二次性頭痛(その他) 25  アセトアミノフェン乱用頭痛 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

アセトアミノフェン

 アセトアミノフェンは、アミノピリンやアスピリンと並ぶ解熱鎮痛剤です。しかし、発ガン性や腎障害が問題になるに及んで市販の解熱鎮痛薬からアミノピリンなどの薬物が姿を消し、最後に、容易に入手できる解熱鎮痛薬として、アセトアミノフェンが残りました。代謝の過程でアセトアミノフェンの一部は、N-アセチルベンゾキノミニンになります。このN-アセチルベンゾキノミニンは、通常は肝細胞中のグルタチオンによって解毒されますが、大量のアセトアミノフェンが体内にはいるとグルタチオンが枯渇し、解毒しきれないN-アセチルベンゾキノミニンがタンパクと結合して肝細胞の壊死を起こします。アセトアミノフェンによる肝障害の発生と血清中アセトアミノフェン濃度とは密接な関係があり、簡便に血清中アセトアミノフェン濃度が検出できれば肝障害の危険性を予知できます。


アセトアミノフェン、ACE処方とは?

 アセトアミノフェンは、脳の視床下部に作用して解熱作用を、視床および大脳皮質に作用して鎮痛作用を示します。
 そして、市販の鎮痛薬の大半はアセトアミノフェンの含んでいます。
 
  市販の鎮痛薬の成分の一覧表


    http://taku1902.jp/sub281.pdf

 アセトアミノフェンも、アスピリンと同様にプロスタグランジン(痛みを知らせてくれる物質)の産生を抑制しますが、その効果は弱く、しかも脳にだけ作用して体の各部位(器官)に作用しないため、胃障害の副作用がありません。
 アスピリンのようにライ症候群の副作用も無いため、小児用の解熱鎮痛薬に用いられています。
 また、アセトアミノフェンはそれ単体では効き目が弱いため、異なる成分、エテンザミドとカフェインを加ることで効果が高まるように設計されるケースも多いようです。
 これを「ACE(エーシーイー)処方」と言います。
(A:アセトアミノフェン、C:カフェイン、E:エテンザミドの略です)
 なお、アセトアミノフェンはACE処方のみで市販薬になるケースもあれば、アスピリンと一緒に混ぜたり、他の痛み止め・解熱成分のエテンザミドなどと一緒にしたり、様々な処方の仕方が有ります。


カロナール(アセトアミノフェン)の作用機序:解熱鎮痛剤


 風邪によって発熱が起こると、体のだるさによって日常生活が行いにくくなります。発熱は病原微生物に対抗するために必要な反応であるため、本来は熱を下げるべきではありません。
 しかし、中には高温状態の持続によって体力が著しく消耗してしまうことがあります。このような場合、熱を下げなければいけません。
 また、痛みが起こることによっても日々の生活が制限されます。そこで、鎮痛剤によって痛みを抑え、頭痛や腰痛症、打撲痛などの症状を抑制することがあります。
 そこで、熱を下げたり痛みを抑えたりする解熱鎮痛剤としてアセトアミノフェン(商品名:カロナール)が使用されます。


アセトアミノフェン(商品名:カロナール)の作用機序


 解熱鎮痛剤として多用されるアセトアミノフェンですが、その作用機序は不明であるとされています。考えられていることとしては、中枢(脳など)に作用することで熱を下げたり痛みを抑えたりしていると言われています。
 体温が上昇するとき、脳が大きく関わっています。脳には体温中枢が存在します。風邪などによって体温中枢が反応すると、高温状態に陥ります。そこで、熱を下げるためには体温中枢に作用すれば良いことが分かります。
 アセトアミノフェンは脳の体温中枢に働きかけ、熱の放散を増大させます。その結果、高くなってしまった熱を下げることができます。
 また、痛みは脳で認知されます。そのため、脳に作用することによっても痛みを抑えることができます。アセトアミノフェンは、鎮痛剤として使用されるアスピリンと同程度の鎮痛効果が知られています。


アセトアミノフェン(カロナール)の作用機序


 このように作用機序は詳しく解明されていませんが、脳に働きかけることで解熱鎮痛作用を示す薬がアセトアミノフェン(商品名:カロナール)です。


アセトアミノフェン(商品名:カロナール)の特徴


 解熱鎮痛剤の中でも、副作用が少なく、比較的安全に使用できる薬がアセトアミノフェン(商品名:カロナール)です。
 アセトアミノフェンと同じ解熱鎮痛剤としては、NSAIDsと呼ばれる種類の薬も使用されます。しかし、NSAIDsには胃腸障害(胃潰瘍など)の副作用があります。アセトアミノフェンは胃腸障害なく解熱鎮痛作用を示すことが知られています。
 また、小児のインフルエンザや水痘などの解熱にNSAIDsを使用すると、脳症を引き起こすリスクが高まることがあります。そこで、小児の解熱鎮痛に対しては、これら脳症のリスクがないアセトアミノフェン(商品名:カロナール)が多用されます。
 平熱時にはほとんど体温に影響を示さず、発熱時には投与後3時間程度で効果が最大になると考えられています。抗炎症作用はほとんどありません。
 なお、カロナール自体は先発医薬品ではなく、後発医薬品(ジェネリック医薬品)として位置づけられています。そのため、アセトアミノフェン製剤には先発医薬品が存在しません。
 このような特徴により、特に小児に対して使用され、副作用も比較的少ない解熱鎮痛剤がアセトアミノフェン(商品名:カロナール)です。

