おばけのブログだってね、 -2ページ目

おばけのブログだってね、

The 27th Anniversary of Formation

占い師⭐︎和楽さん司会のインターネットラジオ

『オーラの中庭』
(↑タップしてね)

本日放送となります。

ゲストは切り絵師田中良平さんと猫またリンダ

 

ゆめのたね放送局

オレンジチャンネル

23:00〜23:30

ぜひご視聴ください。

(再放送は4月12日(日) 23:00〜23:30)

 

image

 

占い師⭐︎和楽さんのブログに丁寧な案内が掲載されていますので、こちらにリンクを貼らせていただきます。

 

 

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※214〜257話までオリジナル妖怪たちが登場します※

 

発表会が何よりの楽しみ「連弾姫」の話

かっぱと連弾姫がピアノを演奏

ほんの数年だがピアノを習っていた。

指の間に水かきがあるせいか少しも上達しなかったけれど、楽器のなかではピアノが一番好きだ。

そのピアノ教室は横浜山手にある古いお屋敷で、大きな居間にはグランドピアノが置いてあった。

通ってくる生徒はどの子もちょっと変わっていた。

先生の頭にべとべとの飴玉を乗せて叱られる子や、鍵盤のあいだにクッキーの食べかすを落として怒鳴られる子、先生のいない隙に鍵盤の上を歩いて大目玉を食らう子など、上手になるとは思えない子たちばかりだった。

だがなぜか発表会になると評判が良い。

その年も、古いお屋敷の大きな居間をそのまま会場にして、発表会が始まった。

生徒の親御さんや近所の顔なじみが集まって、少しカビ臭い屋敷の居間はいつになく活気に満ちていた。

初めての発表会、バイエルの小さい曲を弾くことになっていたかっぱも少しおめかしをして臨んだ。

一番目だった。緊張して周りが見えない。

いざ本番、ぎこちなく始めたのだが、なんだかいつもより上手に弾けているようだ。なんとか終わり拍手をもらって裏に引っ込んだ。

次に弾いたのは、飴玉で先生の頭をコーティングした子だ。

飴玉の子はいつも以上に素敵なハーモニーを聴かせて大きな拍手をもらっている。

ひょいと会場をのぞいてみると、飴玉の隣にはお姫様のように着飾った女の子が座っていた。

なるほど、飴玉は連弾曲か。

緊張したのか、飴玉もガクガクしながら引っ込んできた。

次の子も練習の時よりも格段にスムーズに、そして豪華なハーモニーを弾きこなしている。すごいなと思いのぞくと、やはり、あのお姫様と並んでいる。

結局、子供たちは全員、あのお姫様が一緒だった。

みんな連弾曲だったんだねとかっぱが言うと、子供たちは違う違う、と首を横に振る。

だってあのお姫様みたいな子は?と尋ねると、あれは『連弾姫』だと飴玉が教えてくれた。

そして、かっぱちゃんも『連弾姫』と一緒に弾いていたじゃん、と言われて仰天した。

 

横浜開港と同時に建築されたこのお屋敷には当時、小さい女の子が暮らしていたそうだ。

貿易商でハイカラな両親は外国人教師を呼んで少女にピアノを習わせていた。

もうすぐ発表会というとき、女の子は病に倒れる。

その日のために用意されたドレスは、少女の部屋の壁に掛かったまま、一度も袖を通されることはなかった。

『連弾姫』は子供たちにしか見えないようで、先生は『連弾姫』が生徒の演奏をアシストしていることを知っているのかどうか、かっぱには判らなかった。

今でもあるそのピアノ教室。『連弾姫』はあの屋敷でピアノを弾き続けるのだろう。

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※214〜257話までオリジナル妖怪たちが登場します※

 

踊らずにいられない「瑠璃御殿」の話

かっぱと瑠璃御殿の店

いつもラピスラズリを身に付けて踊っていたあの子。

あの子の話していた『瑠璃御殿』は確かに存在した。

 

その話はこうだ。

彼女は山梨県のとある地方に恋人と出掛けた。

そのあたりでは水晶の採掘が盛んだったため、天然石を扱うお土産屋さんが軒を並べていた。

手頃な装飾品から仏像まで、どこの店も似たり寄ったりだったが、そのなかで一軒、青い天然石のみ扱うお店があり、彼女は思わず脚を止めた。

看板には『瑠璃御殿』とあったが、御殿にはほど遠い、みすぼらしい店だった。

奥からゴボウのように痩せたおじいさんが出てきて、

「うちのは全部、瑠璃ですよ、別名ラピスラズリと呼ばれています」

と言われ、促されるまま中に入った。

一歩入るとそこには深い瑠璃色の世界が広がっていて、彼女は一瞬にして瑠璃の虜になった。

ひとつのブレスレットに腕を通したとたん、気持ちが高揚し、踊り出さずにはいられなかった。それまでダンスなど縁がなかったのだが、まるで昔から踊っていたかのように次から次へとステップが出てきて、気がつくと店の奥まで進んでいたそうだ。

奥からは異国を思わせる香の匂いと共に複数の人の気配がして、それも何か楽器の音にあわせて踊っているようだったと言う。

そのドアを押し開けて中に入ろうとした瞬間、恋人が店の外から彼女の名前を呼ぶ声に気がつき、我に返ったらしい。

 

そのブレスレットは以来、肌身離したことはないと言っていた。

あの子はそれからダンスを習い始め、ぐんぐん上達していったが、くる日もくる日も倒れるまで踊り続けるのでやがて体を壊してしまった。それでも這うようにして稽古場にやってくる。

かっぱと出会った頃はぽっちゃりしていたのに、どんどん痩せていき、ついには腕も脚もゴボウのようになってしまい、まるで、ゴボウに巻き付いた瑠璃のブレスレットが踊っているかのようだった。

かっぱさん、いつか『瑠璃御殿』に一緒に行ってください、奥に何があったのか知りたいんです、と話していたが、あの子は突然、稽古場から姿を消した。

 

『瑠璃御殿』は確かに存在した。

ただ、お店に並んでいるのはありふれた水晶ばかりで、申し訳程度に瑠璃のブレスレットが幾つか、棚の端に置かれているだけだった。

ゴボウのおじいさんは見当たらず、太ったおばさんがTVを観ながら店番をしていた。

あの子が見たがっていた奥に続くドアを探して店の中を何周もしたが見つからない。

やもなく店を後にした瞬間だった。

かすかに異国の香の匂いが漂い、音楽と共に、あの子の声が聴こえたような気がした。あわてて振り返ったが、そこには先ほどの埃っぽい小さなお土産店があるだけだった。

瑠璃にあふれた本当の『瑠璃御殿』、かっぱもいつかその奥をのぞいてみたいと思っている。