高齢発症の片頭痛 2013/02/22 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

症例  64 歳 女性


 40 歳頃から、頭痛が出現(20 ~ 30 歳代は全く頭痛を自覚することはありませんでした。)
 1~3カ月に1回くらいの頻度で起こり、1回の発作は2~3日間は持続し、寝込む程ではないが、出来れば横になっていたい状態で、嘔吐はしないが吐き気があり、光、匂い、音の過敏症状があり、頭痛発作当日は、拍動性に痛みを、いつも右側に感じていました。
 本人の言われるには、寒さと眼の疲れがよくないということでした。
 頭痛が出現する前には、異様に肩こりを酷く感じるそうです。
 仕事は、看護師で、以前は、某総合病院に勤務しており、勤務時代は脳神経外科にも配置され、そこでの先生に診てもらい「緊張型頭痛」と診断されました。これまでは頭痛の際にはイブ、セデス、ポンタール、ボルタレンを使用し、ボルタレンが一番効いていたようです。家族歴では、祖母が、若い頃から寝込む程の激しい頭痛があり、晩年は死ぬまで、毎日のように頭痛があって、毎日鎮痛薬を服用されていたそうです。
 今回、受診したきっかけは、64 歳にもなっても、なお頭痛が起きるため、祖母のように毎日、頭痛が起きるようになるのではないか、出来れば起きなくなればと、考え来院されました。
 これまで、職業柄、姿勢には注意しておられたようです。歯のかみ合わせが悪くいつも片方の歯で噛んでおられたということでした。
 神経学的所見では、何も問題はありませんでした。
 頭部CTでも異常はありませんでした。
 頸椎レントゲン所見では、ストレートネックを呈し、軸は前に倒れていました。

 発作時の対応として、ボルタレンが効いているため、発作初期に服用してもらうこととしました。歯のかみ合わせの悪さに注目し、内田信友先生の提唱されるエクササイズを毎日 15 分間ずつ行ってもらい、テンプレートを装着してもらい、経過を観察しました。
 
 半年後には、頭痛の頻度は明らかに減少し、その後半年経過した時点では、頭痛は消失しました。

 この例は、家族歴はありますが、発症年齢が 40 歳と極めて遅いのが特徴でした。

 この方の場合、歯のかみ合わせの悪さに注目し、内田信友先生の提唱される「エクササイズ」「テンプレート療法」を行うことによって、頭痛回数の減少を認め、1年しか経過を見ていませんが、明らかに発作回数自体は減少しています。
 しかし、年齢が 65 歳になっており、自然経過で、発作回数の減少したのかもしれません。



症例2 40歳 女性


 当医院で長年看護師として一緒に仕事をしている40歳の方です。20年来、肩こりがひどく時に、緊張型頭痛と診断するしかない頭痛を訴えておられ、当時の頸椎レントゲン検査ではストレートネックを当時から呈しておりました。
 この方の12歳の娘さんも頭痛を訴えるため診せていただきましたが、この娘さんは問診から明らかに片頭痛と診断できる頭痛でした。
 看護師さんのお母さんは、若い頃から片頭痛を持っておられるようでした。

 つい先日、一緒に勤務の最中に、左目がおかしいと訴えはじめ、当初何を訴えているのか理解できなかったのですが、様子をみている内に、まさしく閃輝暗点そのもので、これが治まると(時間にして30分前後)左側に拍動性の頭痛が出現して来ました。本人曰く、これまで経験したことのない激しい頭痛とのことでした。このため、イミグラン錠の後発品を服用して頂きました。これで2時間後に頭痛はきれいに消失しました。
 こうしてみますと、今回の頭痛発作は、間違いなく「片頭痛」と診断してよさそうでした。改めて、頸椎レントゲン検査を行ってみたところ、ストレートネックは20年前と同様にみられ、前方への傾斜の程度も増強していました。

 20年来、肩こりがあり、時に緊張型頭痛のような頭痛が出現していた状態から、40歳になって初めて、典型的な閃輝暗点という前兆を伴う片頭痛を発症された興味深い症例を身近に経験させて頂きました。以前からストレートネックは確認されており、片頭痛の発症と何らかの因果関係があるのか極めて興味深いところです。
 今後、ストレートネックを改善させることによって、片頭痛の起こる頻度がどのようになっていくのかを経過観察の予定です。
 今回、イミグランの後発品を直接試してみました。今回は確かに、効いたような印象を持ちました。



 このように、発症当初は、症候学的に緊張型頭痛としか診断しようがない方々が、数年後、35歳を過ぎてから初めて”片頭痛”を経験されるケースがみられ、これらの方々は全て、頸椎レントゲン検査でストレートネックを呈しておられます。

 片頭痛の発症年齢は、大半が 30 歳以下という報告が多く、寺本純先生の報告では、41 歳以上の発症は .3.2 % しかなかったと述べています。
 いずれにしても、40 歳以降発症の片頭痛は、後天的な要因(特に、ストレートネックが関与)から緊張型頭痛を発症させ、これに「食生活の問題」から「ミトコンドリアの働き」を悪くさせ、「脳内セロトニン」の低下から片頭痛へと発症していくというのを示唆させ、まさしく「高齢発症の片頭痛」は、慢性頭痛から片頭痛へとどのように移行していくのかを示し、まさしく片頭痛が「生活習慣病」であることを示すものと思われます。



参考文献


寺本純 臨床頭痛学 診断と治療社