片頭痛と睡眠 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 不眠(睡眠障害)と慢性頭痛は互いに影響しあうことで、それぞれの疾患を悪化させています。すなわち睡眠障害は頭痛を悪化させ、頭痛は睡眠障害を悪化させます。また、頭痛の程度が重いほど(特に頭痛発作の頻度が重要)、睡眠障害を持つ確率が高く、逆の場合も同様です。睡眠障害をコントロールできないと、頭痛のコントロールも難しいため、双方の症状を同時に治療することが必要です。

 頭痛専門外来で片頭痛と診断された1,283名の患者(平均37.4歳)を対象に、頭痛と睡眠に関する調査が行われたことがあります。その結果、半数以上の片頭痛患者は、睡眠の導入と維持が困難なことを経験し、その多くが慢性的な睡眠不足でした。50%の片頭痛患者では睡眠障害が引き金になって頭痛発作が起こり、71%の片頭痛患者が頭痛のために夜間に目が覚めたそうです。発作が頻発する慢性の片頭痛患者では、発作が少ない片頭痛患者よりも睡眠時間が短く、睡眠のトラブルを多く有していました。また、睡眠が短時間(平均6時間)の患者は頭痛頻度が高く、痛みの程度も重症でした。

 片頭痛患者の約半数の方で、夜間の睡眠中に頭痛発作が起こったり、逆に頭痛が軽くなることを経験しています。睡眠不足や眠りすぎなど睡眠パターンが変化すると、片頭痛が起こりやすくなります。片頭痛のために目覚めた場合には、レム睡眠からの目覚めが多いようです。また、眠りすぎた時に起こる片頭痛は、深い睡眠が増えることと関係があります。


 睡眠中に起こる片頭痛は休日に起きることが多いため、「週末頭痛」とも呼ばれています。これは、平日よりも長い時間眠ることのほかに、精神的にストレスから解放されることや、飲酒も関係しています。過剰な睡眠やリラックス、アルコールが脳の血管を広げて、片頭痛が起こるのです。

 このような片頭痛の予防や治療には、睡眠の習慣を整えることが大切です。なるべく平日と休日の睡眠時間を、同じくらいの時間にします。それが難しければ、平日には積極的に仮眠をとって、睡眠時間を少しでも確保しましょう。

 片頭痛患者さんの中には、特定の状況下で発作が起こりやすいことを認識している人も多く見受けられます。そのような誘発因子を除去することは、片頭痛の予防につながることから、発作が起こる直前の状態を聴取することは有用です。最近の調査によると、片頭痛の誘発因子としては、「睡眠不足」71.1%、「頸・肩の凝り」67.1%、「旅行・外出」65.3%、「過労」52.9%、「目の疲れ」44.5%、「緊張」43.6%、「睡眠過多」27.6%などが挙げられました。また、チョコレートや赤ワインなどの特定の食品により頭痛が誘発されたとする人は極めて少数でした。
 このように、「睡眠不足」が最も多い誘因であることが、理解されると思います。


 睡眠の機能は,体内の恒常性機能の維持や記憶の定着などが主な目的とされます。頭痛との関連でいえば,特に深睡眠(デルタ波睡眠)やREM睡眠が不十分だと,セロトニンが十分補充されなくなり,片頭痛が慢性化する一つの要因になります。脳内セロトニン濃度自体は睡眠を剥奪してもすぐには変化しませんが,代謝物である5-HIAAが神経終末内に増えてきて,代謝の亢進が確認されるようになります。したがって慢性の睡眠不足はセロトニン代謝を促進し,長期になるとセロトニン枯渇につながる可能性があるのです。また、夜間のホルモン濃度変化などから,慢性片頭痛では視床下部不全を示唆する状態になっているとの報告があります。すなわち慢性片頭痛では視床下部がドパミン系の過剰活動の状態になっており,睡眠障害が重要な背景であるかもしれないのです。

 睡眠は多すぎても少なすぎても頭痛を悪化させます。睡眠中のセロトニンや他の神経伝達物質の増減が頭痛の発現や悪化に関与するようです。片頭痛の人が週末に寝すぎて頭痛が悪化することはよく知られています。他方,睡眠により頭痛が良くなり,睡眠が頭痛治療になるという人もいます。一部の頭痛患者さんは昼寝で頭痛が楽になる(特に思春期)といいますが,多くの成人患者さんでは昼寝は頭痛の引き金になるとされます。また昼寝を何度もすると夜の良好な睡眠が失われ,早朝頭痛につながるとされます。頭痛患者さんは午後3時過ぎの昼寝を制限し,夜間の睡眠に影響を及ぼさないようにするのが良いようです。”寝たり起きたりの時間を一定にする”睡眠統制と呼ばれる方法は,頭痛治療にも重要な役割を果たします。
 頭痛は睡眠障害の症状としても起こりますが,反対に,慢性頭痛患者には睡眠障害の頻度が増えてきます。頭痛との関係でもっとも重要なREM睡眠は一晩に4-6回起こり,夢と関係の深い睡眠であると言われています。片頭痛の発症はREM睡眠の回数と直接的な関係があるとされ,群発頭痛の場合はこの関係はより顕著です。夜間の片頭痛はREM睡眠中あるいは終了後,または私たちが翌朝すっきりと覚醒してリフレッシュしたと感じるのに必要な3-4度深睡眠(デルタ波睡眠)の時に起きるとされます。


