悲しみを乗り越えて輝けば 伝説の中に眠ってた永遠の愛が生まれる | 君を殺しても

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THE NOSTRADAMNZ Lucci

続きまして、ルシファーです。


早速2キロほど体重が減ったのですごいと褒めていただきたい。

そして、前回は書籍「ウルトラマンが泣いている」を通して感じたことと、シンウルトラマンのデザインに流れる成田享さんの想いについて書きました。

で、庵野さんが「シン」と付ける場合はいくつかの意味を込めているという定説があり、少なくとも新で真で神であることは、既に公開されている「シン・ゴジラ」を観ると伝わってくるところだと思います。

シンゴジラについてはこちらで語っています。

スタンダード化して且つバリエーションが広がったコンテンツって、原点回帰して、更にそこから拡げて、また原点回帰して、という繰り返しをすることが結構あります。

シンゴジラはまさしくそうした原点回帰モノというか、リブート作品であることは確かなのだけど、ゴジラについては以前にも「今だったら」的なものは作られています。
1984年に公開された「ゴジラ」です。

以降の平成ゴジラシリーズはこれに準拠するかたちで連作されています。
SF的な兵器が出てきたり、1954年の一作目のゴジラは劇中でも踏まえられていたり、シンゴジラよりはリアリティラインは低いものの、ゴジラと戦うのは政府や自衛隊だったり、核兵器の使用についての悶着があったりと、シンゴジラと重なる部分もあります。
とはいえ、核使用を踏み止まったシンゴジラに対して、こちらの1984年版は核兵器使っちゃうんですけどね。

ということは、シンゴジラであれだけ楽しませてくれた庵野さんが作るシンウルトラマンをより楽しむためには、平成以降にウルトラマンで行われたリブートの系譜を追っていくとよいのでは!という発想になるわけです。

続々と紹介します。

◾️ウルトラマンパワード

前回もデザインのところで少し触れましたが、1993年リリースのウルトラマンパワードは、実は初代ウルトラマンのハリウッドリメイク作品だったりします。

その前にぼくの好きなウルトラマングレートがオーストラリアで制作されたのだけど、これがアメリカでややウケだったことを受けて、ウルトラマンはハリウッドデビューを果たしたのです。
が、残念ながらアメリカでのテレビ放映の結果は惨敗だったそうです。

ウルトラマンは、仏教圏≒アジアでは受け入れられやすく、キリスト教圏≒欧米では理解されない傾向があります。
アメコミヒーローと比較すると解る通り、ヒーロー像の在り方が違うのだと思います。
アメコミヒーローって、コスチュームやアーマーを着ていたり、遺伝子異常だったり、ヒーローがなぜヒーローになったのかがビジュアルや設定で明確なことが多いのだけど、ウルトラマンはあれがコスチュームなのか皮膚なのかよくわからないし、巨大であることもよくわからないそうです。
それは日本人にもよくわからないはずなのだけど、超越的存在のイメージがあって助けにくることを受け入れられてしまうんですよね。

たぶんなんですけど、日本人やタイには仏像とかの文化があるじゃないですか。
仏像とかって異形の存在ですよね。仏教じゃなくてもヒンドゥー教の神々って具体的にビジュアルイメージはあるけど異形の存在ですよね。


対して、キリスト教の神ヤハウェは、基本的に姿自体が描かれることはなくて、ヒトの形をしたキリストやマリアが崇拝の対象になりますよね。
ちょっと変わり種で天使ですが、あれらも多くは羽があるだけでヒトの形をしています。
ギリシア神話の神々も、基本的にヒトの形をしています。


異形の存在は、崇拝対象というよりは悪魔や怪物を表したりするイメージがあります。

そのへんの、「超越的な存在」に対する意識の違いみたいなものが、キャラクタービジネスにおいてのイケるか否かにも少なからず影響するように思いますね。

あとは、日本に比べて暴力描写への規制が厳しそうで、パワードの戦いっぷりは非常に鈍重というか、殴る蹴るを規制されてるので基本的には「押す」という戦闘スタイルをとります。
なんだそれっていう。
ファンの間では「パワード押し」として愛されています。

特筆すべきは、デザインや美術のスタッフとして、平成ガメラシリーズや、庵野さんのエヴァやシンゴジラに参加していた樋口真嗣さんと前田真広さんが参加していることですね。

樋口真嗣さんはシンゴジラでは特技監督を、シンウルトラマンでは監督を務められるそうです。
シンゴジラの特撮は、ハリウッドゴジラとかのそれとはちょっと風合いが違って、古き良き特撮の味と、CGやモーションキャプチャーといった新しめの技術がいい感じに融合した新しい感触になっていて、特撮シーンだけでも何度も見返したくなるような魅力があったので、シンウルトラマンではどうなるのかすごく楽しみです。

パワードの制作のときは、第1話のハリウッド側のミニチュアセットを見てクオリティーの低さにびっくりして、急いで現地に向かってミニチュア造りを自らの手でやり直したというエピソードがあるそうです。

これが第一話の戦闘シーンのセット。
子供の頃観てたときは別になんら気にしてなかったけど、よく見るとディテールがだいぶ省略されていて、灯りのつき方とかも、ただちょうちんのようにライトを内側にひとつ入れて、ぼんぼりにしてるだけですよね。


こちらが、終盤のエピソードに使われた修正後のセット。
同じような夜のシチュエーションだけど、ミニチュアひとつひとつが全然細かくなってるのがわかると思います。
窓の灯りも、ちゃんとひとつひとつ点いてたり消えてたり、ビルの中でヒトが活動してるように見せています。

ミニチュアセットに対するこだわり方だけで、日米にこれだけ意識の差があるのは面白いですよね。

そういえば、特撮の神様と言われた円谷英二さんは戦争中にプロパガンダ映像なんかを撮って技術を磨いたらしいのだけど、アメリカ人からすると特撮がリアル過ぎて現実と見分けがつかなかったようで「お前、どこから忍び込んでこのアングルからアメリカ領を撮影したんだ?」と米軍につめよられたことがあるとか。
かように、日本の特撮技術は本当は世界に誇れるものなんですけどね。
本当は、アニメやポケモンやヴィジュアル系に負けないクールジャパンコンテンツになり得たのに、オリンピック関連の見せ物の中にウルトラマンの姿が無いのは切ないです。

前田真広さんは、シンゴジラのイメージデザインをされた方です。

ウルトラマンパワードではモンスターデザインを手がけ、成田亨さんが作り出した初代ウルトラマンの怪獣を、更にシャープで生物的で洗練されたデザインにリファインしています。


このデザイン変更について、前回紹介した書籍ではディスられてしまっていたのだけど、ウルトラマンパワードの怪獣のデザインはファンの間ではかなり根強く評価されているように思います。

初代の怪獣って、特にバルタン星人とゼットンは現在に至るまで何度も派生デザインの怪獣やバリエーションが多々登場してるのだけど、フラットに見ても頭ひとつ抜けたセンスをしてるとぼくは思います。


今のところ前田真広さんがシンウルトラマンに参加するのかはわからないのだけど、例えばまた怪獣のデザインとかで参加してくれていたら、デザインに関してはもう安心して最高だなという感じになりますね。

というように、商業的には失敗したウルトラマンパワードだけど、世界に向けた初代ウルトラマンのリメイクものとして非常に重要な作品だと思うし、シンウルトラマンへの布石としても無視できない存在だとぼくは思います。

またもやひとつでこんなにも長くなってしまった!

ので、続きはまた次回。

おやすみなさいませ。