近代医療が金貸しに乗っ取られる過程 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 ~近代医療は労働者を資本家階級に奉仕させるための道具~


■近代医療は資本家階級の「道具」


 なぜ現代医療にお金がかかるのか疑問に思っているのは、私たち日本人だけではありません。UCLA健康政策研究セッターの所長リチャード・ブラウン博士も、そのひとりでした。彼は「なぜアメリカの医療費が高騰し続けているのか」という疑問を抱き、アメリカの近代医療の起源を調べることで、その原因を突き止めたのです。
 『ロックフェラー・メディシンマン - アメリカにおける医療と資本主義』(邦訳なし)という著書の中で、ブラウン博士は、アメリカの医療が科学的医療と資本主義を起源にしていることを余すことなく書いています。また、ユースタス・マリンズ氏の著作『医療殺戮現代医学の巨悪の全貌』(面影橋出版)でも、欧米の財閥が一般社会の人々の健康ニーズに応えるわけではなく、自分たちの狭い経済的・社会的利益を守っていくため、資本主義にもとづく近代的医学を確立してきた歴史が解き明かされています。
 いずれも近代医療が資本主義という枠の中で発展し、欧米の財閥のために”産業化”したことが医療費高騰の原因と結論づけています。


 科学万能主義が席巻していた20世紀初頭のアメリカでは、石油王のロックフェラーや鉄鋼王のカーネギーなどの大資本家が、すでに世界の金融王であったロスチャイルド財閥(ロスチャイルド財閥のアメリカ代表がモルガン財閥)の後押しを受けて社会を支配していくようになりました。
 彼ら大資本家たちは、多数の労働者を取り換え可能な機械部品のように扱っていました。 資本家のもとでは、労働者は維持コストゼロの無限の資本として過酷な労働を強いられたため、短命ですぐに健康を害し、労働力としては使いものにならなくなったからです。


 しかし、労働者を取り換え、引き換えしていたのでは、その度に最初から教育し直なさなければなりません。それでは利益を上げるのに効率が非常に悪くなります。資本家たちは、科学的な手法で労働者たちを教育し、健康を向上させ、再生可能な労働資源として活用すれば、全体的なコストが下がるのではないかと考えていました。この考えのもと、科学的な手法で労働者や奴隷階級を教育していく目的で作られた学問を「社会科学」または「社会工学」(ソーシャルーエンジニアリング)といいます。社会工学は戦後の日本人の思想統治の手法としても流用されました。


 そして、科学的な手法で労働者の健康を維持する目的で作られたのが「近代医療」なのです。つまり、「近代医療」は、労働者を資本家階級に奉仕させるための道具だったのです。 このシステムへの投資は、慈善事業をおこなうという名目で作られた財団を通じておこなわれました。本当は、財団は資本家が税金回避のために作ったのですから、近代医療への投資は一石二鳥といえました。


  現在、アメリ力では医師というと専門職の代表として、地位も高くお金持ちというイメージがあります。しかし、アメリカ国内では、19世紀末まで民間医療が主であり、医師は力も富もなく、地位も低かったといいます。医師になりたい人は、自分で名乗れば勝手に治療行為ができました。庶民は、自分の症状と経済状況に合わせて、治療を受けるか否か、受けるとすればどんな治療がいいのか、自分で選んでいたのです。そして医師は、患者の希望に合わせ、適当な方法と価格による治療を提供していました。ここでは自由競争があるため治療にかかる費用か莫大になることはありませんでした。すべては治療を受ける市民か選択できる「患者中心」の医療だったのです。


 しかし、そのような状況は、1910年を境に一変します。資本家たちが「近代医療」という手法で上から医療を独占し、コントロールしはじめたのです。その近代医療は、ロックフェラー財団のロックフェラー医学研究所(のちのロックフェラー大学医学部)から発展していきます。


~大卒の医薬品を使う医師のみにお墨付きを与え、他の医療を排除する~


■近代医療を乗っ取ったロックフェラー


 ロックフェラー財閥(以下「ロックフェラー」)はロスチャイルド財閥が考案した連邦準備銀行(FRB)設立に関与し、そこから潤沢な資金を得ています。そして20世紀初めには、世界中の石油利権の大半を手中に収めることに成功しました。


 そこから上がる数兆ドルといわれる資金を元に次の大きな投資先を探します。彼らが目をつけたのは、私たちの”人体”でした。彼らの石油産業から派生した製薬によって人体をターゲットにした独占的市場を”創作”したのです。この石油から作られた医薬品はもちろん特許という独占権で守られ、利益が保証されます。そして、ロックフェラーは、労働者を科学的に治療する「近代医療」の中で、自らの利権である医薬品を中心に据えようとしました。


