平成20年に特定健診の制度が設けられた頃から、当医院ではこの「特定健診」を受診される方々に対して「脳梗塞予防のための特定健診」を行ってきました。
これは、以前、国家公務員等共済組合連合会 呉共済病院時代に脳梗塞患者さんに脳血管撮影を患側の閉塞血管の撮影に加えて、脳主幹動脈の閉塞した症例には、側副路検索を目的として4 vessel study (閉塞側以外の健側3本の脳血管撮影を意味します)を行ってきました。こうした脳主幹動脈の閉塞した症例では、殆ど、ウイリス輪の形成不全が確認されていました。
このため、経頭蓋的超音波ドップラー検査を行うことによって、側副路の状態を検索することによって、ウイリス輪の形成不全を脳梗塞発症前に見つけるための健診です。ウイリス輪の形成不全を脳梗塞発症前に見つけることによって、脳梗塞予防しようとする目的のための健診です。
しかし、日本人の脳梗塞の大半は、高血圧症・糖尿病を基礎疾患とした穿通枝という絹糸のような細い血管の閉塞によるラクーナ梗塞ですので、こういった方々の予知ができない欠点があります。
詳細はこちらを・・http://taku1902.jp/sub137.pdf
ところが、最近では紀南地区でも、一般の診療所がMRIを設置され、「脳ドック」をされる施設も散見されるようになりました。こうした施設では、MRAにより血管像も同時に撮影され、未破裂動脈瘤の発見に努めておられます。
さらに、無症候性脳梗塞も問題にされ、これを脳梗塞予防に繋ごうとされます。
ここまでは、日本全国で行われる「脳ドック」のあり方です。
先日、当医院を受診された61歳の「頭痛患者」さんがこのような「脳ドック」を受診前に受けておられ、脳梗塞があると指摘されたということでした。
「脳ドック」を受診した際の撮影所見を記録したCDをもらっているとのことでした。このため、後日、このCDを見せて頂ければとお願いし、持参して頂きました。
このCDを見せて頂いて驚いたことに、脳梗塞も”穿通枝という絹糸のような細い血管の閉塞によるラクーナ梗塞”もまったくありませんでした。さらに無症候性脳梗塞もです。
そこで、改めて、この患者さんにお聞き致しました。この「脳ドック」はご夫婦で受診され、61歳の奥さんだけが脳梗塞があると言われ、ご主人は何もないとのことだったそうです。そして、ご主人には高血圧症・糖尿病といった基礎疾患はまったく無く、健康そのものであり、これに対して奥さんは、もともと高血圧があったとのことでした。
こういったことから、奥さんに対しては、高血圧という持病があることから、「脳ドック」でのMRIでは脳梗塞も”穿通枝という絹糸のような細い血管の閉塞によるラクーナ梗塞”もまったく無かったにも関わらず、将来、脳梗塞を起こす可能性があることを見越して「脳梗塞」があると説明されたようでした。さらに、ご丁寧に「血を”サラサラにする”おくすり」が処方され、今後の再発予防として服薬を強要されたようでした。
そして、奥さんには、以上のように説明すると同時に、MRIという医療機器の値段がどの位するのか申し上げました。現在、61歳ですが、将来、脳梗塞を起こす可能性があるが、”穿通枝という絹糸のような細い血管の閉塞によるラクーナ梗塞”が仮におきる年齢は恐らくは75歳以降の年代であり、今後、15年間は「血を”サラサラにする”おくすり」を飲み続けなくてはならない計算になります。医院経営を考えれば、高額なMRIという医療機器を”ペイする”ためには、こういった考え方でしなければ、医院は潰れてしまうことを考える限り、あなたのような説明と薬の処方にしかなりかねないことは理解されるでしょう、・・と・・。
恐らく、この医院では、高血圧・糖尿病・高脂血症・痛風といった基礎疾患を持たれている方々が「脳ドック」を受ければ、すべてこのような対処をされていることと思われます。それも、「脳梗塞も”穿通枝という絹糸のような細い血管の閉塞によるラクーナ梗塞”もまったく無い」にも関わらずです。このようにして「医院経営」を維持・安定化させるのでしょうか・・・。こうしたことが医療費高騰化の根源になっているようです。
えらい時代になったようです・・・・