熟考に熟考を重ねた上での「臨床頭痛学」を・・ | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 前回は、もう少し、頭を使って”熟考に熟考を重ねた”上で、研究を進めるのが極めて重要になると述べましたが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?


 現在の研究では、活性酸素は全疾患の90%以上に何らかの形で関っていると言われています。活性酸素とはミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に生み出されるものです。 この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。
 学会を主導される方々は、前回も述べましたように、「片頭痛患者にはミトコンドリア機能の障害があるという仮説」という考え方から述べているにすぎません。実際には、片頭痛は、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると考えられています。

 現実に以下の論文で示されています。


 Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol Sciences 134 (1995) 9-14
 下村登規夫、小谷和彦、村上文代:片頭痛とミトコンドリア.神経研究の進歩:46(3).391ー396.2002.


 にも関わらず、こうした論文をあくまでも”仮説”扱いにしかされません。
 現在の学問の趨勢は、あらゆる疾患を「活性酸素」の観点から考察されている事実は忘れてはならない点です。こうした事実を踏まえて、これまで経験的に得られている慢性頭痛に関する”事実”を頭を使って熟考に熟考を重ねた上で、考察することが大切です。


 これまで経験的に得られている慢性頭痛に関する”事実”を、思いつくままにアトランダムに列挙してみることに致します。


 女性には慢性頭痛とくに片頭痛や緊張型頭痛が男性に比べ、頻度が高いとされています。

 また、日本人の片頭痛は欧米人の片頭痛に比べ、頻度も頭痛の程度も軽いとされます。

 肥満は片頭痛を悪化させる要因のひとつとされています。
 同じ両親のもとに生まれた兄弟姉妹すべてが、片頭痛に罹患していません。
 また、一卵性双生児が2人とも必ずしも片頭痛を発症することはありません。
 富永病院・頭痛センターの竹島多賀夫先生によれば、反復性の片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされます。
 Lyngbergらの報告では、成人片頭痛患者さんを12年間追跡し、完全・部分寛解:42 %、不変:38 %でした。一方、20 %は変容性片頭痛つまり片頭痛が慢性化しました。
 これまで機能性頭痛一元論という緊張型頭痛も片頭痛も連続したものであるという考え方が存在しました。
 「日常的に肩こりを自覚していて,疲れたり睡眠不足になると肩から後頭部に重い感じの痛みが上がってくる。後頭部の鈍痛で終わるときもありますが,我慢していると頭仝体がガンガン痛んで吐き気も出現し,ひどいと嘔吐する。ガンガン痛いときには,家族の話し声もうるさく感じて,静かな部屋で暗くして横になると少し楽になる」といった患者さんはよく遭遇します。
 頭痛発作が「天気」によって左右されたり、光が異様に眩しく感じられたり、めまいが頭痛発作と関係なく出現したり、不眠、不安障害、パニック障害やうつ状態にまで発展することもあります。
 トリプタン製剤が出現する以前から、片頭痛の治療の中心は、基本的な考え方として、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、姿勢を正しくし、リラックスするように」と、生活指導がなされて参りました。
 そして、一部の神経内科関連の専門医は「片頭痛のセルフケア」の重要性を指摘され、これを完璧に行うことによって片頭痛の9割の方々は改善されるとされています。
 さらに、巷では「片頭痛改善マニュアル」が多数販売され、これを実践された方々は改善に導かれているという事実が存在し、これまで「ゲルソンの食事療法」がありました。
 カイロプラクター、整体師、鍼灸師の施術により多くの方々は片頭痛を改善されてきました。またこれとは別に歯科医の方々は歯の噛み合わせを矯正することによって片頭痛が改善されるとも言われており、片頭痛患者さんは独自に工夫をされ片頭痛を克服されます。
 また、最近では分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は「3つの約束」を提唱されます。これと同様に下村登規夫先生はMBT療法を提唱され、その改善率は9割前後とされていました。


 このようにこうした事実は枚挙にいとまのない程多数存在します。


 問題は、こうした事実をどのように考えるかが問題になってきます。


 現在のように頭痛の専門家がされるように「国際頭痛分類第3版 β版」を基にして、緊張型頭痛・片頭痛をそれぞれ厳密に定義して、これに合致するものだけでその病態を考えるような方法論では自ずと限界があることは明らかです。
 とくに片頭痛のように機能性頭痛に対する研究方法には限界があるということです。


 こうしたことから、痛みとは何か、痛みに関連してどのような要因が関与しているのか、生理活性物質とは何か、腸内環境との関連はどのようになっているかを考察しなくてはなりません。
 さらにミトコンドリアとは何か、セロトニン神経系とはどのような働きをしているのか、ストレートネックとは何か、ストレートネックと体の歪みとの関連はどのようになっているのか、現代栄養学の考え方はどのようになっているのか、といった基本的な知見が現段階ではどのように考えられているのかを、まず明確にしておく必要があります。
 これらの知識の整理は、あくまでも頭痛とは離れてまず行うべきです。
 こうしたことは、科学的根拠に裏付けされた知見を基にすべきことは言うまでもないことです

 このような知識をすべて整理した上で、頭痛とどのような関連性があるのかを考察しなくてはなりません。
 その上で、現実の慢性頭痛患者さんの実態と照らし合わせることです。このようなことは当然のこととして、「国際頭痛分類 第3版β版」には記載されていないことばかりのはずです。従来、「国際頭痛分類 第3版β版」に記載のないものはすべてエビデンスなしとされ、このような呪縛から1日も早く脱却しなくてはなりません。
 このようにして、頭を使って熟考に熟考を重ねた上で、考察を進めるのが極めて重要になってきます。

 このようなことは、自分で考えれば済むことであり、欧米の学者の考え方などは二の次にすべきです。自分の頭でどうして考えようとされないのでしょうか? ここが不思議でならないことです。


 これまでのように、トリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者の作成した「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛研究の”絶対的な基準”として進められてきたことによって、片頭痛の病態そのものもトリプタン製剤の作用機序の面からしか説明してこなかったことから、これまで諸々の問題点が浮き彫りになってきたことを忘れてはなりません。
 こうした事実に目を瞑って、今後とも「頭痛の細分類」に”うつつを抜かす”ようでは慢性頭痛学の進歩は一切望めないことになってしまいます。

 このように「国際頭痛分類 第3版β版」だけに拘って、他の医学領域とはまったくかけ離れた考え方でこれまでの「臨床頭痛学」が行われてきたことは歴然としており、緊張型頭痛はまさに取りに足らない頭痛とされ、片頭痛だけが真の頭痛であり、それもトリプタン製剤で辛い痛みさえ緩和させれば安閑とされるような頭痛学が果たして本当の頭痛学といえるのかが甚だ疑問とすることです。まさに医学界の離れ小島にいるような思いしか正直ありません。


「これでよいのか (片)頭痛医療 一開業医からの提言」
  
http://taku1902.jp/sub358.pdf