その他の一次性頭痛 11  新規発症持続性連日性頭痛(NDPH) | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)


 以前に使用された用語としては、急性発症の慢性頭痛,新規慢性頭痛がありました。


 明瞭に思い出すことができる発現から連日性にみられる持続性頭痛です。痛みは,特徴的な性状を欠き,片頭痛様あるいは緊張型様であったり,両者の要素をもっていることもあります。


「国際頭痛分類 第3版 β版」での診断基準は以下の通りです。


A.BおよびCを満たす持続性頭痛がある
B.明確な発症で明瞭に想起され,24時間以内に持続性かつ非寛解性の痛みとなる
C.3ヵ月を超えて持続する
D,ほかに最適な「国際頭痛分類 第3版 β版」の診断がない


 「新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)」は,典型的には頭痛の既往がない患者に起こり,頭痛は発症時からその後すぐには寛解することなく,毎日起こるのが特徴です。
 患者は常に発症について想起して,正確に述べることができます。もしできなければ,ほかの頭痛診断がなされるべきです。以前から頭痛(「片頭痛」あるいは.「緊張型頭痛」)がある患者でも,この診断から除外はされませんが,発症以前の頭痛頻度の増加があってはなりません。同様に以前から頭痛のある患者では薬剤の使用過多に続く頭痛の悪化があってはなりません。
 「新規発症持続性連日性頭痛」は,「片頭痛」または「緊張型頭痛」のいずれかを示唆する特徴を有していることがあります。 慢性片頭痛」または「慢性緊張型頭痛」(あるいはその両者)の診断基準を満たしていても,「新規発症持続性連日性頭痛」の診断基準に合致しているときは原則としてこの頭痛を診断します。一方,「新規発症持続性連日性頭痛」と「持続性片側頭痛」の両者の診断に合致するときは,原則として「持続性片側頭痛」と診断します。
 発作頓挫薬の使用は,「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)]の原因とされている上限を超えることがあります。このような症例においては,「新規発症持続性連日性頭痛」の診断は,連日性の頭痛の発症が明瞭に薬剤の使用過多に先んじていなければ診断することはできません。このような症例では「新規発症持続性連日性頭痛」と「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)」の両方の診断がなされます。
 すべての症例において,「頭蓋内圧亢進性頭痛」,「低髄液圧による頭痛」,「頭部外傷による急性頭痛」といった他の二次性頭痛を適切な検査によって除外する必要があります。
 「新規発症持続性連目性頭痛」には2つのサブフォームがあります。典型的には治療なしで数力月以内に消失する自然寛解性のサブフォームと,積極的治療に抵抗性を示す難治性のサブフォームです。これらは,別々にコード化しません。

 このように「国際頭痛分類 第3版 β版」では規定されております。


 このように「慢性連日性頭痛」を引き起こすものとして、以下のようなものがあります。


 慢性連日性頭痛は,「1日に4時間以上の頭痛が1カ月に15日間以上続く頭痛」と定義されます.(Silversteinら)


  ①変容型片頭痛
  ②慢性緊張型頭痛
  ③新規発症持続性連日性頭痛
  ④持続性片側頭痛


の4病型に分類されます.


 国際頭痛分類では,慢性連日性頭痛の病名は採用されず,変容型片頭痛は慢性片頭痛として,それぞれの病型は一次性頭痛のカテゴリーに,薬物乱用頭痛とは区別して分類されています.


国際頭痛分類による診断では、5型に分類されます。


 ・慢性片頭痛
 ・慢性緊張型頭痛
 ・新規発症持統性連日性頭痛
 ・持続性片側頭痛
 ・薬物乱用頭痛


 実際には,慢性片頭痛や慢性緊張型頭痛,薬物乱用頭痛を正確に鑑別して診断することは困難な場合も多いとされています.
 さらに,一次性頭痛では慢性群発頭痛や慢性発作性片側頭痛など,二次性頭痛では脳脊髄液減少症や特発性頭蓋内圧亢進症など,慢性に経過し連日性に頭痛をきたす疾患が存在します.
 そのため,3カ月以上続く頭痛であれば,定義にとらわれず,慢性連日性頭痛として広く包括的に診断し診療を進めることが現実的では有ります.


変容型片頭痛・慢性片頭痛


 当初定義された変容型片頭痛の診断基準と国際頭痛分類で言う所の慢性片頭痛は,完全に一致したものではありませんが,類似性の高いものです.
 海外からの報告では,多くの場合は片頭痛は経過とともに改善する傾向を認めますが,その一部は増悪傾向を示すとしています.
 長期的には,その一部は変容型片頭痛に移行する可能性が有ります.


 片頭痛の慢性化には,

  ①慢性連日性頭痛の家族歴
  ②胎児期における母親の飲酒と喫煙
  ③片頭痛の日数
  ④肥満
  ⑤いびきと無呼吸
  ⑥うつ病などの精神疾患の合併
  ⑦過剰な鎮痛薬使用
  ⑧カフェイン摂取

 などが関与しているとされています.
 診断にあたって,10~20歳代での前兆のない片頭痛の有無,30~40歳代での頭痛頻度の増加や緊張型頭痛様要素の増加など,経過のなかでの頭痛の変化や慢性化をきたすリスクの有無が有るかどうかが重要です.
 予防薬としてバルプロ酸(デパケン®),トピラマート(トピナ®),アミトリプチリン(トリプタノール®),ロメリジン(ミグシス®およびテラナス®)などを使用し,慢性化した原因や共存症に対する治療も同時に行う.
 慢性片頭痛に対するA型ポツリヌス毒素の治療効果は,効果は限定的です.


