『かっぱの妖怪べりまっち』116話「坊主狸」 | おばけのブログだってね、

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

凄腕の刈り上げ師「坊主狸」の話

徳島県にある坊主橋を渡ると、気づかないうちに『坊主狸』に坊主頭にされてしまうという。

 

21世紀の妖怪は、トレンドのヘアスタイルで颯爽と街を闊歩して欲しい。そんなわけで、かっぱは妖怪のオシャレに貢献しようと横浜にバーバーかっぱをオープンした。

カット担当には、ザリガニのような自前のハサミを持つ『アミキリ』を雇った。スパンと大胆な直線カットが人気になり、前髪にこだわる雪おんなも通いつめる。

『小豆洗い』はシャンプー担当。いつまでも洗い続けるていねいさがウリだ。

パーマの要望もあり、週末はアルバイトで『雷神』に入ってもらう。昔ながらの電気パーマだが、化けたちは喜んで列を作り、ピカッゴロゴロで焦げ臭くなって帰っていく。

 

おかげさまでバーバーかっぱは大盛況で手が足らなくなった。

そこで噂を頼りに、徳島までスカウトに出掛ける。

そこには、通りがかったひとの頭を瞬時に刈り上げてしまう『坊主狸』という凄腕がいると聞いたからだ。『坊主狸』が入ってくれれば、お客さんを待たせることもないだろう。

案の定、ツルツル頭がトレードマークの見越し入道は『坊主狸』の上顧客となった。座ったとたんに仕上がるので千円カットより早いと地元の運動部の学生たちもやって来る。『坊主狸』は妖怪だけでなく地元民の頭もつるりと刈り上げる妖怪理容師として腕を奮っていた。

ところがある日、悲劇が起きる。

何を間違えたか『坊主狸』の前に雪おんなが座ってしまったのだ。

 

かっぱは急遽、妖怪ウィッグショップを立ち上げねばならなくなった。これがまた大当たりしたのだがその話は後日に。