二次性頭痛(その他) 11 エルゴタミン製剤 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 最近では、ときに見られる程度にはなりましたが、私が当地で頭痛診療を行い始めた頃は、セデスGと並んでクリアミン錠(今回のエルゴタミン製剤です)による薬剤乱用頭痛の多さに驚かされました。その後、トリプタン製剤の発売前後から際だってクリアミン錠による薬剤乱用頭痛が増加したように思っておりました。まさにトリプタン製剤の発売を前に、クリアミン錠、カフェルゴットの在庫一掃セールでもしているかのようでした。そして、クリアミン錠は効能書きに「頭痛治療薬」とされていたこともあり、1日3回(毎食後)処方されているのがザラでした。これが延々と1年以上続けられるのですから、患者さんはたまったものではありませんでした。エルゴタミン製剤は本来”血管収縮薬”です。緊張型頭痛の方にこのような処方をされますと、肩・首の筋肉の血流を悪くさせ、益々頭痛は悪化させることになります。こうした方々は未だに絶えることはありません。


 今回は、この「エルゴタミン製剤」について述べることに致します。


「国際頭痛分類 第3版β版」では、「物質の使用または曝露による頭痛」と並列した形で
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)のなかに分類されています。


8.2.1 エルゴタミン乱用頭痛
8.2.2 トリプタン乱用頭痛
8.2.3 単純鎮痛薬乱用頭痛
 8.2、3.1 パラセタモ一ル(アセトアミノフェン)乱用頭痛
 8.2.3.2 アセチルサリチル酸乱用頭痛
 8,2.3,3 その他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)乱用頭痛
8.2.4 オピオイド乱用頭痛
8.2.5 複合鎮痛薬乱用頭痛
8.2.6 単独では乱用に該当しない複数医薬品による薬物乱用頭痛
8.2.7 乱用内容不明な複数医薬品による薬物乱用頭痛   
8.2.8 その他の治療薬による薬物乱用頭痛


聖アントニウスの業火、エルゴタミン製剤


 トリプタン製剤が出る前は、片頭痛にはエルゴタミン製剤という平滑筋を収縮させる薬(血管収縮薬)がもっぱら使われていました。片頭痛は脳血管が拡張して起きることから、血管の平滑筋を収縮させて血管の拡張を抑えようとしたものです。実際、この範疇の薬剤、カフェルゴット、クリアミン、ジヒデルゴットは片頭痛に効果を持ち、長いこと使われてきました。
 中世ヨーロッパで、「聖アントニウスの業火」と呼ばれる病気が恐れられたことがあります。麦に付くカビが産出する麦角アルカロイドと呼ばれるものが、幻覚や腹痛、手足の血管の過剰な収縮を起こし、ひどい時には手足の先端が黒く壊死してしまいました。火に焼かれるように原因不明の辛い病気が流行したのです。カビの付いた麦から作られたパンに含まれる毒素が原因とは分からなかったため、何か呪いと考えられていました。麦角アルカロイドはパーキンソン病の治療薬にも応用されています。


麦角とは
 
 麦角は、ライ麦、大麦、小麦等の開花期に、キノコやカビなどの仲間の子嚢菌類である麦角菌が蕾へ感染して形成されます。
感染を受けた蕾は蜜液を分泌するため昆虫が集まり、これをまた他の穂へと感染させ、果実の代わりに菌核が実ってネズミの糞や鶏の蹴爪に似た黒褐色~濃茶色の硬化体が形成されたもの、これを麦角といいます。漢方薬で知られる冬虫夏草もこれの仲間です。


麦角の毒


 麦角菌はエルゴタミンなどのアルカロイドという毒素を産生し、麦角が除去されないまま製粉されたものを食べることで引き起こす麦角中毒は、古く中世ヨーロッパでライ麦を主食としていた地方で多く発生しました。
 ちなみに、アルカロイドは一般的な山菜やキノコ中毒の時に起こる毒素で、毎年のように誤食のあるウルイ(ギボウシ・食)とバイケイソウ(毒)、フキノトウ(食)とハシリドコロ(毒)、ニリンソウ(食)とトリカブト(毒)などの毒素として知られています。
 また、食糧難の戦時下・昭和18年には、岩手県知事の号令により盛岡中学校生総出動で区界峠下へクマザサの実を採取にでかけ、その後「笹の実パン」なるものが配給されたとか。これ以後、盛岡を中心にした地域で流産が非常に高率で発生した原因を調べるうち、共通していたのは笹の実パンを食べた妊婦という点だった、という記録もあります。ちなみに、致死量は1g。