  医薬品への投資で利潤を上げるために最も重要視されたのは、医学関係者に彼らの影響を行き渡らせることでした。1910年、ロックフェラー財団の理事長であるフレデリック・ゲイツは、ロックフェラー医学研究所所長の兄弟であるアブラハム・フレクスナーに命じて、あるレポートを作成させました。作成のための調査資金は、ロックフェラーが関与していないように見せかけるため、ロックフェラーが実質的に支配しているカーネギー財団を迂回して提供されました。


 このレポートは、90日間で全米の69の医学校を調査し、独自の尺度で格付けしたものです。代替医療をおこなう医学校を「信用のおけないマヤカシの学校」と非難し、排除する目的で作成されました。実際に25校は閉鎖の憂き目に遭いました。
 一方で、ロックフェラー財団の意にかなった学校には、財団から潤沢な研究資金が提供されたのです。このレポートは「フレクスナー・レポート」と呼ばれ、その後のアメリカ医療の将来を決定付けるターニングポイントとなりました。
 つまり、1910年に、ロックフェラー・シンジケートが近代医学の乗っ取りに成功したのです。


■「患者中心」から「専門職中心」の医療へ


 1848年、AMA(アメリカ医師会)という組織が形成され、「アロパシー」と呼ばれる治療以外の医療行為が執拗に攻撃されていました。アロパシーとは、症状を打ち消す薬や手術を施す治療法のことで、分かりやすく言うと「対症療法」です。現代医療はこのアロパシーを基本としています。ロックフェラーはアメリカ医師会に目を付けました。なぜなら、ロックフェラーがアロパシーで使用する、”医薬品”に莫大な資金を投入していたため、それらの薬を使用する医師を必要としていたからです。


 フレクスナー・レポートののち、医学教育、医師免許、治療法、治療費は、ロックフェラー財閥の後押しを受けたアメリカ医師会の寡占状態となり、医療の自由市場は消滅してしまいました。たとえば、民間の助産婦は排除され、アメリカ医師会に所属する病院の産婦人科での出産が義務付けられました。また、料金とサービスの面で一般の人々から好まれていた検眼士は”イカサマ治療士”として排除され、眼に関することはアメリカ医師会に所属する眼科医の独占となりました。


  さらにロックフェラー財団は、所有する製薬会社を通じて資金を投入し、メイヨークリニックをはじめ、ハーバード、イェールなど「アイビーリーグ」といわれる全米エリート大学に医学部を創設しました。医学校には、資本家階級の信奉する科学的医療を教え込むというフレデリック・ゲイツの思惑を実践するために、大学院レベルの教育を施すフルタイムの医療教育者が置かれました。これらの”正規”の医学部で教育を受け、卒業しないと医療行為は法的に禁止されたのです。これは医師免許の独占権を手中にしたことを意味します。これらのいわゆる一流の大学の研究機関や病院には、今や世界の医学をリードする医師たちが集っています。彼らが発信する情報は、医学論文や学会を通じて世界中の医療機関に大きな影響を与え続けています。また、この”エリート医師”たちの組合であるAMAが、臨床では絶大な力を持っています。もちろん医学の遅れた国、日本でも、彼らの作ったガイドラインや治療法が数年遅れで拡がっていきます。


 ロックフェラー財団はこれら医学研究、医師の教育・トレーニング、医薬品の製造、公衆衛生政策に豊富な資金を供給することで「患者中心」の医療を廃止し、患者を顧客として扱うという「健康の産業化」を完成させていきました。すべては自分たちの医療品を売るためです。

  
 そして第二次世界大戦前後からは、ロスチャイルド財閥やロックフェラー財閥のコントロール下にある連邦政府が、薬物治療中心の近代医療に介入するようになりました。資本家同様、国家も「健康な兵士を戦場に送るために、そして負傷した兵士を回復させるために」医療の利用価値を認めるようになったからです。


 ここで、近代医療は「患者中心」医療から、大資本家、アメリカ医師会、連邦政府の三頭支配による現在の「専門職中心」医療へと変貌を遂げたのです。近代医療と資本主義は手を携えて発展してきたのです。


