片頭痛の予防薬 2013/02/07 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 たいていの片頭痛患者さんは抑制治療だけで済むのですが、人によって、頭痛の回数が多い、抑制薬を使いすぎる、抑制薬が効かない、頭痛の回数を減らしたいという患者さんに対しては、予防薬を併用します。この予防薬としては


  1.ベータ遮断薬
  2.カルシウム拮抗薬
  3.カルデサルタン
  4.抗うつ薬
  5.抗てんかん薬
  6.ビタミン類
  7.ボツリヌス毒素


 等々の薬剤が使われています。
 しかし、これらの薬剤が、すべての患者さんに効くというわけではありません。
 予防治療の有効率は決して高いものではありません。
 ほとんどの薬剤が、有効率は30~40%、すなわち10人中3~4人しか効きません。しかし、個人差が激しいので、薬によって有効率は異なります。効かなかった場合には、他の薬に変えてまた、2~3カ月様子をみる、という気長な対応が必要です。
また、効果を確認できるまでの期間も短くないのです。
 予防治療に使われるどの薬剤も、効果を発揮するまでには4週間くらいはかかります。
 はじめの2週間くらいはまったく効かないのが普通です。3~4週めになっていくらか頭痛の回数が減っていると感じたら、効果があったと考えてよいでしょう。なかには、2カ月めになってやっと効果がはっきりしてくることもあります。
 こういった理由から、多くの患者さんは、予防薬の効果が現れるまでの期間が長く、極めて緩やかな効き方しかしません。
 確かに、数年間にわたって、1種類ずつ処方されておられる場合もあるようですが、このような方式は、あくまでも偉い先生方がされた場合のことで、じっと我慢して服用され
ておられる方々は少ないのではないでしょうか?
 ところが、頭痛専門医が1名しかいない和歌山県下では、このような方式は全くコンセンサスは得られず、大半の方々は途中で治療をあきらめ、ひいては頭痛患者さんが医療機関を敬遠される元凶になっているものと思われます。


 最近経験した、47才の女性ですが、9才頃から頭痛があったということでしたが、29才の時に出産され、この後から頭痛発作が酷くなったそうで、31才を超えてからは週に1回は寝込むほどの激しい発作を繰り返され、近くの「頭痛外来」で診てもらっておられたということです。
 ありとあらゆる予防薬を半年おきに投与され、さらにトリプタン製剤の「内服薬」を一つずつ試されたようですが、全く予防薬の効果はなく、どのトリプタン製剤も効果がなく、現在は、イミグランの点鼻薬を使って、2日間寝込んで、発作が治まるのをじっと耐えておられたようです。
 このため、これまでMRIでは異常なかったとのことでした(また、甲状腺機能・貧血はなく、副鼻腔炎もなかった)ので、「頸椎レントゲン検査」をさせて頂きました。その結果「ストレートネック」が確認されました。そこで、改めて、さらに問診を追加致しました。
 その結果、ストレートネックを来す原因として、「姿勢の問題・・猫背」「歯のかみ合わせの問題」さらに「足の問題・・扁平足・浮き足」の3つの問題が明らかになりました。
 頸部の筋肉部分には多くの箇所に圧痛点が確認されました。
 そこで、このような3つの問題を抱えている以上、絶えず「片頭痛を誘発させる刺激」が3カ所から送られているため、通常の「トリプタン製剤」では頭痛発作そのものを「抑制」できないし、予防薬自体効果がなかったと、申し上げました。今後、これらの原因を、一つずつ是正しない限り、問題は解決しないと説明し、それぞれの解決策を説明申し上げました。


 このように、頭痛発作の多い方は、諸々のチェックは当然必要ですが、予防薬を併用を考える場合、必ず、ストレートネックの有無を確認し、仮にあれば、こちらの原因を追及した上で、これらの除去を同時に行っていく必要があると考えます。


 最近、各種の薬剤が保険適応になって参りました。それは


2000年に カルシウム拮抗薬のロメリジン
2011年に 抗てんかん薬のバルプロ酸
2012年に ベータ遮断薬 プロプラノロール
       抗うつ薬 アミトリプチリン


 が次々の保険で使えるようになって参りました。

ところが、このように現段階では、4種類が保険で認められていますが、これをどのように使って行くのかは明確にされておりません。
 最初の述べましたように、効き方が極めて遅く、個人個人効果もまちまちな点、有効率が低いことが従来から指摘されております。
 日本神経学会・日本頭痛学会が作成しているガイドラインを調べても、個々の薬剤の推奨度は記載されていますが、あくまでも1種類ずつ使うのが原則のようですが、この辺が明確に記されてはいないようです。きわめて曖昧のように思われます。
 最近の朝日新聞の記事では(平成25年3月26日の記事)では、ロメリジンを服用していて一時は軽減していたのが、再度増悪したためバルブロ酸を追加したら軽減されたという記事が掲載されておりました。
 こうした点は医師の裁量に任されているのでしょうか?


