先日、掲載しました「慢性頭痛治療のガイドライン」の前編・後編を当医院に通院されておられ、既に片頭痛を改善されておられる方々にご覧頂いて、御批評を承っておりました。こうした方々の意見に従って、今回、一部内容を変更するとともに、これまでの項目を移動させることによって、編集しなおしました。
それは、以下のようです。
慢性頭痛治療のガイドライン
前編・慢性頭痛の基礎
http://taku1902.jp/sub543.pdf
後編・片頭痛治療のてびき
http://taku1902.jp/sub544.pdf
その内容は、以下の通りです。
「前編・慢性頭痛の基礎」では
第1章 ミトコンドリアとは
第2章 セロトニン神経系
第3章 ホメオスターシス
第4章 自律神経系
第5章 腸内環境
第6章 栄養学的側面
第7章 体の歪み(ストレートネック)
第8章 規則正しい生活
第9章 健康的な生活を送るためには
第10章 従来の「臨床頭痛学」とは
第11章 「慢性頭痛」とは
第12章 「酸化ストレス・炎症体質」が形成されることにより・・
第13章 緊張型頭痛と片頭痛は、一連の連続したものです
第14章 ミトコンドリアの機能を悪化させる要因と対策
「後編・片頭痛治療のてびき」では
第1章 片頭痛とは
第2章 規則正しい生活を送るために
第3章 自然治癒力を高める
第4章 ミトコンドリアの機能を悪化させる要因と対策
第5章 ミトコンドリアを増やす
第6章 脳内セロトニンを増やす
第7章 姿勢を正しくしましょう
第8章 食事の摂り方
第9章 片頭痛体質改善のための3つの約束
第10章 おくすりを服用する際の考え方・注意点
現在、学会が作成される「慢性頭痛診療のガイドライン」がありながら、このような、「慢性頭痛治療のガイドライン」を作成するのか、といった疑問を皆さんはきっと疑問に思われるかと思いますので、これを作成した理由を簡単に説明させて頂きます。
それは、学会が作成される「慢性頭痛診療のガイドライン」は、国際頭痛学会が作成される「国際頭痛分類 第3版β版」を無条件に踏襲して作成されていることにあります。
ということは、こうした国際基準は、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤が導入された段階で、作成されたものです。このため、学会が作成される「慢性頭痛診療のガイドライン」では、片頭痛の治療薬としてエルゴタミン製剤を始めとして各種の治療薬があったにも関わらず、トリプタン製剤が、片頭痛治療の第一選択薬とされています。これらの各種の治療薬に、トリプタン製剤が、単に追加されただけに過ぎなかったはずのものです。(少なくとも、薬物療法が全てではなかったはずです。ところが、以来、トリプタン製剤がすべてになってしまいました。本来であれば、「生活指導」といった極めて、重要な指導があったはずです。しかし、このような極めて重要な「生活指導」といった「柱」が一切、なくなってしまいました)
これまで、頭痛治療の世界は、従来から、頭痛があれば、まず市販の鎮痛薬を、これでダメなら病院での鎮痛薬NSAIDs、これで効かなければエルゴタミン製剤を、これでも効かなければトリプタン製剤が勧められてきました。このように段階的に、”鎮痛薬”の服用が推奨されてきました。
そして、最後の”砦”とされるトリプタン製剤は片頭痛の”特効薬”とされてきました。
このように、各種の諸々の薬剤によって、ただ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで”一件落着”(万事が解決した)と安易に考えられてきました。
私は、こうした考え方そのものに、これまで疑問を呈してきました。
ところが、現在、専門家は、片頭痛に対して、市販の鎮痛薬を服用する弊害を次のように説明されます。
市販の頭痛薬や痛み止めの大部分は”みかけの痛み”のみを取り払い、水面下で起こっている脳の神経細胞の興奮症状を置き去りにしています。
当然、毎回の片頭痛発作のたびに起きている脳の血管周囲の炎症に関しても放置されたままになっています。
この興奮状態の放置により、片頭痛の回数や程度がだんだんとひどくなってきて、市販の頭痛薬の用法や用量の規定範囲を超えるようになってきたり、飲む回数が増えてきたりします。
こういったことから、片頭痛の”適切な治療”とはトリプタン製剤を服用することであり、片頭痛発作時に毎回トリプタン製剤を服用しておれば、”片頭痛が治ってしまう”とかといった”嘘”をつかれる専門家が出現してきていることを忘れてはなりません。
現在の片頭痛治療方針では、発作急性期には各種のトリプタン製剤を使い分け、発作間歇期には各種の予防薬を”適切に”選択すべきとされ、この上に片頭痛の引き金(トリガー)になるものを取り除くかもしくは避けることとされ、この「3つが柱」となっており、これで片頭痛の治療体系は確立されたとされています。