金貸しによる医療独占支配によって、ホメオパシー医学は抹殺された


アロパシー医学 VS ホメオパシー医学


 設立当初から米国医師会は、アロパシー医学(逆症[対症]療法、病気の症状を押さえることを主眼においた医学で、日本を含め現代医学の中心的な治療法)を治療の基本としました。
 アロパシーは公認の医科大学で訓練を受けた医師が行う治療で、外科手術と投薬に極端に依存する治療法でした。アロパシー医学の指導者たちは、ドイツで教育を受けました。

 彼らは、何かといえば血を流し、多量の薬を投与することにもっぱら精力を費やしました。そして、医学会が指定する治療法、あるいは標準的で正統な治療法に従わない医学は、どのような医学に対しても、敵意をあらわにしました。

  19世紀の医学校では、「ホメオパシー」(同種[同毒]療法、健廣な人に疾患を起こさせる薬物をごく少量投与する治療法]医学の方が広く普及していましたが、アロバシー学派はホメオパシーに対して強力な敵対活動を開始しました。
 ホメオパシー医学はサミユエル・クリスチャン・F・ハーネマン(1755~1843)という医師が提唱したもので、彼の同種療法に基礎を置いています。
 ホメオパシーの方が、むしろ今のわれわれの時代にとってはより重要であるといえます。 なぜならホメオパシーは、病気を引き起こしたのと同種の毒性のない物質を処方することで、体の免疫機能を活性化させて治療する方法だからです。


  今日でも英国のエリザベス女王をバッキンガム宮殿で治療しているのは、ホメオパシー医学の医師です。しかし米国では医学団体がホメオパシー医学の信用を傷つけ、撲滅する運動を猛烈に展開しつづけています。


 皮肉なことに、1899年から1924年まで米国医師会を支配し、全国規模の権力に仕立て上げたジョージ・H・シモンズ博士は、自分でネブラスカ州リンカーンで開業していたころには、みずから「ホメオパシー医師」であると何年間も宣伝していました。


 ホメオパシーの治療は種々の臨床試験の結果、関節炎の治療で一般によく処方されている薬と同様の効果があり、しかも有害な副作用を引さ起こさないという点で それよりもはるかに勝っていることが明らかになっています。しかしホメオパシー治療の業績は、歴史からは黙殺され続けてきました。また、たとえそれについて述べられることがあっても、事実を歪曲されて語られたのです。


 ホメオバシーの有効性を示す典型的な事件は、英国で1854年にコレラが大流行したときに起こりました。記録によると、この大流行の期間中、ホメオパシーの病院では死亡率がわずか16.4%だったのに村し、正統派医学の病院では50%でした。
 しかしこの記録はロンドン市の衛生局によって故意に隠蔽されました。


 19世紀のあいだに、ホメオパシー医学は米国とヨーロッパで急速に広まりました。ハーネマン博士の著わした教科書『ホメオパティカ・マテリア・メデイカ』を読んで多くの開業医が彼の治療方法を取り入れるようになったのです。
 1847年米国医師会が設立された当時、ホメオパシーの医者の人数は米国医師会の構成メンバーであるアロバシーの医者の2倍以上いました。
 しかしホメオパシーの医者たちは各自が独立しており、実際、個人開業医が多かったため、アロバシー医学からの一斉攻撃に対して十分な準備ができませんでした。

 米国医師会は初めからアロバシー学派という単なる同業者の集まった圧力同体であり、競合相手のホメオパシー派の医師たちを妨害し、廃業に追い込むという目的のために組織されたことは明らかでした。
 米国医師会は1900年の初めにはこの目的を達成し、おかげで米国の医療は暗黒時代に突入しました。そして今ようやく、この何十年間もの暗黒から抜けだすきざしが見えてきています。病気の患部を集中的に治療する方法にかわって、「ホリスティック医学」という、病気を身体の組織全体でとらえる新しい動きが起こってきたからです。


 米国医師会のアロバシー医学の特徴は、自分たちの治療方法のみが唯一効果のある治療法であるという神話をでっち上げ、絶えず大衆に宣伝して売り込む点にあります。
 悪質な神話はみるみる成長して新たな怪物を作りあげました。


 医療独占支配が米国民にまわした「ツケ」


 米国医師会は医学は進歩したとしきりに宣伝していますが、記録をみれば米国人の健康状態は明らかに低下してきていることがわかります。


 19世紀のあいだは、米国人の健康状態は着実に向上していました。これはおそらくホメオパシー医師たちのおかげでしよう。当時、代表的な病気といえば結核でした。1812年、結核による死亡率はニューヨークで10万人中700人であったが、コッホが病原菌を分離した1882年には死亡率は10万人中370 人に低下していました。1910年、最初の結核療養所が開設されたとき、死亡率はさらに低下して10万人中180人でした。


 この年、ジョージ・H・シモンズはすでに米国医師会誌の編集主幹をつとめていましたが、彼は、「一人一人の医師会会員がこの仕事で常に儲けるためには、医者の数が制限されなければならない」といって政治権力の行使を呼びかけました。ではどのようにしてこの目標は達成されたのでしようか?


