セロトニンとストレートネックの相似性 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

これまでOCNのブログ「頭医者のつぶやき」に掲載していたものです。
アクセス数の多かったものを、ここに再度掲載させて頂きます。


頸性神経筋症候群はストレートネックが長期間持続した状態とされています。そして、このために引き起こされる病態としては、以下のようなものが挙げられています。


   頭痛・・緊張型頭痛、片頭痛の一部
   めまい
   過敏性腸症候群
   ムチウチ
   うつ
   パニック障害
   更年期障害
   ドライアイ
   多汗症
   機能性嚥下障害
   機能性胃腸症
   血圧不安定
   慢性疲労症候群
   自律神経失調症
   VDT症候群


一方、これまでも述べていますように、脳内セロトニンの働きは以下のような5つがあ
るとされています。
  

  その1:大脳に働きかけて覚醒の状態を調整する。
  その2:心の領域に働きかけて、心のバランスに関係する  

  その3:痛みの調節をする。
  その4:自律神経への働きに関係する。
  その5:姿勢筋に緊張を与える。


 セロトニンとストレートネックには、いろいろな点で相似性が見られます。
 これまでも記事にした点に関して改めて述べていきます。


1.「痛みを調節する」働き


まず、片頭痛患者さんは、生まれつき「セロトニン神経」の働きが悪い「頭痛体質」
が備わっているとされています。そして、このために一寸したことで「痛みを感じやすくなり」 容易に脳血管が拡張しやすくなっていて、「頭痛発作」を起こしやすいとされています。この点から、脳が興奮しやすく、「脳過敏」の状態にあるとされています。
 これを、てんかんとの関連性から述べる立場をとられる先生もおられるようです。

 一方、ストレートネックが存在すれば、次のようなことが考えられます。首の後ろの大きな筋肉には「僧帽筋」「頭板状筋」「頭半棘筋」という3つがあり、 「頭半棘筋」は、その一番内側、深部にある筋肉です。ストレートネックがあれば、「頭半棘筋」が硬くなる、つまり凝り固まります。この筋肉を大後頭神経が貫いていて、その部分が、首の凝りによって圧迫されることで、大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経核に伝わります。このため、ストレートネックが存在する限り、この刺激が、絶えず三叉神経核に送られ続け、中枢の感受性が変化し、”中枢感作症候群”となって、「脳の興奮性」を生じさせるものと考えられます。(以下、図1)


ストレートネック→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓                ↓
↓       脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓                ↓
↓       中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓                ↓
↓        脳の過敏性、興奮性の増大、片頭痛の慢性化
↓     
自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頚性神経筋症候群
                              (慢性頭痛)


2.片頭痛の慢性化に関して


 これまで、ストレスや睡眠不足など諸々の原因で「慢性的にセロトニンが不足」してきますと、「痛みに対する調節」がうまくいかなくなるために、痛みを誘発しやすくなり、これが片頭痛の慢性化につながるとされています。
一方、ストレートネックが長期間持続しますと、図1に示されるように、片頭痛の慢性化を助長させることが推測されます。

3.自律神経機能との関連について

 これまで、セロトニンは「自律神経への働きに関係する」とされております。
 一方、ストレートネックが長期間、放置されて引き起こされる病態が「頚性神経筋症候群」です。結果として、さまざまな自律神経失調症状が引き起こされ、片頭痛の場合には、頭痛発作が「天気」によって左右されたり、光が異様に眩しく感じられたり、めまいが頭痛発作と関係なく出現したり、不眠、不安障害、パニック障害やうつ状態にまで発展することもあります。
自律神経と背骨は深い関係にあります。背骨の調節を行い機能を正常にすることによって、自律神経のバランスが整い、片頭痛の改善が期待できます。特に首の上部(上部頚椎)が重要で、上部頚椎に問題が見られることが多いようです。
 ストレートネックが存在しますと、体中至る所に様々な緊張が不自然な歪みや血行不良を起こします。こうした機能低下の引き金となっている重要な筋肉があります。
 それが胸鎖乳突筋と呼ばれる筋肉です。ちょうど頭の付け根(耳の後ろあたり)から、首筋(くびすじ)、鎖骨にかけて首の両側に付いています。
 この筋肉の緊張は頭痛やめまい、耳鳴り、難聴などの引き金になる原因筋と考えられ、おおかた自律神経を司る筋肉とみるカイロプラクターもいるほどです。
 頭痛・片頭痛に悩む方の多くは、この筋肉の影響によって、首のいたるところに突っ張りやコリ・鈍痛を感じるのが特徴でもあります。(一度、首や肩を色々と押してみてください。痛みやコリを感じる部分があるはずです)
 そういったことから、この胸鎖乳突筋の緊張を和らげることが、頭痛・片頭痛のひとつの改善ポイントになってきます。

4.姿勢との関連について


 先日も述べましたように「セロトニン」には5つの機能があり、このなかで、「よい姿勢の維持」という機能があります。それは、「抗重力筋」につながる運動神経に直接刺激を与えることができる為、姿勢がよくなる、ということです。。
(抗重力筋…立った姿勢を維持する為に使われる筋肉の事。首・お腹・背中・脚の筋肉など。)
 このように、セロトニンと抗重力筋には深い関係があります。抗重力筋とは、首筋、背骨の周囲、下肢の筋肉、まぶた、顔面の筋肉等です。眠っているときはこれらの筋肉は休んでいますが、人が起きているときには、これらの筋肉は常に働いています。
 まぶたや顔面に筋肉は、顔にしまりを与えます。首筋や背骨の筋肉は姿勢を正しく保つために大切な役割をしています。
 セロトニンは、首筋、背骨の周囲、下肢の筋肉、まぶた、顔面の筋肉等筋肉に対し、運動神経のレベルを上げる働きをしています。ですから、セロトニンが活性化されているときには、背筋がピンとしていて、顔にもハリがあるのです

