その他の一次性頭痛 12  インドメタシン | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 まず、インドメタシンで改善する頭痛として知られているものを以下に示します。


インドメタシンが有効な頭痛


絶対的に有効な頭痛


 発作性片側頭痛 
 持続性片側頭痛

 

絶対的ではないが有効とされる頭痛


 一次性穿刺様頭痛    
 一次性咳嗽性頭痛    
 一次性運動時頭痛    
 性行為に伴う一次性頭痛 
 睡眠時頭痛       
 貨幣状頭痛

       

 このうち発作性片側頭痛と持続性片側頭痛の2つはインドメタシンが絶対的有効性を示す頭痛であり,インドメタシンが有効であることが,診断基準に含まれています.他の頭痛はいずれも今回取り上げた「その他の一次性頭痛」に含まれる頭痛であり,「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」においてもインドメタシンの有効性が記載されています.


インドメタシンが絶対的有効性を持つ頭痛(発作性片側頭痛と持続性片側頭痛)


 インドメタシンが絶対的な有効性を示す疾患として最初に報告されたのが,発作性片側頭痛です.必ず片側性であること,流涙などの自律神経症状を痛みと同側に伴うことなどから群発頭痛類似の頭痛として報告されました.持続性片側頭痛は痛みが持続性である点で発作性片側頭痛と異なりますが,これ以外の症状は発作性片側頭痛と共通しており,当初から共通の病態と考えられていました.持続性片側頭痛は,「国際頭痛分類第2版」では「その他の一次性頭痛」に分類されていましたが,2013年に公開された「国際頭痛分類第3版 β版」では「三叉神経・自律神経性頭痛」に移動しました.
 この2つの頭痛の最大の特徴がインドメタシンの絶対的有位性です.「国際頭痛分類第3版 β版」において両者の診断基準には,「インドメタシンが絶対的に有効である」という項目が含まれています,インドメタシンの薬理学的な主作用はシクロオキシゲナーゼ(COX)-1および2の阻害ですが,これは非ステロイド系消炎鎮痛薬に共通の作用であり,この2つの頭痛におけるインドメタシンの特異的有効性を説明し得るものではありません.脳血流や頭蓋内圧に対するインドメタシンの作用も研究されていますが,結局現時点では,この2つの頭痛におけるインドメタシンの作用機序は不明とされています,同じ三叉神経・自律神経性頭痛に属する群発頭痛や短時間持続性片側神経痛様頭痛発作にインドメタシンが無効であることも,また謎です,


絶対的有効性はないが,インドメタシンが有効とされる頭痛


 これらはいずれも「その他の一次性頭痛」に含まれる頭痛です.一次性穿刺様頭痛,一次性咳瞰性頭痛,一次性運動時頭痛では予防薬としてインドメタシンが第一選択薬と考えられていますが、大規模な臨床試験は実施されておらず,「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」にも「グレードC」と記載されています,性行為に伴う一次性頭痛では,性交1~2時間前のインドメタシン投与の有効性が報告されていますが,やはり「グレードC」にとどまっています,睡眠時頭痛においては無効例の報告もあり,インドメタシンは第2選択薬とされています.この他.国際頭痛分類第3版 β版で「その他の一次性頭痛」に追加された貨幣状頭痛でもインドメタシン著効例の報告がありますが,今後のさらなる研究が待たれます.



 このように、頭痛専門医の間では、インドメタシンがなぜ有効なのかといった考察がまったくありません。


 この「インドメタシン」の薬理学的な主作用はシクロオキシゲナーゼ(COX)-1および2の阻害ですが,これは非ステロイド系消炎鎮痛薬に共通の作用です。この鎮痛効果はどのようにして得られるのでしょうか?


 まず、「痛い」と感じている傷の場所では、どういう現象が起こっているのでしょうか?


1. 傷や熱、酸・アルカリの刺激を受けると、細胞が傷つく。
2. 傷ついた細胞から、カリウムが放出されます。それがきっかけとなり、痛みを感じやすくするプロスタグランジンやロイコトリエンといった、体の働きを調節する物質が作られる。
3. 神経からは、サブスタンスP という痛み増強物質が放出されます。サブスタンスP によって、傷の痛みや腫れ、赤みなどが増強。
4. また、血液中の肥満細胞からはセロトニン、血小板からはヒスタミンといった、さらなる痛み物質が誘発。
5. 痛みセンサーはますます興奮し、痛みが拡大。


