熟考に熟考を重ねれば・・ | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 現在の研究では、活性酸素は全疾患の90%以上に何らかの形で関っていると言われています。活性酸素とはミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に生み出されるものです。この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。
 片頭痛は、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると、トリプタン製剤が導入される以前の段階から論文で明らかにされていました。


 Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol Sciences 134 (1995) 9-14
 下村登規夫、小谷和彦、村上文代:片頭痛とミトコンドリア.神経研究の進歩:46(3).391ー396.2002.


 このように片頭痛をミトコンドリアの機能障害による頭痛と考えさえすれば、前回の「経験的に得られている慢性頭痛に関する”事実”」はすべて明解に説明できることになります。
 そして、脳のなかに異常のない「慢性頭痛」とは「健康的な生活」を送ることができていないことに根本的な原因があると考えれば済むことです。
 すなわち、「健康的な生活を送る」ためには、”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
 健康的な生活とは、生まれつき体に備わっている「生体リズム」に沿った生活ということを意味しています。
 この生体のリズムは「ホメオスターシス」によって維持され、「体内時計」により刻まれ、「体内時計」は先程の「ミトコンドリア」・「セロトニン神経系」により制御されています。
 このように、ミトコンドリアは「恒常性(ホメオスターシス)」の維持にも関与しています。


 私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
 ミトコンドリアは、全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ「抗重力筋群」に多く存在し、ミトコンドリアの働きが悪くなれば当然のこととして「体の歪み(ストレートネック)」引き起こしてきます。
 セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることによって、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉に働きかけていることから、セロトニンが不足してきますと、セロトニン本来の働きである「正しい姿勢の保持」が、困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「ストレートネック」を引き起こします。


 慢性頭痛を引き起こす原因として、以下の3つがあります。


 1.「ホメオスターシスの乱れ」
 2.「体の歪み(ストレートネック)」
 3.ミトコンドリア、セロトニン神経系


 以上のように慢性頭痛の基本的な要因をミトコンドリアの機能障害に求めれば、慢性頭痛の原因とされる3つの要因はすべて、ミトコンドリアとの関連から説明できることになります。
 こういったことから、生命の根源ともなるべき役割を果たす”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となっていることから、脳のなかに異常のない「慢性頭痛」とは「健康的な生活」を送ることができていないことに根本的な原因があると考える所以(理由)があります。


 問題は、こうした個々の項目に関して、一つずつエビデンスを確立するまでもなく、頭でよく考え、”熟慮に熟慮を重ねれば”済むことです。
 このようなことを頭でよく考え、熟慮に熟慮を重ねれるためには、ミトコンドリアとは何か、ミトコンドリアDNAとは何か、セロトニン神経系とは何か、どのような働きをしているのか、ミトコンドリアとセロトニン神経系の関係がどのようになっているのか、ホメオスターシスの維持機構がどのようになっているのか、痛みとは何か、生理活性物質とは何か、プロスタグランデンとは何か、腸内環境と免疫機構の関係等々を「頭痛」とは全く離れて、基礎的な知識を整理しておかなくてはなりません。このため細胞学、生理学、遺伝学、神経科学、栄養学、スポーツ医学、分子化学等々のこれらに関与した基礎知識が要求されることになります。このような幅広い領域の最新の知識が必要とされています。
 このような基礎知識がなくては、慢性頭痛は論じることはできないはずです。 こうした基礎知識は、科学的根拠に裏付けされた知見に基づくべきことは言うまでもないことです
 このような基礎知識をすべて整理した上で、頭痛とどのような関連性があるのかを考察しなくてはなりません。
 その上で、現実の慢性頭痛患者さんの実態と照らし合わせることです。
 このようなことは当然のこととして、「国際頭痛分類 第3版β版」には記載されていないことばかりのはずです。従来、「国際頭痛分類 第3版β版」に記載のないものはすべてエビデンスなしとされ、このような呪縛から1日も早く脱却しなくてはなりません。
 このようにして、頭を使って”熟考に熟考”を重ねた上で、考察を進めるのが極めて重要になってきます。このように頭を使うことが、従来の頭痛の専門家にはまったく欠如しており、すべて欧米の学者に盲従されてきました。
 このようなことは、自分の頭で考えれば済むことであり、欧米の学者の考え方などは二の次にすべきです。自分の頭でどうして考えようとされないのでしょうか? ここが不思議でならないことです。
 このように科学的根拠に裏付けされた知見を基に考察された考え方である以上は、「国際頭痛分類 第3版β版」に記載のないものはすべてエビデンスなしとされる考え方そのものは論外としなくてはなりません。


