました。


 現在の片頭痛治療方針では、発作急性期には各種のトリプタン製剤を使い分け、発作間歇期には各種の予防薬を”適切に”選択すべきとされ、これで片頭痛の治療体系は確立されたとされています。


 このように「薬物療法」がすべてであり、片頭痛という辛い痛みだけを軽減・緩和させることに主眼が置かれ、このようにしておれば、いずれ3割前後の方々は治癒していくとされています。


 しかし、トリプタン製剤は患者のわずかに50~60%だけしか効果が見られず、心疾患のある患者や脳梗塞の既往のある患者、末梢血管障害のある患者では使うことができないからです。しかも、それらは根本的な治療薬ではない(片頭痛を根治させる薬剤ではない)ため多くの場合頭痛は24時間以内に再発する傾向があります。このような有効率しかないものです。


 そして、片頭痛の発作の都度トリプタン製剤を服用しているにも関わらず、片頭痛の3割の方々は、慢性化して増悪し、なかにはトリプタン製剤が片頭痛の”特効薬”とされることから、トリプタンによる薬剤乱用頭痛に陥り、対処が極めて困難な状態が多発するようになり、問題になってきています。


 なぜ、専門家達が、このような誇大宣伝を行ってきた理由・背景、考え方について述べたものが今回の「頭痛を考える」 でした。
 
 
                   「頭痛を考える 改訂版」  
            
http://taku1902.jp/sub605.pdf

 


 これをご覧頂ければ、こうした詐欺まがいの誇大宣伝を行ってきた理由が理解されるはずです。

 このような欺瞞を糾弾する目的で「頭痛を考える」を作成しております。