二次性頭痛(その他) 21  アセチルサリチル酸乱用頭痛 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 アセチルサリチル酸とは、代表的な消炎鎮痛剤のひとつで非ステロイド性抗炎症薬の代名詞とも言うべき医薬品です。ドイツのバイエル社が名付けた商標名のアスピリン(独: Aspirin)がよく知られ、日本薬局方ではアスピリンが正式名称になっています。消炎・解熱・鎮痛作用や抗血小板作用を持つっています。サリチル酸を無水酢酸によりアセチル化して得られます。
 アスピリンの効果ですが、炎症、発熱作用を持つ「プロスタグランジン」という物質が、体内でつくられるのを抑制する働きが有ります。
 このプロスタグランジンとは、人が生きていく上でとても大切な物質で、体の様々な機能を調節する潤滑油のようなものです。
 この物質は体の各部位の痛みを検知して、知らせてくれる働きをします。
 アスピリン(アセチルサリチル酸)は、この物質の働きを抑えて、痛み・発熱を知らせないようにしてくれます。


解熱鎮痛剤としてアスピリン


 毎月一度以上は必ず頭痛薬を飲んでいるという人は、きっと次の項目に心当たりがあると思います。


◎チェックポイント◎


□ 夏でも手足の先が冷たくなってしまう(冷え性)
□ 肩こりがひどい
□ 運動が苦手。ほとんど運動をしていない
□ シミ・ソバカスが多い
□ いつも顔色がすぐれない(黒っぽい)
□ 目の下にクマがでやすい
□ 生理痛がひどい
□ 肌がカサカサしている
□ 寝つきがわるい。よく
眠れない
□ 老けてみられる


これらが起こる原因とは大きく2つあります。それは……


  「ミトコンドリア活性が低い」
  「酸化ストレス・炎症体質」


 この2つ、じつはあなたの「頭痛」(または片頭痛)とも密接な関係があるのです。
頭痛薬や風邪薬に含まれるアスピリン(アセチルサルチル酸)は、肝臓で代謝されてサルチル酸という強い酸に分解されます。サルチル酸は、ミトコンドリアが代謝物を取り入れる小さな穴(「PTP」といいます)を破壊する働きがあります。PTPが破壊されると、ミトコンドリアはエネルギー代謝ができなくなり、最終的に死滅してしまいます。
 ミトコンドリアは細胞内にあって、私たちが活動するための大切なエネルギーをつくりだしている器官です。そのミトコンドリアを傷つけて破壊し、死滅させてしまう危険性がアスピリンにはあるのです。

 頭痛持ちのあなたは、もともとミトコンドリア活性が低い(弱い)ため、頭痛をはじめとするさまざまな症状が起こりやすくなっています。それなのに、頭痛がするからといって安易にアスピリンを飲んでしまうと、それは自らの手でミトコンドリアをさらに窮地に追い込んでいることと同じです。
頭痛薬を飲めば、あなたは痛みから“一時的に” 解放されるでしょう。
 しかし長い目で見ると、あなたは自分で「頭痛(片頭痛)体質」を悪化させているといってもいいでしょう。   頭痛薬を飲むことは、頭痛をより起こしやすい体質をつくっていることと同じなのです。
また、エイジング(老化)の原因として皆さんよくご存知の「酸化ストレス・炎症体質」も、頭痛体質の大きな原因です。
 酸化ストレスの要因となる“活性酸素”が過剰に発生すると、脳血管や脳細胞に悪影響を及ぼし、片頭痛の発作や痛みを引き起こす生理活性物質を発生させるからです。
 この「ミトコンドリア活性の低さ」と「酸化ストレス・炎症体質」を改善することができれば、あなたを悩ませる頭痛(片頭痛)に「さよなら」することも可能なのです。