麦角中毒の症状


 急性症状:消化器症状(腹痛,下痢,悪心,嘔吐)、頭痛、灼熱感。
 慢性中毒症状:血管収縮(狭窄)による下肢特に足先に壊疽をおこし、激しい疼痛を伴ないます。
 痙攣など神経性の障害で、四肢の筋肉の収縮がおこり、時に永久収縮をおこす場合があります。
 また妊婦では早期流産をおこすことがあります。
 さらに知覚障害、幻覚、精神障害をおこすこともあります。


魔女狩り伝説


 麦角中毒は中世ヨーロッパで「アントニウスの業火」として恐れられていました。

 アントニウス=3世紀半ばにエジプトに生まれた聖人で『修道生活の父』と呼ばれました。裕福な家に生まれましたが、両親の死後、財産をすべて貧者に施して、祈りと瞑想の禁欲生活に入りました。その生活のなかで精神、肉体上の激しい誘惑と苦痛を受けました。麦角中毒による苦しみがこのアントニウスの受けた苦痛のようであるということから中世ヨーロッパで流行した麦角中毒が『アントニウスの業火』と呼ばれるようになりました。
 また、魔女狩り伝説で知られる魔女とはいわゆる産婆のことで、医学の発達していなかった当時、陣痛促進薬として麦角を用いたり、またさまざまな薬草を利用して心身の病を取り除いていたといいます。
 その薬草を採取するためには、明け方が一番薬効成分の強まることから夜中に徘徊することが多く、これも神秘的な存在として見られていたようです。
 この「魔女」たちは調合する薬草の効果があればあるほど畏怖され、一方で不幸な出来事や天災さえもが彼女らの「魔術」のせいではないかと恐れられていました。
 が、医学が発達するにつれ、そのマジカルな有能さを排除する動きとなって、魔女狩りと称し火あぶりなどの刑に処されていきました。


薬効作用


 麦角アルカロイドの向神経作用に着目し、合成されたのがライ麦に寄生した麦角菌から得られる物質をもとにしたLSDです。LSDは視覚や聴覚の幻覚剤として知られ、非常に少量で感情、思考、知覚を変化させる強力な麻薬です。
 また、麦角アルカロイドは子宮や血管などの平滑筋に直接作用しこれを収縮させます。古くからヨーロッパで陣痛促進や分娩後の子宮出血抑制に用いられていたのはこの作用を利用したものです。
さらに、80年ほど前には片頭痛の治療薬としても導入されました。


 エルゴタミン製剤の最大の欠点は、頭痛の原因になる脳血管への選択性がなく、全身の血管や臓器に長時間働いてしまう点です。手足が冷えやすく、妊娠の可能性がある女性には使いづらい薬剤でした。そのうえ、作用発揮までに時間がかかり、習慣性もあり、連用後休薬すると激しい頭痛を引き起こすなど、何かと難しい薬剤でした。 しかし、他に選択の余地は無かったのです。安価なのがとりえでした。1920 年代から用いられてきた歴史ある薬剤、カフェルゴットは2009 年に販売中止となり、トリプタン製剤にバトンタッチすることになりました。


そして、ネット上では、エルゴタミン製剤はどのように評価されているのでしょうか?
       
