前回は、、「ミトコンドリアの働きを悪くさせるもの」として薬剤の影響について述べました。今回は「活性酸素」について、繰り返しですが述べておきます。
細胞内小器官である「ミトコンドリア」は私達に生きるエネルギーを与えてくれますが、反面、活性酸素を最も多く発生する細胞内小器官でもあります。
ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミトコンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する機能も高まります。しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪循環が始まります。
身の回りは活性酸素を生み出す要因だらけ
実は活性酸素は、私たちが生きていく上で、どうしても発生してしまうものなのです。
私たちが体に酸素を取り込み、消費する過程で活性酸素は自動的につくり出されます。 激しい運動をしているときはもちろんのこと、仕事や家事などをして普通に生活しているときも、くつろいでいるときや眠っているときも発生するのです。
私たちは生きている限り活性酸素から逃れることはできません。
太古、地球の生物が酸素を体に取り込んで生きるようになったときからの、宿命といえるかもしれません。
もちろん活性酸素が体の中で増える一方だと、人間はたちまち死んでしまいます。
そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、病気や老化が起きるのです。大量発生のきっかけにはさまざまなものがあります。
体が傷を受けたり、ウイルスが侵入したときもそうですし、太陽光線も原因になります。
これらは昔から、私たちの体に活性酸素を発生させる原因になってきました。
その上、現在では、更に活性酸素を発生させる原因が増えています。
それが食品添加物や洗剤、化粧品などに含まれる化学物質であり、大気中の有害物質や放射線などです。これらの原因は、昔にはなかったものです。
豊富な栄養をとっているにもかかわらず、現代人に病気が多いのは、このことが原因ではないかと言われています。
ウイルスや細菌は、病気を引き起こす元凶ですが、これも活性酸素発生の原因になります。これらの外敵が入ってくると、白血球が出動してきて外敵を殺そうとします。
このときの武器が活性酸素なのです。白血球が敵の数に合わせて、びったり適量の活性酸素しか出さなければいいのですが、白血球は外敵を確実にやっつけるために必要量を上回る活性酸素をつくってしまいます。その余分な活性酸素が、まわりの細胞まで傷つけてしまうのです。体にとっての異物は、ウイルスや細菌ばかりではありません。
実は、病気を治すために飲む薬や、空気中に存在する有害物質、そして食品添加物や洗剤、化粧品などに含まれる化学物質も、体にとっては異物なのです。
このなかには、当然のこととして頭痛薬として使用される市販の鎮痛薬、非ステロイド性鎮痛薬、エルゴタミン製剤、さらにトリプタン製剤も含まれています。
これらのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異物と理解してしまうのです。
そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程でも、活性酸素が発生してしまうのです。
このように特に、現代の科学や文化の発達が生んだ数々の人工的な要因が、私たちを更にむしばんでいることが伺えます。
薬や食品添加物の氾濫、農薬の普及、排ガスによる大気の汚染、水の汚染、原子力の利用による放射線被爆、電気製品による電磁波・・・・・生活環境の変化、破壊はすなわち体内での活性酸素の大量発生につながっているのです。
昔から受けてきた紫外線にしても、オゾン層の破壊により、増加し続けています。
こうした要因は、ほんの数十年の間に急速に増えてきたものです。
私たちの体の働きは、太古から少しずつつくられてきたものですから、この数十年の変化にはついていくことができません。
体の中には活性酸素を取り除く働きもありますが、人間のミトコンドリアは、活性酸素の発生源が今よりずっと少ない時代につくられていますから、新しい要因が生み出す過剰な活性酸素まで取り除くことはできない状態にあります。
活性酸素をつくり出す原因がこれだけ増え、体の中には対抗する手段が充分にはないとすると、私たちの体の中には、過剰な活性酸素が存在しているということになります。
これが現代人の体をむしばみ、病気をつくり出しているのです。
食物の豊富な国に住み、快適な暮らしをしているにもかかわらず、現代社会に暮らす日本人は病気から逃れることができません。
ガンや糖尿病、心臓病などの成人病の発生が増えているのも、昔はあまりみられなかった喘息や花粉症、アトピーなどのアレルギーが増えているのも、環境の悪化による活性酸素の増加が原因と考えられます。
日本は長寿大国となりましたが、長寿を謳歌している人の多くは、活性酸素を発生させる要因が少ない時代に育っていることを忘れてはいけません。
また、昔の日本人の食事は活性酸素を取り除くために理想的な食事ともいわれています。 活性酸素の発生要因に囲まれ、欧米風に変化した食事をとって育っている若い人や子供が、長生きできる保証はどこにもないのです。
また、高脂肪・高タンパク質食品に偏った食生活を続けると、カロリーのとり過ぎとあいまって、「SOD」(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシダーゼ」、「カタラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、銅、亜鉛、セレンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が抗酸化作用より常に優位な状態、いわゆる「酸化ストレス」になります。
偏食や過食は活性酸素の発生を加速し、がんや認知症などの疾患にも悪影響を及ぼします。カロリーのとり過ぎは活性酸素の発生量を増加させ、逆にカロリーを制限することは活性酸素の発生を減少させ、片頭痛を改善させ、老化の進行を抑制します。
さらに、活性酸素の増加させる”環境の悪化”があります。
環境ホルモンとは?
