最近の症例から・・ | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 14歳の男子の中学3年生の方でした。
 お父さんが片頭痛で当医院で加療中です。
 10歳頃から、頭痛があり小児科でカロナールを処方され、アレルギー性鼻炎があります。 これまでは、頭痛の頻度は少なく、月に1回あるかないかということでした。
 最近、高校受験をめざして、長時間机に向かって、うつむき姿勢で勉強する時間が増えてきた頃から、ズキズキする痛みが増えてきたということで、一度精査を希望され来院されました。
 頭部CTでは異常なく、頸椎X線検査ではストレートネックを認めました。
 このため、背骨伸ばしのストレッチを指導し、連日レーザー照射を繰り返し、3ヵ月後には、まったく頭痛はなくなりました。しかし、半年後、再度頭痛が頻回に起きるため来院されました。今回当医院を受診される1カ月前に、登校拒否のような状態になりかけているように思い家族(お母さん)が某心療内科に連れていき、登校拒否に”なにか訳のわからない横文字の病名”を付けられ、抗うつ薬、精神安定剤の5種類処方を受けていたようです。にもかかわらず、さらに頭痛が増強してきために、受診されました。

 そこで、不登校の状態をお聞きしますと、続けて休むのではなく断続しており、それも初めは頭痛が酷いために学校を休むような状態でなく、お母さんの言では、決まった曜日のように申されます。ここで本人に改めてこの理由をお聞きしたところ、不得手な教科のある日は決まって、クラス全員のなかで先生から名指しで質問され、この質問に答えられず、恥ずかしい思いをすることが重なって、これが苦痛となって、不得手な教科のある日は、朝から頭痛がするような気がして結局、学校に行くのが億劫になり、休んでいたということでした。さらに、このような不登校が続くうちに、このようなことではいけないと思い悩むうちに今度は頭痛まで増悪してきて、益々不登校が重なってきたとのことでした。
 ここで、前回通院中に「ストレス対策」について説明していなかったことを反省しました。このため改めて、片頭痛にはストレスがいかに良くないのかを説明する羽目になりました。そして、不登校になった最大の原因である、「不得手な教科」に対する対策でした。
 取り敢えず行うべきは、予習を前日に予め行わせることでした。そうすることによって、授業中の質問に対する備えを行うようにしてもらうことにしました。
 そして、以前お渡ししていた「片頭痛の生活習慣の改善」の冊子のなかの「第7章 セロトニン生活の励行」について説明致しました。そして、これらを必ず実践してもらうことでした。最低限、早寝・早起きで、生活を規則正しくし、メリハリをつけることでした。
 当面は、心療内科でもらっていた薬剤はすべて中止し、予防薬を処方し、頓挫薬として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を出しました。セロトニンを増やすための食事療法もあわせてお母さんには説明し、実行してもらうようお願い致しました。
 このようにして、4ヵ月後には、元通りに学校に復帰することが可能になりました。
 このような例で反省したことは、例え中学生と言えども「ストレス対策」は無視できないということでした。これまで、中学生にはストレスとは無縁のものと思っていたことが間違いであったようです。


 頭痛専門医は、不登校の背景には、片頭痛の存在を単純に指摘され、片頭痛を適切に治療すれば片頭痛が改善されて、不登校もなくなるとされますが、このような単純なものなのでしょうか? こういった時に”適切な治療”として、トリプタン製剤を使い、予防薬を併用しましょうと提唱されます。このような論理は、先程の心療内科医とまったく異なることはなく、こうしたことで簡単に改善されるものなのでしょうか?
 このようなことで簡単に治せるものであれば、誰も苦労はしないはずです。
 そして、このような年代からトリプタン製剤を処方すべきかどうか問題があります。

 今回は患者さん自身が不登校になった背景を明らかにしてくれたため、その対処法を患者さんと一緒に模索することが可能になり、改善に導くことができました。

 しかし、大半の不登校の理由・背景が明確にできない事実が存在することを忘れてはならないと考えます。特に、中学生・高校生は思春期のまっただ中にある年代です。
 親にも誰にも、相談できない”悩み事”が存在します。例えば、性の問題、異性間の問題・イジメの問題もあります。このような”誰にも、相談できない悩み事”が不登校の背景にあることを認識しなくてはならないはずです。こうした”誰にも、相談できない悩み事”が「ストレス」となっていることを意識して対策を考えなくてはならないはずです。こうした理由から、頭痛増悪の原因の一つとして「ストレス」の重要性を示すことも必要となります。
 この点を患者さん自身に納得・認識して頂くことも重要なはずです。

 このようなこともあり、「片頭痛の生活習慣の改善」といった冊子がいかに大切かを痛感させられました。1日も早く、学会を主導される先生方に「片頭痛治療のてびき」といった”治療指針”を作成して頂きたいものです。
 いずれにしても、1カ月は遅れはしたものの、片頭痛が慢性化することなく、早期に対処できたことは不幸中の幸いであったようです。

 このように、片頭痛をお持ちの方々は、片頭痛が悪化するたびに受診する医療機関を変更される方々も多く、こうした心情はよくよく理解はされるのですが、1カ所で継続して治療すべきであり、とことん納得がいくまで、執拗に疑問点を問い質していくことが片頭痛改善への近道のように思っております。