 魔法の杖をひと振りして医療に大変革をもたらし、このような独占支配体制を確立した魔法使いは誰であったのでしょうか。
 それはほかでもない、世界一の大金持ちで強欲な独占者ジョン・D・ロックフェラーです。


 ジョン・Dは巨大な石油独占体制の編成にまんまと勝利を収めましたが、その勝利たるや古代ローマの勝者と同じく血塗られたものでした。そしてその勝利の興奮がいまだ冷めやらぬうちに、ロスチャイルド商会とウォール街に遣わされたロスチャイルドの密使ヤコブ・シフとが創り上げたロックフェラーは、医療を独占すれば石油トラストなどよりもさらに莫大な利益をもたらす可能性があると思い至ったのです。


医療独占支配~英国版、無免許医師の排斥運動から始まった


●医療独占支配の企て


 医者という職業は、おそらく世界で一番古い職業ではありません。しかしこの職業の本質は、昔からほとんど変わっていないようです。いつも患者は、支払った治療費に見合うだけの治療を得ているのか心配するだけでなく、多くの場合、思いもかけなかった処置をされて愕然とします。


 記録を調べてみると、医学の治療法は太古の昔からほとんど変わっていないことがわかります。最近発見された 『エーベルス・パピルス」 [紀元前一大世紀のエジプト中王国時代の医書] によると、紀元前1600年ごろの医師は、鎮痛剤としてのアヘンを含めて900種以上の薬の処方が可能でした。1700年ごろ一般に使用されていた薬の中には、センナ、アロエ、イチジク、ひまし油のような下剤も含まれていました。腸内の寄生虫は綿馬(ゆんま)(オシダの根の抽出物)、ざくろの樹皮、駆虫効果のある種子の油を使って治療されていました。東洋ではセメンシナの花から取った油を、西半球ではアカザの果実や葉を搾って得た油を使っていました。


 鎮痛剤にはアルコール、ヒヨス葉、アヘンが用いられました。ヒヨス葉に含まれるスコポラミンは、現代医学でも「半麻酔状態」を誘発するのに使用されています。


  16世紀には、アラブ人はリウマチの疼痛や痛風の治療薬に、サフランから派生したコルチカム [別名イヌサフラン]を使っていました。キニーネの原料であるシンコナ[キナ皮] はマラリアの治療に、大風子油はハンセン病に、吐根はアメーバ赤痢にそれぞれ用いられました。甲状腺腫の治療には一時期、焼いた海綿が使われたこともあります。治療効果のあるヨードを含んでいたからです。
 産婆は子宮を収縮させるのに麦角を用いました。

 およそ200年前、ハンフリー・デーヴイーが一酸化二窒素(笑気) の麻酔作用を発見して、現代医学の時代が幕を開けました。(マイケル・ファラデーはユニノルを発見し、ウィルヘルム・ズルトはアヘンからモルヒネを分離しました。)
 19世紀の末までは、医者は自由契約で診療していました。これは治療によって万一のことがあった場合、すべての責任を医者がとることを意味していました。医療サービスを受ける者は一般に金持ちや権力者に限られていて、貧しい者はめったに医者に診てもらうことはありませんでした。医者は皇帝の病気を治せば莫大な報酬を得ることができましたが、治せなければ殺される可能性もありました。


 おそらく、医者という職業にはこのように身の危険が伴うことに気づいたため、医療を独占支配することによって、この危険と報酬を選ばれた少数の仲間のあいだで平均化しようという計画が生まれまれたのでしよう。

 この医療独占支配を打ち立てる企ては、今ではさまざまな現代病を生みだしています。その裏で、彼らは医療支配を維持するために、大衆に莫大な費用と犠牲を払わせているのです。

  医療独占支配の最初の企てはおよそ500年まえ英国で始まりました。英国のヘンリ8世の署名で制定された「152年法」である。この法律は「専門委員団」の許可なしに内科や外科を開業することを禁じていました。この法律は1518年に王立医科大学の設立によって形式的にも整ったものとなりました。