 片頭痛ではないのですが、私が大阪から田辺に来た当時、某総合病院の神経内科を標榜する医師(実は、精神科医)がパーキンソン病の患者さんに対して、どのようなステージにあっても”一律に”5,6種類の「抗パーキンソン病薬と称されるもの」を同時に処方されておりました。このような患者さんが問題を抱えて当医院を受診された際に、困惑させられる場面に多々遭遇させられ苦労した経験があります。
 この先生の論法は、保険で認められているのだから使って何が悪いか、ということでした。こうすれば病院も儲かるのだから文句はないだろうとの考え方でした。

 今後、このような考え方で、訳の分からない「一般開業医」がこのような使い方をされないとも限らないと思っております。ここが一番問題になるところです。


 しかしです。最近、読者の方から、予防薬の「多剤併用療法」をされる先生がいらっしゃることを教えられました。それは、鹿児島の田村正年先生です。詳細を述べますと先生の著作権に抵触しますので、詳しくは記載できませんが、私は極めて興味を持ち、先生の考えをお伺い致しました。その効果も早くでて、その効果が実感できるとのことでした。
 私が関心を持った理由は、これまでガイドラインに従って、1種類ずつ最低4カ月は使いながら経過を観察し、だめなら別のものに変更し4カ月、このようにして次々に変更していくのですが、この途中で「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」に移行させてしまったり、途中で逃げられたりするとか、苦い経験を多々したからです。
 最近では、「セロトニン生活」「ストレートネックの是正」を勧めた上で、このような予防薬の使い方を行っていますが、患者さんの中には「ガードマン」で夜勤ばかりの生活を強いられ、少なくとも「セロトニン生活」から程遠い方々もおられ、一筋縄ではいかない方々を十数名抱えておりました。このような方々に対して、田村先生のホームページをご覧頂いて、このように「予防薬の多剤併用療法」があることを、まず理解して頂き、あくまでも「患者さんの了承を得た」上で、併用療法を田村先生の方式に準拠した形で、これまで試験的に行っている最中です。私の方式は、田村先生のような厳格な基準では行うことは不可能ですが、最低「抗てんかん薬」「抗うつ薬」「ベータ遮断薬」の3種類を併用し、2週間毎に受診して頂いて、「抗てんかん薬」の量を増量していくかどうかを決めております。これに高血圧の合併があればカルデサルタンを追加します。
 また、患者さんの要望があれば、ロメリジンも追加することもありますが、「3剤の併用」を原則としております。

 このようにしますと、田村先生の言われますように、2週間後には、ほぼ全員発作回数は半減して来ており、確かにトリプタン製剤の切れ味も鋭くなっていくのが実感されます。 この併用療法を行う上で、必要最小限度の注意点として、田村先生が指摘されますように「水分補給」を厳重にして頂くように指導しております。
 問題は、このように良好な経過を辿っておられる方々に対して、今後どのように減量し、さらに中止までもっていくのかは、今後とも田村先生のホームページに常に注目しながら、分からない点があれば直接相談させて頂く予定にしております。
 これまで9名の方々に、この方式で試させて頂いておりますが、今の所経過は全例良好です。
 ただ、問題は和歌山県は保険請求上で極めて厳しい県ですので、今後どのような処遇を受けるかを心配しているところです。
 また、最初に述べたような「パーキンソン病」に対する処方のように、訳の分からない方が「金儲け主義」でこの方式が乱用・悪用されないことを祈るばかりです。


 以上のように、予防薬の効果が余りはかばかしくない理由として考えられる点は、片頭痛が生活習慣病であり、その環境因子として「ミトコンドリア」「セロトニン」「体の歪み(ストレートネック)」の3つの要因を是正することを同時に行わなかったためと考えております。


 改めて、「生活習慣の改善」が不可欠であると考えております。