乳酸は脳において疲労物質でしょうか? | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 7月6日に、”スプーンおばさん”から「ストレスと頭痛 その1」の記事のなかで、「最近乳酸は筋肉の疲労物質ではなかったと言われてますが、乳酸は脳において疲労物質でしょうか?」という質問をお受け致しました。これについて述べることに致します。

 「脳内セロトニンを低下」させる要因として、「疲れなどで、体に乳酸が溜まったとき」が、その要因の一つとして挙げられます。
 
乳酸とセロトニン


 疲労状態の時、体内には乳酸が蓄積しています。セロトニンの分泌を妨げるのが疲労です。乳酸はセロトニンの分泌を抑制します。
 セロトニン神経が神経末端からセロトニンをシプナス間隔に放出しますと、それは標的細胞のセロトニン受容体に作用して、興奮や抑制を起こします。余ったセロトニンは、再利用ために、放出側の神経端末に再取り込みされます。その運搬役がセロトニン・トランスポーターです。
 この運搬役の働きは、乳酸によって促進されます。再利用のためにせっせとリサイクル機能を高めてくれるわけで、このこと自体はけっして悪いことではありません。ところが、再取り込みだけが、必要量を上回るほど進んでしまうと問題です。セロトニン放出が標的細胞に十分な影響を与えることなく、直ちにもとの神経端末に戻ってしまいます。セロトニン神経のインパルス発射および放出はたとえ正常でも、再取り込みが進みすぎるために、標的細胞には十分に届かないことになります。
 これでは、セロトニンが貯蔵庫に蓄えられるだけで、有効に活用されないことになります。セロトニンのデフレ状態です。
 活発化したトランスポーターは必要以上にセロトニンを取り込んでしまい受容体と結びつく量を減らしてしまうのでセロトニンは役割を果たすことができず、身体はセロトニン不足と同じ状態になってしまいます。
 心身の疲労により生産された乳酸が血液に蓄積すると、脳をはじめ身体の機能が低下してきます。
 こうしたことから、「疲労はセロトニン神経の大敵」とされています。


<乳酸と疲労>


 疲労を感じるのは、脳の特定の神経回路が関係しています。運動したり激しく活動すると、筋肉中に乳酸という疲労物質が溜まり、疲労物質が体内に増えた状態であると、疲れや倦怠感の原因となります。疲労による倦怠感は、このような体内に蓄積する乳酸の影響である事が多く、乳酸の量を減らす事で疲れをとる事ができ、倦怠感も無くなります。乳酸は、入浴によって血液の循環を促すことで、血中の乳酸が老廃物として回収されて、浄化されるためとされています。
 筋肉や血中に乳酸が溜まるほかに、セロトニンという物質も疲れによる倦怠感や、だるさに影響するとされています。激しい運動をすると、乳酸が増加するのに対し、セロトニンが減少することが解明されています。セロトニンは、自律神経の交感神経と副交感神経の働きを制御していると考えられており、セロトニンは減少する事で2つの自律神経がバランスが崩れます。この為、交感神経が活性化していると、緊張状態が続く事になります。 緊張した状態が続いて副交感神経に切り替わりにくくなると疲労して倦怠感が引き起こされ、身体はだるくなって、冷えや肩こり、また腰痛や頭痛といった症状を招きます。疲労とは、必ずしも肉体的なものでは無く、頭脳労働や精神的な心労も含むと考えます。したがって、運動していないのに体がだるい時は乳酸と全く無関係とはいえません。


「乳酸」は疲労物質 !?