  1540年に国王が理髪師と外科医の組合にも認可を与えたために、彼らも内科医と同様の権限をもつようになりました。免許をもつた医師たちはすぐに、貧しい患者の治療をしていた無免許の医者を排除する連動を開始しました。世の中、所変われど品変わらずで、現代の米国でもおなじ運動が永いあいだ行なわれています。


 この英国版の無免許医師排斥運動は、彼らの治療を受けていた貧しい患者たちに広い範囲で被害を引き起こしたため、ヘンリー8世は1542年に「ニセ医者憲章」 の制定を余儀なくされました。この憲章は「無資格の医師」の罪を免除し、彼らがそのまま医療行為を続けることを認めるものでした。


 このような法律は、米国ではいまだかつて一度も制定されたことがありません。米国では「ニセ医者」quackは単なる無資格の医者、すなわち米国医師会AMAやその支配下にある政府機関が、「認定」していないというレッテルを貼られるだけではありません。それだけで即座に逮捕されてしまうのです。無資格医師の特例免許という制度が、英国社会の特徴の一つとして植民地である米国に伝わらなかったのは興味深い。

  1617年、英国に薬剤師協会が設立されました。1832年には英国医師会が設立認可を受けました。これが契機となって米国でも同様の組織、米国医師会AMAが設立されました 。この組織が設立当初からもっていた唯一の目的とは、米国において医療の絶対的な独占支配を確立し、その体制を維持することでした。


医療独占支配~医者たちが、今までに無かった様な病気を生み出している


医療殺戮」より~医療先進国アメリカに学べ


 そして今ようやく、この何十年間もの暗黒から抜けだすきざしが見えてきています。


 病気の患部を集中的に治療する方法にかわって、「ホリスティック医学」という、病気を身体の組織全体でとらえる新しい動きが起こってきたからです。


 米国医師会のアロパシー医学の特徴は、自分たちの治療方法のみが唯一効果のある治療法であるという神話をでっち上げ、絶えず大衆に宣伝して売り込む点にあります。この悪質な神話はみるみる成長して新たな怪物を作りあげました。


 それは「医師は絶対に間違うことのない完全な人間であり、医師の判断を決して疑ってはいけない」という神話です。ましてや、医師の過失についてとやかくいうなど、もってのほかです。

 イヴァン・イリッチが『医学のネメシス……健康の没収』(1976年)」という衝数的な著書で指摘しているように、アロパシー医学の有効性など、愚にもつかない神話にすぎないことは明らかです。そればかりか、今や医者たちが、今までに無かった様な病気を生み出しています。
 それは、イリッチが「医原性の」と定義したさまざまな疾患からなる現代の疫病「医原病」です。医原病は今や米国民全体に蔓延していると、イリッチは述べています。


 また、イリッチは、この「医原病」の裏を「医師が患者の体へ医学的介入をほどこすことによって引き起こされた病気」とし、一般によく見られるものを三つのタイプに分類しています。


 第一に医者によって引き起こされる「臨床性医原病」、
 第二に医学・産業複合体の意図的な策謀が生みだす「社会性医原病」、
そして、
 第三に人々の生きる意欲を奪う「文化性医原病」の三つである。


 この三つの中で、もつとも広く蔓延しているのは第三の「文化性医原病」でしよう。医薬品の広告で「ストレス」と呼ばれるこの症状のために、米国民は日々の生活で直面するさまざまな問題を乗り越える意欲を失っています。


 その原因は、全体主義的な政策のために裏で操る不吉な影にあります。それをみずからの個人的な利益米国市民の日々の生活のあらゆる側面に侵入して来るこの巨大な影に相対するとき、多くの人々は無力感に打ちのめされてしまいます。そして自分たちには、なすすべがないと思い込んでしまうのです。


 しかし実のところ、この怪物はひどく脆弱です。なぜなら、あまりにも巨大になりすぎたからです。だからもし立ち向かっていったならば、この怪物が、単なる張り子の虎にすぎないこともわかるでしょう。


医療信仰~私たち自らが、病を癒す能力があることをすっかり忘れてしまった


 この5000年の医学史をふりかえれば、医学の無力さばかりが目につきます。
 いまだに糖尿病、がん、リウマチ、ネフローゼはおろか、ニキビ一つ満足に治せないのです。
 いわんや、ハッチンソン氏病、天疱瘡、多発性硬化症、色素性乾皮症、脊髄小脳変性症ともなると手も足もでないという状態です。ヒトの寿命がのびたのは、医学の発達というより、一般大衆の衛生状態の改善によることのほうが大きいのです。
 35年以上昔、1976年に書かれているにもかかわらず、迷走する現代の医療を見事に批判する、今、最も読まれるべき名著『脱病院化社会』の著者、イヴァン・イリッチは次のように書いています。


