2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。
11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。
当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。
※しばらくの間オリジナル妖怪たちが登場します※
オシャレ妖怪たちに人気「のぶすま(野衾)」の話
"ブティックかっぱ"はオシャレな妖怪たち御用達のお店。
冬には、仔犬に似たモコモコ妖怪『すねこすり』のレッグウォーマーが人気で、寒がりの雪おんなはもちろん、ろくろ首の姐さん達はネックウォーマーとして、また冬の街に立つ豆腐小僧も1セット欲しがった。もちろん春になったら『すねこすり』を山にリリースするという約束は販売時に取り付けてある。
それを上回る人気だったのが『のぶすま(野衾)』グッズだ。
『のぶすま』はムササビやモモンガに似た妖怪で、闇のなか飛んできては人の体や頭にへばりつく性質がある。その性質を活かして胸と背中に一匹ずつ張り付かせたベストは、真冬のタウンウェアとして空前の大ヒットとなった。あの『狂骨』でさえ欲しがったんだから。
ベストに併せて、『のぶすま』のバッグ、帽子も売り出してみたところ、これも大ウケ。小僧妖怪たちはこぞって『のぶすま』の帽子をかぶって歩き、『タンコロリン』は『のぶすま』のバッグに柿の実を入れて持ち歩いた。
最初は温かくて可愛いと評判の『のぶすま』グッズだったが、「かじられた」「血を吸われた」という苦情が相次いだ。おでこに歯形を付けた小僧妖怪たちが泣きながら返品に来たし、『狂骨』は肋骨がボロボロだとカタカタ怒っている。『タンコロリン』は袋を開けたら柿の実がひとつも残っていなかったらしい。
取扱説明書には、「定期的にごはんをあげてください」と明記しておいたのだが誰もそれを読まなかったようだ。