『かっぱの妖怪べりまっち』101話「そうはちぼん」 | おばけのブログだってね、

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The 25th Anniversary of Formation

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

群れをなして飛ぶ火の玉「そうはちぼん」の話

石川県では、シンバルのような形状の楽器『そうはちぼん』に似た怪火がたびたび目撃されている。UFO説が有力。

 

石川県の羽咋(はくい)に住む友達のマリちゃんを訪ねたときのこと。

かっぱの布団を敷きながら、夜中に空を観てはダメというマリちゃん。なんで?と訊いたら連れて行かれるからと怖い顔をした。

ダメと言われるとどうしても観たくなる。

マリちゃんが寝付いたのを確認して、そっと窓から顔を出す。

しばらくすると、向こうの山から輝く玉がゆらゆらと姿を現した。玉はやがて群れになり、スピードをあげて西の空に消えた。

翌朝、マリちゃんにその話をしたところ、あきれ顔で叱られた。

町の人は昔から空飛ぶ玉のことを『そうはちぼん』と呼んで気味悪がっているそうだ。

「あの玉は眉丈山(びじょうざん)から飛び立つらしいけれど、危ないから絶対に行かないでね」とかっぱに釘を刺してマリちゃんは夕飯のごちそうを買いに出かけた。

そう言われたら行かざるを得ない。

マリちゃんを見送るや否や、眉丈山(びじょうざん)に向かう。

古墳のある普通の山で、どこにも不気味さはない。

もう帰ろうと思い踵を返したところ、足元にお皿が転がってきた。拾い上げ、いつものクセで何気なく頭に乗せたとたん、ピカリと光ったお皿はかっぱごと空に舞い上がった。

わー!と叫んだところでどうにもならず、お皿とかっぱはグングンと地上から離れ、雲を突き抜けた。どこまで行くのかと足元を見ると、地球が青く輝いている。

このまま宇宙旅行もいいが、マリちゃんが夕飯に特上寿司を用意してるはず。戻るなら早めだ、たすけてー!と大声を出したところ、お皿はふいにかっぱから離れた。

落下するかっぱは雲を破って地上に。

ジャポン!

落ちたのがどこかの湖で本当に良かった。

すぐにマリちゃんに連絡して、秋田あたりの湖にいるから今夜の寿司は食べられないと言ったら「嘘つき!」と電話を切られた。