しかし、トリプタン製剤は患者のわずかに50~60%だけしか効果が見られず、心疾患のある患者や脳梗塞の既往のある患者、末梢血管障害のある患者では使うことができないからです。しかも、それらは根本的な治療薬ではない(片頭痛を根治させる薬剤ではない)ため多くの場合頭痛は24時間以内に再発する傾向があります。このような有効率しかないものです。
さらに、片頭痛の発作の都度トリプタン製剤を服用しているにも関わらず、片頭痛の3割の方々は、慢性化して増悪し、なかにはトリプタン製剤が片頭痛の”特効薬”とされることから、トリプタンによる薬剤乱用頭痛に陥り、対処が極めて困難な状態が多発するようになり問題になってきています。
このようなことは、私が敢えて申し上げるまでもなく、皆さんが、嫌という程思い知らされてきたことです。
また、世界の頭痛専門家は、片頭痛の病態(メカニズム)は各種のトリプタン製剤の作用機序の面から研究され、説明されてきました。
その結果、肝心要の”中枢神経系でセロトニンが減少する”理由についてはまだ謎とされます。
片頭痛の患者さんは,そうでない方と違って特別に興奮しやすい状態があるのではないかとされ、このような「脳過敏」を起こす原因もこれまた、不明とされます。
そして、前兆に関連して、「大脳皮質拡延性抑制」が提唱されていますが、この「大脳皮質拡延性抑制」を起こす原因が分かっていないとされます。
その前兆のかなり前に予兆と呼ばれる症状があります。あくびが出るとか,異常にお腹がすくとか,イライラするとか,眠くなるなどの症状があってから前兆が起こり,さらに激しい発作が起こること,発作が鎮まった後も気分の変調があったり,尿量が増加したりするなど全身の症状を伴うことが分かりました。そうなると,片頭痛は脳の血管,あるいは脳だけの局所的な疾患ではないのではないかという疑問が持たれています。
このような観点から病態を説明する最大の問題点は、片頭痛が慢性化する理由が、一切、見当がつかないとされていることです。
専門家は、「国際頭痛分類第3版」を頭痛診療および頭痛研究の”絶対的な基準”とされます。すなわち、カルト教団のように、絶対的な”教義・教典”とされます。
このため、「国際頭痛分類第3版」に反するものはことごとく排除されることになっています。
これまで幾多の業績が排除されてきたというのでしょうか。
例えば、「人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると謂われ、片頭痛がミトコンドリアの機能低下による頭痛(後天性ミトコンドリア病)である」とか、”「体の歪み(ストレートネック)」は頭痛と因果関係がある”、といったようなことです。これ以外にも枚挙の暇もない程です。
こうしたことを一切、検証されることもなしに、頭ごなしに否定されてきました。
専門家が絶対的な”教義・教典”とされる「国際頭痛分類 第3版β版」の本来の目的とするところは、片頭痛を明確に定義することによって、間違いなく、片頭痛に対してトリプタン製剤を処方させるためのものです。
このため、”片頭痛と明確に定義された”「国際頭痛分類 第3版β版」の基準に合致しないものが緊張型頭痛とされ、いわば緊張型頭痛は”ゴミダメ”的な性格の強い頭痛とされ、専門家の間では、極めて”取るに足らない頭痛”とされています。このように全く無視されています。
このように、片頭痛と緊張型頭痛はまったく別の範疇の頭痛であるといった”教義”が専門家の間で作られることになり、専門家は、片頭痛と緊張型頭痛それぞれの特徴的な症状を対比して挙げ、製薬メーカーはこれを基にしてパンフレットを作成し、広く一般の方々および医師に配布され、啓蒙されてきました。
現在でも、このような考え方は、ネット上に当然のように広く流布しています。
こうした慢性頭痛の発症の起点ともなるべき緊張型頭痛を無視することによって、いとも簡単に「片頭痛を醸成・熟成」させることになっています。
こうしたことは、トリプタン製薬メーカー・一般の市販の鎮痛薬の製薬メーカーおよび手抜き診療をされる医師の利益を生むことにしかなっていません。
脳のなかに異常のない一次性頭痛(慢性頭痛)は、国際頭痛分類第3版では、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(ここに群発頭痛が含まれます)、その他の一次性頭痛に分類されています。
頭痛研究を行う場面では、これまで専門家は、このように4つに大別された頭痛群をさらに、個々の頭痛を別個に独立させて研究すべきとされてきました。
このように、片頭痛だけは特別扱い(神格化)され、緊張型頭痛をはじめとした他の慢性頭痛とはまったく切り離して・別個のものと考えてきました。
そして、片頭痛の病態をトリプタン製剤の作用機序の面から研究してきたことによって、諸々の疑問点が生まれてきているところから、最近では、脳のなかに異常のない頭痛と”定義”される片頭痛が、”片頭痛発生器”というものを脳幹部付近に想定することによって、”中枢性疾患”という脳のなかに異常のある頭痛とまで、”基本的な定義”さえ覆されています。