 以上、アセトアミノフェノンの特徴をまとめておきます。


1.アセトアミノフェノンの鎮痛作用の機序はまだ明らかではありませんが、 脳に対する中枢作用といわれています。一方、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は、末梢でcyclooxygenase(COX プロスタグランジン合成酵素)を阻害し、プロスタグランジンの生合成を阻害します。このことにより、NSAIDsは、 鎮痛解熱・抗炎症作用を発揮します。
2.しかし、NSAIDsは、鎮痛解熱・抗炎症作用を発揮するとともに、消化管、腎臓、血小板にも 作用するため、胃粘膜障害、腎機能障害、血小板機能障害などの発現を みることがあります。アセトアミノフェノンは、中枢性に作用し、鎮痛解熱効果を発現しますが、 抗炎症作用はありません。また中枢に作用するため、胃粘膜障害、腎機能障害、 血小板機能障害などが発現することは稀で安全に使用できます。
3.アセトアミノフェノンの注意事項として、肝機能障害がありますが、これもNSAIDsに比して 頻度は少ないとされています。
4.市販の鎮痛剤や風邪薬にはアセトアミノフェノンを含んでいるものが多く、併用する際には細心の注意が必要です。


アセトアミノフェン中毒

アセトアミノフェンを含有する製品を何種類も服用することによって、中毒事故を起こす場合があります。
•血液中のアセトアミノフェンの量により、まったく症状がない場合から、嘔吐や腹痛、肝不全、さらには死に至る場合まであります。
•診断は、血液中のアセトアミノフェン量と肝機能検査の結果に基づいて行います。
•アセチルシステインを投与してアセトアミノフェンの毒性を低下させます。

 アセトアミノフェンは一般的な市販の鎮痛薬で、100種類以上の薬剤に含まれており、多くの処方薬にも配合されています。類似した薬を一度に数種類服用すると、気づかないうちにアセトアミノフェンを過剰に摂取している場合があります。小児用には液体、錠剤、カプセルなどのさまざまな製剤があり、子供の発熱や痛みに対して親が一度に複数の薬剤を、どれもがアセトアミノフェンを含むことに気づかずに、数時間以内に飲ませていることがあります。
 アセトアミノフェンは、通常はある程度多量に摂取しても安全な薬剤ですが、まったく害がないわけではありません。中毒を起こすには、推奨量の数倍のアセトアミノフェンを摂取する必要があります。たとえば、体重約70キログラムの人の場合、一度の服用で中毒を起こすには、325ミリグラムの錠剤が少なくとも30錠必要です。40錠を超えて服用しない限り、死に至ることはまずありません。長期間にわたり少量ずつ何度も服用した場合でも毒性が現れる場合があります。アセトアミノフェン中毒を起こす量を服用すると肝臓障害を起こします。続いて肝不全が起こります。
 過剰に摂取しても、大半は症状がすぐに現れるわけではありません。服用した2~4時間後に血液中のアセトアミノフェン濃度を測定すれば、肝臓障害の程度を予測するのに役立ちます。もしも大量に摂取した場合は、症状は4段階で進行します。第1期(最初の数時間)には、嘔吐しますが、病状は悪くみえません。多くの患者で第2期(24~72時間)まで症状がみられませんが、吐き気、嘔吐、腹痛が生じる場合があります。この段階で血液検査を行うと、肝機能の異常がみられます。第3期(3~4日後)では嘔吐がひどくなります。検査で肝機能が不十分であることがわかり、黄疸(眼や皮膚の黄変)や出血がみられます。ときに腎不全に陥ったり、膵臓が炎症を起こしたりします(膵炎)。第4期(5日目以降)では、回復がみられる患者もいますが、肝不全を経験したり、さらに他の臓器も機能不全に陥って致死的になることもあります。

現在の「SG配合顆粒」は・・

 現在の「SG 配合顆粒」成分は以下のようになっています。


 イソプロピルアンチピリン 150mg
 アセトアミノフェン 250mg
 アリルイソプロピルアセチル尿素 60mg
 無水カフェイン 50mg

 アセトアミノフェンは、「SG 配合顆粒」1包中に 250mg しか含まれていません

 アセトアミノフェノンは、小児や妊婦・授乳をされている女性の片頭痛の第一選択薬として使用されてきました。
 しかし、成人ではその効果があまりなく、患者さんはアセトアミノフェノンの使用はあまり好まれませんでした。ここには一つの原因があります。日本での使用用量が、今まで少なかったことです。アメリカや韓国では、アセトアミノフェノンの用量は、1回1000mg、1日4000mgでした。日本でも2011年2月より、成人の鎮痛における用量が拡大され、1回1000mg、1日4000mgまで使用可能となりました。


  従来の用法・用量:1回300-500㎎、1日900-1500mg
             ↓
   新たな用法・用量:1回300-1000㎎、
   投与間隔4-6時間以上、1日4000mgまで


 これまで、成人で400mg程度を処方して効果がなかったのですが、増量により、片頭痛の鎮痛効果が十分に得られることが期待されます。


以上のように、市販の鎮痛剤にはアセトアミノフェノン、カフェインを含んでいるものが多く、しかも肝心の鎮痛効果を目的としたアセトアミノフェノンの含有量は”本来の有効成分の含有量が少なくされている”ために、必然的に十分な効果が得られないために飲む回数が増加せざるを得なくなるということです。このようにすれば当然カフェインの服用量が増加することになり、これが依存性を作ることになってしまいます。

 
 こういったことから、「国際頭痛分類 第3版β版」でも「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)」として「パラセタモ一ル(アセトアミノフェン)乱用頭痛」が分類されています。


 この点は、先日「市販の鎮痛薬」で述べたことの繰り返しにすぎませんが、アセトアミノフェノンは、市販の鎮痛薬の殆どに含まれており、重複して服用されるケースも多いことが予測されるため、注意を喚起するために、改めて述べました。