 急性期治療薬の中でエルゴタミンはトリプタンの登場により、余り使われなくなりました。 主な理由は以下の通りです。

◆エルゴタミンに依存性が有る
◆全身の血管を収縮させてしまう⇒妊婦さん、高血圧・狭心症・心筋梗塞の方には禁忌
◆発作が出てから服用しても効果が無い


■エルゴタミンには依存性など欠点が有る■

 エルゴタミン製剤は拡張し出した脳の血管を収縮させて起こり始めの片頭痛を抑える治療薬で、トリプタン製剤が発売されるまでは片頭痛発作時の治療薬として広く使われてきました。昔使っている方は大勢いると思います。
が、片頭痛治療薬のトリプタンが開発された以降は、病院でエルゴタミンが処方される事は先ずありません。
 この薬の欠点は片頭痛の発作が起きてから服用してもほとんど効果が無い事です。
 その為、発作が起きるのではないかという不安な段階で早めに服用しがちです。
 さらにこの製剤の主成分であるエルゴタミン自体に依存性があり、含まれてる無水カフェインにも依存性があります。
 その為、過剰に服用する様になり薬が手放せなくなる状態が起こります。
 またこの薬は全身の血管に作用するという欠点も持っています。
 その為、適切に使用しないと体の末梢に動脈炎が生じたり、高血圧や狭心症心筋梗塞の原因になる事も有ります。
 妊娠時に服用すると胎児の奇形のリスクがある為、妊婦では禁忌薬となっています。
また高齢の方にも禁忌薬となっています。
 そうでない人の場合でも1週間に10錠までが限界量です。
それ以上服用している方は既にエルゴタミン依存になっていると考えた方が良いでしょう。
 さすがに、今もエルゴタミンを常用している方は少数派だとは思いますが、片頭痛治療の 専門医に相談してトリプタンに切り替えて下さい。

さらに、「慢性頭痛診療ガイドライン」ではどのように評価されるのでしょうか


エルゴタミン製剤はどう使うか


 エルゴタミン/カフェイン配合薬は痛みが中等度 ~ 重度となった頭痛には効果は少ないが,トリプタンで頻回に頭痛再然がみられる患者には使用価値がある.早期服用での効果は NSAIDs と同等もしくは劣っており,副作用として嘔吐があるため,使用は限られる.また妊娠中・授乳中の使用は禁忌である
経口エルゴタミン・カフェイン配合薬は長い間,片頭痛の特異的治療薬として使用されてきたが,悪心をきたすことが多く,また長期乱用による副作用の警告がなされてきた.トリプタン系薬剤の登場以来,比較試験ではいずれもトリプタン系薬剤に比し有効性が劣り,特異的治療としての役割は限られてきている.
 経口エルゴタミンまたはエルゴタミン/カフェイン配合薬は 30年以上にわたり,片頭痛発作急性期治療薬として使用されてきた.しかしプラセボを対照とした臨床試験は少なく,有効性も一定していない .他剤との RCT (注射薬を除く)はトリプタン系薬剤(5件), NSAIDs(6件),アスピリン(2件)などが実施されている.トリプタンはエルゴタミン製剤より改善効果がはやく,随伴症状の改善も優れているが,スマトリプタンとの比較では,カフェルゴット の方が 48 時間以内の再燃が少なかった .NSAIDs との比較では,トルフェナム酸とは同等 ,ナプロキセン,ジクロフェナク,ケトプロフェン ,ピルロフェン,アスピリンには劣り ,副作用は同等もしくは嘔吐が多かった.痛みが中等度~重度となった時点でのエルゴタミン配合薬の経口投与は効果が少ない.早期服用で効果がみられる患者もいるが,効果がなかった場合,レスキュー薬として24時間以内にトリプタン系薬剤を使用できないため,使用の場は限られる.また,エルゴタミン製剤は子宮収縮作用,血管収縮作用があるため妊娠中の連用は非常に危険であり,添付文書と米国 FDAでは妊娠中は禁忌,虎ノ門病院の基準では薬剤の催奇形危険度評価3点(連用では4点)と評価されている.


