『かっぱの妖怪べりまっち』109話「ぬっぺっぽう」 | おばけのブログだってね、

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The 26th Anniversary of Formation

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

自分の可能性を探す「ぬっぺっぽう」の話

『ぬっぺっぽう』とは、顔と体の区別のない、一頭身の化物。

 

妖怪バンドはこれでも、メンバーになりたいとプッシュしてくる妖怪が後を絶たない。最近やってきたのが『ぬっぺっぽう』だ。

目や耳がどこにあるか判らない『ぬっぺっぽう』に音楽が出来るのかとみんな首を傾げたのだが、これからは目立つ妖怪になりたいと熱心に言うのでバンドに仮入団してもらった。

『猫また』がダンスを教える。ターンをしたら腹肉が背中にずれて、ジャンプをしたら脚が胴体にめり込む。まるで作りかけのパン生地だ。ダンスはパスしよう。

次は『雪おんな』の音楽スタジオに行く。歌はどうだろう。

発声をしたら、よく響く素晴らしい声をしている。これはいいねと喜んだのも束の間、音痴が判明。「何を歌ってもバリトンのお経になっちゃうわね」と『雪おんな』が肩をすくめた。

歌やダンスがダメなら楽器はどうだろうと、パーカッションが得意な『小豆洗い』を訪ねた。小豆の入ったザルを渡され、リズミカルに振ってごらんと言われた『ぬっぺっぽう』だが、予想通り次の瞬間、四方八方に飛び散る小豆。怒りながらそれを拾い集める『小豆洗い』を後に慌てて逃げ帰ってきた。

 

そんなわけでバンド入りをあきらめた『ぬっぺっぽう』だけど、その後、モデルになったと連絡がきた。有名ハム屋さんの専属になったと嬉しそうだ。くれぐれもまちがえてスライスされないようにねと返事しておいた。