『かっぱの妖怪べりまっち』110話「ネネコ」 | おばけのブログだってね、

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2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

豪快に悪さを働く女河童「ネネコ」の話

禰々子(ネネコ)とは利根川に棲んでいたとされる河童の女親分。子分を率いて暴れまわり、人々から恐れられていた。

 

悪名高き女河童『ネネコ』に初めて会ったのはずいぶん前のこと。子分の河童に投網をさせ、川の魚を一網打尽にしていた『ネネコ』。文句を言う漁師がいると、船ごと転覆させて漁師の尻こだまを抜くものだから、みんな怖がって『ネネコ』のやりたいようにさせていた。たまたまそこを通りかかったかっぱが、豪快に悪さを働く『ネネコ』を指差して笑ったのが初めての出逢いだった。

『ネネコ』は賢くて物知りで口が立つので、女の子河童はみんな泣かされていた。

また好色でも有名で、河童でも人間でも、イケメンを見ると次から次へとたぶらかして歩いていた。

そんな『ネネコ』を女王様扱いしてちやほやする化けも多かったが、本当の友達はひとりもなく実際は孤独な河童だった。

『ネネコ』は夏になると子分に畑のキュウリを根こそぎ盗ませて、農家の人が困るのを見ては喜んでいた。ところがある日、ついに捕まって『ネネコ』は腕を斬られてしまう。

かっぱの家に薬をもらいに来た『ネネコ』に、盗むより育ててはどうだとかっぱは自分のキュウリ菜園を見せた。

『ネネコ』の目がキラリと光ったね。

これは儲かると思った『ネネコ』は、子分を集めて大々的なキュウリ・ファームをオープンし、全国の河童向けにネット販売を始めた。

商売は大当たりし、『ネネコ』は一躍、ビジネス河童として名を馳せた。

 

でも、かっぱが知っているのはここまで。

元来、怠け者の『ネネコ』はやがてファームをつぶし、挙げ句の果てには色恋沙汰で揉めて、元カレに樹から吊るされ干涸びたって噂を聞いたけど、本当のところは謎のまま。

『ネネコ』と出逢った川に行くと、ひょっとして戻って来ているんじゃないかと思って、今でも川面を探してしまうんだ。