慢性緊張型頭痛


 本邦からの報告では,慢性緊張型頭痛の有病率は1.6~2.1%とされ,年齢とともに増加傾向にあります.
 慢性緊張型頭痛は,反復性緊張型頭痛から時間経過に伴い徐々に慢性化します.
 症状は,両側性,圧迫感または締め付け感を伴う頭痛が連日性に出現いたします.
 また,共存症としてうつや不安が高率に存在します.
 頭痛の慢性化のメカニズムは,中枢性感作が重要とされ,痛みの感受性閾値の低下などが考えられておりますが,未だ明らかになっておりません.
 国際頭痛分類の診断基準にあるように,慢性片頭痛では緊張型頭痛様の要素を含んでくるため,両者の鑑別は困難です.
 これを鑑別するには,過去の頭痛歴が重要です.
 具体的には,変容型片頭痛は片頭痛の既往の過程で慢性化するため,片頭痛の既往が有るようであれば,慢性片頭痛の可能性が高まります.
 治療は,精神疾患の共存症が多いことや中枢性の関与が考えられていることから,筋弛緩薬や抗うつ薬の使用に加え,鍼治療や指圧,頭痛体操などの理学療法,認知行動療法などが経験的に行われています.
 圧痛部位である天柱ブロック,後頭神経ブロックなどの局所麻酔薬注射は,現時点では科学的根拠に乏しく有効な治療法とは判断できません.


新規発症持続性連日性頭痛


 新規発症持続性連日性頭痛は比較的まれな頭痛です.
 頭痛の発症日から連日性に頭痛を認めることが特徴的です.
 頭痛発症日を明確に覚えていることが多い傾向が有るとも報告されています.
 やや女性に多く,平均発症年齢は30歳代とされます.
 緊張型頭痛様の特徴を有する場合が多いが,嘔気や光・音過敏といった片頭痛の特徴が認められる場合もあるとされます.
 頭痛の性状により2群に分類されます.
 片頭痛様の頭痛を有する群は,女性例に多く,不安障害あるいはうつ病などの精神疾患の既往が多いとされ,緊張型頭痛様の頭痛を有す群は,頭痛発症日をより正確に覚えていることが多いとされています.
 小児や青年例では,成人例と比較して薬物乱用が少なく,感染症や外傷後などの二次性頭痛による場合が多いとされています.
 鑑別診断として,慢性片頭痛,慢性緊張型頭痛,持続性片側頭痛,低髄液圧による頭痛,頭蓋内圧亢進による頭痛,頭頸部外傷による頭痛,感染症による頭痛などが挙げられます.
 現在のところ明確な治療法は示されておりませんが,自然に寛解するタイプと積極的な治療に抵抗性を示す難治性のタイプがあります.
 緊張型頭痛や片頭痛などに準じて治療を行ったり,ガバペンチン(ガバペン®),トピラマート(トピナ®)などの予防薬が試みられています.


持続性片側頭痛


 持続性片側頭痛はまれな頭痛で,インドメタシンで完全寛解することが特徴的です.
 男女比は約1:2と女性にやや多く,平均発症年齢は30歳代とされます.
 性状は,片側性で反対側に移動しない軽度~中等度の持続性の頭痛となります.
 疼痛部位は前頭部,側頭部,眼窩部,後頭部に多く,頭痛のため日常生活に著しい支障をきたす場合もあります.
 増悪時に同側の自律神経症状がみられることが特徴的で,流涙や結膜充血が比較的多く認められます.
 片頭痛時に出現する随伴症状を伴うこともあります.
 痛みは慢性に持続することが特徴であり,寛解と再発を繰り返す例でも,多くは慢性型に移行します.
 一方で,痛みが対側に移行する例,インドメタシンの無効例,自律神経症状を欠く例,国際頭痛分類で示された診断基準以外の自律神経症状を呈する例の存在も報告されています.
 鑑別診断として,片側限局性の慢性片頭痛,新規発症持続性連日性頭痛,頸原性頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛,慢性外傷後頭痛,動脈解離による頭痛,脳幹梗塞による頭痛などが挙げられます.
 治療量のインドメタシンで完全寛解し,経口薬の使用量は最高量75mg,直腸投与は最高量100mgを用います.
 長期にわたる内服治療が必要とされますが,この場合,副作用としてめまいや消化器系の問題が生じ得ます.
 胃腸障害を軽減するために開発されたインドメタシンファルネシルが有効な場合もあります.
 眼窩上神経や大後頭神経ブロックが圧痛を有する症例で有効であったとする報告や後頭神経刺激療法の有効性を指摘する報告もありますが,いずれも小規模なものです.


薬物乱用頭痛


 慢性片頭痛や慢性緊張型頭痛と薬物乱用頭痛を区別して診断することが求められます.
しかし,実際に薬物の乱用によって頭痛が増えたのか,もともとの頭痛が多いため薬物の乱用につながったのか,判断は非常に難しいと言えます.
 女性が多くを占め,患者背景に精神疾患を認める事もあります.
 低所得や教育歴が危険因子であるとする報告もあります.
中枢性の原因も考えられており,眼窩前頭皮質の低下が持続的にみられるとの報告も有ります.
治療は,

  ①原因薬物の中止
  ②中止後に起こる頭痛への対応
  ③予防薬の投与
  ④患者教育

が重要です.



 以上のように「新規発症持統性連日性頭痛」は、その病態も全く不明とされ、有効な薬剤もないのが実情のようです。こういったことから、現時点では、「ミトコンドリアの活性化」「セロトニン神経系の活性化」「体の歪み(ストレートネック)の是正」といった慢性頭痛の根底に存在する病態を念頭において対処すべきと思われます。