エルゴタミン製剤


かっての片頭痛治療の中心的薬剤


 トリプタンが発売されるまでは、エルゴタミンは片頭痛治療の中心的な薬剤でした。
エルゴタミンは麦角アルカロイドの一種です。これは、ライ麦などの穂に付着した麦角菌がつくりだす物質で、中毒を起こすことがあるために16 世紀には恐れられていたのですが、現代では薬用として利用されるようになっています。
 血管を収縮させる作用があり、片頭痛には広く用いられていました。しかし少量では若干効果が弱いので、同じように血管を収縮させる作用のあるカフェインと合剤にして、製剤として発売されています。
 片頭痛の治療を受けたことがあるやや年配の人なら聞き覚えがあるでしょうが、エルゴタミン製剤は、以前はカフェルゴットという商品名で売られていました。この薬は外国ではもちろんいまでも販売されていますが、トリプタンの発売によって儲からなくなったということで、日本では2008 年に発売中止になってしまいました。

 現在は、クリアミンAとクリアミンSという商品名の薬があります。しかし、この薬が使いこなせる医療機関はごくまれです。

 古くから片頭痛の特異的治療薬として使用されてきましたが、トリプタン製剤の登場で特異的治療としての役割は限定的なものとなってきています。現在はトリプタンで頻回に頭痛再燃がみられる場合に、使用されています。子宮収縮作用、血管収縮作用があるので、妊娠中は使用してはいけません。
 国内で使用可能なのは、クリアミンA(酒石酸エルゴタミン1 mg、無水カフェイン50mg、イソプロピルアンチピリン300 mg )、クリアミンS(A錠の半量)の2タイプです。
 なお、ジヒドロエルゴタミンの経口錠は、急性期治療薬としては無効で、通常使用しません。ジヒドロエルゴタミンには注射製剤もあり、急性期治療に有用ですが、わが国では認可されていません。


エルゴタミンの長所は?


 かってトリプタン系薬剤のメーカーは、比較広告の対象としてトリプタンの長所とエルゴタミンの短所を取り上げ、エルゴタミンに集中砲火のような批判を浴びせました。勿論このようなこともエルゴタミンの売り上げ低下につながったようですが、実際には、エルゴタミンはそんなにひどい「悪者」ではありません。
 トリプタンよりも早めに服用することができる、効いている時間が長いので薬が切れる頃に頭痛が再燃することが少ない、服用日数が多くなってもトリプタンのように効かなくなってくることが少ない、などの利点があります。
 また、あまり医学的なことではありませんが、薬が安価であることもメリットの一つでしょう。エルゴタミンの有効率がトリプタンより低いからといって、これで効いている患者さんなら、わざわざ薬を変更する必要はありません。
 トリプタンが発売になったとき、それまでエルゴタミンをもらっていた担当医から、「今後こんな危険な薬は使えない。トリプタンに切り替える」と言われて全面的に処方が変更され、しかもトリプタンが効かないということもありました。エルゴタミンが効いて、トリプタンでは効かないという患者さんもときどきおられます。