 これまで、頭痛の専門家はすべて「国際頭痛分類 第3版β版」に記載のないものはすべてエビデンスなしとされてきたことが何を意味するかを考えなくてはなりません。ここを明確にすれば、学会を主導される方々が何を考え、目的としているのかがすべて明白になることになります。
 ということは、頭痛の専門家はすべて「国際頭痛分類 第3版β版」といった極めて限られた世界でしか慢性頭痛を考えていなかったことを意味しています。こうしたことが慢性頭痛の病態解明のネックになっていることを認識しなくてはなりません。


 このようなことが、我が国にトリプタン製剤が導入されたことによって、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛であるといった考え方が否定された理由になっています。ということは我が国にトリプタン製剤が導入されなければ、慢性頭痛とくに片頭痛の病態解明はとっくの昔になされていたことになります。
 しかし、学会を主導される方々は、片頭痛治療の世界にトリプタン製剤を導入し、予防薬を各種取り揃えることによって片頭痛の治療体系は確立されたと自画自賛され、片頭痛という辛い痛みが治せるようになったことで安閑とされています。
 今後は、片頭痛の予防の考え方も中枢神経の興奮性(脳過敏)の抑制に変化しつつあり,片頭痛の予防薬の開発目標は、皮質拡延性抑制をいかに抑える薬を見つけるかが鍵になっています。そして、今後の新薬の開発に躍起になっている現状が存在します。
 そして、「頭痛をサイエンスとして、”エビデンスに基づいて”、頭痛そのものを細かく分類する」といった考え方で臨床頭痛学を進展させようとされます。

 このように、これまで頭痛治療の世界では、各種の諸々の薬剤によって、ただ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで解決したと安易に考えられてきました。
 すなわち、頭痛があれば、まず市販の鎮痛薬を、これでダメなら病院での鎮痛薬NSAIDs、これで効かなければエルゴタミン製剤を、これでもかなければトリプタン製剤が勧められてきました。このように段階的に、”鎮痛薬”の服用が推奨されてきました。
 そして、最後の”砦”とされるトリプタン製剤は片頭痛の”特効薬”とされてきました。
 このような考え方が貫かれているがために、最近では、「頭痛改革宣言」と銘打って、「頭痛の悩み。つらい頭痛とずっと戦ってきました」「〇〇〇〇〇®Sシリーズ史上、最もプレミアムな処方を実現」と語りかけ、痛みに悩む多くの方々のQOL(生活の質)向上に貢献してゆくブランドメッセージを伝えるといったコマーシャルが臆面もなく毎日テレビで宣伝されることになっています。
 このような市販の鎮痛薬を頻繁に服用することによって「薬剤乱用頭痛」が引き起こされ、片頭痛への移行を加速させますので注意が必要とされます。
 そうしなければ、次々に、作用の強い鎮痛薬に変えざるを得なくなり、挙げ句の果ては、最終的に、トリプタン製剤にまで行き着いてしまうということを意味しています。そして、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛は極めて難治なものであり、その20%は脱却不能とされています。
 こういったことから、頭痛治療は、”薬剤乱用頭痛との戦い”といっても過言ではありません。このような”頭痛薬によって頭痛が引き起こされてくる”というジレンマがあることを理解しなくてはなりません。
 このことが、頭痛治療を行っていく場面で最も大切な点です。
 このように、ただ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで解決したと安易に考えられてきましたが、これではダメなのです。
 こうしたことから、まず市販の鎮痛薬を服用する段階から早期に対策を講じておくことが重要になってきます。少なくとも、片頭痛へ移行させないことがまず、重要になってきます。
 しかし、頭痛の専門家は決して、片頭痛予防の観点から私達に何ら啓蒙活動すらされることはありません。
 その理由を私達は冷静に見つめ直すことが課せられています。このようにして頭痛の専門家とは一体何なのか、どういった役割を果たしているのかを、もう一度考え直す必要があります。


     「慢性頭痛を理解する」
      
http://taku1902.jp/sub396.pdf