専門家による啓蒙活動とは??? | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 最近、日本医師会雑誌 平成27年 第144巻・第5号に「頭痛診療の新展開」と題して、本当に”久しぶり”に「頭痛」の特集が組まれていました。最初に、5人の専門家が座談会形式で述べられていました。
 この特集から、専門家は、私達一般開業医にどのように啓蒙活動をされておられるのでしょうか? これを知ることも大切になってきますので、ご紹介致します。


はじめに


 頭痛は日常の診療において,神経領域では最も頻度が高く,国民の約1/4は何らかの頭痛で悩んでいます。その歴史は紀元前の古きに及びますが,頭痛が科学として認められ,症状ではなく疾患として認められるようになったのは20世紀の後半になってからです。 その端を発したのは片頭痛のメカニズムについて生化学的分野,生理学的分野,画像診断などによるさまざまな研究成果でした.片頭痛の発生機序については血管説,神経説,三叉神経血管説などがあり,さらに脳幹におけるジェネレータ(片頭痛発生器のことです)による説が想定されています。
 血管説では片頭痛でのセロトニンの関与が示され,神経説では前兆のメカニズムとして皮質拡延性抑制(CSD)が提唱され,さらに三叉神経血管説は片頭痛治療薬トリプタンの治療効果を説明するのに理にかなった説とされています。
 一方,日常臨床に目を向けると,頭痛で悩んでいる患者が医師による的確な診断と治療を受けているかといいますと,はなはだ疑問です。
 頭痛診療の啓発に当たっては一般市民に対する講演会,メディアによる情報公開,『慢性頭痛の診療ガイドライン市民版』による普及活動が行われています。
 頭痛診療に実際に携わる医師に対しては2013年に『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』,2014年には「国際頭痛分類第3版 β版」が発刊され,さらにHeadache Master School Japan(HMSJ)が頭痛診療を行う医師の教育の一貫として定期的に開催されています。
 また,日本頭痛学会では頭痛診療の普及のために,今後中核となる頭痛センターを設置し,診療や研究の充実を図るべく準備を進めています。(そのモデル施設とされるのが、埼玉国際頭痛センターです)
 頭痛は”たかが頭痛”から“されど頭痛”として考えられるようになり,頭痛学の進歩により,症状から「中枢性疾患」として捉える時代となってきました。


 本特集では頭痛そのものを正しく診断して,そして治療を受けられる環境を作っていかないといけないということを目的とするとされていました。


頭痛診療の実態


 今でこそ頭痛を専門とした医師かおりますが,それまでは何となく一般医家で頭痛を診ていたのが実態であると思います.しかし頭痛を専門に診る状況になった場合,一般の医師の中には悩まれる方が多いのではないでしょうか.
 これは日本だけの問題ではなく,外国も同様の状況でした.そこで1988年に国際頭痛学会が頭痛を学問として,疾患の1つとしてきちんと診ましょうということで「国際頭痛 分類」を作成しました.全世界の頭痛を同じ診断基準で診察して,また理論体系化することによって,新しい薬も開発できるだろうという意見をもとに作成に至りました。このようなコンセプトができたのが1980年代ですから,系統的な頭痛診療の歴史はそれほど古くはありません。


 日本では1973年に「頭痛懇談会」が発足され,頭痛を1つの学問領域の疾患単位として皆で検討しようという会ができました。
 それがさらに発展して,1985年に「頭痛研究会」,最終的には1997年に現在の「日本頭痛学会」に名称を変更しました.現在会員は約2,000人おりますが,頭痛に興味を持って,またプライマリに頭痛を専門に診ていこうとされる先生がそれだけ増えたのだと思います。
 診療の実態としては,頭痛診療の突破口となったのはトリプタンが出たことです。これは海外で1990年代に開発された片頭痛の特効薬です。日本でも2000年から使われるようになり,頭痛の中でも難治とされる片頭痛も治るようになり,画期的な治療薬として注目されました。
 それに伴って,国際頭痛学会の「国際頭痛分類」も日本頭痛学会から日本語版が発行され,2006年には『慢性頭痛の診療ガイドライン』が発行されました。ガイドラインは版を重ねて改訂版が2013年に出ています。何となくの診療ではなくて,このように拠り所に沿った頭痛の診療ができるようになったのが比較的最近のことであり,その発展過程にわれわれは今いると思っています。


