なぜ、私達は「片頭痛治療に難渋する」のでしょうか? その2 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 現在の片頭痛治療方針では、発作急性期には各種のトリプタン製剤を使い分け、発作間歇期には各種の予防薬を”適切に”選択すべきとされ、これで片頭痛の治療体系は確立されたとされています。

それでは、トリプタン製剤は片頭痛になぜ効くのでしょうか

 

 専門家は、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤が導入された際に以下のように説明してきました。


 トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用しているためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。

 ”ストレスなど何らかの理由”でセロトニンが分泌され、収縮した血管は、役割を果たして減少するにつれて今度は拡張します。
 血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きる、というのが一つ。
 さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が分泌され、血管を刺激して痛みが出てくる、というのが一つ。
 この二つが片頭痛が起きるメカニズムです。
 このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、トリプタンという薬は、セロトニンと同じような作用を持っています。そのためセロトニンの代わりに血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらにセロトニンは三叉神経に取りついて、痛み物質のサブスタンスPなどが分泌されるのを抑制する役割がありますが、ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
 このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタンスPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところに作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。

 このように、片頭痛発作時には、「脳内セロトニン」が不足した状態にあります。トリプタンという薬は、脳内セロトニンと同じよりに、血管には1Bという鍵穴があり、トリプタンはこの鍵穴に作用して、血管を収縮させ、拡張によって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
 さらに血管の周囲から「痛み物質」が、シャワーのように血管に降り注いで、血管の拡張と炎症が起こっており、シャワーには1Dという鍵穴があって、トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛み物質」の放出をとめます。ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。

 基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与することによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップしています。
 

 ところが、専門家の間では、なぜ、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能が低下しているのかが不明とされています。
 
これは、専門家は、片頭痛がミトコンドリアの機能低下による頭痛であると考えていないことに理由があります。
 ミトコンドリアの機能が低下すれば当然、同時に、セロトニン神経系の機能低下が引き起こされてきます。ここに生活習慣の不規則・ストレス・生理周期や、“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なると「脳内セロトニンの低下」が引き起こされてくることになります。これが、片頭痛患者さんの根底にあります。



 組織が損傷を受けた時、細胞膜にあるリン脂質はアラキドン酸に変わり、シクロオキシゲナーゼ(COX)の作用によってプロスタグランジンが生成されます。このプロスタグランジンの作用によって引き起こされる「痛み、熱、腫れ」などの症状が引き起こされる現象を炎症といいます。一方、組織損傷時に血漿から遊離したブラジキニンは、知覚神経を興奮させることにより、痛みを発生させます。プロスタグランジンは、ブラジキニンと比較して直接的な発痛作用は弱いのですが、ブラジキニンによる発痛を増強させます。このように疼痛は両者の関わりから起こります。
 発痛物質には、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリンなどがありますが、その中で最強とされるのはブラジキニンです。
 セロトニンは皮膚や筋肉に分布する痛覚受容器に作用して痛みを起こします。
 セロトニン濃度が低いと、物理的刺激や他の発痛物質(たとえばブラジキニン)の発痛作用を増強します。
 セロトニンの濃度を急に低下させるものはすべて頭痛を起こし、その際、絶対的な濃度よりも、減少のスピードが重要となってきます。
  この詳しいことは、脂質の基礎知識をご覧下さい。



 生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食に、睡眠不足や運動不足や不規則な生活などの生活習慣が加わって、ミトコンドリアの機能は低下してきます。
 このようなミトコンドリアの機能を低下させる要因を取り除かない生活を送ることによって、「酸化ストレス・炎症体質」が形成されてきます。
 このように、片頭痛発症の根幹には「酸化ストレス・炎症体質」というものが存在し、このために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こされ、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出されることによって、片頭痛発作につながっていきます。これは後ほど詳しく述べます。

「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」

  苦しい頭痛という痛みだけをトリプタン製剤で取り除いていますと、ミトコンドリアの働きの悪さは厳然として存在しており、その根底にある病態(「酸化ストレス・炎症体質」)は次第に増悪してくることになります。
 このため、自然と服用回数が増えてくることは避けることができません。このため、必然的に服用回数が増加して最終的には「トリプタン製剤による”薬剤乱用頭痛”」に至ります。このように片頭痛は悪化してきます。

 現在のトリプタン製剤ですが、片頭痛の場合、効くひとには麻薬なみの絶大な効果を発揮するため、つい飲み過ぎにつながってきます。トリプタン製剤は、大半は有効時間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤で、市販の鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤”とされていますので注意が必要です。

