これからの頭痛医療のあり方 その2 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

「頭痛外来」の本来の姿とは


 「頭痛外来」の本来の目的は脳のなかに異常のない「慢性頭痛」を対象とすべきです。
 これに対して、脳のなかに異常のある頭痛である「二次性頭痛」は脳神経外科が診るべきことは当然のことです。
 こうしたことから、昨日も申し上げましたように、頭痛をまず自覚した時点で、CTといった画像検査の可能な医療機関(敢えて、脳神経外科に受診する必要はなく、この段階で受診すれば、脳神経外科本来の機能を麻痺させてしまいかねません)を受診され、脳のなかに異常のないことを確認してもらうことが大切になってきます。(仮に、異常があれば、この段階で初めて、脳神経外科に紹介してもらうことで受診すべきです。)
 そして、CTといった画像検査で異常のない「慢性頭痛」と診断された段階から、これから述べるような「頭痛外来」を受診すべきです。このような「頭痛外来」の本来の目的は、緊張型頭痛の段階、もしくは既に片頭痛まで移行している頭痛を対象とすべきですが、本来、緊張型頭痛から片頭痛への移行を食い止めるために診療目的を置くべきです。
 こうした目的を可能・成就させるための診療体系を構築しなくてはなりません。


 1.体の歪み(ストレートネック)の予防・是正
 2.栄養指導、運動指導、ストレス対策


 このような診療を行うには、プライマリー・ケアを担当する一般内科開業医が行うべきもののはずです。といいますのは、これまでの家庭医として身近に健康管理を行ってこられた一般内科開業医であれば、みなさんの生活習慣・環境を把握されておられるはずです。
 片頭痛という頭痛は「生活のリズム」の歪みからくる生活習慣病です。あなたの片頭痛がどのような「生活のリズム」の歪みから来たものかの”気づき”はこれまでの家庭医として身近に健康管理を行ってこられた一般内科開業医が一番と考えられるからです。
一般内科開業医の診療の中心となるものは生活習慣病とされる高血圧症・糖尿病・高脂血症・痛風であり、ガン・認知症予防であったはずです。これに生活習慣病として新たに加わった「片頭痛」を追加させるだけのことであり、このような生活指導は”お手のもの”で得意とするところであったはずであり、決して違和感はないはずです。
 一般内科開業医が、まず先頭にたって、このような指導を行うべきと考えています。


実際行う場面での問題点


 問題は、実際に以下のことをどのように運用していくか、ということです。


  1.体の歪み(ストレートネック)の予防・是正
  2.栄養指導
  3.運動指導
  4.ストレス対策


 生活習慣病である糖尿病の場合は、糖尿病の治療指針として「糖尿病治療のてびき」「食品交換表」があります。
 こうしたことから、片頭痛の治療場面にもなくてはならないものと思っております。
 このため、先日ご紹介しました「片頭痛のセルフケア 前編」は、糖尿病治療のてびき」に匹敵するものであり、「片頭痛のセルフケア 後編」は「食品交換表」に相当するものです。このような考え方から「片頭痛のセルフケア」を作成してきました。


   片頭痛治療のしおり 前編
     http://taku1902.jp/sub291.pdf
  片頭痛治療のしおり 後編
     http://taku1902.jp/sub292.pdf
  片頭痛のセルフケア 全編
     http://taku1902.jp/sub294.pdf


 このような「治療のてびき」に相当するものは当然必要とされますが、これだけではまだ片手落ちのように思っております。
 これまでも、糖尿病の場合の食事療法を行っていく場面での実際の調理法は医師の説明だけでは理解されていなかったことから、栄養士さんからの実技指導が一般化されてきました。この点は片頭痛治療の場面でも取り入れられなくてはなりません。


「1.体の歪み(ストレートネック)の予防・是正」に関しては・・理学療法士の必要性


 長期間にわたる頸部筋肉の異常な筋緊張は、当然「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてくる根本の原因ともなってきます。このため、頸部筋肉の異常な筋緊張を目的とした理学療法が必要とされます。このため低出力レーザー、スーパーライザーなどによる治療が必要となってきます。マンツウマンで行う必要があり、術者が必要です。
 また、既に「体の歪み(ストレートネック)」に至っておれば、このユガミの程度を評価し、自分で改善可能なものかどうかを判断することが必要とされます。自分で改善不可能の場合は、カイロプラクター・整体師・鍼灸師に委ねる必要があります。
 自分で改善可能なものであっても、指さし体操、肩こり・頭痛体操、首肩スットン体操、両手振り体操、背骨伸ばし、仙腸関節ストレッチ、あご引きエクササイズ、555体操等々の実技指導をする理学療法士がおればさらに理解しやすくなるはずです。
 