 脳神経外科領域からの頭痛診療の実態については、脳神経外科に関連する二次性頭痛は,全頭痛の10%以下と言われています。
 頭痛の9O%以上は一次性頭痛で、その中でも特にQOLを低下させる片頭痛、あるいは群発頭痛などは痛みの程度が強いので、患者さんは頭の中に異常があるのではないか、あるいは放っておくと脳の血管が切れてしまうのではないかなどと心配されて、脳神経外科を受診することがかなり多く見られます。ところが,脳神経外科医側はCT,MRIなどで頭蓋内に異常がなかった場合、その後の一次性頭痛の診断と治療をおろそかにして、鎮痛薬の投与だけで済ませてしまうことが少なくありませんでした。
 日本脳神経外科学会は現在,会員が9,000人以上,専門医が7,000人以上いますが,脳神経外科医と言っても日本の場合は欧米とは異なり,ほとんどの時間を手術ばかりしている専門医は半数もいません。では,そのほかの脳神経外科医はどうしているかというと,外来診療で頭痛診療に携わっていることがかなり多いのです。
 近年は分かりやすい診療ガイドラインがあって,診断もきちんとできる,それから国際頭痛分類もはっきり提示されている,頭痛専門医制度もあるということで,脳神経外科医も頭痛診療に積極的になっています。たとえば,日本脳神経外科学会総会や日本脳神経外科コングレスの頭痛に関連するセッションやセミナーにはたくさんの脳神経外科医が参加します。また日本頭痛学会にも多くの脳神経外科医が参加し,頭痛専門医を取得する脳神経外科医も増えてきました。
 近年明らかに脳神経外科医が一次性頭痛の診断・治療に対しても意欲的になってきたと思います。


『慢性頭痛診療ガイドライン』 「国際頭痛分類」の活用法


 頭痛診療におけるバイブルとして,2013年に『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』が,そして同じ年に「国際頭痛分類第3版 β版」が発表されましたが,これらを診療の中でどのように活用していったらいいののでしょうか。
 『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』は,日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会・日本脳神経外科学会が合同で作成しました。片頭痛をはじめとする一次性頭痛,そして頭痛全般に関する診断や治療について,かなり広範にエビデンスに基づいてまとめられています。これをご覧いただきますと頭痛に関してのポイントは大体ご理解いただけますし、最新の情報も盛り込まれています。
 Q&Aの形式で構成されておりクリニカルクエスチョンに対して推奨文があって,そしてエビデンスの解説があります。臨床的な疑問に応じてそのページを参照いただくと診療の際に使いやすいと思います.
 また,「国際頭痛分類第3版 β版」に関しては昨年(2014年)日本語版を刊行することができました.これは全部を暗記するようなものではなくて,診療のつど,参照しながら使って頂ければいいようにできていますので,診療の中で活用いただければ,頭痛に関する知識や理解も深まりますし,また診療の内容も充実していくのではないでしょうか。 こうしたことから、これらガイドライン等は各診療ブースの机に必ず置くようにしています。
 なぜかというと,患者さん に説明する際に「あなたはこういう頭痛です」とはっきり示すことができるので説得力があるのです.群発頭痛などの何か理由でどうなっているのかさっぱり分からない患者さんにも有効です.
 また,頭痛診療経験が豊かでない医師のところに,ひどい頭痛でのたうち回っている患者さんが来ているのだけれども,MRIあるいはCTを撮っても原因が分からなかった場合にも説明するのに適しています.
 そして『慢性頭痛の診療ガイドライン 市民版』が最近できました.これは患者さん向けに再編集されたものですが,頭痛診療に詳しくない医師やコメディカルの方々への説明用としてもお勧めです。


