本来の姿としての「頭痛外来」は採算があるのか(ペイするのか)
昨日、「頭痛外来」の本来の姿についての考え方を述べました。このなかで一般内科開業医が診るべきものと述べました。ここで問題となるのが、このようなことをして、ペイするのか、採算がとれるのかということです。
私は、十分に採算がとれるものと考えております。私のような片田舎ではなく、それなりの人口のある地域であれば、まず問題はないと考えます。
一般内科開業医であれば、診療の中心となるものは生活習慣病とされる高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風であり、ガン・認知症予防です。これに片頭痛を追加する訳です。
現代は専門医志向の世界で、高血圧であれば循環器専門医、糖尿病であれば糖尿病専門医、片頭痛であれば頭痛専門医と相場が決まっています。
しかし、現在の糖尿病専門医、頭痛専門医と銘打って診療を行う現場をみれば、その大半は「薬物療法」がすべての世界です。この間隙を見据えた診療体制を作り上げることです。そのためには、高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風・ガン・認知症・片頭痛の予防に特化した診療体制を構築することです。
このことから、平成20年から厚生労働省が行っている「特定健診」の制度を利用することです。この健診を行うことによって、生活習慣病の予備軍を拾い上げることです。
この「特定健診」の制度では、引き続いて「保健指導」に移行させようとする目的がありますが、これをもっとダイレクトに医院独自の指導方法に切り替えて、”患者”として取り込んでいくことを基本姿勢とすることです。
一般内科開業医の本来の役割は、これまで家庭医として身近に健康管理を行うことです。 こういった基本的な姿勢を堅持することが極めて重要になってくるはずです。
これまで生活習慣病である糖尿病治療を考えてみますと、次々に新たな薬剤が開発され、糖尿病専門医は、こうした薬剤を使いこなせるのが専門医の所以とされており、基本とされる運動・食事療法の原則が疎かになってきている現実があります。こうした現実を踏まえ、最近出版された分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の著書「病院治療で糖尿病がよくならない本当の理由」(健康ジャーナル社)を参考とすべきです。ここにヒントがあるはずです。是非とも一度はご覧になられるべきです。
片頭痛治療の世界も、まったく同様であり、頭痛専門医はトリプタン製剤を中心とした各種の予防薬を組み合わせた薬物療法がすべてであり、これまた「こうした薬剤を使いこなせる」のが専門医の所以とされ、まったく生活指導は蔑ろにされている現実があります。 今後、”生活習慣病として片頭痛”を考えて治療を進める場合、当然のこととして現在の頭痛外来と同様に「急性期治療薬としてトリプタン製剤、さらに各種予防薬は併用します」が、同時に「生活指導」を徹底して行うことです。その要点は昨日も述べましたが
1.体の歪み(ストレートネック)の予防・是正
2.栄養指導、運動指導、ストレス対策
この点を厳守して行うことにより、”現在の頭痛外来”と差別化をはかることです。
このようにする限り、保険点数の上では”現在の頭痛外来”とは差がないはずです。
このような「生活指導」は保険点数にはならないことから、仕方ありませんが、こうした差別化を考えれば安いものと考えるべきことです。先日もご紹介したような
片頭痛治療のしおり 前編
http://taku1902.jp/sub291.pdf
片頭痛治療のしおり 後編
http://taku1902.jp/sub292.pdf
片頭痛のセルフケア 全編
http://taku1902.jp/sub294.pdf
を参考にして、医院独自の「手引書」を作成し、CDに収録して患者さんに直接手渡すのが最も手っ取り早い方法と考えております。制作費も安価で済むはずです。
このようにして片頭痛という頭痛が、治る頭痛であることを徹底させることです。
結局、片頭痛が”生活習慣病”であることを徹底させることです。決して”遺伝的疾患でなく、治らない頭痛ではない頭痛ということを知ってもらうことです。
これによって、一人でもうまく行けば、こうしたことが口コミで伝わり、患者さんが患者を呼び込んでくれる構図ともなってきます。
このようなことも大切なことではありますが、さらに重要なことがあります。
それは、頭痛患者さんが最も心配されることは、「頭痛のたびに頭痛薬(市販の鎮痛薬および病院で処方される薬剤)をこのまま飲み続けてよいものかどうか」という不安です。 このような不安は患者さんはどこに相談すべきかを何時も迷っておられます。このような不安を気安く応じる雰囲気作りが極めて重要になってきます。
このような相談は、患者さんにも医院にもどちらにも”有益な相談”であるはずです。 この相談をもとに、鎮痛薬の弊害を説き、鎮痛薬以外の方法・・指さし体操、肩こり・頭痛体操、首肩スットン体操、両手振り体操、背骨伸ばし、仙腸関節ストレッチ、あご引きエクササイズ、555体操等々を紹介すべきです。
また、後に述べるスーパーライザーも紹介することも一つの方法です。
”食事指導”の重要性を説く
生活習慣病である”高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風・ガン・認知症・片頭痛”ではその食事療法の基本はすべて共通しているはずです。このような基本的な考え方を徹底させることによって、特定健診ですくい上げた”生活習慣病予備軍”の方々を”高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風・ガン・認知症・片頭痛”に至らせないように努めることです。
