先日、40歳の女性が「めまい」を訴えて来院されました。
よくお聞きしますと、11月中旬に初めて、めまいが出現し、当時、嘔吐も激しく7日間ばかり動けない状態だったそうです。さらに、詳しくお聞きしますと、起こり初めは、朝起床しようとして起き上がろうとした途端に、激しいめまいと嘔吐に襲われたそうです。このため右側臥位になると、再度、激しいめまいと嘔吐に襲われるため、じっと動かないようにして1日ベッドに臥床されたそうですが、やはりこの間、右側臥位になると、激しいめまいと嘔吐が出現するため、絶対に右側臥位にならないように我慢され、じっと寝ておれば何ともなく、右を向こうとすると気分が悪くなるためじっとしていたそうです。
耳鳴りは、まったくなかったそうです。翌日も、右を向くと気分不良とめまいが出現するため、左からそっと起き上がり、ご主人に付き添われて、総合病院の脳神経外科を受診されたそうです。ここでは、めまいがすると訴えると、診察(神経学的検査、眼振検査)をまったくすることなく、直ちにMRI検査をされたそうです。
そして、検査が終わってから、MRIでは心配は全くありません。ただ、めまいの原因は不明ですが、このめまいで命にかかわることはなく、そのうち治まってくるでしょう、と説明され、そのまま、メリスロンというお薬を処方されたそうです。
しかし、めまいは受診された後も、一向に治まらず、右側臥位になると激しいめまいと嘔吐が出現するため、その後1週間は、じっとベッドに臥床されておられたとのことです。 その後、徐々に良くなってきたのですが、やはり首筋が異様に凝るため、もしかして首に問題があるのではと自分で考え、「整体」を受診され、首が異様に張っているとの指摘を受け、しばらく「整体」を通院されたそうです。
しかし、やはり右側臥位になると、以前程大きなめまいは出現しないものの、気分不良は、いつまでも治らないため当医院を藁にでも縋る思いで受診したとのことでした。(当医院を受診されたのは、めまい出現後、3週間後でした)そこで、型通り、まず、神経学的検査法により小脳に問題がないか確認の上、今度は眼振の検査で注視方向への眼振のないことを確認し、臥位をとって頂き、まず左側臥位、ついで右側臥位で眼振の出現の有無を確認致しますと、右側臥位で眼振の出現はないものの、自覚的に「気分不良」を訴えました。さらに、この右側臥位を4,5回繰り返すたびに自覚的に「気分不良」は徐々に軽減され、最終的には、自覚的な「気分不良」は消失しました。この所見から、「良性発作性頭位性めまい」との診断を下しました。
ところが、本人は首に拘るため、敢えて頸椎X線検査を行いました。そうしますと、典型的なストレートネックを呈しておりました。
そこで、患者さんに改めてお聞き致しました。臥位になった上で、側臥位にして眼振の有無を調べたかどうかをお聞きしましたが、結局、このような検査そのものはされなかったとのことでした。このため、こうしためまいは診察をすれば簡単に脳に異常があるかどうかは分かるはずであり、「良性発作性頭位性めまい」をすぐに疑うことが大切であり、このような耳の三半規管の「耳石器の障害」がMRIで分かるはずはないと申し上げました。
先程の私が行ったような検査で直ちに診断され、これをどのように治すのか指導を受ければ、2~3日で治ってしまったはずであり、こうした指導をしなかったことが信じられないと言いました。
そして、「良性発作性頭位性めまい」がどのようにして起きてくるのかを説明し、これとストレートネックの関係もお話ししました。そして、既に治りかけの段階であり、現在は初回のめまいに対する不安感によって「気分不良」を訴えているにすぎないと説明しました。私が患者なら、こうしてMRIを撮影する医師は訴えてやると申し上げました。
私は、常々、このような医師はなにを考えているのだろうかと疑問をもっています。 少なくとも、めまいを訴えて来院された場合、どういった病気を念頭において診察しているのだろうかということです。今回のように、診察もせずに、直接MRIを撮影し、原因が分からないと、よく言ったものだと憤りすら感じました。こうしためまいは神経学的検査法だけで簡単に診断のつくはずです。それも、めまいを訴えている最中に受診されておられるわけです。このような段階で受診されれば、どなたが診察されても診断がつくはずです。確かに、こうした「良性発作性頭位性めまい」は、4,5日で大半は自然に治まってくるのが普通で、こうしためまいが治まった段階で受診されれば、眼振の検査でも異常を確認されないことも当然あります。こうした場合でも、めまいの原因が不明であるとは決して患者さん本人には告げてはならないはずです。こうした場合は、恐らく「良性発作性頭位性めまい」でしょう。もう治ってしまっているから、心配ないと言うべきです。
少なくとも、”めまいの原因が不明である”といった患者さんの不安をかき立てるような言動は慎むのが原則であるはずです。
こうしたことは、頭痛診療にも当てはまることです。頭痛で、脳神経外科科を受診されますと、必ず、MRIもしくはCTを撮影されますが、異常がない場合、慢性頭痛(緊張型頭痛もしくは片頭痛)の疑いがあるとすら説明せずに、「原因不明」と言われるようです。 こうした診療のあり方を誰が正していくのでしょうか?
確かに、以下のようなガイドラインは作成はされているようですが・・・