ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 前回も述べましたように、ミトコンドリアは細胞核にあるDNAとは違う、独自のDNAを持っています。
 細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを塩基置換といいます。
 また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。


  mtDNAの塩基置換は通常のDNAと比べると5~10倍早いとされています。
 人とチンパンジーのDNAを見てみましょう。チンパンジーは人と同じ祖先から進化したといわれています。DNAを比べてみると1%しか違わないということが分かります。 一方、ミトコンドリアDNAを比較するとその違いは9%とDNAと比べると多いことが分かります。チンパンジーも人も同じ祖先から進化したことを考えると(決して、チンパンジーが人間に進化したのではないのですよ)、mtDNAの方が同じ期間に塩基置換がより多く行われていることがわかります。
 つまり、最近Aという種がBとCという種に分かれた場合、DNAをみてもあまり違いがないのに対し、mtDNAはDNAの5~10倍違いがあるため、比較しやすいということになります
 

ミトコンドリアと活性酸素
 

 ミトコンドリアは酸素を使ってATPを産生します。この際、体内に取り込まれた酸素の数%反応性の高い活性酸素やフリーラジカルになります。すなわち、ミトコンドリアは生体内における主要な活性酸素の産生部位でもあります。
 正常な状態でも活性酸素は産生されていますが、電子伝達系や呼吸酵素系の活性が低下すると、電子伝達系から電子がもれて活性酸素が生じやすくなります。
 ミトコンドリアは活性酸素を多く産生するため、mtDNAに突然変異が起こりやすい環境を作り出しています。しかも、mtDNAは核DNAと比べて修復能力が低いため、mtDNAで突然変異が起こる割合は核DNAの約10倍と考えられています。
 

  このように、ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
   このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。このようにして片頭痛は発症します。
 

活性酸素とは・・
 

 活性酸素とはミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に生み出されるものです。
 

 酸素は地球上のほとんどの動物にとっては、なくては生きていけない大切なものです。
  しかしその酸素が呼吸によって体内に取り入れられると、その一部が「活性酸素」といわれる不安定な状態になり、近くの物質と結びつこうとします。物質が酸素と結びつくことを”酸化”といいますが、鉄がさびたり、空気に触れたりんごの切り口が茶色になったり、あるいは雨ざらしのゴムホースがぼろぼろになったりするように、活性酸素が体の中でさまざまな「錆び」の状態を作るのです。
 

 活性酸素が過剰になると、物質が酸化によってぼろぼろに壊れてしまうのと同じ現象が、人体の中でも起こってきます。その結果、片頭痛、がん、動脈硬化、脳梗塞、心疾患、糖尿病、白内障などの生活習慣病を引き起こしてきます。
  また、活性酸素はしみやしわなどの原因になり、老化の最大の原因であることも分かってきました。
 

 現在の研究では、活性酸素は全疾患の90%以上に何らかの形で関っていると言われています。片頭痛も同じように、この活性酸素が関係しています。
  この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。
  先述のように、活性酸素とはミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に生み出されるものだからです。
 

「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)の形成過程
 

 細胞内小器官である「ミトコンドリア」は私達に生きるエネルギーを与えてくれますが、反面、活性酸素を最も多く発生する細胞内小器官でもあります。
  ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミトコンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する機能も高まります。しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪循環が始まります。
 

身の回りの活性酸素を生み出す要因
 

 活性酸素は、「呼吸をする」、「食事をとる」、「運動をする」など、ごく普通の生活をしているときにも発生します。酸素を取り込み、エネルギーを作る過程で必ず発生するからです。そのほか、白血球が細菌を殺傷するとき、生理活性物質が作られるとき、有害物質(過酸化脂質、残留農薬、食品添加物、抗がん剤、アルコール、タバコ、大気汚染物質など)を解毒するとき、止まっていた血液が再び流れ出すとき(再濯流)、紫外線や電磁波(レントゲンなど)を受けたとき、強い精神的ストレスを受けたときなど、さまざまな要因により発生します。
 

「酸化ストレス」とは
 

 最初にも述べましたように、ミトコンドリアが酸素を取り込み、エネルギーを作る過程で活性酸素は必ず発生します。もちろん活性酸素が体の中で増える一方ですと、人間はたちまち死んでしまいます。
  そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
 

 ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、活性酸素の発生が”抗酸化作用(抗酸化力)”より常に優位な状態が、いわゆる「酸化ストレス」になります。
 「酸化ストレス・炎症体質」とは活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしまう状態のことで、これらが原因で細胞が傷つけられ、さまざまな病気(炎症)を引き起こしてしまう状態のことをいいます。
 

 たくさんのミトコンドリアが余裕を持ってエネルギーをつくる態勢だと、活性酸素はそれほど問題になりませんが、少ないミトコンドリアが必死にフル回転でエネルギーをつくろうとすると、活性酸素がたくさん排出されてしまいます。
 