 睡眠行動を改善するための簡単な方法を実行するだけで、変容性片頭痛(反復発作性片頭痛患者に発症し、数か月ないし数年かけてその頻度がほぼ毎日にまで進行し、治療が特に困難)を持つ女性の頭痛の頻度と強度が有意に減少することが、米国ノースカロライナ大学(UNC)神経学科の研究者らにより発表されました。

背景:変容性片頭痛は最も一般的な形態の慢性日常性頭痛で、患者が頭痛外来を受診する最も一般的な原因となっています。過去の研究から、変容性片頭痛女性のほぼ全例において、体力の回復をもたらさない睡眠と貧弱な睡眠習慣が認められています。しかし、ベッドのなかでテレビ鑑賞や読書をしないこと、就寝の 4 時間前までに夕食をすませるなどの睡眠行動変容(BSM)が変容性片頭痛患者に有益な影響をもたらすか否かを調べた研究はありませんでした。
対象と方法: UNC病院の頭痛外来で変容性片頭痛の治療を受けている女性46例を対象とし、うち23例をBSMの指導を受ける群にランダム化割り付けしました。BSM指導の内容は、(1)毎晩同じ時間に就寝する、(2)8時間の睡眠時間を確保する、(3)ベッドのなかでテレビ鑑賞、読書、音楽鑑賞をしない、(4)眠りに落ちるまでの時間を短縮するために視覚化テクニックを使用する、(5)就寝の4時間以上前に夕食をすませる、(6)就寝前 2 時間は飲料の摂取を制限する、(7)昼寝をしない、でした。
対照群の23例は、(1)夕食時間を一定にする、(2)1日2回2分間、肘の上部にあるつぼを指圧する、(3)3日間連続して飲料の摂取量を記録する、(4)毎朝 5 分間緩やかな身体活動を行う、(5)朝食に1食分の蛋白質を摂取する、などの偽の指示を受けました。被験女性全例が、標準化された日記に頭痛の状態を記録し、行動介入に加えて通常の頭痛治療を受けました。フォローアップ受診が 2 回行われ、1回目は行動介入の開始から6週間後でした。
結果:2回目の受診では、BSM群は頭痛の頻度が29%、強度が40%減少していました(ともに統計学的に有意)。また、ほぼ毎日起きていた変容性片頭痛が、反復発作性片頭痛に回復する確率が高く認められました。一方、対照群では全く改善が見られず、変容性片頭痛から反復発作性片頭痛に回復した者はいませんでした。 2 回目の受診後、対照群にBSM群と同じ指示が与えられました。3回目と4 回目(最後)の受診までに、新しい指示を受けた女性の43.6%が変容性片頭痛から反復発作性片頭痛に回復しました。
結論:睡眠習慣の有益な変化は、頭痛の頻度と重症度の軽減、変容性片頭痛から反復発作性片頭痛への回復と関連していることがわかりました。このことから、BSMは標準的な医療と組み合わせて使用すると、変容性片頭痛の軽減に有効なようです。


 頭痛と睡眠の関連性は以前から知られていますが、変容性片頭痛(片頭痛) 患者における特異な睡眠障害については、あまり知られていません。本試験では、変容性片頭痛(片頭痛) の女性患者147例を対象に、睡眠に関する聞き取り調査を行い、変容性片頭痛(片頭痛) の患者における非回復性睡眠(眠っても疲労が回復しない睡眠)の有病率と多様性が調べられました。主観的な眠りの質については、起床時の状態が「爽快感」であるか「疲労感」であるかで評価されました。
  その結果、変容性片頭痛(片頭痛) の患者では起床時に「爽快感」があったと報告した例はなく、患者の83.7%は起床時に「疲労感」を感じていました。このように変容性片頭痛(片頭痛) の患者においては、非回復性睡眠を有する割合が非常に高く、睡眠に対する不満を訴える患者の割合も同様に高いことが示されました。


