基礎講座 3.神経学的側面 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 これまでの「臨床頭痛学」では、脳神経外科医を中心として、頭痛を引き起こす原因が脳のなかにある二次性頭痛の観点から慢性頭痛が論じられてきたことによって、原因がつかめないままになっていました。
  さらに、片頭痛のときに起こる脳の変化(閃輝暗点)が、PET、MRI(BOLD法)といった脳の新しい方法で、脳の病気が画像として確認され、群発頭痛の発作時には、視床下部が異常に活性化する事がPET、MRIなどの新しい測定法で発見されたことから、頭痛持ちの頭痛といわれるもののなかに「頭痛そのものが脳の病気」であることがわかってきたとされています。

 このように本来、脳のなかに異常のないものと定義されたものでありながら、「頭痛そのものが脳の病気」といった独特な・奇妙奇天烈な考え方をされます。
  ここに慢性頭痛の本態を考える際の混乱の根源ともなっていました。
 このように、専門家は、慢性頭痛とくに片頭痛は、「脳の病気」としてこれまで研究を進めてきました。


 しかし、これまでの2回の記事では、片頭痛はミトコンドリアの機能が低下することによって起きる頭痛であると述べてきました。

 このように、まったく考え方が異なることになります。
 それでは専門家と私達・片頭痛経験者との考え方を繋ぐ”接点”はどこにあるのでしょうか。

 
  それは、セロトニン神経系です。
 

 これまで、慢性頭痛とセロトニン神経系については、OCNのブログの時代に記事にしましたが、現在なくなっていますので、以下のファイルをご覧下さい。

     
     慢性頭痛の神経学的側面 
        
http://taku1902.jp/sub495.pdf


 私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。このようにセロトニン神経系はミトコンドリアと連動・連携して働いています。
 「セロトニン神経系」の神経核は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。


 セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランスを保つ”などの重要な働きをし、「健康的な生活」を送るためには欠かせない働きをしています。


 これまで、セロトニンについての記事は以下で掲載していました。
  http://ameblo.jp/yoyamono/themeentrylist-1-10086045310.html


 さらに、セロトニン神経系についての総説は以下で掲載していましたので、以下をご覧下さい。http://taku1902.jp/sub450.pdf   これがすべてでした。
 
 

   その3 セロトニン神経系の役割
     
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12258309267.html

 
  慢性頭痛へのセロトニン神経系の関与
   
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12289811637.html

 
  片頭痛とミトコンドリア その15 セロトニン神経系
     
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12285884169.html

 

 問題は、これまで専門家は片頭痛の病態を以下のように説明してきました。


 トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。ストレスなど何らかの理由でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
 血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
 さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
 この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
 このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
 このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
 基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップ(補填)しています。


 ところが、ストレスか何らかの原因でと述べられていますように、きっかけ(引き金・トリガー)となるものが何かがまったく不明とされ、なぜ、セロトニンが機能低下状態になっているのかを、明らかにされることはなく、まったく不明とされています。


 このように、片頭痛の病態(メカニズム)は各種のトリプタン製剤の作用機序の面から研究され、説明されてきました。


 その結果、肝心要の”中枢神経系でセロトニンが減少する”理由についてはまだ謎とされます。
 片頭痛の患者さんは,そうでない方と違って特別に興奮しやすい状態があるのではないかとされ、このような「脳過敏」を起こす原因もこれまた、不明とされます。
 そして、前兆に関連して、「大脳皮質拡延性抑制」が提唱されていますが、この「大脳皮質拡延性抑制」を起こす原因が分かっていないとされます。
 その前兆のかなり前に予兆と呼ばれる症状があります。あくびが出るとか,異常にお腹がすくとか,イライラするとか,眠くなるなどの症状があってから前兆が起こり,さらに激しい発作が起こること,発作が鎮まった後も気分の変調があったり,尿量が増加したりするなど全身の症状を伴うことが分かりました。そうなると,片頭痛は脳の血管,あるいは脳だけの局所的な疾患ではないのではないかという疑問が持たれています。
 このような観点から病態を説明する最大の問題点は、片頭痛が慢性化する理由が、一切、見当がつかないとされていることです。


 このように片頭痛の病態をトリプタン製剤の作用機序の面から説明してきたことによって、諸々の疑問点が生まれてきているところから、最近では、脳のなかに異常のない頭痛と”定義”される片頭痛が、”片頭痛発生器”というものを脳幹部付近に想定することによって、”中枢性疾患”という脳のなかに異常のある頭痛とまで、”基本的な定義”さえ覆されています。


 これらのことは、片頭痛をミトコンドリアの機能の低下することによって起きる頭痛と考えれば説明のつくことです。
 すなわち、ミトコンドリアの機能が低下すれば、当然、セロトニン神経系の働きが低下します。ここに以下のような生活習慣の問題が加われば、脳内セロトニンは低下します。


  「脳内セロトニンの低下」の原因は???
     