 このため、片頭痛診療の重鎮とされる名古屋の寺本純先生は、このような薬剤乱用頭痛の治療の難しさをこれまで訴えてこられ、特に”トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛”を改善させる難しさを強調され、”従来の予防薬”(後で述べます)では全く効かないとされ、最近ではボトックス治療による方法を提唱されます。そして、先生は、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛からの脱却にはボトックス療法しか現状ではないとされます。
 そして、その有効率は、1年以内で80%であり、残りの20%は脱却できないとされています。このように、一旦、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛に陥れば、運が悪ければ、一生、頭痛で苦しむことを余儀なくされてしまうことを意味します。まさに、頭痛地獄の絵図そのものということです。
 参考までに、寺本先生の提唱される「ボトックス治療」は現在、保険適応はなく、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛から脱却する唯一の方法でありながら、簡単に・身近な医療機関では受けることは出来ないのが現在の日本の状況です。
 ですから、一旦、トリプタンによる薬剤乱用頭痛に至れば、治すことは至難の業です。 こういったことから、生活習慣の問題点を改善・是正することなく漫然と服用してはなりません。


 以上のように、「脳内セロトニンの低下」の本家本元は、ミトコンドリアの機能低下にあります。ですから片頭痛患者さんの根底には、常に、脳内セロトニンの低下状態が存在します。

 これが、片頭痛発作時に急激に低下し、これをトリプタン製剤で一時的に補填しているに過ぎないものです。
 片頭痛患者さんの根底には、常に、脳内セロトニンの低下状態が存在しているために、「パニック障害」とか「うつ状態」を合併する人もいるということです。
 このような状態に対して、発作時に一時的にトリプタン製剤を服用しても、このような雀の涙の量を補ったからといって、脳内セロトニンの低下状態によって引き起こされた「パニック障害」や「うつ状態」が改善されることはありません。これらを改善させるためには、根気強い「セロトニン活性化」が必要とされることは言うまでもありません。
  このためには、最低3カ月は必要とされ、トリプタン製剤を服用することでは改善されることはありません。


  先程”ストレスなど何らかの理由”といったように、片頭痛の”引き金”となるものはこれまで、まったく不明とされてきましたが、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は以下のように説明されます。

  先述のように、「酸化ストレス・炎症体質(片頭痛体質)」を基盤として、ちょっとしたことで(ストレスなど何らかの理由で)「活性酸素」や「遊離脂肪酸」が過剰に発生することによって血小板から血管外へセロトニンが放出され、血管を収縮させます。その後、役割を果たしたセロトニンは減少し、やがては枯渇し、今度は逆に血管は拡張します。
  この一番”最初の”片頭痛の発作を引き起こす引き金(トリガー)となる「血小板を凝集させるもの」が、「活性酸素」や「遊離脂肪酸」です。

それでは、「活性酸素」や「遊離脂肪酸」はなぜ発生するのでしょうか?

「活性酸素」はなぜ発生するのでしょうか?

