2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
水かきが生えて口が尖れば「すっぽんの怪」の話
すっぽん料理を食べたことある?
鍋にしたり、なかには生き血を飲むひともいる。
元気が出るって?
それはそうだ、すっぽんは妖怪の仲間なのだから。
かっぱはすっぽんをペットにしていた。
一緒に川で泳いだり、甲羅干しに付き合ったり。
すっぽんは多少怒りっぽいところもあるが基本は素直な性格なので、かっぱの言う事は何でもよく聞いた。
桜の花びらが散る頃になると、かっぱとすっぽんは川遊びに興じた。
川面を流れる花筏の間からかっぱが顔を出したり引っ込めたりすると、それを見て興奮したすっぽんが皿に飛びかかって来るのだが、そんな遊びがかっぱにはたまらなく愉快だった。
夏が近づき、にんげんの子供たちが川辺で水遊びを始めようものなら、かっぱはさらに上機嫌。
ところがだ。
子供たちと一緒にやってきたお父さんが、自分もズボンをまくりあげて川遊びに参加し始めると、なんとなくかっぱは不愉快になり、ちょっとあのお父さんのお尻をかじってきてごらん、とすっぽんに命じる。
素直なすっぽんはお父さんのお尻にかじり付き、お尻の異変に気づいたお父さんは足早に去って行く。
そんな素直なすっぽんだが、ひどい扱いを受けると怒りを爆発させる。
すっぽんにとってひどい扱いとは何か。
それは、締められてバラバラにされたあげく、大して食べずに捨てられてしまうことだ。食べられれば相手に取り憑いて本領を発揮できる。
煮るだけ煮ておいて、少し突いてゴミ箱行きというのが一番腹立たしいそうだ。
一旦、怒りの導火線に火が付くと、料理屋の女将の寝床に押し行って怖がらせたり、お客に取り憑いて口を尖らせたり、水かきを生やしてやったりと、判りやすい方法で腹立ちをあらわにする。
この『すっぽんの怪』は、ひとにとっては奇妙で恐ろしい現象だが、河童類から見ればストレートで可愛らしいいたずらに過ぎない。
さて、かっぱが飼っていたすっぽんは、ある日、いなくなってしまった。
前日に雪おんなが遊びに来ていたことは確かだ。
おおかた、連れ帰ってラーメンの出汁にでもしたのだろう。
そのうち雪おんなの口が尖ってくるから見ててごらん。