   以下、省略します。



 このように、「国際頭痛分類第3版 β版」に基づいて、症状から緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛を的確に診断を下すべきとされ、『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』に従って、緊張型頭痛はほとんど問題外とされ、頭痛の中でも難治とされる片頭痛も”片頭痛の特効薬”とされるトリプタン製剤で治るようになったから、確実に、片頭痛を診断しましょう、ということです。
 片頭痛の発生機序に関しては、症状から「中枢性疾患」として捉えましょうということのようです。三叉神経血管説は片頭痛治療薬トリプタンの治療効果を説明するのに理にかなった説とされ、トリプタン製剤の作用機序から説明されようとされます。


 これまでも、このような考え方の是非について問題視してきました。
 いつまで、症候論からだけからしか、慢性頭痛を考えるのでしょうか?
 最優先して、専門家として結論を出すべきことがあるはずです。先日も述べました。
 山積された課題が、多々残されて居るはずでありながら、全く無関心のようです。
 もう一度、繰り返しておきます。くどいようですが、仕方ないようです。


山積された課題・・これまで述べてきたことです

 それは、「片頭痛が”多因子遺伝”である」かどうかの検討です。
 そして、”多因子遺伝”とすれば、その環境因子が何か、ということになります。

 さらに、「片頭痛がミトコンドリアとどう関わっているか」の理論的な考察です。
 この点は、過去の研究業績をもとに、これに付随した業績を繋ぎ合わせ推論するしかないはずです。何のための先達の業績なのでしょうか。要求されるのは頭(推論)です。
 この点は下村登規夫先生の「MBT療法」で明確に示されていたはずです。
 これが、明確になれば、セロトニン神経系とどのように関与するか、ということです。

 そして、現在の研究では、活性酸素は全疾患の90%以上に何らかの形で係わっていると言われています。「片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛である」とすれば、この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。片頭痛も同じように、この活性酸素が関係しています。
 糖尿病学会は、糖尿病を”多因子遺伝”と捉え、すでにその”環境因子”を設定されました。さらに、最近では、糖尿病研究は、活性酸素およびミトコンドリアの観点から病態の解明が進められています。
 こうしてみれば、糖尿病学会と遙かに遅れをとっていると言わざるを得ません。まさに、雲泥の差というべきです。

 そして、片頭痛がミトコンドリアと関係があるとすれば、セロトニン神経系との関連から、当然、「体の歪み(ストレートネック)」が引き起こされてくることが推測されます。
 この点は、実際の臨床例から、”頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」のエビデンス”を確立しなくてはならないはずです。
 この「体の歪み(ストレートネック)」は慢性頭痛とくに片頭痛の基本骨格ともなるものであり、このエビデンスを確立することなく片頭痛は論ずることはできないはずです。

 そして、最も大切なことは、患者さん一人一人の詳細な病歴を聴取することによって、緊張型頭痛と片頭痛は連続したものであるかどうかを、判断しなくてはならないはずです。
 「問診表」という”色眼鏡”を通して、観察すべきではありません。手抜き診療をすることなく、根気強く・丹念に病歴聴取を行うべきです。とくに「臨床神経学」の分野では、この病歴聴取が基本となっているはずであり、この原点に立ち返る必要があります。
 「国際頭痛分類 第3版β版」という人為的な基準といった”色眼鏡”を通して、頭痛患者を診るなど、以ての外(論外)と考えるべきです。
 これを明確にすれば、慢性頭痛のなかでの片頭痛、緊張型頭痛の位置づけが明確になり、機能性頭痛一元論の信憑性が確認されることになります。


 この内、最優先課題は、「片頭痛は単一遺伝子によるものか、あるいは”多因子遺伝”か」ということです。この結論なしには、どのような研究も無駄と考えるべきです。


片頭痛とはどう考えるべきでしょうか


 果たして、片頭痛は”片頭痛の特効薬”とされるトリプタン製剤で治るのでしょうか? 今回の専門家の方々は、片頭痛がトリプタン製剤で治るものと思っておられるようです。このため、『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』には「生活指導」の項目は必要なし、とされておられるようで、これでやっと納得した次第です。
 そうなれば、”片頭痛の特効薬”とされるトリプタン製剤を、飲んでも飲んでも、頭痛が増悪される方々に対して、どのように説明されるのでしょうか???

