2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※214〜257話までオリジナル妖怪たちが登場します※
大胆な犯人の正体は?「露骨」の話
横浜にあった古いお屋敷にまつわるお話です。
横浜の小さな町、路地裏から突然、悲鳴が上がった。
世話役のおじさん達は、かぶっていた獅子舞を放り出して走り出す。
獅子舞見物をしていたかっぱも後を追った。
駆けつけてみると、着物姿のご婦人が腰を抜かして座り込んでいる。
時刻は夕方5時前、西日がまだ少し残る頃だ。
「前から歩いてきた男性が突然白いコートの前を広げて見せて…」とご婦人は涙声。
自転車を飛ばしてきたお巡りさんは、またか、と苦い顔をしている。
お巡りさんは、コートの下はどうなっていましたか?と訊きにくそうに尋ねる。
おじさん達に手を借りて立ち上がりながらご婦人は、よくわかりません薄暗いものですから、と答えた後、でも衣服は着けていないようでしたとうつむき、白くて細いカラダがぼんやり見えました、と消え入るような声で証言した。
この場所ではここ数日、繰り返しこの変質者が現れている。
大きな屋敷と高い塀に囲まれた細長い路地は普段から人通りも少なく、ヘンタイが登場するにはぴったりの場所だ。
お巡りさんもパトロールを強化していたが、なかなか犯人は捕まらなかった。
それから2日後の夕暮れ時、またしてもお屋敷横の道から叫び声が上がる。
パトロール中だったお巡りさんは声を聞きつけて急行、しかし犯人の姿はすでになし。
その時、大声を上げたのはなんと男性だった。
コートのヘンタイは、男女問わず、いたずらを仕掛けてきたのか。
さらにその男性からは驚くべき証言が飛び出した。
身をかわす犯人を捕まえてようと手を伸ばして振り返ると、もうそこには誰もいなかったという。さらに、
「あれは裸ではなくて、白い骨のように見えた」とも。
小さな町はこの噂で持ち切りとなった。
子供や女性はお屋敷横の道を避け、早く犯人を捕まえてと町内会婦人部はヒステリーになり、世話役のおじさん達は夕方になると界隈の警備に引っ張り出された。
いつしか、コートのヘンタイは『露骨』犯と呼ばれるようになった。
『露骨』犯はそれから数回、姿を現したが、日が延びるにつれて鳴りを潜めた。
春になり、そのお屋敷が取り壊されるというので、かっぱも見物に行った。
開放された大きな門、木や草が生い茂るその奥にツタの絡まる西洋風の屋敷がたたずんでいた。
重機が入り、屋根から大胆に壊していく。
かっぱを始めとした野次馬達が、危ないからと追い立てられたその瞬間、大きな羽音にみんなが振り返った。
壊れかけのお屋敷から飛び出したコウモリが黒い帯を引いて空に消えていく。そのなかに一匹、白いコウモリが混じっていたのをかっぱは見逃さなかった。
あっという間に屋敷跡はだだっ広い駐車場になり、『露骨』犯がこの路地に姿を現すことは二度となかった。