 10歳代は身体の成長に加え,学業やクラブ活動,友人関係など多忙なうえに多くのストレスのかかる時期です。睡眠不足も相まって,慢性頭痛に悩まされている若者は少なくありません。今回,ノルウェー・オスロ大学の研究グループにより,13~18歳の中高生約6,000人を対象に行った調査結果が発表されました。それによると,10歳代では不健康な生活習慣と慢性頭痛が関連しており,過体重,運動不足,喫煙の3要素すべてを満たした群では,すべての要素がない群と比べて慢性頭痛リスクが3.4倍でした。
方法・対象:Nord-Trøndelag Health Study(Helseundesøkelsen I Nord-Trøndelag;HUNT)の一部として実施されました。同調査では,1995年8月~97年6月にヌール・トロンデラーグ県在住の中高生5,847人を対象に,肺活量や身長,体重などとともに,頭痛聞き取り調査や学校外での運動頻度,喫煙に関連したアンケートを実施。慢性頭痛は聞き取りを行った看護師によって片頭痛,緊張型頭痛,分類不能頭痛の3つに分けられました。各情報が集積できた5,588人(男子2,680人,女子2,908人)を対象に,「学校外での運動頻度が週2回以下」「喫煙があり」「過体重もしくは肥満」がすべて当てはまる場合を生活習慣不良群,2つ当てはまる場合を生活習慣やや不良群,1つ当てはまる場合を生活習慣中等度群,すべて当てはまらない場合を生活習慣良好群とし,慢性頭痛との関連を分析しました。
結果:5,588人のうち過体重は891人(男子421人,女子470人),低運動頻度は1,717人(同700人,1,017人),喫煙1,069人(同440人,629人)で,慢性頭痛を訴えているのは1,601人(同554人,1,047人)。頭痛のタイプでは緊張型頭痛が950人で最多でした。 慢性頭痛の発症率は,良好群の24.5%に対して不良群では54.7%で,3.4倍のリスク上昇が認められました(オッズ比3.4,95%CI 2.2~5.2,P<0.0001)。中等度群のオッズ比は1.3(95%CI 1.1~1.4),やや不良群は1.8(同1.5~2.1)となっています。 一方,生活習慣項目別の慢性頭痛リスクを見ますと,過体重はオッズ比1.4(95%CI 1.2~1.6,P<0.0001),低運動頻度は1.2(同1.1~1.4,P=0.002),喫煙は1.5(同1.3~1.7,P<0.0001)。過体重と喫煙は性差が認められなかったものの,低運動頻度は女子で有意差が消失していました。また,過体重と片頭痛および緊張型頭痛,低運動頻度と緊張型頭痛,喫煙とすべての分類の頭痛で有意な相関が認められました。
結論:生活習慣が頭痛に関連することを,若年者でも示すことができました。さらに今回の結果は,ライフスタイルを改善することで頭痛が予防できることを強く示しています。


 小児およびティーンエイジャーの頻発性の頭痛(慢性頭痛)と睡眠障害にも、成人同様に密接な関わりがあるようです。慢性連日性(日常性)頭痛をもつ子供・少年の3分の2が、睡眠障害(特に入眠の遅れ)を経験していることが米カリフォルニア州で開催された幼少年睡眠障害会議で報告されました。6~17歳の子供・少年を100人ずつ、2つのグループに分けて比較した結果、慢性連日性(日常性)頭痛(1カ月に15日以上頭痛があり、それが3カ月以上続く場合と定義)の患児100人では、約3分の2の患児に睡眠障害がありました。睡眠障害としては、いわゆる不眠症にみられるような、入眠遅延や夜間・早朝に何度も覚醒するタイプが多かったそうです。一方、反復発作性頭痛(発生頻度は慢性より少なく、時折起こるだけ)の患児100人における睡眠障害は約5分の1の患児にみられ、明らかに慢性連日性(日常性)頭痛の患児よりも少数でした。米国では小児の10~20%に反復発作性頭痛が見られ、慢性連日性(日常性)頭痛は女児の4%、男児の2%に発症するそうです。慢性連日性(日常性)頭痛の多くは、先行する反復発作性頭痛を繰り返すうちに慢性化しているため、反復発作性頭痛を有する患者の睡眠障害に対応することで、治療困難な慢性連日性(日常性)頭痛への移行を避けることができるかもしれません。

参考:一般的には慢性連日性(日常性)頭痛は主に「変容型片頭痛」と「慢性緊張型頭痛」です。小児の慢性連日性(日常性)頭痛では90%以上が変容型片頭痛といわれています。一方、小児の反復発作性頭痛では「片頭痛」が50%、「反復発作性緊張型頭痛」が10%強です。このことから、片頭痛の方が緊張型頭痛よりも慢性連日性(日常性)頭痛へ移行しやすいようです。
 さらに慢性連日性頭痛(このうち小児では90%以上が変容型 片頭痛 )をもつ子供の多くが、睡眠障害、特に入眠の遅れを経験していることから、正しい睡眠習慣の確立は必須であると言えます。


以上、片頭痛と睡眠の関係を、ざっとみてきましたが、片頭痛治療・予防のために、如何に、正しい睡眠習慣が大切か理解して頂けたかと思います。


 睡眠習慣の改善は片頭痛改善につながります。


1.眠る時間と起きる時間を一定にする
2.自分に合った睡眠時間を取る(ふつう成人で6~8時間)
3.週末に夜更かし、寝坊をしない。
4.よく寝られなかったとしても、翌朝寝坊したり、うたた寝をしない。
5.寝付きにくければカフェイン摂取量をチェックする。
6.アルコールの飲みすぎも睡眠を妨げます。
7.定期的な運動は安眠を誘います。ただし夜遅く運動をしないこと。