アスピリンジレンマ:COX と血小板凝集抑制作用


トロンボキサンA2(TXA2)と血小板凝集作用


 シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸を原料としてプロスタグランジンを合成します。
 しかし、シクロオキシゲナーゼ(COX)によって合成される物質はプロスタグランジン以外にもトロンボキサンA2(TXA2)という物質もあります。
このトロンボキサンA2(TXA2)の重要な作用としては血小板凝集作用があります。つまり、血液が固まりやすくなります。
 そのため、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することによってトロンボキサンA2(TXA2)の合成を抑制することができれば、血小板凝集を抑えることができます。
「血小板凝集が抑えられる」という事は、血液が固まりにくくなる事を意味しています。いわゆる血液をサラサラする作用です。
 血管の中に血栓(血の塊)が出来てしまった場合、これが心臓の血管を詰まらせると心筋梗塞となります。他にも脳の血管を詰まらせると脳卒中となります。そのため、血液を固まりにくくすることで、これら血栓が作られる過程を抑えることができます。
 昔から使用されている解熱鎮痛剤としてアスピリンがありますが、このアスピリンを少ない量で使用することによって血小板凝集抑制作用を得ることができます。
 なお、少ない量のアスピリンを低用量アスピリンと表現します。
 低用量アスピリンを投与することによってシクロオキシゲナーゼ(COX)が阻害されます。それに続いて、その下流にあるトロンボキサンA2(TXA2)の合成が抑制されます。
 これによって、血小板凝集が抑制されて血液が固まりにくくなります。


アスピリンジレンマ


 前述の通り、低用量アスピリンには血小板凝集抑制作用があります。この作用はトロンボキサンA2(TXA2)の合成を抑制するために起こります。
しかし、アラキドン酸から合成されるプロスタグランジンの作用を見てみると、PGI2(プロスタグランジンI2)の作用として血小板凝集抑制作用をもつことが分かります。
「血小板凝集抑制作用」とは、血液が固まりにくくなることを意味しています。そのため、PGI2 が阻害されると、その逆の作用として血液が固まりやすくなります。
NSAIDs によってシクロオキシゲナーゼ(COX)が阻害されると、トロンボキサンA2(TXA2)の抑制によって血液がサラサラになります。しかし、それと同時にPGI2 まで阻害されると血液が固まりやすくなってしまいます。
 このように片方では「血液をサラサラにする作用」が起こり、もう片方では「血液を固まりやすくする作用」が起こります。このような矛盾(ジレンマ)が起こります。
 そこで、低用量という言葉が登場します。先ほどのアスピリンの例であれば、低用量(少ない量)でアスピリンを使用することによってトロンボキサンA2(TXA2)だけを阻害することができます。これによって、血小板凝集抑制作用だけを得ることができます。
 しかし、鎮痛作用を得る目的でアスピリンを使用する場合は高用量(多い量)のアスピリンを投与する必要があります。高用量アスピリンであるとトロンボキサンA2(TXA2)だけでなく、PGI2 まで阻害してしまいます。
 この結果、トロンボキサンA2(TXA2)の抑制による「血液をサラサラにする作用」とPGI2の阻害による「血液を固まりやすくする作用」の両方が起こります。そのため、互いの作用を打ち消しあってしまいます。
 そのため、高用量のアスピリンを投与しても血小板凝集作用を得ることができません。これをアスピリンジレンマと呼びます。


 このように、アスピリンは、血小板の凝集能を高めるトロンボキサン(TXA2)と、凝集能を抑制するプロスタサイクリン(PGI2)の両方の産生を抑制するという、相反する作用があります.
 ところで、少量のアスピリン(1日;150mg 位以下)では、プロスタサイクリンという血小板の凝集能を抑制する物質の産生よりも、凝集能を高めるトロンボキサンの産生がより強く抑えられるため、トータルとして凝集能が抑制されます(さらさら血になりやすい).
 逆に、鎮痛効果の得られる量のアスピリン(1日;2 ~ 3g)は、血小板凝集能を高めるトロンボキサンの産生比率が高くなります(ドロドロ血になりやすい).
 つまり、同じアスピリンが使用する量により2つの相反する作用を示すことから、これをアスピリン・ジレンマといいます.