環境ホルモンが問題となりはじめたのは、1980年頃に世界各地で異常が発見されることによって、研究がされるようになりました。環境ホルモンは、外因性内分泌攪乱物質または外因性内分泌攪乱化学物質と呼ばれています。
環境ホルモンという呼び名は、あるひとつの物質の名前ではなく、”生物のホルモンの働きを狂わせてしまう物質”の総称です。環境ホルモンは、体内の正常な働きをするホルモンの働きを壊すことで、様々な異常を引き起こします。
体内の”ホルモンの働きを乱し”、生殖機能への影響などが心配されている環境ホルモンは、人工的に作りだされた化学物質で、正しくは「内分泌攪乱化学物質」といいます。環境ホルモンの多くは有機合成化合物で、環境庁が1998年5月に策定 、2000年11月に改定した「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」では、“動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれている正常ホルモンの作用に影響を与える外因性の物質”とし、疑われる化学物質として65物質をあげています。
また、ゴミの焼却の際に生ず環境ホルモンも大問題になっていますが、私たちの周りには 医薬品、農薬、食品添加物、合成樹脂、合成洗剤など、人が作りだした化学物質がたくさんあります。
問題は人体がダイオキシンなど環境ホルモンである有機化合物を受け入れやすく、分解・排出しにくい点です。そのために体の中に残って害をもたらすのです。たとえば、女性ホルモンに似た環境ホルモンが体内に入り込むことで、ホルモン本来の働きが乱されることになります。環境ホルモンは、前立腺ガンとの関係が心配され、免疫力を低下させるのではという不安もいわれています。
食物では、アメリカの肉牛や養殖の魚に環境ホルモンの残留が見られますが、これは家畜の飼料やエサに成長を早める成長ホルモンが混ぜられているからです。
私たちはゴミを出さないなど、身近にできることから取り組み、これ以上環境ホルモンを作らないようにすることも重要ではないでしょうか。
環境ホルモンの原因
環境ホルモンの原因となっているのは、化学物質です。化学物質を大量に摂取しているとは、誰もが思わないのでしょうが、日々の生活の中で環境ホルモンは、身体の中に取り込まれているといってもよいでしょう。殺菌剤・防腐剤・殺虫剤・農薬・食品添加物・ダイオキシンなど、約70種もの化学物質があげられています。さらに、環境汚染された状態の川や海などからも有害物質が検出されています。産廃処分場の侵出水から、30種以上の環境ホルモンが検出されたという例もあります。
環境ホルモンの影響
環境ホルモンは、知能低下・学力障害・注意力欠如・ストレスへの過剰反応・ 拒食症・強迫神経症・様々な不安症・鬱状態・アレルギーなど、人や生物に、多大な悪影響を及ぼすことがわかっています。さらに、環境ホルモンの影響を受けている動物の肉などを食べることも環境ホルモンの影響があります。そして、人間への影響として、キレやすい子供が増えたことも環境ホルモンの影響ではないか?と言われています。
私たちが、なにげなく食べているジャンクフードには、着色料や保存料といった食品添加物(化学物質)が大量に入っています。さらに、カップメンやお弁当などの容器や缶ジュースの缶には、化学物質が使われていて、微量ですが、溶け出しています。私たちが、安全だと思っているものには、実際、多くの化学物質が入っているというのが現状なのです。しかし、そういったものは、私たちの目に見えるものではなく、見逃してしまいがちです。