 普通、私たちは、どんなに現代医学が無力であっても、少なくとも抗生物質、ワクチンの発見で結核、ポリオをはじめ、多くの伝染病が克服されたと考えています。 しかし、イリッチはそれすら否定します。こういった伝染病が少なくなったのは、医学のせいではなく、下水道の管理、石けんの普及、栄養状態の向上といったものに起因するであるというのです。
 そして、現代医療は無力であるばかりでなく、医原病(イアトロジェニック)さえ蔓延させていると喝破するのです。


  「過去15年間における新しい疾患という重荷の大部分は、病める人々、あるいは病む可能性のある人々のために医療が介入したことの結果であるとも言え、その割合は次第に高くなっている。それは医師がつくるもの、すなわちイアトロジェニックなのである。


 医学のユートピアを追求して1世紀たつが、現在の一般的知恵に反して、医療サービスは、実際にみられる余命に変化を与えるほどの役割も果たしていなかつた。現代の臨床ケアの大部分は、疾患の治癒にとって偶然のものにすぎず、医療によって個人および集団に及ぼされる障害は重大である。こうした事実は明らかであり、実証されているが、おしかくされているのである」


  私がこの本と出会ったのは、およそ35年前、医者になってすぐの頃です。当時はまだ現代医療の成果を信じていたころです。


 しかし、最近、イリッチのいいたいことが、身に染みて理解できてくるのです。私たち医者(特に内科医)がやっていることは、ほとんど患者のためになっていないどころか、むしろ患者の状態を悪化させているのではなかろうか、という疑問です。
 簡単な例をあげると、医者は、患者が風邪をひいて熱があるということで安易に解熱剤を投与します。しかし、発熱はウイルスや細菌に対する生体の一種の防御反応で、熱性の痙攣をおこすほどの状態でなければ、むしろそのまま放置しておいたほうがいいのです。その方が、治りは早いのです。


 つまり、これだけ単純な例でも、医者は患者をたすけているのではなく、むしろ治癒を遅らしているわけです。
 ましてや、高血圧、糖尿病、リウマチ、脳梗塞、心筋梗塞といったもっと複雑な病気においては、どれだけ医者は、余計なことをしているか見当がつきません。そして、その極めつきの余計な介入が、2008年から始まった「メタボ検診」です。


  国家が半強制的に、国民に健康診断を受けろというのです。そして、僭越にも、あなたの治療はかくあるべしと、紋切り型の治療法を指導するのです。
 医療におけるファシズムです。その官僚性と傲慢は、行政という非人格的曖昧さで糖衣されており、国民が健康への自立性を奪われ、さらに健康を劣化させる道へと歩まされることに気づけないように仕向けられているのです。
 医療が、国家資格を与えられた専門家に独占され、人は自分の健康を国家にあずけるのが当然だと考えるようになってしまったのです。
 しかも、驚くべきことには、その強要に対して、「余計なお世話だ!」という反撥の声がほとんど聞こえないのです。


 自分の体を、イリッチがいうところの『官僚性と幻想とを伴った巨大な医療組織』に、預けてしまうことにさえ、何の恐れも不信感も抱かないように、私たちは飼いならされてしまったのです。


 それなのに、なぜ人々は病院に行くのでしょうか? 環境汚染による病気自体の増加? 高齢化に由来する生活習慣病の増加? 医師不足? 資本主義経済のもとにおける利潤追求型医療による扇動? 大手製薬会社の医学界操作?


 いずれも、もっともらしいのですが、問題の本質は違ったところにあるのです。それは、私たち自らが、私たちの健康を管理し、病を癒す能力があることをすっかり忘れてしまったからなのです。
 そして、資本主義という経済システムのもとで、利益をあげることを至上命令とした医薬品会社・医療機器メーカー、そして医療を独占しようとする医師たちが、マスメディアを使い、 私たちからその能力の存在を、さらに忘れさせるよう巧妙に仕掛けているのです。


 病院に行かなければ、医者にかからなければ、検診を受けなければ、病気は治らないと洗脳されているのです。「メタボ検診」はその典型例なのです。