 拡大した「痛み」情報は、体の損傷や不具合を脳に伝え、その対策を立てるよう脳に促します。痛みがある時には、自然と安静を取り、冷やして炎症を抑えようとするのは、痛みを感じ取った脳が傷を癒すアクションを起こしているからなのです。
 組織が損傷を受けた時、細胞膜にあるリン脂質はアラキドン酸に変わり、シクロオキシゲナーゼ(COX)の作用によってプロスタグランジンが生成されます。このプロスタグランジンの作用によって引き起こされる「痛み、熱、腫れ」などの症状が引き起こされる現象を炎症といいます。一方、組織損傷時に血漿から遊離したブラジキニンは、知覚神経を興奮させることにより、痛みを発生させます。プロスタグランジンは、ブラジキニンと比較して直接的な発痛作用は弱いのですが、ブラジキニンによる発痛を増強させます。この様に疼痛は両者の関わりから起こります。
 発痛物質には、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリンなどがありますが、その中で最強とされるのはブラジキニンです。
 セロトニンは皮膚や筋肉に分布する痛覚受容器に作用して痛みを起こします。
 セロトニン濃度が低いと、物理的刺激や他の発痛物質(たとえばブラジキニン)の発痛作用を増強します。
 セロトニンの濃度を急に低下させるものはすべて頭痛を起こし、その際、絶対的な濃度よりも、減少のスピードが重要となってきます。
 プロスタグランジンの合成量を左右しているのは細胞膜にある脂肪酸(リン脂質)からのアラキドン酸の遊離の程度によります。
 細胞に物理的な刺激が加わった場合や炎症などはアラキドン酸が遊離するきっかけとなるため、いったんプロスタグランジンが産生され、炎症が起きると、アラキドン酸の遊離が促進され更にプロスタグランジンが産生されるという悪循環が生じることになります。
 これは雪球を坂の上からころがした時にたとえる事が出来ます。、はじめは小さな雪球でもころがっていくうちにだんだん大きくなっていきます。おそらく、小さなうちには簡単に止めることが出来るのでしょうが、大きくなり勢いのついた状態では止めようとしても逆に押し潰されてしまうかもしれません。
 炎症の初期にプロスタグランジンの産生をしっかりブロックすることは、痛みを悪化させないための重要なポイントです。プロスタグランジンの原料になるのは食物の中に含まれる脂肪です。脂肪は蛋白質、糖質と並んで重要な栄養素ですが肥満をはじめとして動脈硬化や乳癌の発生に密接に関与していることが知られており、あまり良いイメージはないようです。
 このように、脂質というとダイエットの大敵のイメージがありますが、実際には体内で体の構造成分となったり、ホルモンの原材料として重要な役割を担っています。普段食べているバター、サラダ油、豚や牛の脂肪、魚の油などの油脂(中性脂肪)の栄養学的な性質を決めているのは脂肪酸といわれる物質です。「コレステロール上昇予防に植物油がいい」という宣伝もこの脂肪酸の種類のことを言っているのです。
 脂肪酸には大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
その中でも必須脂肪酸は動物の体内ではほとんど合成がされず、食事から摂る必要がある栄養素です。必須脂肪酸が欠乏したネズミでは皮膚からの水の漏出、成長の停止、生殖機能低下などが起きることが知られています。
 動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれ、たくさん食べるとコレステロール値を上げ、動脈硬化や心臓病の原因になることが知られています。不飽和脂肪酸は植物油や魚に多くふくまれ、コレステロール値を下げるので良い言われています。ところが植物油信仰も過信しすぎると落とし穴があります。
 植物性脂肪は不飽和脂肪酸を多く含むと述べましたが大きく分けて3つの系統に分類されます。
 プロスタグランジンがたくさん出来ないように工夫することは痛みの治療にとって重要です。そのためにプロスタグランジンの合成を阻害する鎮痛剤やピルなども使用するのですが、食生活を工夫することによってプロスタグランジンの過剰な産生をコントロールすることも有効と考えられます。具体的には魚を積極的に食事に取り入れる、衣の厚い揚げ物は減らすなどを工夫を続ける事が良いと思います。


痛み止めの作用


 痛みセンサーを興奮させ、痛みを引き起こす痛み物質には、カリウム、セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミンなどがあります。一方で、痛みセンサーを直接には興奮させず、痛み物質の作用を強める物質があります。サブスタンスP、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどがあげられます。非麻薬性鎮痛薬(NSAIDs)は、このプロスタグランジンを作りにくくすることで、痛み止めの効果を発揮します。
シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸を原料としてプロスタグランジンを合成します。
 しかし、シクロオキシゲナーゼ(COX)によって合成される物質はプロスタグランジン以外にもトロンボキサンA2(TXA2)という物質もあります。
 このトロンボキサンA2(TXA2)の重要な作用としては血小板凝集作用があります。つまり、血液が固まりやすくなります。
 そのため、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することによってトロンボキサンA2(TXA2)の合成を抑制することができれば、血小板凝集を抑えることができます。

 このようにして、片頭痛の引き金となる”血小板凝集を抑える”ことができます。


 インドメタシンの作用は,非ステロイド性抗炎症薬NSAIDの主作用であるシクロオキシゲナーゼ(COX)活性阻害作用にあり、これによって鎮痛効果を発揮しています。


 このように、その他の一次性頭痛を初めとした”インドメタシン反応性頭痛”には共通してこのような病態が存在すると考えるべきと思われます。

 また、こうした観点から、片頭痛治療薬としての”非ステロイド性抗炎症薬NSAID”の存在価値はあるはずですが、なぜか第一選択薬としてトリプタン製剤が君臨しているようです。
 と同時に、食生活を工夫することによってプロスタグランジンの過剰な産生をコントロールすることも大切と考えられます。


  インドメタシンの「その他の一次性頭痛」に対する有効率の差は、 プロスタグランジンがたくさん出来ないように工夫したか否かに関わっているものと思われます。こうしたことから非ステロイド性抗炎症薬NSAIDの有効性を最大限に引き出すためには、食生活を工夫することによってプロスタグランジンの過剰な産生をコントロールすることが重要であるということを意味しています。