『かっぱの妖怪べりまっち』100話「センポクカンポク」 | おばけのブログだってね、

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The 26th Anniversary of Formation

2020年12月末に配信終了となった『携帯サイト新耳袋』。

11年間に亘り連載していた短編、『かっぱの妖怪べりまっち』は、第563回で終了となりました。

当時の掲載作を週1編ずつこちらのサイトへ転載しています。

 

あの世ヘの水先案内人『センポクカンポク』の話

大きなヒキガエルのような体に人間の顔を持つ『センポクカンポク』は、富山県南砺市に伝わる妖怪。死者を側で見守り、4週間経つと魂をあの世に導くといわれる。

 

富山に住むにんげんの友達を訪ねたときのこと。

近所で不幸があったから少し出掛けてくると言われ、広間で昼寝をしていたら、大きなカエルがキョロキョロしながらあがってきた。にんげんのおじさんみたいな顔をして、何かを探している様子。

やあ随分キミはデカいね、と話しかけると向こうは、河童がこんなところでゴロゴロしているとはつまらない、などと言う。

この近くに素敵な沼があるからと誘われ、それじゃあ暇つぶしにと一緒に出掛けた。

入り口は小さい沼だったが入ってみると底は深く、泳げど泳げどたどり着かない。もう面倒臭くなった頃、ようやくお城が見えてきた。

いわゆる竜宮城みたいなものを観たのはこれが初めて。

きれいなお姉さんが出迎えてくれて、お城の奥に案内された。お姉さんは黄金色に輝くキュウリの山を指差し、いくらでも遠慮せず食べろと言う。カッコいい音楽が鳴り始めると、カエルも魚もカニまでもがクネクネと踊り出す。かっぱも浮かれてみんなと朝まで踊り明かした。

あまりにも楽しくてかっぱはもう一日、もう一日と過ごしたけれど、さすがに家に置いてきた猫が心配になってきた。

「カエルくん、そろそろ地上に戻るよ」

するとカエルは顔を曇らせて、

「明日で4週間、もっと素敵なところに案内するからもう一晩泊まれば?」と言う。

翌朝、カエルはお城の向こうにある金色に輝く山を指差して、さあ出掛けようとかっぱの手をひいたその瞬間だ。

どこからか「ニャー!」という猫の声が聴こえたような気がして我に返ったかっぱ。

やっぱり帰るよバイバイ、と言い残し、沼の入り口を目指して猛烈な勢いで泳いだ。

 

はっと気がつくとかっぱは友達の家の土間でひっくり返っていた。

みんな心配そうな顔でのぞきこんでいる。なんでも、友達が家に戻ったら、かっぱは干涸びて虫の息だったそうだ。

さらに不思議なことに、お葬式を出すはずだった近所の人が突然息を吹き返したらしい。

…そこで思い出した。富山には『センポクカンポク』っていう妖怪がいて、死んだ人の魂をあの世まで導く仕事をしているってことを。あのカエル、かっぱを誰かと間違えたのかな。

あれから数年経ち、すっかりそのことも忘れていた。天狗さんが飼い始めたというカエルの顔を見るまではね。