 乳酸は、実は疲労を引き起こす物質ではなく、むしろ疲労を緩和させるために現れる物質だということが分かっています。確かに激しい運動や重労働の後に体がへとへとになり、腕を上げたり歩いたりすることができなかったりしたとき、筋肉中には乳酸が溜まっているのは事実です。
 筋肉を動かすとき、人の身体は酸素を燃やすことでエネルギーを作り出し、そのエネルギーを使います。

 しかし、その運動が激しすぎると体への酸素の供給が追い付かなくなります。「乳酸が溜まった筋肉はうまく収縮できないため痛みや炎症が起こる」と、長い間誤解されていたのです。無酸素運動を続けると血液中に乳酸が増えるのは事実ですが、この乳酸のせいで疲労するわけではありません。むしろ乳酸は、“細胞の疲労を保護する”働きがあり、疲労を回復させるためのエネルギーとして使われているのです。
 実際の疲労の原因は、「脳内セロトニン」の不足と、「血中還元型コエンザイムQ10」の不足なのです。


実は乳酸は疲労回復する


 疲労は乳酸の蓄積によるものと言われていますが、実は今では乳酸はむしろ筋肉の疲労を抑えて脳神経活動のエネルギー源となる疲労回復物質だという見解があります。
 冤罪の乳酸に代わり、疲労の真犯人と見なされているのは「活性酸素」です。ヒトは呼吸し酸素を炭酸ガスに変える経路で、食事由来の糖からエネルギーを生み出しています。その過程で毒性の強い活性酸素が産生されますが、普通は抗酸化システムが速やかに始末しますので問題にはなりません。ところが、身体活動や脳の酷使が過ぎますと大量の活性酸素を処理し切れなくなり、細胞や神経細胞がキズつきます。

 その結果、エネルギー代謝や中枢神経系に異常が生じます。さらに細胞の損傷が引き金となり、脳に疲労を伝える「TGFβ」という物質が増加します。気分や判断力に関係する神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの代謝に異常が生じ、脳が「疲れた」と感じるのではないか、と推測されています。


疲れの原因物質 TGF-β


 肩こりは、筋肉がこわばっている状態を言いますが、この状態の時は血管が圧迫されている状態で、すなわち血行が悪くなっています。血行が悪いと、酸素不足を起こしています。この時、筋繊維の細胞は、グリコーゲンからエネルギーを作る時に通常なら、2%の活性酸素を発生するところ、酸素不足の状態だと5~10%もの活性酸素を発生します。この為、細胞がダメージを受けやすく、細胞修復のためにTGFーβなどの免疫物質が出されます。この為、疲れを感じます。


疲れの原因物質は、TGF―βなどの免疫物質


 筋繊維中の細胞では、グリコーゲンがエネルギーに変えられ、その過程で酸素を作り出しています。しかしそれと同時に活性酸素も作られ、これが細胞にダメージを与えます。 このダメージを修復するために免疫細胞は、多くの免疫細胞を集める合図を出します。この合図がTGF-βなどの免疫物質で、この合図によって免疫細胞が集まり傷ついた細胞を修復します。TGF-βなどの免疫物質は、傷を修復している間中出続けます。
 しかし、TGF-βなどの免疫物質が疲れの原因物質と言われるのは、合図をするだけでなく、脳に影響するところにあります。特に自律神経中枢に影響を及ぼし機能を低下させます。自律神経の機能は、血圧や体温、睡眠、日内リズムを調節する働きをしています。 このため、TGF-βなどの影響を受けるとこれらの副交感神経系のリズムが崩れ体調の異常が起こります。
 脳の自律神経中枢へTGF-βなどが送られる経路は、血流によってあるいは、末梢神経の神経伝達により脳で感知されると考えられています。TGF-βは、代謝によって消えるので、血行を良くすることが疲れを解消することにもなります。


疲労の見張り番とセロトニンの効果

 脳には、疲れの見張り番がいて、丁度目の奥、眉間の奥辺りの脳幹にあります。これが疲れを感知すると、脳幹に脳を休ませるよう命令します。脳幹の縫線核は脳のあちこちにセロトニンを出し、脳をリフレッシュさせます。
 しかし、セロトニンは合成量に限界があるため、やがて疲れを感じてもセロトニンが出なくなります。疲れていても休ませることができずに脳が働き通しになり疲労が解消できません。
 また、TGF-βは、セロトニンを阻害する物質でもあります。疲労状態が続けば、脳をリフレッシュするセロトニンも阻害され、余計に疲労解消ができないことになります。


 以上のように解釈しております。スプーンおばさん分かって頂けたでしょうか?


 今後とも、このような読者の皆さんから片頭痛に関する”素朴な疑問”をお受けしたく考えております。