最近「八重洲痛みの診療室」というHPで寺本純先生が、コラム「薬物乱用頭痛は医療過誤によるのか?」というタイトルで以下のように指摘されています。
以下、このHPから引用させて頂きます。
医療機関で片頭痛に用いられている薬剤は、トリプタンが中心となっています。トリプタンは総称で、個々にはイミグラン®・、ゾーミッグ®・、レルパックス®・、マクサルト®・、アマージ®があります。経口薬のほか製剤によっては口腔内溶解錠、注射剤が発売されており、イミグラン錠とゾーミッグ錠はすでにジェネリックも発売されています。
日本ではトリプタン系は2000年以後に発売になりましたが、すでに1990年代には欧米ですでに発売になっていました。トリプタンは頭痛を抑制する作用は強いのですが、有効時間が必ずしも長くないところから、薬が切れる時間帯に再度頭痛が現れる(再発性頭痛あるいは反跳性頭痛)ことが、結果的に薬の使用回数が多くなり、多くなると徐々に効かなくなることが分かっていました。これを薬物乱用頭痛と呼ぶことになるのですが、トリプタンによる乱用頭痛は、それまでの頭痛薬 (鎮痛薬やエルゴタミン剤)による場合に比べて頭痛の程度が強くなることも分かってきたのです。
これらに対する対策として、1990年代後半には欧米では盛んに検討がおこなわれました。 そのもっとも重要な対応策としてボツリヌス剤が考えられたのです。1990年代前半に、しわ伸ばしの治療中、片頭痛を偶発合併していた女性が、同時に片頭痛も改善したというし偶然の発見に基づくものです。その後ふつうの片頭痛、緊張型頭痛、慢性連日性頭痛(多くは今で言う薬物乱用頭痛)などの調査結果が次々に報告されました。
よい結果の報告もあれば必ずしもそうでないものもありましたが、これを契機に欧米で、大規模な調査が行われるようになったのです。
さらに従来、毎日服用することによって頭痛の頻度が低下させる作用がある頭痛予防薬と呼ばれる薬剤(トリプタノール®・、インデラル®・、デパケン®・など)は、一旦薬物乱用頭痛に陥るとほとんど効果を示さないことが分かり、2003年に国際頭痛学会で示されました。
(文献の発行は2004年)そこで、薬物乱用頭痛の診断の規定がなされるとともに、薬物乱用頭痛に陥ると従来の予防薬はほとんど効かないことが明言されました。
日本でのトリプタン系の発売開始は、イミグラン®・(スマトリプタン)が2001年、ゾーミッグ®・(ゾルミトリプタン)が2002年、レルパックス®・(エレトリプタン)も2002年、マクサルト®・(リザトリプタン)が2003年、アマージ®・(ナラトリプタン)が2008年です。これらからわかるように、欧米で従来の予防薬がほとんど効かないことが明言された後で日本で発売となっているのです。
ボツリヌス剤については、さまざまな検討の後、欧米で実施された大規模な臨床試験の結果、2010年に有効性が証明され、米英では数カ月のうちに国家承認となりました。他の欧州諸国でもこれ契機に広く普及してきました。ボトックスですべての患者が乱用から脱却できるとは限りませんが、一応の対応策が確立したということになりました。
さて問題となるのは国内の頭痛学会の対応です。発売当初から『効果が高い薬剤であるとは言え、薬が切れると再発性の頭痛が現れやすい』ことが分かっていたところから、処方に当たっては、この点を一般学会員へ伝える必要があったはずですが、そういった注意点を明確に喚起しませんでした。さらに2004年には、『トリプタンで生じた乱用頭痛は、従来の予防薬では効果が得られない』ことを追加して患者に説明する必要性が確認できたはずですが、それも喚起する声はありませんでした。
その後、学会のガイドラインで、薬物乱用頭痛は突然頭痛薬を中止にしたり、隔離入院することが推奨されていますが、必要以上に使用し過ぎていた患者だけは減らすことができても、元来頭痛が存在するために使用していた患者にはすぐに止めさせるのは人道的に無理があり、結局他の施設での処方を受けたり、不足分を一般鎮痛薬を使用する結果になります。一般鎮痛薬は効果が弱いので多量になりがちです。そもそも隔離入院になる可能性がある薬剤と分かっていて始めから欲しがる患者はどのくらいいるのでしょうか?