 実は、この「抗重力筋」、ラットを用いた動物実験では、抗重力筋に関わる脳の部位を電気刺激しますと、 脳内の「セロトニン(5HT)」という精神を安定させるホルモンの発火を引き起こすことが明らかになっています。
 人の脳内のセロトニン量の測定方法に関しましては、まだ一定の手法が確立しているとはいえませんが、少なくとも動物実験の結果から、「抗重力筋」と「セロトニン」には密接な関係があると考えられます。

 このような理由が直接関係しているかどうかは分かりませんが、実際、うつの方には、猫背気味になっている方々が多いように感じます。
 うつだから猫背になるのか?または猫背のようにしているから気分がうつ気味になっていくのか?これはどちらが先に引き起こされる現象かは正確には分かりませんが・・・、

 この点から推測されることは、セロトニン不足により、ストレートネックが引き起こされる可能性です。逆に、ストレートネックのため、セロトニン不足を助長しているのかもしれません。(ニワトリが先か、タマゴが先か、不明ですが・・)

 特に、小児片頭痛の場合にストレートネックが多いことが指摘されており、これも「生まれつき、セロトニン神経の働きの悪さ」による「セロトニン不足」が関与しているのかもしれません。
 この場合も、どちらが原因で、どちらが結果なのかは、症例毎に、点検する必要があると考えます。
 頭痛研究者は、片頭痛患者は「生まれつきセロトニン神経の機能が悪い」と主張されるにも関わらず、「頭痛とストレートネック」はエビデンスなしされます。この点は、明らかに矛盾しており、このような観点から、「頭痛とストレートネック」が果たして「エビデンスなし」と結論づけるだけのデータの集積が必要不可欠だろうと考えます。


5.「うつ」との関連性


 うつ病に伴う片頭痛の原因としては、脳内神経伝達物質セロトニンが減少することによって引き起こされると考えられています。
 うつ病に伴う片頭痛は、通常の片頭痛と比較して特徴があります。
 通常、片頭痛は突然発生し吐き気などを伴いますが、うつ病に伴う片頭痛は、朝起きた時からすでに頭痛が起きており、それが持続するという点が特徴的です。
 うつ病に伴う片頭痛の場合、うつ病の治療を行うことが片頭痛の治療にもつながります。 なお、片頭痛によりさらに気分が落ち込むようだと、さらに片頭痛がひどくなるといった悪循環に陥りますので、早期のうつ病治療が重要になります。
 この点は、セロトニンの働きの「その2:心の領域に働きかけて、意欲、心のバランスに関係する。(うつ病に関係)」が挙げられます。
 また、長年首と諸々の病気について研究される先生は、ストレートネックが長期間持続することにより、「頸性うつ」を併発してくることを指摘されます。


6.更年期障害につぃて


  動悸、のぼせ、耳鳴り、眠れない、イライラする・・
 中高年の女性に多いとされるさまざまな身体の異常とそれに伴う情緒不安定は、「更年期障害」と言われています。ホルモンバランスの崩れによって起こるとされ、女性ホルモンを補う治療方法が一般的に行われております。
 また、本来閉経期前後の女性に多いはずの更年期障害が、若い年代に起こる若年性更年期障害、男性にも似たような症状が出る男性更年期障害があると言っている先生もいます。
 以上のように、40歳代、50歳代以降の女性に不定愁訴があると、ほとんどが更年期障害と診断されるようです。血液検査を行って、女性ホルモンの1つである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が著しく減少していることが確認された場合は、薬でエストロゲンを補うホルモン補充療法が有効とされています。この年代の女性で、エストロゲンが減少しているのは当たり前ともいえます。
(エストロゲンとセロトニンの量は関連があると、従来から指摘されています)
 ところがホルモン補充療法を行っても症状が改善されない人も少なくないのです。私の知人のベテランの産婦人科医師の経験では、更年期障害と診断された方でも、ホルモン補充療法で治せるのは4割程度だと言っています。残り6割の人の不調は別の原因で生じているそうです。このような場合は、ストレートネックを疑ってみる必要があるのです。
 もし、婦人科で更年期障害の治療を受けても症状がよくならないときは、首のこりがないかをチェックし、異常があれば頸部の筋肉の緊張を緩和させる治療を行うべきです。
 首の筋肉の異常を治療すると、不定愁訴は霧散して、更年期障害といわれていた症状はホルモンの治療なしで完治するとされております。
 更年期障害の片頭痛に関する臨床研究は、ある先生が行われておりますが、これらの成績は、上のような考え方を裏付けるものと思われます。 


 以上のように概観しても、セロトニンとストレートネックは、かなりオーバーラップしている部分が極めて多いことが理解して頂けるかと思います。
 現在、頭痛研究者の間では、頭痛とストレートネックは全くエビデンスなしと結論づけられておりますが、果たしてどうなのでしょうか?
 私は、このような状況を鑑みて、現段階では、片頭痛治療を行う場合、トリプタン製剤・予防薬の服用も大切ではありますが、「セロトニン・ストレートネック」の関与を無視することなく、並行して念頭におくべき事項と考えます。