 この「体の歪み(ストレートネック)の予防・是正」は片頭痛への移行を阻止するための根幹ともなるもので、絶対に欠かすことができないものです。


2.栄養指導に関しては・・栄養士の必要性


 医師の立場から、栄養面について以下の点から一応概略は説明致しますが・・


「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を作らないために


 1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない
 2)腸内環境を整える
 3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる
 4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスをよくする
 5)インスリン過剰を起こさない


マグネシウムの補充
脳内セロトニンを増やすために
ビタミンB2を摂取
「万能健康ジュース」「ラブレクラウト」について


 「万能健康ジュース」
 「ラブレクラウト」


 このような点について概略は説明するものの、実際患者さんには具体的にどのようなことなのかが理解されない場合も多いようです。
具体的に、食物繊維をどのように摂取していくか、水分摂取の仕方・注意点、必須脂肪酸のオメガ6とオメガ3の摂取バランスをどのように摂取するかということです。
 これは実際に調理する上で問題となってくる事項です。
 さらに、インスリン過剰分泌を来さないための食事摂取の仕方は理解されても実際の調理法は栄養士さんの方が医師の説明よりは説得力があるように思っております。
 脳内セロトニンの増やし方は、多少難解な部分があるため、直接栄養士さんから説明を受けることによって理解されやすくなるのではないでしょうか。
 さらに、マグネシウム液の作成法、万能健康ジュース、ラブレクラウトの作り方は、栄養士さんが実際の作り方を実演すれば、より理解しやすくなると思っています。
 この栄養面の理解も、片頭痛予防・改善のための必須の項目になります。
最も重要な点であり、これが基本となるものです。
 片頭痛がミトコンドリアの働きに問題があり、ミトコンドリアが円滑に働くには、食事の摂取の仕方がいかに重要なものかは理解されるはずであり、これ抜きには語れないものであることはお分かり頂けるものと思っております。



 以上この2つの柱は、緊張型頭痛から片頭痛への移行を阻止するための絶対条件ともなるものです。(運動指導、ストレス対策は手引き書だけでもよいかもしれませんが・・)。


 このようにして、頭痛を初めて経験された方々への対処法で、これらは医療の最底辺を支えるプライマリー・ケアを担当する一般開業医が診るべきものです。このようにして、緊張型頭痛から片頭痛への移行を阻止すべく務めるようにしていきます。
 あくまでも片頭痛予防目的で診療を進めていくことを目的にすべきです。

 しかし、いつの世にもこのような原則を守らない方々は当然存在します。こうしたことから、このような方々のためには、現在の形態の「頭痛外来」があります。


従来(現在)の「頭痛外来」の役割


 現在、頭痛専門医によって行われる「頭痛外来」がありますが、このような診療科は以下のような慢性頭痛を診療すべきと考えます。


 1.単一遺伝子による片頭痛
 2.薬剤乱用頭痛
 3.慢性片頭痛、(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛も含めて)
 4.特殊な片頭痛
   三叉神経・自律神経性頭痛、雷鳴頭痛・・入浴関連頭痛、貨幣状頭痛、睡眠時頭痛、新規発症持続性連日性頭痛、脳幹性前兆を伴う片頭痛


  こうした頭痛は、典型的であり症状から判断し、専門家へ紹介すべきです。


 とくに、薬剤乱用頭痛、慢性片頭痛は一般開業医の手には余るものであり、一般開業医が診るべきものではありません。このために、これまでの「頭痛外来」があり、ここに存在意義があるはずです。

 このように、頭痛診療の”棲み分け”が当面必要とされます。
 一般開業医は、片頭痛を予防する立場から、従来の「頭痛外来」は従来通りに診療するということです。

 このようにすることによって、将来は、従来(現在)の「頭痛外来」へ受診される方々も減少してくるのでは ないでしょうか。

 そうなれば、現在の頭痛専門医の考え方も変わってくるのではないでしょうか?

 問題は、このような観点から一般開業医が「慢性頭痛」を理解するかどうかに関わってくるものと思われます。
 こうした点は、現在の学会を主導される方々には、一般開業医の啓蒙活動はまったく眼中にはなく、もっぱら新薬の開発しか念頭にはないようです。

 こうした啓蒙活動が絶対的に必要であると考え、当ブログで訴え続ける予定です。

 現実は、このような観点から診察される一般内科開業医が一人でも増えることを祈るしかないのかも知れません。