 このような考え方をされるのが、現在の専門家の考え方と認識する必要があります。


 そして、慢性頭痛を診断する際には、症状から「国際頭痛分類第3版 β版」に基づいて、緊張型頭痛とか片頭痛とか群発頭痛と診断すべきとされ、片頭痛は症状の上から中枢性疾患とされます。ここで問題は、慢性頭痛とは脳のなかに異常のないものを定義していたはずでありながら、こうした基本的なことが認識されていないようです。


慢性頭痛の病態とは・・


 それでは、脳のなかに異常のない慢性頭痛とは、どのように考えるべきでしょうか。
 これを考える際には、「国際頭痛分類第3版 β版」といった定義に従うことなく、根源的な意味合いから考えていく必要があります。


 これまで、慢性頭痛の生活指導として、緊張型頭痛および片頭痛を問わず共通して、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、リラックスするように、姿勢をよくしましょう」と、口を酸っぱくしてまで言われてきました。
 ここに慢性頭痛の原因・本質があると考えるべきです。


 「規則正しい生活」とは、生まれつき体に備わっている生体リズムに沿った生活という意味で、最も自然で健康的な生活と言えます。
 しかし、現代の生活環境は、健康的な生活を崩す要因が多く、24時間営業の飲食店や夜通しの娯楽、コンビニやテレビ・パソコンなどの普及により急激に変化しています。このような変化により、体の生体リズムにも悪影響が及んでいます。
 生体リズムを無視した不規則な生活を送ると、様々な不調を感じるようになります。生体リズム、自律神経、ホルモンはすべて連帯しているため、生体リズムが乱れると自律神経やホルモンバランスにも悪影響が及んで「ホメオスタシス機能」を乱すのです。

 「脳の中に異常のない頭痛」の一次性頭痛(慢性頭痛)は、「生体のリズムの乱れ・歪み」から生じてきます。生活のリズムは恒常性(ホメオスターシス)によって維持されています。恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっております。
 自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系はホルモンと”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めております。
 緊張型頭痛は、環境因子の色彩の濃い頭痛です。この発症には、身体的ストレスと精神的ストレスが関与します。身体的ストレスには「体の歪み(ストレートネック)」が関与してきます。精神的ストレスには、「脳内セロトニンの低下」が関与します。
 片頭痛は、「ミトコンドリアの機能障害」による頭痛であり、その大半は、遺伝形式は”多因子遺伝”によるものであり、遺伝素因を基盤として、これに”環境因子”が加わって発症してくるものです。


 「食事をバランスよく摂りましょう」とは、ミトコンドリアが円滑にエネルギー産生を行うためと、脳内セロトニンを増やすためには、栄養素・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取することが必要不可欠になってきます。


 「睡眠を十分にとりましょう」ということは、傷ついたミトコンドリアを修復させるためと、脳内セロトニン活性化には最低限必要となるものです。


 「リラックスするように」とされるのは、ストレスが慢性頭痛に如何に悪影響を及ぼすかということが経験的に知られていたからです。
 具体的には、ストレスは、マグネシウム不足を招き、これがミトコンドリアの機能を悪化させます。さらに脳内セロトニンを低下させ、さらに活性酸素を過剰に産生させます。


 「姿勢をよくしましょう」ということは、姿勢が悪くなれば「体の歪み(ストレートネック)」を形成することになります。姿勢をよくすれば、ミトコンドリアの活性化に繋がってきます。「体の歪み(ストレートネック)」は、慢性頭痛の発症の起点ともなり、片頭痛の骨組み・屋台骨ともなるものです。