 人は精神的なストレスを受けると、アドレナリンというホルモンを分泌し、血圧が上がり、心拍数が増えて血糖値が上がります。これは、緊張状態に備えるための体の変化です。
 このとき、体内を循環している血液は、おもに心臓や肝臓、筋肉に集中し、脳への血流は低下します。
 脳細胞への血液が不足・減少すれば、細胞内にあるミトコンドリアで産生されるエネルギー発生物質(ATP)も減少します。脳は、体の各器官に指令を送るときに、カルシウムなどのイオンの濃度調整によって伝達物質を送り出して指令を伝えます。しかし、ATPが不足すると、脳細胞内のミネラルイオン濃度を調整するポンプが正しく機能しなくなり、いわゆる”機能停止状態”になってしまいます。
 その後、ストレスから解放されると再び脳血管への血液の供給がよくなり(再潅流)、機能停止状態になっていたミトコンドリアは急速に機能を回復させます。このとき、過剰な活性酸素を発生させます。
 健常人では問題となることのない血流の変化であっても、片頭痛持ちの人は元来ミトコンドリア機能の活性が低く、わずかな血流の増加であっても活性酸素を発生しやすい状態になっています。
  同じようなことは、運動をすることや飲酒、入浴などによって急に血行が良くなる場合や、早朝の自律神経の切り換えにともなう血流の変化やホルモンの分泌量の変化にともなう僅かな血流の変化も片頭痛持ちの人では活性酸素の発生の要因となってしまいます。
 私達は睡眠中はおよそ2時間おきに、深い眠りと浅い眠りを繰り返しています。じつは浅い眠りのときには脳が活発に活動するため、血流が増加します。血流が増加することによって、活性酸素が産生され、これが刺激となって、頭痛を引き起こしてきます。片頭痛で明け方に発作を起こしたり、睡眠時頭痛を引き起こす一因になったり、群発頭痛が夜中に起きるのはこのためです。
 低気圧や人ごみ(酸素濃度のわずかな低下)や季節の変化(寒暖にともなう血流の変化)もミトコンドリア機能の活性が低い片頭痛持ちの人ではミトコンドリアの代謝機能の低下と、それに引き続きおきる血流の回復により過剰の活性酸素が発生してしまうことになります。
 また、小麦などに含まれるタンパク質の成分であるグルテンに過敏な人では免疫系のマクロファージ(白血球の一種)がグルテンを異物として排除するときにも多くの活性酸素を発生することになり、片頭痛の発作の原因となります。
  風邪を引いた場合にも同様に風邪ウイルスに対する免疫系からの過剰な活性酸素が発生し片頭痛の引き金となることもあります。
  なお、風邪ウイルスは直接的に筋肉細胞や血管細胞を攻撃し、片頭痛の発作や痛みを引き起こす生理活性物質をも発生させます。
  このようにして、ストレスや運動、飲酒、入浴、風邪などの要因が活性酸素を発生させ片頭痛を引き起こしていくことになります。

 片頭痛の根底に存在する「酸化ストレス・炎症体質」が、活性酸素を異常に発生する原因になっています。
 活性酸素が発生しやすい「酸化ストレス・炎症体質」に加え「ミトコンドリアの活性の低さ」が重なれば非常にわずかな刺激であっても活性酸素が過剰に発生されてしまうのです。
  また、「酸化ストレス・炎症体質」では体内で過酸化脂質が生成されやすく、過酸化脂質も活性酸素を過剰に発生させる原因物質となります。
  ただし、過酸化物質については実際に体内で脂質が酸化され生成されること以上に加工食品などの過酸化脂質をすでに含む食品を摂ることの方が現実の問題としては大きいように思われます。

遊離脂肪酸はどのようにして生じる?

  精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離脂肪酸が生成されるようになります。
  本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げたりする時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと考えられます。
  通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足分を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用されます。
  しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となります。ストレスから解放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を高めるだけの結果となってしまうのです。
  その結果、血小板に直接作用して血小板の凝集を促進することや脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
  このため、ストレスを受けている時に発症するのではなくストレスから解放された時に片頭痛を発症しやすくなるのです。

  また、植物油(リノール酸)の摂りすぎやトランス脂肪酸を摂ると、体内での脂質代謝が遅延することになりますので、血液中の遊離脂肪酸濃度をいつも高い状態にしてしまうことになります。
  このように、血液中の遊離脂肪酸濃度が常に高い状態であれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても血小板の凝集や活性酸素の発生が起こり易くなると考えられます。
  一方、糖飲料などを飲みすぎにより急激に血糖値が上がりすぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが過剰に分泌されることになります。過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げすぎることになります。
  血糖値が下がりすぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとするからだの仕組みが働き、体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。
  体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費のバランスとれておれば問題を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまうと血液中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。
  特に片頭痛持ちの人はミトコンドリアの活性が低く(冷え性や低体温症など)、ブドウ糖の生成とその消費のバランスは乱れやすい傾向にあります。
  糖飲料の摂りすぎ以外にも、過激な運動や絶食(長い間の空腹)なども糖への代謝とその消費のバランスを乱しますので血液中の遊離脂肪酸の濃度を高めることになります。
  このようにして放出された遊離脂肪酸が血小板に直接作用して血小板の凝集を引き起こすことにより脳血管内のセロトニン濃度が上昇することで片頭痛を発症すると考えられます。
遊離脂肪酸には細胞を傷つける性質が強いという特徴があります。通常は血液中のアルブミン(Lカルニチン)というタンパク質成分と結合して毒性が弱められた状態で存在しているのですが、遊離脂肪酸が毒性を発揮して細胞を傷つけるということは、アルブミンとの結合可能な限界量(間値)を超えてしまっているということです。
 このような状態を招く原因は、間違った日々の食習慣・過食なのです。特に、植物油(リノール酸)やトランス脂肪酸を多くとり過ぎると、体内での脂質代謝が充分に行われず、血液中の遊離脂肪酸濃度が高い状態になることがわかっています。
 このような状態になれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても、片頭痛の引き金となる脳血管内の血小板凝集が起きてしまいます。

  または、遊離脂肪酸が脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させ、その活性酸素が三叉神経や脳細胞を傷つけることにより片頭痛を発症させると考えることもできます。

脂質のとり過ぎが活性酸素の発生原因に!