エルゴタミン製剤の使い方のポイント


 エルゴタミン製剤(カフェルゴット、クリアミン)は血管収縮剤です。これを頭痛の初期に使います
 1錠で効果がなければ、30 分後にもう1錠追加します。添付文書には1日6錠までと書いてありますが、私は1日4錠にして下さいと大体お願いしています。エルゴタミン製剤は頭痛がひどくなったらあまり効果がありません。頭痛の初期に使う必要があります。
 そして、連用、乱用で薬剤性頭痛を起こしますので、1日最高4錠、1週間に最高10錠にして下さいとお話しています。
 また、高齢の方や心臓の悪い方にはあまり使わないほうがいいというふうに言われています。
 最初に前兆があって頭痛がする方が、カフェルゴットを服用する場合、頭痛がひどくなってから服用しても、効きません。前兆が出現した段階で服用し、1錠で効かなかったら、あきらめずにもう1錠使う、そうすると1錠で駄目でも非常に効く場合があります。
 どうも医者は頭痛薬に関して慎重で、効かなかったら2時間くらい空けてからもう1回使って下さいと、カフェルゴットでも、鎮痛剤でもよく2時間あけなさいというのです。
 それは薬同士の作用から2時間というのが割に言いやすい時間なのですが、カフェルゴットに関しては2時間待って飲んだらもうひどくなってますから、それはもうほとんど意味がなくて、使うのであれば、早く30 分後に、使ったほうがいいのです。
 発作のごく初期、特に目がチカチカするタイプの前兆を伴う片頭痛の患者さんは、なるべくこの目がチカチカしているときに飲まないとほとんど効果がないのです。それから、これは脳の中のドーパミン系という所にも作用するお薬ですから、吐き気が出てしまうのです。飲んでも吐いてしまう患者さん、それでも我慢しながら飲んでいる患者さんはいらっしゃいます。それから、飲み過ぎで、依存性が出やすいのです。 1週間に10錠以上、人によっては12錠という先生もいらっしゃいますけれども、1週間に10錠から12錠以上毎日連用していると、だんだん依存性を来して、手放せなくなってくるのです。しかも、このエルゴタミン製剤は、脳の血管だけではなく全身の動脈に作用します。したがって、気をつけて使わないと、だんだん手足の先端から冷たくなってくる。いわゆるレイノー症候群と言いますけれども、だんだん冷たくなってきて、それを無視して飲み続けると、だんだん指が腐ってくるというようなことを起こす患者さんも実際にいらっしゃるのです。
 私も過去に3人見たことがあります。指を切断された方です。そういう意味では非常に恐ろしい薬です。
 それから、これらのエルゴタミンというお薬の代謝系の問題で、ある種の抗生物質、最近よく使うマクロライド系の抗生物質、あるいは胃薬の中でタガメット、このようなお薬と慢性的に併用することによって、だんだんエルゴタミンの血中濃度が上昇して、動脈の収縮が強くなって、手足が冷たくなる症状が進行する場合があります。
 したがって、このエルゴタミンをお使いになるときには、日常普通に使うような抗生物質でも、よくお医者さんに選んでもらって使わないといけないという注意が必要になってきます。


 そして、忘れてはならない点は、群発頭痛の場合でのエルゴタミン製剤の価値です。
 群発頭痛の患者さんは、群発期(2~3カ月間)には毎日のようにある一定の時間になると激痛に襲われます。このような激痛を抑える際に使われるのがエルゴタミン製剤です。激痛がくると予測される時刻の約1時間前に、あらかじめこのエルゴタミン製剤を服用さえしておけば激痛は抑制されます。人によっては、1日の2回服用することもあり、これを仮に3カ月間連用しても、依存性を来すことなく、副作用もなく群発期を凌ぐことが可能です。こうした場合、高価なトリプタン製剤の注射薬は連日使用しなくてはならないことを考えれば経済的に無理があるはずです。ところが、現在では、イミグラン注射薬しか保険適応となっていない現実があります。このような群発期を乗り切るためには、安価な薬剤が必要とされるはずです。


 このようにエルゴタミン製剤の使われる場面は確かに限られてきていることは事実ですが、患者さんのなかには「エルゴタミン製剤」しか効かない方もいらっしゃることは忘れてはならない点です。そして、「依存性」を問題とされますが、トリプタン製剤の方が、もっと依存性があることも忘れてはなりません。
 トリプタン系薬剤乱用による薬物乱用頭痛では、頭痛の性質として従来からある”片頭痛の重症化や頻度の増加”として現れることが多く、エルゴタミン製剤や鎮痛剤に比べて少ない服用回数でかつ早く薬物乱用頭痛に至りやすい傾向があるのも特徴とされています。


http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11974722056.html
 (トリプタン製剤による薬物乱用頭痛)

 以上のように、片頭痛治療薬として「トリプタン製剤」が第一選択薬と現在されてはおりますが、このような「依存性」の面からだけ考えても、「トリプタン製剤」に頼り切ることには問題が多いはずです。また、群発頭痛の場合の頓挫薬としての「エルゴタミン製剤」の価値は未だに捨てがたく貴重なもののはずでありながら、イミグタンの注射薬しか現在保険適用になっていない点には、まさに疑問を持っております。
 ここにも、トリプタン製薬メーカーの関与を想起せざるを得ないところです。

 こうしたことから、片頭痛治療上、いずれの薬剤に優劣があるのかという論点でなく、薬物以外の方法を考える必要があり、薬物療法が全てではないということです。