トリプタン製剤導入以前は、脳のなかに異常のない慢性頭痛である「頭痛持ちの頭痛」は、たかが頭痛として軽く扱われてきました。
ところが、片頭痛のときに起こる脳の変化(閃輝暗点)が、PET、MRI(BOLD法)といった脳の新しい方法で、脳の病気が画像として確認され、群発頭痛の発作時には、視床下部が異常に活性化する事がPET、MRIなどの新しい測定法で発見されたことから、頭痛持ちの頭痛といわれるもののなかに「頭痛そのものが”脳の病気”」であることがわかってきたとされています。このように本来、脳のなかに異常のないものと定義されたものでありながら、「頭痛そのものが”脳の病気”」といったトンチンカンな考え方をされ、どうして、このような病像が、PET、MRIで捉えられるのかという原因に対する考察がまったく欠如していることに気がつかれることはありません。
従来の臨床頭痛学では、「慢性頭痛とは何か」、といったことが全く論じられることはありませんでした。
このような、海図・羅針盤にも等しい概念もなく、頭痛研究が行われてきたために、広大な荒海をただ彷徨うだけのことでしかなく、いつまでも研究の方向性すら掴むことができなかったということです。ここに致命的な考え方の誤りがあるはずでありながら、いつまでもこうした誤りに気がつかれることはありません。
このために、このように、まさに支離滅裂な状況に至っています。
専門家は、「国際頭痛分類第3版」を頭痛診療および頭痛研究の”「絶対的な基準」”とされます。この「国際頭痛分類 第3版β版」の生い立ちを紐解けば、トリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものです。専門家は、国際頭痛学会が作成した、世界で最も権威あるものとされていますが、これを絶対的な”教義・教典”とすることによって、トリプタン製薬メーカーによってマインド・コントロールされてきました。
このようにして、トリプタン製剤が開発されて以来、トリプタン製剤によって、片頭痛という辛い頭痛が劇的に緩和されるようになったことから、いつの間にか、「病気」とされてしまいました。
一般的には、西洋医学では、薬物療法で治療可能なものが、所謂「病気」として扱われており、そのほとんどは対症療法にすぎないものです。
このように、西洋医学の薬の多くは対症療法であり、病気を根本的に治しません。
本来、片頭痛患者さんの”生活の質QOLを向上させる”ために、トリプタン製剤の服用が勧められていたにすぎないものです。それがいつしか、専門家はトリプタン製剤を、片頭痛の特効薬とまで誇大宣伝を行ってきました。
このように、これまでの「臨床頭痛学」とは、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤が導入されて以来、発展してきたものであり、専門家はこれを頭痛学の進歩とされます。こうしたことは、従来の臨床頭痛学とは「トリプタン学」でしかないことを意味しています。
こういったことから、「慢性頭痛治療のガイドライン」では、慢性頭痛とは一体何か、といった原点に立ち返って、慢性頭痛とは、東洋医学でいう”未病”の範疇にある病態と考え、片頭痛は、私達が日常的に感じる極く軽度の頭痛、緊張型頭痛を起点として、ミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”を基盤として、ここに生後、ミトコンドリアの機能を低下させるような生活環境および生活習慣が加わって、片頭痛へと移行するものであることを明らかに致しました。
片頭痛以外の、群発頭痛やその他の一次性頭痛もこのような論点から、さらに研究が進められていくべきものと考えております。
このように考えることによって、日常的に感じる極く軽度の頭痛の段階から、適切に対処することによって、難治性の慢性頭痛への移行を阻止しなくてはなりません。
さらに、ご家族のなかに片頭痛の方がいらっしゃれば、片頭痛予備軍として、早期から対処することによって、片頭痛への移行を阻止しなくてはなりません。
今回の「慢性頭痛治療のガイドライン」では、前編と後編でかなり重複した記載になっている部分がありますが、この重複した部分こそは核心にふれる事項であるが故に、このように重複させるような形態を敢えてとらせて戴きました。
この「慢性頭痛治療のガイドライン」をご覧頂く方々は、中学生から中年の方々まで年齢層も幅広く、それぞれの専門分野の異なることを考慮して、多面的な記載方法をとらざるを得ませんでした。少なくとも、前編は、後編の理論的な根拠となるものであり、これなくしては、後編が宙を浮いたものになりかねないからです。
前編のなかの、ミトコンドリアに関する事項は、慢性頭痛とくに片頭痛を理解するためには、欠かせないものであり、これなくしてはこのガイドラインの意味をなさない程、重要な項目になっています。
このことは、慢性頭痛(片頭痛を含めて)が、脳のなかには異常がない頭痛であることを理解して戴くことを目的にしているからです。
今後、さらに皆さんの御批評・御批判を賜った上で、改変の予定です。