 ところで、「酸化ストレス・炎症体質」の人は、体内で過酸化脂質が生成されやすく、これが活性酸素を過剰に発生させる原因物質となっています。
 過酸化脂質というのは、コレステロールや中性脂肪が活性酸素によって酸化されてできたものです。これらは体内で作られるのですが、それ以上に、そもそも過酸化脂質を多く含む加工食品などを過剰にとる食習慣のほうに問題があると考えられます。
 ポテトチップスなどのスナック菓子、インスタントラーメン、ピーナッツ、マヨネーズ、マクロの缶詰(缶を開けたあと)、黒くなった古い油分には注意が必要です。また、新しいものでもチキンフライなどの揚げ物を電子レンジで加熱すると、とがった部分や角の部分が過酸化されることがあります。


 こういったことから、片頭痛を根本的に改善させるためには、ミトコンドリアの機能を改善させ、「酸化ストレス・炎症体質」を是正する必要があります。


おくすりを服用する際の注意点

 これまで”慢性頭痛”治療の世界では、各種の薬剤によって、ただ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで”一件落着”(万事が解決した)と安易に考えられてきました。
 すなわち、従来から、頭痛があれば、まず市販の鎮痛薬を、これでダメなら病院での鎮痛薬NSAIDs、これで効かなければエルゴタミン製剤を、これでも効かなければトリプタン製剤が勧められてきました。このように段階的に、”鎮痛薬”の服用が推奨されてきました。
 そして、最後の”砦”とされるトリプタン製剤は片頭痛の”特効薬”とされてきました。 トリプタン製剤は確かに鎮痛効果は優れています。しかし、これをいくら飲まれたからといって、片頭痛そのものは根本的に治ってしまうことはありません。大半の方々は、一生、トリプタン製剤のお世話にならなくなっているのが実情で、結局、頭痛を起こす原因に対処していないためこのような結果になっているということです。

 現在、使われているトリプタン製剤や予防薬はあくまでも”補助的手段”でしかなく、”対症療法”でしかありません。

  この点が最も大切なことであり、”くすり”さえ飲んでおれば、片頭痛が治ってしまうことはなく、専門家の言われるようにトリプタン製剤は片頭痛の特効薬でも何でもないことを、まず認識しておくことが重要です。


 頭痛が起きてしまえば、当然のこととして、たちまちは鎮痛薬を痛みを緩和させることは必要です。しかし、毎回、このように痛みだけを緩和させて、治まればこれで全てが解決した、一件落着したと決して思わないことです。
 ”日常的に感じる極く軽度の頭痛”が最初に起きた時点から、頭痛が起きた原因が存在します。これは前回述べたことです。
 これに対して根本的な・抜本的な対処をしておきませんと、その後の生活習慣の問題点が次々に追加されることによって、頭痛そのものが複雑なものになってき、一筋縄ではいかなくなってきます。このことは、前回述べました。
  このような生活習慣の問題点を是正しながら”適宜”服用するのが原則です。
 これを是正しながら、日常生活を送ることになりますが、まだ頭痛が再発するようであれば、なお是正しきれていない生活習慣の問題点が残っていることを意味しています。こうしたことから、さらに残された生活習慣の問題点を是正していく必要があります。
 そして、どの鎮痛薬であれ、服用する際の原則は、痛みが出現すれば直ちに服用することです。我慢して、服用が遅れれば、効果が得られなくなってしまいます。服用する以上は、頭痛の起こり始めの早期に服用しなくてはなりません。そして、このような鎮痛薬の服用は”月10回以内”になるように努力・工夫しなくてはなりません。これ以上を何ヶ月も継続されますと、薬剤乱用頭痛を併発してくることになり、いくら服用されても鎮痛薬の効果が得られなくなり、極めて厄介な状況(薬剤乱用頭痛)を作ってくることになりかねません。
 このように、生活習慣の問題点を是正させることとの謂わば”競争”のようなものです。頭痛治療は、こうした薬剤乱用頭痛との戦いともいえるものです。
 そうしませんと、市販の鎮痛薬→病院の鎮痛薬→エルゴタミン製剤→トリプタン製剤へと次第に強い鎮痛薬に変更せざるを得なくなり、最後のトリプタン製剤にまで行き着くことになり、最後のトリプタン製剤によって薬剤乱用頭痛に陥れば、もう服用する鎮痛薬はないことになり、一生、頭痛地獄を味合うことになってしまいます。このようになるまでの間に、生活習慣の問題点を是正しなくてはなりません。このような競争をしなくてはならないということです。