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12291290189.html


 このように単純なことです。


 その前兆のかなり前に予兆と呼ばれる症状があります。あくびが出るとか,異常にお腹がすくとか,イライラするとか,眠くなるなどの症状があってから前兆が起こり,さらに激しい発作が起こること,発作が鎮まった後も気分の変調があったり,尿量が増加したりするなど全身の症状を伴うことが分かりました。

 
 こうした疑問とされることは、片頭痛患者さんには、常に、「脳内セロトニンが低下」した状態にあり、発作時に、極端に低下した「脳内セロトニンの低下」をトリプタン製剤によって補填させて、頭痛を緩和させますが、発作が治まっても、なお「脳内セロトニンが低下」した状態は残存しています。このため気分の変調が残ることになります。
 
  
   予兆の原因は???
     
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12291296288.html


 そして、片頭痛が、”片頭痛発生器”というものを脳幹部付近に想定することによって、”中枢性疾患”という脳のなかに異常のある頭痛とまで、考えを変更されますが、”片頭痛発生器”は、セロトニン神経系の神経核が存在する「脳幹部の縫線核」と考えるべきものです。

 

 片頭痛の慢性化は、片頭痛発作時にいくらトリプタン製剤で「脳内セロトニンの低下」を補填しても、その根底にある「酸化ストレス・炎症体質」は増悪してきますので、片頭痛は増悪の一歩を辿ることになります。

 

 「大脳皮質拡延性抑制」は、ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足が加わることによって起きるものです。

 

 「脳内セロトニンの低下」により脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛みと感じるアロディニア(異痛症)があります。
 片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快、髪を結んでいるのがつらい、くしやブラシが痛くて使えないといったものがありますが、これらは頭部アロディニアと呼ばれています。さらに脳が過敏になると、頭部だけではなく、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快になることもあり、これらは頭蓋外アロディニアに分類されます。
  日本では片頭痛の患者さんの60~80%ぐらいが、アロディニアを伴うといわれていますが、発症5年以上経たないと、アロディニアは出てこないことが多いようです。


 このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため”痛みを抑制することが出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということです。
 逆に考えれば、アロデイニアがあるということは「脳内セロトニンの極端な低下状態」を意味します。


 Headache Master School Japan (HMSJ)-Osakaで、「片頭痛の神経解剖学」 と題して、柴田護(慶應義塾大学神経内科)先生(これは、Harvard Medical School のBurstein の論説です)が講演され、このなかで、このアロデイニアの神経回路を見事に供覧されました。

 これは「セロトニン神経系」の神経回路そのものでした。

 これをブログで公開できれば、より説得力がありますが、学会事務局から禁じられているのが残念です。


 以上のように片頭痛はミトコンドリアの機能低下による頭痛です。

 このため、当然のこととして、セロトニン神経系の機能は低下してきます。

 ここに諸々の生活習慣の問題点が加わることによって、脳内セロトニンが低下してきます。
 こうしたことから、片頭痛では、常に、潜在的に「脳内セロトニンが低下した状態」が存在すると考えなくてはなりません。このことが慢性頭痛の症状を作ってくることになります。


             慢性頭痛の症状
              
http://taku1902.jp/sub458.pdf


 以上のことから、慢性頭痛とくに片頭痛を理解するためには、「セロトニン神経系」についての知識は必須のものとなっています。

 ここでは、このすべてを記載するには余りにも膨大なため、以下のファイルをダウンロードされ、ゆっくりとご覧下さい。


        セロトニン神経系
         
http://taku1902.jp/sub450.pdf

 

 

 このように、セロトニン神経系は、片頭痛という病態を考える際に重要ですが、ミトコンドリアの機能低下と連動して、働いていることを忘れてはなりません。