このように私達の身の回りには「有害物質」に満ちあふれている生活環境におかれています。このため有害物質に対する対策を考える必要があります。
「エストロゲン過剰症」
エストロゲンとは単独の化学物質を示す言葉ではなく、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、エステトロール(E4)などと、それらと同様の生物活性を有する化学物質の総称です。分泌源は主に卵巣の卵胞ですが(したがって卵胞ホルモンとよばれます)、副腎や精巣からも分泌されます。
エストロゲンは「女性をつくるホルモン」で、第二次性徴の発現、子宮内膜の増殖、月経周期の成立の媒介、乳腺管の増殖分泌促進などの作用がありますが、副腎や精巣でも分泌されることからおわかりのように、男性の体の中にも存在しているのです。
もちろんエストロゲンは男女ともに必要なホルモンですが、現代ではプロゲステロン(黄体ホルモン)やテストステロン(男性ホルモンの一種)との比率が、本来あるべき姿から逸脱し、エストロゲンが過剰に人体に存在するようになってしまいました。
「エストロゲン過剰症」とは、この状態を示します。
そして、これが次のような、さまざまの病気や症状の原因の一つとなっています。
子宮筋腫・子宮がん・子宮頚部異形成・乳がん・前立腺がん・デプレッションや不安・気分の動揺・いらいら感・不眠・頭痛・疲労・むくみ・性欲の減退・甲状腺機能障害 の一つの症状である手足の冷え・不活発な代謝・生理不順・PMS・不妊・乳房の圧痛・多嚢胞性卵胞・喘息、蕁麻疹、湿疹、鼻づまり といったアレルギー症状・加齢亢進、特に腰まわりと太ももの脂肪の蓄積・胆嚢の病気 ・血栓の増加(脳卒中の危険性の増大)・低血糖・銅の過剰と亜鉛の欠乏・マグネシウム欠乏・ビタミンB群の欠乏・閉経前の骨密度低下・骨粗鬆症・全身性エリテマトーデス、橋本病、シェーグレン氏病といった自己免疫疾患・無精子症や新生児の尿道下裂。
以上のように現代人が罹患する多くの病気にエストロゲン過剰が災いしているのです。
これだけの病気や症状を述べると、いかにもエストロゲンが悪役のような印象を与えてしまいますが、問題はバランスなのです。もちろんエストロゲンも必要です。しかし、現代は、男女ともに他のホルモンと比較すると、相対的に過剰なのです。
その理由の一つは、内分泌攪乱物質、つまり環境ホルモンです。
環境ホルモンと考えられるものは、約70種類あるといわれています。
代表的なものは、①ダイオキシン ②DDT ③PCB ④ビスフェノールA⑤ノニルフェノール ⑥フタル酸エステル ⑦有機スズ⑧スチレンダイマー ⑨スチレントリマー ⑩合成エストロゲン などがあります。
環境ホルモンはビスフェノールA、ダイオキシンの2つを始めとして、殺虫剤、工業廃棄物、自動車の排気ガス、石けんやシャンプー、ネイルポリッシュ、家具や建材の塗料にも環境ホルモンが含まれており、これがエストロゲン様作用を示すのです。
つまり、私たちはエストロゲンの大海に住み、乳飲み子の時から、いやもっと正確にいうと、胎児の時から過剰なエストロゲンにさらされているのです。
特にアメリカ産の肉には多く含まれており、食事からもエストロゲンが入ってきます。
本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはずですが、肉・乳製品・環境ホルモンの摂取でエストロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内濃度は低下し、子宮収縮が強まります。