予防薬について

 ここで注意しなくてはならないことは、”予防薬”という表現です。いかにも片頭痛が予防できるような錯覚を覚えますが、決して片頭痛そのものが”予防”できるものではなく、片頭痛の発作回数を減らし、発作時に服用するお薬の効き目をよくする程度の働きしかありません。この点は後に述べます。

 この予防薬としては、現在では以下のようなものがあります。

   1.ベータ遮断薬
    2.カルシウム拮抗薬
    3.カルデサルタン
   4.抗うつ薬
    5.抗てんかん薬
    6.ビタミン類
    7.ボツリヌス毒素


  このような予防薬は、始めから予防薬として開発されたものはカルシウム拮抗薬のミグシス、テラナスだけで、これ以外のものは片頭痛の方々が、例えば同時に高血圧を合併しておられ、ベータ遮断薬やカルデサルタンを同時に服用されていた際に、偶然、片頭痛発作回数が減ったことから”予防効果”があるとされたものです。
 しわのある部位にボトックスを注射すると筋肉が弛緩してしわができにくくなるために、美容目的の治療でボツリヌス毒素製剤を使った患者さんで片頭痛が改善したことから、このボツリヌス毒素製剤が予防薬として使われています。
 片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」ことが強調されており、”脳の興奮性の亢進”を抑制させる目的で抗てんかん薬が予防薬として使われています。しかし、このなかのデパケンはミトコンドリア毒性があるため、服用上注意が必要で、とくに子供の片頭痛に使うには問題があります。
 ミトコンドリア病を持つ人々にミトコンドリアの機能をよくするビタミンB2を摂取させると、片頭痛が改善されることが分かっており、逆に、片頭痛もちの人たちもビタミンB2を摂取することで、7割近くの人の頭痛が改善することから、ビタミン剤のビタミンB2が予防薬として使われていますが、予防薬というより根本的な治療薬と考えられるべきものです。
 このようにミグシス、ビタミンB2以外の薬剤は、片頭痛に使っていて偶然、片頭痛の発作回数が減少したことから”予防効果”があるとされたものばかりです。このため薬効の不確かなものばかりで、どうして効くのかは、あとで付け足しで考えられたものです。

予防薬の有効率

 しかし、これらの予防薬は、すべての患者さんに効くというわけではありません。予防治療の有効率は決して高いものではありません。
 ほとんどの薬剤が、有効率は30~40%、すなわち10人中3~4人しか効きません。
 しかし、個人差が激しいので、薬によって有効率は異なります。効かなかった場合には、他の薬に変えてまた、2~3カ月様子をみる、という気長な対応が必要です。
 また、効果を確認できるまでの期間も短くないのです。
 予防治療に使われるどの薬剤も、効果を発揮するまでには4週間くらいはかかります。
 はじめの2週間くらいはまったく効かないのが普通です。3~4週めになっていくらか頭痛の回数が減っていると感じたら、効果があったと考えてよいでしょう。なかには、2カ月めになってやっと効果がはっきりしてくることもあります。
 こういった理由から、多くの患者さんは、予防薬の効果が現れるまでの期間が長く、極めて緩やかな効き方しかしません。
 確かに、数年間にわたって、1種類ずつ処方されておられる場合もあるようですが、このような方式は、あくまでも偉い先生方がされた場合のことで、じっと我慢して服用されておられる方々は少ないのではないでしょうか?
 大半の方々は途中で治療をあきらめ、ひいては頭痛患者さんが医療機関を敬遠される元凶になっているものと思われます。
 このような効き目しかないため、鹿児島の田村正年先生は予防薬の多剤併用療法を提唱され、最初から3,4種類の予防薬を併用すべきとされます。