 そして、ミトコンドリアの働きが悪くなれば、同時に「セロトニン神経系」の働きまで悪くなって、その結果脳内セロトニンの低下が引き起こされることになります。



 このように、慢性頭痛の病態を、緊張型頭痛と片頭痛と含めて共通して考えるべきものです。このように多面的な要因があると考えなくてはならないはずです。



 こうしたことから、片頭痛が”多因子遺伝”かどうか、ということが極めて重要な論点となってくるはずです。


 本来、緊張型頭痛も片頭痛も含めて、慢性頭痛は以下のように考えるべきものです。


  まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
 さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
 片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
 そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
 その”環境因子”として、以下の6項目があります。

   1.ホメオスターシス・・ストレスの関与
  2.免疫(腸内環境)の関与
  3.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
  4.体の歪み(ストレートネック)の関与
  5.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
  6.ミトコンドリアの関与

 

 そして、片頭痛は以下のように発症してくるものです。

    片頭痛はどのようにして発症するのでしょうか????
     
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12032919047.html

 結局、今回の”日本医師会雑誌 平成27年 第144巻・第5号に「頭痛診療の新展開」”からすれば、専門家は片頭痛はトリプタン製剤という特効薬で、片頭痛が治るとされ、(治るという意味合いが、頭痛という痛みをとってしまうことなのか、二度と、片頭痛発作を繰り返して起きなくなるといった根治を意味するのかが明確になっていませんが・・)、片頭痛が治るのだから、片頭痛が”多因子遺伝”かどうか、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である、かどうか、「体の歪み(ストレートネック)」はどうでもよく、緊張型頭痛と片頭痛が連続した一連のものなどはどうでもよいことであり、「国際頭痛分類第3版 β版」に従って明確に区別し、「生活指導」などは全く必要でなく、今後すべきことは、Headache Master School Japan(HMSJ)を定期的に開催することによって頭痛診療を行う医師の教育の一貫として行い、錯綜とした頭痛を的確に片頭痛と診断できる頭痛専門医を養成し、片頭痛患者に確実にトリプタン製剤を処方させようとされます。
 このように、日本の頭痛診療は、2000年にトリプタン製剤が導入されて以来、全く進展しておらず、迷走に・迷走を重ねていることに思いを馳せるなら、ただ絶望しかないようです。

 少なくとも、慢性頭痛を論ずる場面において、「国際頭痛分類第3版 β版」といった基準から、症候論から論ずることには自ずと限界があることを知るべきであり、現実の患者さんそのものを厳粛に見つめることが重要であるはずです。「国際頭痛分類第3版 β版」は単なる、人為的な”暫定的な”頭痛の分類”に過ぎないはずであり、診断基準でしかないはずです。


 「片頭痛がトリプタン製剤によって治る」とされますが、果たして、これが事実なのか、トリプタン製剤が日本で販売されてから10年以上経過したわけですから、現在最も求められていることは、トリプタン製剤販売後、片頭痛は根治に至ったかどうかといった「疫学調査」を学会が総力を挙げて行った上で、その結果をもとにして、今回のような”日本医師会雑誌”で、「片頭痛がトリプタン製剤によって治る」時代になったと啓蒙活動をすべきであり、このような「疫学調査」もなく、今回のような記事を掲載されることに、どれだけの意味があるのでしょうか??


 専門家である以上、このような基本的なことを省略すべきではないと考えます。

 それとも、片頭痛がトリプタン製剤で治るとされるのは「専門家の奢り」なのでしょうか、それともまた別に理由でもおありなのでしょうか、ここが深遠なる謎とされるところというしかないようです。

 片頭痛はただ単に、トリプタン製剤によって頭痛を解消させただけでは、すべてが解決したことにはならないということは肝に銘ずるべきです。この点を誤解されておられるのではないでしょうか? 馬に念仏でしかないようです。