第1章では、脳のなかに異常のない「慢性頭痛」は「健康的な生活」を送ることができないことに根本的な原因があると述べました。
「健康的な生活を送る」ためには、”ミトコンドリア”が重要な”鍵”となり、生命の根源ともなるべき役割を果たしています。
すなわち、ミトコンドリアは、私達の体を構成する細胞の中にあり、食事から摂取した栄養素から生きる為に必要なエネルギーを作り出しています。 エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。
このためミトコンドリアは、健康な生活を送るための”基本”ともなるものです。
そして、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くなってきます。
このように、健康な生活を送るためには、ミトコンドリアが正常に働き、セロトニン神経系がまともに機能していることが不可欠な要素になっています。
このため食事療法の基本原則は、「健康的な生活」を目的とするものであり、これはミトコンドリアの機能改善・ミトコンドリアの働きを悪くさせないことを目的としたものであり、脳内セロトニンを増やすための食事療法でなくてはならないはずです。
片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。
ミトコンドリアがエネルギー産生を円滑に行うためには、栄養素・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取することが基本的に大切です。
さらに、それ以上にミトコンドリアの特性を知ることも重要になってきます。
食べ過ぎるとミトコンドリアは、栄養が体に行き渡っているため、怠け始めます。
ミトコンドリアは、エネルギーが不足している時や、もっとエネルギーの需要が必要な時に活性化して増殖します。空腹になると、体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコンドリアを増やし、エネルギーを作ろうとするのです。
難しく考える必要はありません。平日は普段通りの食事を摂り、週末の1~2日だけ3割程度のカロリーにすれば良いのです。例えば朝は野菜ジュース、昼はざるそばなどの軽食、軽めの夕食にする程度で十分です。過食をしない(食べ過ぎない)ことが原則となります。
これまで「カロリー制限食」として、栄養士や医師は「糖質60%、脂質20%、タンパク質20%」が推奨されてきました。しかし、「糖質制限食」を提唱される江部康二先生は、人類本来の食生活からみると最悪のバランスであるとされます。
このような「糖質60%、脂質20%、タンパク質20%」という摂取比率には科学的根拠はないとされ、どのような比率が適切なのかは明確になっていません。「人間にとって最高の健康食」としての”糖質、脂質、タンパク質の比率”がどのようなものなのでしょうか。とくに片頭痛治療上、どのような比率が適切なのでしょうか? 特に、年代によってこの摂取比率は当然変わってきます。成長期にある年代、成人、妊婦、では比率は変わって当然のことです。この点が最も難しいことになってきます。
極端な糖質制限を行えば、エネルギー源を脂質に求めなくてはならなくなります。こうした場合、どの年代でも可能なものとは思えないはずです。そうなれば、「過食にならない」程度のカロリー数を設定した上で、糖質、脂質、タンパク質の比率をどのようにするかを考えなくてはなりません。こうした肝心要のことが医学的に明確になっていません。
蛋白質に関しては、総摂取量をどの程度にすべきか、腸内環境を悪化させない量を想定しなくてはなりません。そして、トリプトファン摂取に関連して、アミノ酸比率が重要になってきます。
さらに、脂質では、体内では合成できない必須脂肪酸のオメガ3系、オメガ6系脂肪酸の摂取比率も重要になります。シソ油(エゴマ油)や亜麻仁油、エクストラバージンオリーブ油、ゴマ油やナタネ油などの良質な油も念頭に置かなくてはなりません。さらに、総摂取量も問題になってきます。とくに糖質との関連から重要になります。
さらに「インスリン過剰分泌を来さない食事摂取方法」に関する配慮も大切になります。
ビタミンに関しては、ビタミンA、B群、C、Eの摂取が大切になり、カロテン(カルテノイド)、ポリフェノール類、などの「抗酸化物質として食品」から摂取することを念頭において配慮しなくてはなりません。こうした野菜は、食物繊維・抗酸化物質との関連から片頭痛治療上極めて重要な位置を占めており、その摂取量は厳格に設定される必要があります。
また、ミネラルに関しては、マグネシウム、カルシウムの摂取バランスも大切になります。亜鉛、鉄、その他の微量ミネラルに配慮しなくてはなりません。さらに、マグネシウムは日常の食習慣・ストレスなどにより容易に不足しがちで、片頭痛治療上で極めて重要なミネラルであり、マグネシウムの基本摂取量も設定する必要もあります。
マグネシウム不足は片頭痛を増悪させる元凶になっており、注意が必要です。
このように、毎日摂取しなくてはならない食事のことですので、こうした栄養素、ビタミン、ミネラルの摂取のあり方の基本原則を確立しなくてはなりません。
このような「片頭痛治療上の栄養学」は現段階ではまったく存在しません。
少なくとも、食事は人間にとっては、生活の中の楽しみ、嗜好として重要な位置を占めています。原則として「健康食」として推奨される「人間にとって最高のバランス」とはどのようなものかを探求し、これを日常の食生活に取り入れ、適宜”嗜好としての食生活”をとりいれることが大切となってきます。
余りにも、「人間にとって最高のバランス」としての健康食にこだわる余り、これがストレスとなって、片頭痛を誘発させる原因ともなれば、ミイラとりがミイラにならないとも限りません。このためには気楽に実行できるようにすることが大切になってきます。
今回は、以下のファイルです。
第20章 食事療法の原則
http://taku1902.jp/sub387.pdf