このように”高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風・ガン・認知症・片頭痛”を従来のやり方・指導方法との違いを説明することによって特化し、差別化をはかることです。
とくに「インシュリン過剰分泌」の弊害を説明することです。
また、こうした考え方を具体化させる方法として、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の提唱される「3つの約束」を行うように指導するのが一番と思っています。
1.悪い植物油(市販のサラダ油など)や加工油(マーガリン)をとらない。とるのはシソ油(エゴマ油)とエクストラバージンオリーブ油だけにする
2.毎日の朝食は「万能健康ジュース」だけにする
3.可能なかぎり、食事ごとに「ラブレクラウト」をとる
このような基本的な考え方に加えて、それぞれの疾患に、付加すべき点を付け加えるだけのことです。片頭痛の場合、マグネシウム、トリプトファン、ビタミンB2です。
こうした食事療法の指導も各医院で工夫すべきです。
体の歪み(ストレートネック)の予防・是正
長期間にわたる頸部筋肉の異常な筋緊張は、当然「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてくる根本の原因ともなってきます。このため、頸部筋肉の異常な筋緊張を目的とした理学療法が必要とされます。このため低出力レーザー、スーパーライザーなどによる治療が最低限必要となってきます。
先程の頭痛相談でも述べましたが、鎮痛薬の弊害を説き、鎮痛薬以外の方法としてスーパーライザーを紹介すべきとしました。
私は、慢性頭痛とくに片頭痛予防を目指す医院として、最低限設置すべき治療機器としてスーパーライザー(東京医研)を挙げます。最低でも2台は必要と考えます。
術者は、理学療法士であればベターですが、素人でも十分な指導のもとに行いさえすれば、問題なくどなたでも施行可能です。
この治療機器は、肩だけでなく、腰痛など各種疼痛疾患に応用ができ、一般内科開業医には欠かせないものと思っております。まず、この治療機器が遊んでいることはなく、2台でもフル稼働するはずであり、利潤そのものは期待できないにしても、赤字になることはなく、それにも増して「片頭痛が予防」できることにあります。
片頭痛予防のための必須の治療機器と私は考えております。
「体の歪み(ストレートネック)」のユガミがひどく自分で改善不可能の場合は、カイロプラクター・整体師・鍼灸師に委ねる必要があります。
こうしたことから信頼のおけるカイロプラクター・整体師・鍼灸師を医院近くの場所に確保しておくことも必要とされます。
設置すべき診断機器
経済的に余裕があれば、私は以下の診断機器を設置します。それは・・
X線CT装置
X線テレビ装置
X線テレビ装置は、頸椎レントゲン検査の目的です。X線テレビ装置にする理由は脊柱全体の走向を確認し、体の歪みと同時にストレートネックを確認するためのものです。
撮影する部分は頸椎のみですが、正面、側面、前屈位、後屈位、斜位の6方向から撮影します。このX線テレビ装置は一般内科医院であれば、胸部撮影、胃透視、大腸透視等々日常茶飯事に運用されるべきX線装置であり欠かせないものです。
X線CT装置は、あれば申し分ないものであり、頭痛の場合、二次性頭痛を除外するためには必須の検査になってくるからです。
また、胸部、腹部も撮影ができることから多面的に使用可能ものであるはずです。
そして、最近のX線CT装置は、以前よりずっと安価となり、メーカーによっては横断面だけでなく、縦断像に画像が再構成することが可能となり、まさにMRIなみに撮影が可能となり、多方面にわたって撮影できるようになってきました。
参考までに、マルチスライスCTスキャナー(東芝Alexion16列)があります。
こうしたことから、経済的に余裕があれば、是非とも設置したいものです。
今後の内科医院の姿
以上のように考えてみますと、一般内科開業医が、こうした「頭痛外来」を行うことにより十分にペイでき採算があうものと思われます。とくに、最低限、X線CT装置、X線テレビ装置、スーパーライザーを設置することにより、現在の頭痛専門医の行う「頭痛外来」とはまったく差別化がはかれ、将来性が十分にあると考えるべきです。
ただ、「頭痛外来」だけを独立させて行う限り、採算はとれないと考えるべきです。
あくまでも、片頭痛を生活習慣病と考え、他の生活習慣病の”高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風・ガン・認知症”と一緒に・一貫して診ていくことです。それも、すべて予防医学の観点から、生活習慣病の”高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風・ガン・認知症・片頭痛”への移行阻止を念頭に診療理念をおくべきです。
このようにする限り、設置した医療機器もフル稼働することになり、お互いが補完しあうことによって採算があうことになってきます。あとは工夫次第ということです。
とくに片頭痛の場合は、初期の緊張型頭痛の段階から治療対象とすることで、緊張型頭痛から片頭痛への移行を阻止することに主眼をおくべきです。
現在の「頭痛外来」のように、片頭痛を熟成させることによって、トリプタン製剤を乱発し、予防薬の併用だけの薬物療法だけの治療方針では、いずれ患者さんから見捨てられる運命にあることを肝に銘ずるべきです。
このように、片頭痛という頭痛の視点を変えるだけで、採算のとれる部門となり得ることになります。
”片頭痛が治る頭痛である”との認識が広まることによって、緊張型頭痛の段階から早期に対処すべきであるという認識におのずと意識改革されることになり、患者さんにとってはこれ以上のものはないはずです。