トリプタンを止められた患者は、10回/月程度の再処方を受けたとしても、不足分は効果の弱い鎮痛薬を大量に使用する結果になり、トリプタン乱用頭痛だけでなくトリプタン+鎮痛薬の乱用頭痛を新たに作りだす結果となったのです。ある統計では頭痛を診療している施設の患者ではすでに約14%が薬物乱用頭痛であるとされています。
2010年のボツリヌスの有効性の成績は、片頭痛として報告されていますが、対象例が20回/月以上の患者群であり、薬物乱用頭痛でもあったわけで、頭痛薬を利用しつつ頭痛の頻度を減らしていくという点で無理がない治療法と言えます。この外国での報告と完全に同様の方法で日本人にうまくいくのかどうかは、いくつかの課題がありますが、それは別として2010年以後は『保険は適用ではないが、乱用頭痛の脱却法がみつかった』くらいの説明も付け加えられるべきであると考えます。
いずれにしても、すでに分かっているいくつかの問題や課題をかかえた薬剤を処方するにあたっては、それなりの説明責任が必要です。患者はそれを聞けば、覚悟したうえで使用するか、もう少し待ってみる、などという選択ができるはずです。
トリプタンが発売になったとき、頭痛学会の指導層がテレビで盛んに「片頭痛の特効薬」と訴えかけました。さすがに製薬会社の中にも驚く声があったのも事実です。
以後トリプタンの処方を念頭に置いて次々に頭痛専門医を認定し、トリプタンの処方を煽るように広めてきたというのが実態なのです。
将来薬物乱用頭痛に陥る可能性を知りつつ、それをなるべく隠しつつ処方を勧めるのは大問題です。トリプタン以前の薬剤、鎮痛薬やエルゴタミンでも乱用になる人がいたのは事実ですが、トリプタンが発売されて以来、より強い乱用頭痛になり、かつそういった患者が大きく増えてきているのは事実です。
だれもが製薬会社と学会の関係に気づきますが、この事実から学会の方がむしろ製薬会社に擦り寄っている構図となっているのです。
かつて血液製剤の問題があったとき、エイズウィルスが見つかったことを隠して製薬会社との関係を保とうとした事件がありました。
それと同じ構図になっているのです。乱用頭痛になりやすいことが分かっているにも関わらず、有効性が期待できない予防薬の処方に意見することもなく、外国で国家承認された新たな方法にも言及することなく、実効性のある対応をとらないのは、医学的に完全にモラルに反しています。このままでは薬害であり、医療被害と評価されてもなんの抗弁もできないでしょう。学会とくに臨床系の学会はあらたな治療法がみつかったとき、すぐに実効性が得られなかったとしても、将来に向かって積極的にそれを広めていくという責務があるはずです。それに逆行しているのです。
元来、生活改善治療であるはずの頭痛治療が、結果的にひどい頭痛が連日になってしまった、というのでは本末転倒です。しかも改善の可能性があるのにその方策を隠して一般学会員に情報として提供しない、というのは驚くべきことです。現在のままでは今後とも薬物乱用頭痛が増え、『被害』期間も延長していくことになるでしょう。
一般に科学はあとになってうまく行かないことが分かることがあります。それはそれでしかたがないことなのですが、分かっていて隠すというのは、学会としては恥ずべき行為と言えるでしょう。
ある弁護士と会話をしたときにこの話をしたところ、担当医およびそれを指導するべき学会の両者に対して、説明責任を果たしていないというモラル違反に対する民事上の責任を問うことができるとの見解でした。これはボツリヌス治療の実施とは無関係の問題であり、その後ボツリヌス治療をした場合には、うまくいったならそれまでの損失について、運悪くうまく効果が出なかった場合には、一生頭痛が続く可能性があることに対する慰謝料請求が可能である、との見解を聞くことができました。それも『社会的解決策』のひとつとして考えざるを得ないというのが昨今の実感です。
このように寺本純先生は、 特に”トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛”を改善させる難しさを強調され、”従来の予防薬”では全く効かないとされ、最近ではボトックス治療による方法を提唱されます。そして、先生は、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛からの脱却にはボトックス療法しか現状ではないとされます。
そして、その有効率は、1年以内で80%であり、残りの20%は脱却できないとされています。このように、一旦、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛に陥れば、運が悪ければ、一生、頭痛で苦しむことを余儀なくされてしまうことを意味します。まさに、頭痛地獄の絵図そのものということです。
参考までに、寺本先生の提唱される「ボトックス治療」は現在、保険適応はなく、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛から脱却する唯一の方法でありながら、簡単に・身近な医療機関では受けることは出来ないのが現在の日本の状況です。
この点については、これまで以下の記事で明らかにしておりました。
トリプタン製剤による「薬剤乱用頭痛」がなぜ増加したのでしょうか
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12264045857.html