 「酸化ストレス・炎症体質」は、ぼろぼろに錆びた金属にたとえられる、「錆び体質」といわれるものです。片頭痛発症の根底にある体質ということだけでなく、ほとんどの現代人が抱える、さまざまな慢性病や生活習慣病の根底にある慢性病の源となっているものです。
  「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活習慣などにより起こり、特効薬を飲んだからといって直ぐに治るようなものではありませんし、特効薬などはありません。
 

  このように、片頭痛とは、「酸化ストレス・炎症体質」の状態にあります。
 

病気の90%は活性酸素が関与・・「後天性ミトコンドリア病」
 

ミトコンドリア病
 

 ところで、ミトコンドリア病は大きく分けて2種類あります。先天性ミトコンドリア病と後天性ミトコンドリア病です。
 

 先天的に、ミトコンドリアの一部が異常をきたし、機能低下する事で起こる”ミトコンドリア病”があります。先天性ミトコンドリア病は稀な病気です。 このミトコンドリア病のほとんどの患者さんには、「片頭痛」が存在します。 これは、生まれつきミトコンドリアの働きに不具合があります。
  先天性のミトコンドリア病は、細胞核DNAとミトコンドリアDNAの両方に異常を来して発症してきます。
 

 一方、「後天性ミトコンドリア病」は、ほとんどの現代病に当てはまります。 すなわち、ほとんどの現代病は、後天性ミトコンドリア病と考えられています。水や食生活、放射能汚染や環境汚染、有害物質の蔓延などや酸素不足などを原因として、後天的に発症するミトコンドリア病です。
 

 後天性ミトコンドリア病とは、いろいろな原因でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、活性酸素で身体が”酸化”していく全身病です。
  ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
  このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。
 

 「後天性ミトコンドリア病」とは、馴染みのない病名ですが、これは”ミトコンドリアの機能が低下する病気”です。今までは、先天性の病気”遺伝的疾患”として考えられていましたが、現在は後天的な発症や、薬による副作用で発症することが証明されています。
 

片頭痛とは・・
 

 そして、片頭痛は”「後天性ミトコンドリア病」”と考えるべきものです。
 

 すなわち、片頭痛は”ミトコンドリアの活性低下”という「遺伝素因」をもとに、生まれてから諸々のミトコンドリアの働きを悪くする要因が追加されることによって、さらにミトコンドリアの機能を低下させることによって起きてくる頭痛です。この”ミトコンドリアの活性低下”はミトコンドリアDNAによって先祖代々継承され、生活環境および生活習慣により悪化してきます。
  すなわち、生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食に、睡眠不足や運動不足や不規則な生活などの生活習慣が加わって、ミトコンドリアの機能は低下してきます。
 

 このようなミトコンドリアの機能を低下させる要因を取り除かない生活を送ることによって、「酸化ストレス・炎症体質」が形成されてきます。
 

 「脳過敏」を来す要因3つが次々と追加されることによって、”日常的に感じる極く軽度の頭痛”を出発点として、緊張型頭痛から、片頭痛へと進展していくものです。(後述の記事を参照して下さい)
  最も、卑近な例を挙げれば、日常的に感じる極く軽度の頭痛に対して、市販の鎮痛薬を繰り返して服用することによって、ミトコンドリアの機能を低下させ、さらに脳内セロトニンを低下させることによって薬剤乱用頭痛を併発させてくることになります。市販の鎮痛薬という”薬剤”が原因となった「後天性ミトコンドリア病」を作る典型例を示していることになります。
  ここにミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”があれば、当然のこととして片頭痛を発症してくるということです。
 

 このように、片頭痛は”後天性ミトコンドリア病”と考えるべきものです。
 

 実際、片頭痛は、これまで”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると報告されています。
 

 このように、Welch KMA, Ramadan NM 、下村登規夫、小谷和彦、村上文代先生らによって、日本にトリプタン製剤が導入される以前の段階から明らかにされていました。当時は下村登規夫先生によって「MBT療法」が提唱され、この治療成績は9割前後の片頭痛の方々が改善に導かれるとされていました。
 

 すなわち、片頭痛は、遺伝素因である「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、生活習慣(とくに食生活)が原因で、エネルギーを生み出す際に生する活性酸素によって自分のミトコンドリアを傷つけることによって「さらに、ミトコンドリアの働きを悪く」させて「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患と考えられています。
    このミトコンドリアの働きの悪さは、ミトコンドリアDNAによって先祖代々受け継がれます。ミトコンドリアDNAは生活習慣および外部の生活環境のよって変化・悪化することになります。
 
 
    「脳過敏」って何???
        
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12056087275.html
  
     慢性頭痛の周辺 その44 脳過敏
        
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12001284444.html