 私は、予防薬がこのような効果しか得られない理由として、片頭痛の発症要因として何が考えられるのかを、まず想定すべきであり、この要因を中心として是正すべきと思っております。こういったことから、治療当初から「生活習慣の是正」が必要と考えています。
 これまで、予防薬の効果が思わしくなかった理由として、治療当初からの「生活習慣の是正」が徹底して行われてこなかったことにあると思っております。
  治療当初から「生活習慣の是正」が行われる限り、もっと予防薬の有効性を引き出すことが可能と考えております。

 以上のように、予防薬を服用する場合も、当然、これまでの生活習慣の問題点を点検しながら、これを同時に改善させながら服用していくのが原則です。
 これをされませんと、期待した程の効果が得られないことになります。
 ”漫然と”予防薬を服用していてはならないということです。

 



 以上のように、現在の片頭痛治療方針では、発作急性期には各種のトリプタン製剤を使い分け、発作間歇期には各種の予防薬を”適切に”選択すべきとされ、これで片頭痛の治療体系は確立されたとされ、このように「薬物療法」がすべてであり、片頭痛という辛い痛みだけを軽減・緩和させることに主眼が置かれ、このようにしておれば、いずれ3割前後の方々は治癒していくとされています。しかし、3割の方々は慢性化し、どうにもならない状態に行き着くことになっています。
  このように、現在、使われているトリプタン製剤や予防薬はあくまでも”補助的手段”でしかなく、”対症療法”でしかありません。

  本来なら、片頭痛発作期間中の辛い3日間の片頭痛患者さんの生活の質QOLを高める目的でトリプタン製剤の服用が勧められていたにすぎなかったものです。これは、片頭痛の原因が不明とされていた時代の考え方です。

 いや、日本にトリプタン製剤が導入された際に、意図的にトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者によって「原因不明」とされていただけのことです。

 現在においても、専門家は、こうしたトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者の呪縛から解き放たれていないために、原因不明とされたままになっています。

 トリプタン製剤が日本に導入される以前から、Welch KMA, Ramadan NM、下村登規夫、小谷和彦、村上文代先生らによって、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると報告されていました。

 そして、最近では、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生によって、さらに明快に論破され、「3つの約束」を提唱され、実績を積まれています。。
 このように、日本にトリプタン製剤が導入された際に、意図的に、トリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者によって、このような考え方は排除されてきた歴史を忘れてはなりません。
 「片頭痛がミトコンドリアの機能の低下によって起きる頭痛」であると考え、これを理論的に考えさえすれば、私達がどのようにすればよいかが導き出されます。
 専門家は何かと言えば、科学的根拠、エビデンス・エビデンスとイチャモンをつけられます。しかし、専門家は自分の頭を使うこともなく、ただ単に欧米のトリプタン御用学者の文献的エビデンスに盲従するしか能がなく、現在でもこれが継続しています。

 そして、現在、人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、さらに、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(片頭痛、動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。
   ところが、全世界の頭痛研究者は、頭痛領域ではこのような考え方とされず(これは、国際頭痛分類第3版を絶対的な基準とされているからです)、ご多分にもれず日本の頭痛研究者もこれに従っているだけのことです。

 

  現在、専門家はHeadache Master School Japan(HMSJ)を、日本の頭痛診療・教育のあるべき姿を示すものと考え、これを「日本の頭痛教育プログラム」の中心として専門医養成講座の一環とされます。
 このHMSJとは、2013年3月に、国際頭痛学会主催でHeadache Master School 2013 in Asia が東京で行われ、世界のトップエキスパート14名が来日し、頭痛医学の最新の進歩を参加者一人一人に伝授されたことを基本として設けられたものです。
 専門家の方々が、この世界のトップエキスパートとされる先生方は、Burstein, Charles, Diener, Dodick, Ferrari, Goadsby, Gobel, Guidetti, MacGregor, Purdy, Schoenen, Schoonman, Rapoport, Zagamiで、いずれも”トリプタン御用学者”と称される先生方です。
 このため、片頭痛がミトコンドリアの機能の低下による頭痛であるといったことは一言も教育されることはありません。


 私達は、専門家とは袂を分かって、いつまでもトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者の”呪縛”に支配・束縛され続けてはならないということです。
 

 私達が「片頭痛治療に難渋する」のは、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬である、といった誇大宣伝に惑わされ、「トリプタン製剤さえ服用しておれば片頭痛が治ってしまう」、ということを信じ込まされてきた結果でしかありません。このように単純なことでしかありません。「トリプタン製剤が片頭痛の特効薬である」といった詭弁から脱することです。
 このことを肝に銘じておく必要があります。