このなかでも示されていますように、トリプタンが欧米で発売されて間もなくの1990年代の半ばには、頻回服用によりトリプタン乱用頭痛に陥りやすく、その状態は頭痛の程度が一層強いこと、そして従来の予防薬では効果が得られないことがわかり大問題となっていました。
このような事実が明確にされていたにも関わらず、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬であり、トリプタン製剤を服用さえしておれば、片頭痛が治ってしまうといった誇大宣伝を繰り返し、片頭痛でお悩みの方々を愚弄してきました。
大半の方々は、これを信じ切って、ひたすらトリプタン製剤を服用してきました。
ところが、発作回数の増えている段階の方がこのようなことをされますと、必ず、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を作ってしまい、地獄をみることになっていました。
最近、私のブログをご覧頂いておられるsinkoumamさんから、「慢性頭痛 治療の進め方」 の記事でコメントを戴きました。sinkoumamさんは40年来片頭痛でお悩みで、おまけに「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」という頭痛地獄の辛酸を舐めておられ、分子化学療法研究所の後藤 日出夫先生の提唱される「万能健康ジュース・ラブレクラウト・脂肪の摂り方」の「3つの約束」を忠実に実行され、9カ月経過した現在、「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」から離脱できそうな雰囲気にまで至ってこられたようです。
私は、分子化学療法研究所の後藤 日出夫先生の提唱される「3つの約束」によって、”普通の片頭痛”では確かに改善に導かれる方々を多く確認してきましたが、「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」にまで有効であるとは、sinkoumamさんによって初めて教えられました。
このように、寺本先生の提唱されるボツリヌス療法は保険適応もなく、高額な治療法であり、どの地域でも手軽に受けることができる治療法ではありません。
それに引き替え、分子化学療法研究所の後藤 日出夫先生の提唱される「3つの約束」は、朝食の代わりに行うだけのことであり、日常生活のなかで手軽に行える方法です。
sinkoumamさんによって、「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」にまで有効であることが、今回示されたことになります。今後、sinkoumamさんに続いて、同様の方々が出てくることを期待しているところです。
このように、分子化学療法研究所の後藤 日出夫先生の提唱される「3つの約束」にしても、これまでの鳥取大学医学部・神経内科の時代の下村登規夫先生の提唱される「MBT療法」がその有効率が9割とされていたことから、片頭痛が後天性ミトコンドリア病である、すなわち、ミトコンドリアの機能の低下による頭痛である、ことを裏付けるものです。
となれば、片頭痛は、あくまでも予防すべき頭痛である、ということに他なりません。
このような考え方に基づいて私達は、以下の「治療指針」を基づいて、慢性頭痛に対処していくことが大切になってきます。
「片頭痛の正しい知識」
http://taku1902.jp/sub549.pdf
「慢性頭痛 治療の進め方」
http://taku1902.jp/sub550.pdf
なお、治療のガイドラインとして以下を用意致しました。
慢性頭痛治療のガイドライン・・・
前編・慢性頭痛の基礎
http://taku1902.jp/sub543.pdf
後編・片頭痛治療のてびき
http://taku1902.jp/sub544.pdf
「生活習慣改善のポイント」
http://taku1902.jp/sub545.pdf
このなかで、さらに理解しにくい部分があれば、以下のものを参考にして下さい。
慢性頭痛の基礎知識
http://taku1902.jp/sub%202.html
これまで「片頭痛の正しい知識」のなかで明らかにしていましたように、専門家はこのような考え方に至ることは、絶対にありえないことです。
現在の医学会全体が、このようになっています。とくにガン治療の世界では生死に関わることです。つい最近も、若い命が失われたばかりです。
片頭痛の場合は、少なくとも死ぬことはありませんが、sinkoumamさんのように「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」という頭痛地獄の辛酸を舐めておられる方を二度と作らないために、片頭痛でお悩みの方々自身が立ち上がる必要があります。
専門家とは、私達・片頭痛で苦しむ方々の立場では決して考えていないことを、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を通して学ばなくてはなりません。専門家は製薬メーカーの利益優先の立場でしか考えてはいません。となれば、私達自身で「臨床頭痛学」を作っていかなくてはならないということです。片頭痛医療の世界とは、このように”情けない”の一言でしかないことを肝に銘じておく必要があります。